ロロアちゃんの降臨
カイン博士とママの監修のもと、学校では模擬戦争が行われていた。
そしてロロアは深紅の光の矢になった・・。
教室では、模擬戦の後に会議が行われた。
ちなみに今回は5回目・・。
「では、パワーマングループの報告をお願いします。」
ルルが言う。
「はい。ロロアちゃんのメンタルが心配ですが・・相手の攻撃を見切る能力は極めて高く、まず近接戦闘なら負けないかと思います。」
頭にタオルを巻いたリクト達が言った。
教室の横には4人で操作するパワーマンを模したパワードスーツがある。
私が何度も破壊した為か所々溶接してある。
「じゃあ、ニュートリノ防衛陣地側の報告をお願いします。」
「はい!」
ユミルと初め、ZMメカニロボ役のレーザーが出る水鉄砲に白い鉢巻を巻いた女子や、大型メカニロボ役の男子のチームがいた。
ちなみに私のバスターも出力を最小にして赤外線が出るようになっている。
これで撃つと皆のポータブルフォンが振動する仕組みだ。
私が撃たれると、ライフコアが黄色くなり小さな痛みが走るようになっている。
「第1守備隊はロロアちゃんのバスターでやられましたが、後ろにいた第2守備隊に守られました。このままではロロアちゃんの単独突破は難しいと思います。おそらくチームガンバをもってしても野砲を持って行わないと突破はできなかったものと思われます!」
「わかりました。」
ルルはママの監修のもと、黒板に井上ルート付近の守備隊の編成を出した。
VR体育館で井上ルート付近をクラスの皆で再現したのだけれど、バリケードの陰で敵のライフルを見極めるのは難しく。
見つかった後の十字砲火でやられてしまった。
あの時、私は目に見える武器を持っていなかったのでチームガンバの突撃と相まって脅威と見なされなかったのだろう。
「うーん。」
私は机に突っ伏して考える。
「このままだとロロアちゃん、パワーマンにたどり着く前にやられてしまうな。」
リクトが言った。
「ロボットは人間と違って不眠不休で働ける。それにこの防衛陣形。改めて、すごいですね」
ルルが黒板を見て言う。
「みんな、ロロアの為に考えてくれてありがとう。」
ママ(クマさん)がホログラムで等身大のパパを出した。
パパは教卓に立つと皆にお辞儀をする。
「大丈夫ですよ、ロロアさんのお父さん。それより本当にロロアちゃんをあそこに?」
ルルが聞く。
「えぇ・・。言っても聞かない娘ですから。ね、ロロアちゃん?」
「うん。」
私は深く頷く。
「今では私をスクラップにした事に怒りを覚えるの。私はなんとしてもパワーマンをコテンパンに破壊してチームガンバやみんなを助けたいの!」
私が立ち上がって言い、みんなが(おぉ)と声をあげた。
「スクラップって!」
ダイチがつっこむ。
「ロロアちゃん、突破の事なら僕に考えがある。」
パパが言った・・。
それから幾日が経ち、ついに出撃の日が決まった。
近隣住人の配慮と、学生の門限もあって夜の20時に第4メインストリートから出発する。
第4メインストリートは、メルヴィアの神殿に続いていて、森のある公園の谷がある。
街はブロックに区切られ、大事があると滑走路としても使えるように道幅が広いので、街をまるごと私の加速と飛行に使おうと言う話になった。
街中を加速して、公園で離陸する。
そして飛行ユニットを外した後に余力の状態でニュートリノ発電所に突貫。
強化したロロアバスターの逆噴射で、一番被害の少ないであろう井上ルートの冷却部を破壊してクッションにする。
第4メインストリートの信号機のシグナルが全て青になる。
パトカーや警察隊が忙しく歩き回る。
私は、パパにヘッドギアを着けてもらっていた。
飛行ユニットは警察隊が2人がかりで着けてくれる。
「ロロアちゃん頑張ってね。コレ、加速の時に燃えてしまうかもしれないけど・・。」
「これは?」
私は赤い虎が刺繍されている布を見た。
「千人針を皆で作ったの。虎は1000里を走ると言われているの!つまり行って帰ってこれると言う事。必ず帰ってきてね!」
メリルが私のお腹に千人針を巻いて、私を抱き締めた。
「ロロアちゃん。言ってみれば千人針が燃えるくらい加速してくれ。飛行ユニットは背中のママが操縦する。パワーマンの対空砲が補足せず、対人タレットが反応しない最高スピードを維持するんだ。いいね?」
「うん。」
「私にまかせてロロアちゃん!あなたを必ず連れてゆくから!体も耐熱仕様だから!」
クマさん(ママ)が私の頭を撫でる。
そして、背負っている飛行ユニットの真ん中にある操縦席に入った。
私が水平に飛ぶと、ママが上を向くみたい。
「ロロア!スタンバイ!!ロロア!スタンバイ!!」
パパが旗をふる。
暫くすると、道路を誘導していた警察隊もGOサインを出した。
おそらくメディア規制と、クラスの皆と交通規制をしているのだろう。
私はクラウチングスタートの強化スターティングブロックに足をかけた。
・・もしかしたら、今度こそ戻ってこられないなもしれない。
メリルは、私の不安そうな顔を見たのか、そっと私の頭を撫でた。
「ロロアちゃん。私達は皆一緒だから!!楽しんできて!!」
メリルが離れ。
「うん!!頑張ってくる!!」
私がメリルに言った瞬間スターティングブロックが加速した。
そっか!楽しんでくればいいんだ!
私にはニイさんやZM-300がいる!!
また会いにいこう!!
スターティングブロックが一気に加速し、体が外れ、私は矢のように飛び出した。
もはや走ると言うより滑空だ。
メリルやパパが一瞬にして影になって消え、メインストリートを弾き出されるように両足のフットパーツで風のように駆け抜ける。
メインストリートには光る誘導灯をもったクラスメイトがいる。
「うぉーー!ロロアー!!」
風の中から、リクトの声が聞こえた気がした。
私はメインストリートを抜け、メルヴィアの神殿がある巨大な公園へ駆け抜けた。
公園にも誘導灯をもった皆が滑走路を作ってくれた。
「飛ぶよ!!ロロアちゃん!!ブースター全開!!」
「うん!!みんな!ありがとう!!」
飛行ユニットのブースターがエネルギーを吐き、私の脚力と翼で空気流を作り出すと一気に揚力で浮き上がった。
私はダッシュの形から水平になる。
皆、見てくれていただろうか。
そして空気の壁を作り出し、一気にマッハまで加速する。
「わー!ロロアちゃーん!頑張ってこいよー!!」
後ろから歓声が聞こえた気がした。
キラキラ光るメルヴィアの神殿を抜け、私達がピクニックをした森のスレスレを飛ぶ。
体がオレンジ色に燃えだし、千人針が燃えて行く・・。
メリルが作ってくれたヘアゴムが無くなり、宝石が夜空に散った。
私は髪をなびかせながら、深紅の光の矢になった。
※※※※※※※※※
「テリンコ。」
俺は、水を差し出した。
「あと3体倒すまでいらない。」
テリンコは手をふる。
彼女の髪は肩まで伸びていた。
きっと俺も髭や髪がすごい事になっているだろう。
暫くすると盾と剣を当てる規則正しい音がした。
「あぁ、あの音だ・・」
「私達をおちょくっているのか・・クソッ」
黒いボロボロの鎧を来た隊員達が横になりながら言う。
「きっと、キグナスの部隊の航空支援を恐れて、私達を人質にとっているのだろう。この音は・・きっと嫌がらせでしょうな。」
ダーパがほっそりした体で言う。
自慢の丸眼鏡もずり落ちそうになり、かなり痩せたようだ。
もはや作戦長と言う肩書きを捨てて、お尻を半分出して横になってテレビを観ている・・。
一瞬くつろいでるように見えるが、エネルギーを必要最低限にとどめ外部の情報を得ているらしい。
皆も横になり、なんとか体力を温存している。
テリンコや他の隊員はメンタルを保つためにタンポポを育てている。
この打ち鳴らす音は1時間おきに本陣のバリケード前で始まる。
その後は人間の声による叫び(?)が始まり。
それがずっとだ。
ロボットは電源があるから寝るのも食べなくても良いかもしれないが、俺らからしたら24時間これを聞かされるのは想像を絶する程身に堪える。
『なにもしない事』をしなかった時は仲間の中に気がふれる者も現れ、部隊は50人まで減ってしまった。
食べ物も無く、倒した2足歩行メカニロボの冷却水を飲み、腕や足の駆動部のデンプンを食べる。
たまに飛来する鳥型メカニロボを捕まえて食べた事もあった・・。
あと、ダーパ作戦長のヘソクリを食べたり。
素足で寝転んで必死になってリラックスしている。
「ふふふ。ふふふふ。」
「大丈夫か?真夏君。」
テリンコが変な顔で見る。
「大丈夫だ・・。砲兵隊の牙は折れても、志は折れず!」
俺はボロボロの制服にアイロンをかけると『砲手指揮官』のバッチを磨いた。
電気が使い放題なのが唯一の救いか・・。
「ん?もしもし?」
ダーパが横になって尻を掻きながら誰かと電話している。
「ふむ。へ??ロロアちゃんが来る?」
「ロロアちゃん?」
「ロロアちゃん?」
皆が顔を見合う。
すると遠くで爆発音がした。
防護壁が意図的に爆破されたのだ。
古めかしい非常用シグナルが鳴り、ニュートリノ発電所に続く道が出来てゆく。
ここは本来、災害時に徐洗車が入る為の道だ。
「な、なにか来ます!」
ヘロヘロになった門番が空の彼方を指差した。
作戦室のテントが揺れ、それは光の玉だと気が付いた。
戦闘機が走り抜けるような凄まじい音と共に此方へ来る!
「あれは・・戦闘機か!?」
「ロケット砲だ!!!全員ふせろー!!」
門番が言った瞬間、ニュートリノ発電所が強烈に輝いた!!
体を揺らす爆風!
そして光り!
俺達にとっては希望の、奴らにとっては悪夢の時間が幕をあけた!