ホワイトスペクター攻略戦
ホワイトスペクター内でロロアとロボ達の激戦が始まる。
突撃するロボ達と、それを攻防一退で翻弄するロロア。
戦いを終えられるのは、バスターの前で残骸となった屍だけ・・。
しかし、ロロアの戦いを語るのは口では無く、手酷く受けた致命傷のみだ・・。
ロロアがホワイトスペクターに突入する数分前。
2体のZMシリーズがK1スパークライフルを持って艦内を見回っていた。
現在見回っている通路は下級ロボ用の通路で、無機質なパイプと計器類は、上部にある1等室に植えられている竹林や苔のメンテナンスや『宝物殿』と呼ばれるストリームマンのコレクションを展示する空調の設備に使われていた。
「ヤオイさん(ZM-841のため)」
「なんだ?サンサ(ZM-303のため)」
「自分、ロロアちゃんっていないと思ってるす」
「はぁ?どういう事だ?」
「いや、ヤオイさんはロロアちゃんを見たことありますか??」
「・・・いや?」
「でしょ!?自分らはパワーマンの決起の時は、まだ働いていたし、2号艦や3号艦が爆発した所を見ても、ロロアちゃんと言う現物を見ていないんです」
「まぁ・・確かに。・・・それで何が言いたいんだ??」
「つまりですよ??ロロアちゃんってのは最初から居なくて、マッド師団の自作自演じゃないかって思っているんす」
「はぁ!?」
そこへ大きな風呂敷を持ったZMー300(ミーさん)が計器類を掻き分けてやってきた。
「うわ!!何をやってるんすかミーさん!!」
「あっ!・・あぁ!!・・どうも!」
「その風呂敷は!?・・まさか逃げるつもりじゃないでしょうね!?」
「・・・・」
「ミーさん!何か言ってください!」
「・・・・!!」
ミーさんは観念したのか、風呂敷をぶちまけた。
中にはホワイトスペクターの戦いの記憶が記されたレコードと、万が一破壊されても修理できるようにスペアパーツが入っていた・・。
「「うわぁ」」
ヤオイとサンサが驚いて顔を見合わす。
「あっしの想いが風呂敷に詰まっています。2人とも・・あんまり言いたく無いでやんすが・・きっとロロアちゃんがここに来ます」
「ロロアちゃんが!?彼女は一体何者なんです?」
ミーさんは見上げて言った。
「簡単に言えば、べらぼうな武器を持った女の子でさ」
「はぁ!?女の子!?」
「へい。身体はロボ、精神は人間の女の子でやんして、それ故に大人の命令に疑問を持たずに従順で、それでいてとても優しい心の女の子なんでさ・・」
「・・・・そんな人ともロボとも分からぬ者が・・たった1人で破壊を??」
「そうでさ・・」
「そうって・・ええええ」
ヤオイとサンサが顔を見合わせる。
ミーさんは堰を切ったように言った。
「ロロアちゃんに船に取り憑かれたら最後、あっしらに勝ち目はありゃしません!ロロアちゃんの武器にはツブテを込める概念が無けりゃ、どえらく強い!!それに何より法律に守られている!悪いことは言わねえ!これは負け戦だ!!フォレストパークのマッド師団と合流して、陣を立て直せぇ!!」
ミーさんの切迫つまりように、2体は大変動揺した。
しばらくの沈黙。
ヤオイはスパークライフルを置いて、腕組みしながら壁にもたれた。
「・・それでミーさんはストリームマン様を見捨てて逃げ出すと?」
「へぇ」
「それでいいのかミーさん?あんたの部品に1つでも良心があるなら、此処で皆と運命を共にするのがロボってもんだろ!?」
「それはそうでやんすが・・!!それではニュートリノ発電所の二の前でさ!!あっしは、これを教訓にしたい!!そして最後は必ず勝ちたいんでさ!!」
アウーーーー!!
その時、ホワイトスペクター内でサイレンが鳴り響いた。
『全隊員に告ぐ!!全隊員に告ぐ!!鬼型プラットフォームが何者かに破壊された!!注視せよ!!』
「始まるな・・」
ヤオイがスパークライフルを拾いあげて言う。
サンサも自分を鼓舞する為に胸を叩いた。
「ミーさん。自分達、簡単にはやられませんから・・」
「えぇ」
「だから・・できる限り、記憶してくれはしないでしょうか??自分らの記憶・・ロロアちゃんがどんな攻撃を仕掛けてくるのか・・どんな女の子なのか・・しこたま記憶して、マッド師団に伝えてはくれないでしょうか?」
「・・・わかっでさ・・もしかしたら」
「ん?」
「もしかしたら、圧倒的な戦力と対策力の前にロロアちゃんが降伏してくれるかも知れねえ。そんな気がして気やした!」
「そうかもしれませんね!!」
サンサは短略化された四角い口で笑った。
アウーーーーー!!!!
『総員に告ぐ!!総員に告ぐ!!減圧室において不可解な破壊を確認!!ロロア・フローラウス・メリアスと見て間違いはない!!総員、武器を持ち!これを撃破せよ!!!!訓練を思い出すのだ!!座標は────』
「来たか!!来たか!!来たか!!」
ヤオイが他の部隊の信号を受け取る!
「行きましょう!!ミーさんは後方で記憶をお願いします!!」
「ガッテンだ!!」
───────
かくして、ロロアに付着したオイルを、ZMの電解液で洗う壮絶な戦闘が始まった・・。
記録によるとZMシリーズは3列で銃を構えて陣を成し、着飾ったウィング達が長刀や刀で武装していたと言う。
ウィングの指揮のもとロロアにスパークライフルの一斉射撃が浴びせられ、射撃を終えた瞬間に鬨の声と共にウィングの決死の斬り込みが開始された。
ロロアのバスターが地獄の業火のように駆け回り、生けるロボ達の命を絡めとる。
この激戦は、ZMー300が記憶を行った為に細部まで記録されており、それと同時にロボ達の『声』が克明に記録されていた。
───────
『・・口伝より聞いてはいたが、ロロアを初めて見た時、私は刀を握る手が震えているのを感じた。彼女はロボである前に”確かに女の子“だったのだ。そして、我々の攻撃が始まるとわかると、怯えた顔で引っ込むのをみた。
これを好機と見て我々が追いかけるも、それがいけなかった。
今度は我々が、物陰に潜むロロアに怯える番だったからだ・・』ウィング作戦隊・斬り込み隊の手記より。
『ロロアと言うのは不思議だ。軍人としての誇りをもたず、意図も容易く撤退をする。クマのぬいぐるみに肩を叩かれたと思ったら潔く逃げ出して、陣形が崩れた所を見計らって引き返すと、反撃に転じて確実に狙ってくる。
一番哀れなのは上官よ。着飾った宝飾品が重くてまともに刀を振れず、胸部を撃ち抜かれて爆発して、金色の雨を降らせた。空の上じゃ百戦錬磨の我々が、その成果である装飾品に身動きが取れなくなるとは何とも哀れな事だ』
ウィング作戦隊・ZM指揮官の手記より。
『いやぁ、何が驚いたって。デカいバスターが飛んで来た時よ!俺らが数をたのんでぶっ放すだろ?お嬢ちゃん逃げるだろ?そしたらよ?いつもと違うデカいの飛んで来たんだよブーンって。それがよ?威張るウィングに当たったら砕け散ってよ?キラキラ光って、そりゃ見ものだったね。』
ZM-565 第3波歩兵団の会話より。
───────
2等室、連絡通路。
この通路は高さと幅が共に3メートルで、宇宙空間にも耐えれるように隔壁が数メートルおきに付けられていた。
今では、ママのハッキングで下半分が隠れるくらいまで床から迫り出していて。
ロロアとZM達の戦いで壁に収納されていた配線や配管が飛び出し、所々でデタラメに窒素ガスを吐き出していた。
ZMシリーズが緊張した面持ちで2列に並んでライフルを構える。
その横で刀を持ったウィングが檄を飛ばした。
「いいか!!ロロアを疲弊させろ!!バスターとて限りがある!!全ジェネレータを撃ちながら進め!!終えたら我々が突撃する!!少しでもロロアに近づくのだ!!分かったな!!」
「「「はい!!!」」」
(・・つっても、何処にいるんだよ?本当は、ロロアの首を取って手柄にしたいだけじゃねーのか??)
1体のZMがボヤく。
不気味に静まり返った通路。
フシュゥウウ。
バチッ!パチッ!
天井から垂れ下がった配線が断線して火花を散らす。
その下でバンガシラが倒れ、傷ついた配管から窒素ガスが噴き出していた。
ウィングが刀を前に倒して進軍するように促す。
ZMの横一列がジリジリと進軍し、その後続も横一列で進み出した。
後ろに薙刀や太鼓を持ったウィング達が続く。
「・・・一体、どこにいやがるんだ」
「わからん」
床を漂っていた窒素ガスが巻き上げられ、ZM達の屍を晒す。
進軍するZMが極力踏まないように慎重に歩く。
死んだZM達はスパークライフルのジェネレータを握ったまま目を見開いて死んでいた・・。
その横の壁が大きく損傷しており、ロロアのミドルバスターが炸裂した事を物語っていた。
「・・おそらく弾込めの不意を突かれたのだろう」
「・・・」
気流が変わったのか、窒素ガスがZM達を包み込む。
「・・・あれはなんだ?」
その先、隔壁の下半分が閉まり、その上にクマの人形が座っていた。
ZMの兵団を見ると何かを言って後ろに隠れる。
「あ、おい。ぬいぐるみが消えたぞ・・?」
その時だった!!
チュチュチュチュチュチュチュチュン!!!!
チュチュチュチュチュ!!!
「敵襲!!!!ぐあぁ!!」
「ぎゃぁああ!!」
隔壁の一部分にポッカリと穴が開き、そこからバスターの掃射が飛び出した!!
ZMの横一列が一斉に撃たれて倒れこみ、後続のZ Mがしゃがみ込んだ!
「味方を盾にしろ!!」
思わず盾にした、倒れたZMの頭がバスターの破壊力で脱落し、腕が吹き飛ぶ。
「ロロアだ!!!!隔壁に隠れている!!一斉に撃てーー!!」
一斉に閃光が放たれ隔壁を破壊する!
しかし、肝心のロロアを外し、破壊された隔壁の別の箇所から強力なミドルバスターが飛んできた!
「おのれ!!ロロ────!!」
ウィングの胸を貫通し、上半身が吹き飛ぶ。
ミドルバスターが壁に当たり、大爆発を起こした。
「うわーー!!」
他のウィングは進軍した手前、ZMの援護なしでは撤退が出来ず、またZMの一斉掃射無くしては、隔壁を破壊する事が事が出来なかった。
ロロアは敵の編隊の動揺を突く。
「はぁ!はぁ!ママ!次は!?」
「敵、ZM!3番目のネジから12番目のネジまで!!」
「わかった!!」
ロロアはA缶を呷ると、腕のバスターにかけた。
腕のバスターは熱を持ち、A缶の液が蒸発する。
「くっ・・!」
ロロアは尻を床に付けて隔壁に書いてある落書きを見る。
破壊されたメカニロボのオイルで書かれたラクガキには、大まかな通路や倒れたバンガシラが書かれており、偵察するママがロロアの視点とエディットする事で敵の正確な場所を教えていた。
「ママ!バスターでいける!?」
「大丈夫!」
ロロアが右手のバスターを突き出し、左腕を乗せる事でそれを支えた。
「今よ!!ロロアちゃん!!」
「いけえー!!」
チュチュチュチュチュン!!!!
ロロアの毎分900発のバスターが炸裂する!
バスターを放つごとにロロアの腕は上部に跳ね上がりそれを必死に左腕で支えた。
ロロアのバスターは分厚い隔壁を直撃すると回転しながら消滅する。
しかし、破壊された隔壁の破片が高温に熱せられた状態で手裏剣のように大量に飛び出し、ZMシリーズの外骨格や腕を容赦なく切断した。
ロロアのバスターが放たれると、たちどころにZMの阿鼻驚嘆の声が湧き上がって重傷者の山ができる。
後続のZMが先に倒れた仲間の身体を盾にして進軍し、次のバスターが放たれた瞬間、折り重なるようにして倒れ込んだ。
窒素ガスの霧が抜け、おびただしい数のZMの死骸の山をあらわにする。
悲しい事に、残されたロボ達に撤退は許されていない・・。
「の・・残りの残存兵力はウィングに続けぇええ・・立ち上がるのだぁあ・・」
「ストリームマン様に栄光あれぇえ・・・」
ZMの死骸の山から虫の息が聞こえ、どこからともなく呻めき声が聞こえる・・。
放心状態のウィングが、死骸の山から自分の腕のパーツを拾い上げ、瀕死のZM達が欠損した足で支え合うように立ち上がった。
ドッ!チュチュチュンッ!!
ロロアのバスターが駆け回り、ウィングが倒れ、ZMが激痛のあまり身体を反り返えながら断末魔をあげて倒れた。
────
『ウィング達が“突撃せよ、突撃せよ”と耳に触る。
指揮するウィングが倒れ、部隊が壊滅し、再編成の繰り返し。
我々はロロアを追い詰めているのだろうか??あの娘の使っている武器はなんだ?何処で手に入れた?何故攻撃する?全てが未知だ。全てが異形だ』
ZM−*56 第9波歩兵団の日記より。
『一斉射撃を待たずに娘さんのバスターが飛んできた。前に居たサーベルを持ったウィングがドタリと倒れて駆け寄ったら、まだ息があったんだ。
“”しっかりせよ“”と抱き起こしたら不意に泣き出し。“”せめて空中で戦いたかった“”と言い出した。哀れだよな・・・哀れだよ』
ZMー*66 第21波歩兵団の日記より。
───────
第55波歩兵団が敗走し、ストリームマンはようやく作戦の立て直しを宣言した。
ここから『ロロア対策本部』が本格的に発足され、ロロアの攻略が一筋縄でいかないことをまざまざと見せつけられる結果となった・・。
───────
ZMが浮遊担架を持って、怪我をしたZMを運ぶ。
ホワイトスペクターの救護所には戦闘で負傷した多くのロボ達が搬送されていた。
救護所はたちどころに溢れかえり、ウィング達が使っている食堂まで溢れかえった。
「ぐああああ!!脚が!!脚が!!」
「どけ!どけ!どけってんだ!!怪我人のお通りだ!!」
「あぁ、すいやせん!」
ZMー300(ミーさん)がこめかみの部分を押して必死に記録する。
その中で医療班のZMー1*3(イシさん)が鉢巻をして負傷したZMを診ていた。
診察台に寝かされたZMは脚が大きく欠損していた。
そこから電解液がフィンの拍動と共に流れ出している。
「手伝ってくれ!できるだけ液が出ないように脚を上げるんだ!!」
「へい!」
「いくぞ!!」
ミーさんが尻を持ちあげ、イシさんが電動ドライバーをZMに差し込んだ!
「ぐあああああ!!」
電解液がミーさんにかかり、慌てて顔をよける。
「ぐむ!!よし!!止まった!!止まったぞ!!良くやった!!」
メンテナンス用の円柱のメカニロボがすぐさま交換用のパーツを持ってくる。
円柱の上にあるモニターには『どのようなパーツをお探しですか?』と表示される。
「脚のパーツだ!zmx−66978と、変換器・・いや、全とっかえした方が早いな・・!!」
「ぐあああ!!!痛点感知センサーをオフにしてくれぇえ!」
「いま安定電極を流すから待ってろ!!お前もZMを名乗るなら痛みに耐えられるないでどうする!!ミーさん!!パーツを!!」
「へい!!えぇっと!えぇっと!」
円柱の引き出しのランプが点いて、ミーさんがパウチされたパーツを取り出した。
「脚の外骨格を外すぞ!おさえてろよ!!・・よし、外れた」
「はぁ・・はぁ・・コイツはひでぇ・・!」
いつしかZMの額にあるライフコアがオレンジ色になり、休眠状態になった事を示す。
───数分後。
交換を終えたミーさんは、パイプ椅子にドカッと座ると手ぬぐいを貰って顔に付着した電解液を拭った。
イシさんがA缶を渡し、2体は喉を潤した。
「ふぅ。さすがZMシリーズ、交換部品に事つかぬ」
「まったくですな」
交換したZMは眠りにつき電気ポンプで電解液の補充を受けていた。
程なくすると戦場に投入される事になるだろう。
「それでミーさん。何故記録しているのだ?」
「これからの戦いの為でさ」
「これからの戦い?」
ミーさんは手を出すと、イシさんに自分の想いを転送した。
「───つまり、ミーさんはロロアとの戦いが此処で決着がつかず、大変な長丁場になると?」
「へい」
「こんな戦いが、この先もあると考えたらやってらんねーな」
「そうでさ。でも、ロロアちゃんだって故郷を守るため、おっかさんやおっとさんを守るために必死なんでさ・・。ここで、あっしらが負けたら記憶を残さないと行けねえ。でも・・ロロアちゃんが負けても、この戦いを後の戦いの教訓にしないといけないのでさ」
「ふむ」
イシさんは興味なさげに立ち上がると、手ぬぐいをパシっと叩いて電解液を切った。
「ミーさん。ちょっといいかい??」
「へ??」
イシさんが医務室を離れ、ミーさんを食堂に連れてゆく。
通路にも負傷したZMが溢れかえり、腕に重篤レベルのシールが貼られていた。
「食堂に運ばれるZMは赤いシール。医務室に運ばれるZMは緑のシールを付けている事が多い・・何故だかわかるか??」
「へ?わかりやせん」
「赤は重篤な為に、交換パーツが多くなる。パーツを少しでも節約するために赤いシールを貼られたZMは後回しなのよ」
「それは・・薄情な・・」
食堂の長テーブルにはたくさんのZMが寝かされていた。
奥にはヨシズがかけられたZMが重なるように棄てられており、個々に流れ出した電解液や潤滑液が腐敗して異臭を放ち、それを誤魔化すように灰皿に立てかけた煙草の煙が頼りなく揺らいでいた・・。
「・・・どうだミーさん。”失敗“から学ぶこともあるだろう??」
「へい・・そうですね・・。・・・・ううう。一本、点けさせてくだせえ・・」
ミーさんは置いてある箱から煙草を取り出すと、蝋燭の火を移した。
そして灰皿に付いている剣山にフィルターの部分を刺すと、手を合わせる・・。
パン!パン!
イシさんが手を叩いて横で手を合わせた。
ミーさんは(ありゃ?作法を間違えたかな?)と不安になる。
「・・じゃあ、始めるぞ」
イシさんは機能停止したZMを見せた。
メカニロボとは言え、目は苦痛と恐怖を称え、口からは電解液を吐き出した跡が残っていた。
「ゴクリ・・」
ミーさんが込み上げる電解液を、人間の胃にあたる自分の機関室に戻す。
その遺体を、ぼんぼりの形をしたメカニロボ(ストリームマンの宝物殿に居たロボ)が照らした。
「ミーさんよ、ここに複数の傷があるだろ??」
「・・・外骨格を貫いてますな・・」
「そうだ。ロロアのバスターの破壊力は生存者から聞くものじゃない・・時に死者は大切な事を教えてくれるんだ。ホラ・・」
ニシさんが“遺体を回す”ように手を回す。
ミーさんはそれに気づき、遺体をうつ伏せにした。
そしてニシさんがペンチを取り出して傷口の内部に挿し込む。
「随分深く入ってるな・・」
痺れをきらしたニシさんが指で強引に傷口を広げて何かを掴む。
カランッ・・。
「取れた。隔壁の破片だ・・。ロロアは船の一部ですら武器として使っている・・まったくもって恐ろしい子だ・・。それだけじゃない、人口頭脳の中枢に時間差で効いてくる極小のバスターや、バンガシラすら倒す巨大なバスターも隠し持っているんだ。ミーさんも調べる内に分かってくるだろう。彼女の残忍さを・・」
「・・ロロアちゃんは・・」
「ん?」
「ロロアちゃんは優しい子でさ」
イシさんが意味ありげに頷く。
「ふ。そうか・・では次だ」
かくしてイシさんとミーさんの解剖が始まった・・。
───────
「休戦命令〜はつれーい!!休戦命令〜はつれーい!!」
白旗を持ったZMと、ストリームマンの書状を持ったZMが飛び出す。
しばらく通路を宣言しながら歩き、ようやくロロアが警戒する“レッドゾーン”に到達した。
書状を持ったZMが、地面まで広げた書状をぶっきらぼうに読み出す。
「ロロアちゃん!此度の戦、見事なり!!我々ストリームマンとその配下たちは・・ひっ!!」
ロロアが物陰から飛び出し、バスターを向ける。
すぐさまママが制し、バスターを下ろすように指示を出した。
「ロロアちゃん!休戦命令よ!そうでしょ?」
「きゅーせんめいれい!?」
「そう!おやすみって事よロロアちゃん!」
ロロアのバスターがガチャンと解除され、すぐに物陰に隠れた。
ZMは安全であると見たのか、手を振って仲間を呼び、戦死した遺体の片付けを始めた。
それはミーさんが独自に遺体を調べて研究しているのを、ストリームマンやウィング達が察していると言う事もあるが・・それより先に、ロロアとロボット戦士達の間には命のやりとりの中でお互いを尊重し、堂々とフェアな状態で戦い、死者すらも丁重に弔う武士道や騎士道精神が残っていたのかもしれない・・。
「おい・・よせって・・」
「ロロアちゃんが可哀想だ・・!」
遺体を片付けている最中、何を思ったのか1体のZMが握り飯2つとA缶を持って歩いてやってきた・・。
ロロアはガラクタのバリケードを作って、倒れ込むように休憩している。
胸のライフコアはオレンジになり、エネルギーが欠乏している事を物語っていた。
「な・・なんですか?」
ママが警戒するようにZMに聞く。
「今は休戦中だ・・。敵、味方はありゃせん。食ってくなせえ」
「あ、ありがとうございます。・・ロロアちゃん?おにぎり貰っちゃった」
「・・ありがとうございます」
ママのスキャンが終わり、ロロアは握り飯を両手に持つとZMを見ながら交互に食べ始めた。
その目には確かな警戒心があり、まるで野生化したオオカミ型メカニロボのようだった。
「・・んっ。ゴクン」
ロロアは指についた米粒を懸命に食べると舌舐めずりをし、A缶の蓋を開けて飲み始める。
「うっ!ゲホッ!ゲホッ!!」
「そんなに急がなくても取って食いやせんよ」
補充が終わり、ロロアの胸のライフコアが青みが増す。
ZMは静かにそれを見つめ、小さく手を挙げて挨拶すると踵を返した。
(飯を食べ、A缶を飲んでる・・。やっぱりロロアちゃんは命令されて動くメカニロボでねえ。自分の意志で来たアステロイドでねーか・・!)
ZMは慌てて仲間の居る所に戻ると、他のZMに話をし、ロロアちゃんが酷く疲弊しているのと、ロロアがママと二人三脚で戦闘をしていると言う事実を話して聞かせた。
それは部隊全体に知れ渡り、時に味方が死んだ事の怨みすら忘れるほどの深い同情と悲しみがZM達を襲ったという・・。




