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必ずロロアを倒してみせます。

名もなきアステロイド。


その、登録番号すらないロボットは純粋に戦う為に作られていた。

虚無の偶像に、ZM達が怨念を吹き込む。


そして開眼した先にロロアが居た。

「果たしてロロアの戦いまでに間に合うかな・・」

ZMー1*3(イシさん)とZMー300(ミーさん)そしてフクロウ型アステロイドのアウルの戦いが始まった。


食堂の奥のキッチン。

その巨大な調理用テーブルには、ZMを修理する各部品と、地上作戦用に眠らせていた内部機関のみのアステロイドがいた。


「このアステロイドはすごいんだ!マット博士が作った、まじりっ気のない戦闘用ロボだぜ!?」

イシさんが興奮しながら言う。


「そんなモノ、世に出していいんですかい??そんな事したらマット博士が逮捕されてしまうんじゃ・・?」

ミーさんが心配し、アウルが補足した。


「彼が地上で活躍している頃には、メルヴィアは警察や軍の統制が効かない無法地帯になっているだろうから関係はないでしょう。おそらくマット博士がメルヴィアを掌握し、このアステロイドが地上作戦用の参謀として君臨する筈だったのです。いずれはメルヴィアの重要なポジションを担う筈です。それが話術を必要とする外交の場でも、力こそ全ての暴力の道でも、彼は自由に体をカスタマイズして柔軟に行動できるよう設計されているのです」




「・・・」

アウルの言葉に、なぜかミーさんの心境は複雑だ。


「ミーさん?あなたも望んでいる理想郷ですよ?メルヴィアの国民の精神を解放し、ロボと人間の理想郷を創る・・。それが私達の信念であり理想でしょう??」


「・・そうでやんすね・・。じゃあ、初めやすか」

ミーさんの、どこか釈然としない態度に2体は首を傾げた。



誰ともなく無名のアステロイドの電源を入れる。

剥き出しになった胸のフィンが回りだし、内部を流れる配管が電解液やオイルを循環させる。

(はらわた)が原子分解をする為に動き出し、メカニロボとは違う複雑な構造に、ミーさんとイシさんは息を呑んだ。


「ふぅ・・!!」

「あ!起きた!」

まるで水面から上がったように深い呼吸をした後に無名のアステロイドは目醒めた。


アステロイドは剥き出しの頭脳回路を光らせながら『学習中モード』にはいり、周りを見回し、アウルを分析し、自分がおかれている状況を瞬時に理解した。

「・・・大変な、大変な事になりましたね」


「説明は・・いりませんか」

「ええ。・・・相手はメルヴィアの一個師団ですか?」

「・・・」


アステロイドの言葉にミーさんはアウルを見た。

アウルがホログラムでロロアの学生証の写真を投影する。

「ロロア・フローラウス・メリアス。強靭的な精神力と、軍団を壊滅させるほどの恐るべき破壊力を持った女の子です」

「なんと・・。たった1人で!?小学生が!?」


困惑するアステロイドに、ミーさんが話しを続ける。

「いんや、カイン博士に改造を受けたアステロイドの女の子でさ」


「カイン博士・・・!!実の娘を戦闘マシーンにするとは・・なんと業の深い!!これがメルヴィアのやる事ですか!」


「ですから、無名のアステロイドさん!戦闘の為に作られた貴方に、どうかロロアちゃんを止めて頂きたいのです!これをご覧ください、ロロアちゃんによって撃破された仲間達のデータです!これからあなたを離解し、交換が容易なZMシリーズのパーツになっていただきます。どうか、我々を勝利に導いてください!!」

「あっしからもお願いです!」


「・・わかりました。すいませんが犠牲になったZMのデータを私のメモリーに転送して下さい。解析をすれば改善点が見つかるはずです」


「がってんしました!」


かくして、名もなきアステロイドの改造計画が始まった。


───


両腕には、ロロアのバスターを斬り伏せる強靭な刀。

これは刀を持ったZ Mが突撃した際、刀に発生したプラズマイオンがロロアのバスターを一時的に斬った事に由来した。


脚は筋肉組織が剥き出しになるほど強化し、脚力が存分に活かせるよう外骨格に穴を開ける事で軽量化を施した。

それは、犠牲になったZMの多くが遠距離か中距離で破壊されている為、よりロロアの懐まで侵入できるようにする為の工夫だった。

また、それに平行するように手の平を除去した。

鎌状のブレードを振るには邪魔だったからだ。


内臓は、ポイズンバレットが内部をズタズタにしないよう最低限のユニットに留めた。

まず脚と上半身と頭部に独立した電池(カエルのタマゴ電池)を使う事で、食物や飲み物でエネルギーを得る手間を排除した。


眼球は赤外線も探知できるバンガシラの眼球が胸にも内蔵されており、これはロロアが待ち伏せしても直ぐに索敵できるように工夫されていた。


また、踵を除去する事で爪先立ちになり、瞬発力を高めた。




・・その改造の時も

"どうか仇をとってくれ"

"俺らの犠牲を無駄にしないでくれ"

と、ZM達の苦痛の叫びが食堂からキッチンに響いた。


名もなきアステロイドは『ロロアに恐怖を与える存在』になるべく、より人型離れした造形に変わってゆく。



─────


ロロアとの激闘に敗れたZMが折り重なり、処分を待つ山となる。

そして、ついに戦闘の推を集めた究極の体が出来上がった。


「おぉ。おぉ!遂にできたぞ!!」

「やったでやんすね!!」

シマさんとミーさんが握手をする。


後はアステロイドが犠牲になったZMシリーズから戦い方を学習ダウンロードし、勝利の方程式を導き出すのみとなった。


改造された名もなきアステロイドは座禅を組みながら、デスクスロットに差し込まれた記憶デバイスをコードで直接脳内にダウンロードしていた。


おそらく何百と言うロボ達の『死』を見ているのだろう。

いつしたアステロイドの左手は手の平を此方に向ける『聞く』印相を成し、左手は親指と人差し指を付けて下にむけ『成仏』を示していた。



ミーさんがアウルに聞く。

「・・しっかし"名もなきアステロイド"と言う名前も無機質でいけねぇ。名前は無いんですかい?」

「それが残念ですが・・アルムシュア条約により名前をつけてはいけないのです」


「無登録で、違法に軽量化とパワーアップときちゃあ大量破壊兵器待ったナシだもんな」

イシさんが笑い、今後を話す。


「じゃあ・・その。言っちゃ悪いが、このアステロイドさんが負けたら?」

「高濃度エチルキンで跡形もなく焼却されますから心配には及びません」


「勝ったら?」

「彼の存在は危険ですので即座に分解、我々のデータは書き換えられます。『ロロアはホームシックになり。家に帰った』と。ホワイトスペクターの記録書に記されるでしょう」


「「・・・なんてこった!!」」

ミーさんとイシさんが言葉を失う。


「・・・」


「あっ!起きた!」

「だ、大丈夫ですか!!」


名もなきアステロイドは静かに頷いた。

「・・これは一筋縄では行きませんね。まるで女神メルヴィアが、そのまま化身となって降臨したようだ」


「メルヴィアの化身・・!!」

シマさんが繰り返す。


「そうです・・まるで神話に登場する戦いの女神。メルル・ヴィアスそのものです」


もちろん魂や霊魂などと言うのは、科学の推であるロボ達にとって無いものと同然だ。

しかしストリームマンをはじめ、さまざまな軍事ロボ達は国民を如何に従わせるかを考え、模索し。

それが軍事施設や、己の装飾品や自分のデザインそのものを神に寄せる事があった。


しかし、今日に置いて軍事目的・・つまり人を導き、時に如何に効率よく人間を殺害たらしめる事に特化した“名もなきアステロイド”が、ロロアと言うハルミオ小学校に通う女の子を‘’女神メルヴィアの化身“と称したのは極めて異例な事であった。



「でも・・私は挫けません。どうか私の身体が破壊されても、この取り替え可能なボディで何度でも蘇えらせて下さい。私は戦えば戦うほど、よりロロアちゃんの攻撃パターンを学習する事ができる。私のデータが粉々に破壊されるまで・・誰が何と言おうと戦場に送り届けて下さい」


「・・・!わかりました」

「わかったでさ!」

「うむ!!分かった!!達者でな!武運長久を祈るぜ!!」


アウルは名もなきアステロイドの声明を聞くと、ロロアと最前線で戦うロボ達に電話した。


「作戦司令部よりアウル。作戦司令部よりアウル。ロロアちゃんの動向を聞きたい」

『もしもし!報告します!報告します!ロロアちゃん、第4野砲連隊の猛攻を受け、退避したもよう!!場所は 通路333!!繰り返します!通路333!!』


「通路333に居るみたいです」

アウルが言うと、すぐさまアステロイドが分析をする。

「ならば、その先にある日本庭園に誘い込んでください・・あそこなら私の力を存分に発揮できるでしょう」

「分かりました・・必ずやロロアを誘導します。ストリームマン様にも報告を。この戦、必ず勝ちましょう!ねっ!」


ストリームマンが意気込んで食堂を後にする。

イシさんは食堂に向かい、名もなきアステロイドは報を受けるまでキッチンで座禅を組んで待機した。


ミーさんとアステロイドが2体ぼっちになる。


「・・迷いがありますね・・。ミーさん」

沈黙を破ったのはアステロイドだった。


「わかるでやんすか」

「・・はい。ニュートリノ発電所の件であなたはロロアと一緒でしたね?」


「えぇ・・。ロロアちゃんに会ったのはこれで2回目でして・・あっしがロロアちゃんの亡骸をチームガンバに渡したのでさ」

「・・そうでしたか。分析する限り、あなたはロロアに特別な感情を持っておいでだ」


「そ・・それもわかるでやんすか!?」

「はい。わかります。でも、それはごく自然な事だとも思っています。ロロアはあくまで戦いに巻き込まれたにすぎない」


「じゃあ・・話ははやい・・!」

「できません。あなたは私にロロアを説得させたいとお考えでしょうが、それはできません」


「な、なんで!?」

「それは、ロロアの武器が強すぎるからです。彼女は自分の武器の可能性を知り、また私たちはロロアの武器に脅威に思って戦っている。もはや対話や和平で終われない程、戦いが長期化してしまった」


「するってぇと、話し合いはできねぇと?」

「はい。もしもロロアを説得できたとしても、マット師団がそれを許さない筈ですし、たとえ和解したとしても戦力的にもロロアを利用するでしょう。勿論、それを当のロロアは望まないでしょうし世界が許すとは思えません、もう私たちにはどちらかが沈黙するまで破壊されるしか選択肢は残っていないのです」


「・・・」

「お気持ちはわかります。彼女とて元は人間であり、メルヴィアの一市民でしたから。しかしカイン博士に言われ、パワーマンの野望を阻止した時点で、彼女は戦いに参加した一兵卒なのですよ」



ガタン!と言う音がしてキッチンの扉が開く。

イシさんはスパークライフルを持って口を開いた。


「『ロロア 日本庭園に撤退す!出撃を願いされたし!』だそうだ!!」

「はい」


名もなきアステロイドが立ち上がる。

ミーさんは慌てて立ちはだかった。


「せ、せめて顔だけは傷つけないでやってくれ!!あと・・その不気味なボディではロロアちゃんが恐がる・・!せめて服を着てくれぃ・・!!」

「わかりました・・極力四肢を破壊し、ロロアの存命に努めます。」




───


黒いテーブルクロスの真ん中に穴を開け、即席の着物を着る。


颯爽と歩くその後ろに、アウルとイシさんをはじめとした緊急修理医療チームが続いた。


「みな!!もう安心だ!!名もなきアステロイド様がロロアをコロンとやっちまうぜ!!」


「おお!!」

「これでやっと・・!!」

「これで勝ったも同然だな!!」


名もなきアステロイドは、改めてZMの惨状を見た。

通路でロロアに集団で突撃すべく待機をしているのだが、皆個々に傷が付いており、関節が軋む音がするほど疲弊していた。


「名もなきアステロイド様・・どうかこれを・・」

「これは・・?」

片目のZMが巾着袋を渡す。


「チームガンバの髪の毛が入っています。なんでもバスター除けだそうで・・ニュートリノ発電所の時は、これでロロアちゃんのバスターの難を逃れました」

「これはこれは、貴重な物を。しかし、私には皆がついていますから、大切に懐にしまっておきなさい」

「かたじけのう御座います・・!!」



他のZMが話しかける。

「名もなきアステロイド様、野砲連隊に仲間が居ます・・。どうか伝言をお願い出来ますでしょうか??」


「うむ。何なりと申してみなさい」

「“お前より先に逝かない”と・・兄弟ロット(製造番号が次の番号)なのです・・必ずお前より先に逝くと・・!」

「その心配は必要ありません。何故なら私が勝利を持ち帰るからです」



通路を抜けてハッチを開くと、徐々に焦げ臭い臭いが立ち込めるようになった。

換気システムの一部が機能していないようだ。

通路は徐々に荒廃し、つい今しがたのロロアとの激戦を物語っていた。


通路の鉄板がめくり上がり、床の配管が剥き出しになって裂け、電気を伴った棘のある落とし穴を形成している。

それが無数に点在し、破壊された壁の配管から狂ったように冷却ガスを撒き散らしていた。


「気をつけて下さい」

「みなさんも」

ZMのボディの残骸が見られ、野戦砲の破片もあった。


軍配を持ったアウルが名もなきアステロイドに説明する。

「ロロアのバスターで誘爆したのでしょう。野戦砲のジェネレータが落ちていますから、くれぐれも衝撃を加えないように・・!」


なんとか惨状を抜けると、次は電源が破壊された通路に出た。

非常灯が点る薄暗闇の中、ZMの残骸に不気味に青白く発光する結晶が付着していた。

ミーさんら一団を認めると意思があるように赤く発光する。


「これはロロアクリスタルです」

アウルが言う。


「ロロアクリスタル!?」


「極めて有害な原子の集合体です。ロロア・ハイパーカノンバスターは例え命中していなくても、その強烈な熱線と波動で破壊します。装甲が強化されているロボが奇跡的に逃れたとしても、巨大な波動を前に電子回路が焼き切れてしまうのです。これは、さらに強い、撃ち放ったバスターとロロアの感情が共鳴し、純粋な毒素が抽出されて集まった“呪いの結晶”なのです。私達は何とか平気ですが・・人間は光を見ただけで死んでしまう筈です。もちろん壁を抜けますから、近くに結晶があっても人体にとって大変な脅威となるでしょう」


「つまり、ロロアの感情が高ぶれば高ぶる程、有害になるのですね・・」

「そうです。ここからは体調を見ながら行きましょう私達にも有害ですから」



数々のメカニロボの部品が飛び散り、頭を撃ち抜かれたウィングが軍配を持ったまま大の字に倒れていた。

ZMは野戦砲を守るように折り重なり、そのまま形成されたロロアクリスタルの中に内包インクルージョンしていた・・。

メカニロボはミドルバスターで、ウィングはバスターで、ZMはハイパーカノンバスターで・・そして向こうで黒焦げになっているのはサンダーブレイクだろう。

飲み切ったA缶。

食べかけのいぶりがっこ。

なぜか結んである配線。

壁のプリティアの落書き。


わかる。

わかる。

わかる。

わかる。


ロロアの戦い方、行動・・そして技の全てが。



「必ずロロアを・・約束します!」

アステロイドが黒焦げになったZMの手を握る。


イシさんはミーさんの尻を小突いた。


「・・腹をくくらないかんですね・・」

ミーさんはポツリと言った。

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