ブレードマン攻防戦
名もなきアステロイドがロロアと衝突する。
その名は『ブレードマン』
ロロアに最も恐れられ、ロロアによって名付けられた戦闘用ロボだ。
ブレードマンはロロアの残忍な兵器に勇敢に立ち向かい、ロロアはスレードマンの違法改造に逃げる事なく真っ向で勝負する。
そこにあるのは“日本”であり、それは太古の昔からある武士道精神に直結するのだ。
「名もなきアステロイド様のお通りでい!」
「おぉお!」
「助かった・・」
「よかった・・よかった・・」
通路に破壊されたガードロボやバンガシラを積み上げて防衛陣地を作った軍団が顔をあげ、安堵の声をあげた。
使いこんだ野戦砲には小石ほどのロロアクリスタルが付着し、電解液の内部循環が悪いのか肩で息をするロボも居た。
赤い鉢巻をしたロボ達も居るようで、お互いに励まし合い、心強い味方の吉報に心から安堵しているようだった。
名もなきアステロイドが野戦砲連隊のウィングに聞く。
「ガードロボを全滅させた青いイレギュラーは何処です?」
「はっ!今日まで日本庭園にて籠城中です!」
「・・後は私がやります。下がっていて下さい」
「はっ!」
ウィングと言うのは、本来ならプライドが高く手柄を横取りされまいと必死な鳥類アステロイドであったが、今度ばかりはその座を譲ったようだ。
もとより戦意高揚の為に着飾った宝石は崩れ、ロロアとの戦闘をいち早く終わりにしたかったのかもしれない。
名もなきアステロイドが帯をギュッと締めて気合いを入れる。
ミーさんとイシさんが、ガードロボの防衛陣地内に即席の手術室を作り、いそいそとモニターの準備をした。
アウルはストリームマンが和紙で書いた『対ロロア前線基地』の紙を陣地に貼る。
「いいか、名もなきアステロイド。お前さんの見る瞳にライフゲージを出す」
「はい」
名もなきアステロイドの左の視界に『G』の頭文字と共に、ライフゲージが積み重なる。
「これはロロアの想定ライフゲージだ」
アステロイドの右の視界に『R』が点いてライフゲージが積み重なる。
アステロイドより、ややライフは少ないが侮れない数値だ。
「ライフゲージが半分をきると第5野砲連隊が否応なしに救助に向かう。その時はボディを治して再出撃だ。わかったか?」
「わかりました・・一つ疑問なのですが・・」
「なんだ?」
「ロロアちゃんはRはわかるのですが・・なぜ私は『G』なのでしょうか?」
「そりゃあ、名無しと来たら『名無しの権兵衛』と相場は決まってるからだろ。なぁ、ミーさん?」
「そうでさ!」
「つまり権兵衛と言う事ですか?」
「そう言う事になるな」
「・・・もっとカッコいい名前でお願いします」
カキカキカキ。
準備と再調節が終わり、日本庭園に続く蛇腹状のハッチを開け、通路から日本庭園の間にある何もない一本道の通路を歩いた。
カキカキカキ・・ドシャ。
もう一方のハッチが閉まり、見事な枯山水のある『日本庭園』が広がる。
ストリームマンを模した巨大な大仏が鎮座する寺。
そして奥には茅葺の茶室・・。
アステロイドは周囲にある微細な音とエネルギー反応を感知しながら歩く。
庭園にある竹林が揺らぎ、ときおり獅子おどしが鳴った。
溶岩石のゴツゴツした岩から献献と水が溢れて滝を成し、岩にはメカニロボの錦鯉が泳いでいた。
(・・何かくるわ・・!)
茶室から声がして、アステロイドが分析をする。
茶室の屏風の影に居たのは、青緑色のボディをした少女だった・・。
距離にして30メートル。
ロロアはアステロイドを認めると目を丸くした。
もはや言葉などいらぬ。
その様相に騙されぬ。
アステロイドが鎌状の刀を振り上げ、走り出す。
ロロアは明らかな動揺と恐怖を表情として出し、慌てたように小型のバスターの掃射が始まった。
甲高いバスター音(別名:フローラウスの笑い声)が響き、握り拳大の楕円形のバスターをアステロイドが素早く斬り伏せる。
斬ったバスターは形を維持できなくなってアステロイドの周囲に飛び散り、枯山水の砂を撒き散らして砂埃になった。
アステロイドが素早く斬り伏せながら、確実にロロアとの間合いをつめる。
技を繰り出すのは、ロロアが刃圏に入るまでだ。
それまでバスターを斬って確実に距離をつめ、ロロアがバスターの威力に頼んだ所を、一気に斬り伏せるのである。
(バ・・バスターを斬ってる!!撃つのを辞めて!!)
(え!?)
ロロアとぬいぐるみの会話が聞こえるまでに近くに来た時、アステロイドは確かにロロアの精神的な動揺を見逃さなかった。
アステロイドが決死の突撃を敢行する。
頭に生えた2本の刀が何度もクロスし、ロロアに恐怖心を植え付ける。
(ママ!!どうする!?)
(ミドルバスターをロロアちゃん!!)
(あ!そっか!!)
ドォワシュ!
と言うバスターの銃声と共に、通常のバスターより四つ周りも大きい黄緑色のミドルバスターが放たれた。
しかし、これもアステロイドにとっては計算の範囲内だった。
ショキン!
アステロイドの頭部に付いた刀がものの見事にミドルバスターを両断し、寺の側面と庭園に轟音と共に着弾した。
すぐさま庭園の竹林から火の手があがり、得体の知れないアステロイドとロロアの恐怖に満ちた顔を照らしだした。
((バスターが・・効かない!!))
────
「これは・・勝てる!!」
アウルは日本庭園を映すモニターを観ながら確信した。
「まぁ、すぐに勝てるとは思えんが。勝つのは時間の問題だろうな」
イシさんが腕組みしながら言う。
イシさんとアウルがミーさんを見る。
ミーさんは食い入るようにモニターを見つめ、ロロアが刃を受けそうになると身体がビクンと反応した。
モニターには胸を斬られたロロアが映し出される。
致命傷にはなっていないようだが、近接戦闘がロロア討伐の突破口である事は明白だった。
「こうしてはいられない」
アウルは立ち上がると、烏帽子を被り直した。
「何処に行くんだ?」
「ストリームマン様の所です。メルヴィア攻略戦の発動が近いと・・」
「しかし、だいぶ兵士たちも疲弊しているようだが・・」
「前の作戦では、メルヴィアの全土が攻撃目標でしたが、艦隊総出でメルヴィアの中枢を破壊します。チームガンバの飛行隊も壊滅し、政府関係がマヒしてしまえば、私達の要求がそのまま国民に反映されるはずです。もしや、我々が思っているより早く、メルヴィアを手中に収める事ができるかもしれませんから・・それでは御免」
アウルがいなくなり、イシさんとミーさんだけになった。
奥では緊張の糸が切れたのか、軍配を持ったウィングが座りこみ、ZM達が正座をして出番を待っていた。
あそこで皆にA缶を配っているのは1体のグリーンキラーだ。
グリーンキラーはマット博士が作り出した戦闘用アステロイドで、博士の非公認でありながら自らを”マット師団“と名乗っていた。
ホワイトスペクターはもちろん、他の爆撃機にもメルヴィア地上作戦用に搭乗していたのだが、ロロアの攻撃によりホワイトスペクター内のマット師団は全滅した筈だった。
「むっ!!イシさん!!大変でさ!」
それを気にしている最中、突如として名もなきアステロイドのライフの急激な減少が見られた!
アステロイドはモニター越しでも分かる程に苦しみだし、たまらず影分身をして隠れると竹林あたりでもがき始めた。
ライフは恐るべきスピードで下降し、慌てたイシさんが待機していた軍団にアステロイドの回収を指示した。
「ロロアちゃん・・」
ミーさんがモニターに釘付けのまま呟く。
軍団・・もとい決死隊は、スパークライフルと野戦砲を撃ちながら日本庭園に到着。
ロロアは突然の襲来に飛び退いた。
援護射撃をしながら、ロボの中でも1番足の早いZMがアステロイドの両腕を持ち上げて退避させる。
その時である・・。
鋭い閃光の後、イシさんの外骨格が振動でビシリと軋み、野戦砲の爆発を観測した。
軍配を持ったウィングが倒れ、火だるまになったZMが逃げ惑う。
幸か不幸か、火だるまになったZMが寺の方に走りだしロロアがそれに気を取られた。
(ぎゃああああーー!!)
(撃ち続けろ!!)
ドタバタと手術室にアステロイドが運び込まれた時には、生き残ったZMの2体は半乱狂になっていた。
その内の1体が狂ったように戦況を言う。
「まるで猛獣の居る檻だ!!何処からともなくバスターが飛んできて、仲間が死んだ!!破壊されたんだ!!」
イシさんとミーさんがぐったりするアステロイドの腕を抱えて手術室まで誘導した時、意識を取り戻したアステロイドが反りかえるように叫んだ!
「うぎゃーーー!!!!」
その瞬間、アステロイドの胸の外骨格がオレンジ色に膨張し、内部をズタズタにしていたポイズンバレットが飛び出した!
飛び出したポイズンバレットは、半乱狂になりながら戦況を話していたZMの右頬から左の頭蓋にかけて貫通し、壁を数回バウンドして消滅した。
即死したZMが、長いため息をつくように崩れ落ち、返り液を浴びたZMはスパークライフルをかなぐり捨てて怒鳴った!
「うわーー!!冗談じゃない!!俺は“赤ハチマキ”だ!!こんな地獄はまっぴら御免だ!!」
ZMが踵を返して逃げ出そうとした瞬間、イシさんが死んだZMからスパークピストルを抜いて逃げ出したZMを撃った。
「ぎゃっ!・・何をするかっ!俺はっ・・!」
スパークピストルが左脇腹に命中し、振り向いた所を胸を撃ち抜いた。
ZMが壁にもたれるように倒れ、額のライフコアの点灯が消えた。
「敵前逃亡は重罪だ!命を削って戦っている名無しの権兵衛にも、孤独に戦っているロロアにも示しがつかぬ!!恥を知れ!!」
イシさんはピストルを投げつけると、アステロイドの看病に移った。
打ち捨てられた死体をよそに、追加の軍団がやってきた。




