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ロロアとウィングの空中戦

ハルミオ小学校を飛び立つロロアちゃん。


しかし、マナツ達のミスによって逆方向に飛んでしまう・・。

双胴機のタイヤが格納され、ぐんぐん上昇してゆく。

ハルミオ小学校が小さくなり、メリルと会話した神社(ケルン)や、ユミルと紅茶やケーキを食べた丘や、ルルのいるメルヴィア聖堂の丘が遠くに見える。

透視ユニットで全体が見渡せるので、まるでママを抱えたまま空を飛んでいるようだ。

私の瞳のレンズが忙しなく動き、メルヴィアの街を行き交う人や車を捕捉する。


「ロロアちゃん、この正面にあるコックピットのモニターは映像作品からゲームもあるみたいだよ?何か観る?」

「何があるの?」

「トロピカ⭐︎ルンル プリティア。これはダーパ作戦長が入れたのね・・。ロロアちゃん、プリティアを観るような歳じゃないのにね」

「プリティア!?まだやってるの?」

「うん。90年間欠かさずやってるから、この間のオールスターズなんか360人のプリティアが大集合したってニュースでやってたわ」

「360人!!まるで軍隊ね!」


私はモニターの横の時計を見た。

時刻は『10:35』。

「でも、3時間目始まってしまうからいいや」

「そうね・・みんなに悪いものね」

「うん」




『ロロアちゃんロロアちゃん。聴こえますか??』

「はーい!」

するとマナツから入電が入った。

「どうしましたか?マナツさん?」

『少し問題が発生した。本当ならここの座標で仲間と合流する筈なのだが誰もいない。連絡が取れないんだ。もしかしたら違う座標に飛んでしまったのかもしれない』

「えーっ!」


『大丈夫だ。大丈夫』

マナツはコックピットで他の隊員と話をして、入電がプツリと切れた。

本当に大丈夫だろうか・・。

私とママは顔を見合わす。




さらに高度が高くなり、大きなストリートがあるブロック区画がしっかり別れた街が見えて来た。

私の住んでる第一種居住区。

少し大きな通りをまたいで、お洒落な路面電車が通るメリルが誘拐された商業区。

そして、円形交差点を中心として巨大なストリートが広がっている。

かつて私は、この道路を滑走路にして飛行ユニットで空を飛んだのだ。


「ねえマナツさん?」

『ブツッ・・なんだい??』

「なんで今回の作戦は飛行ユニットを使わないの??」

『今回は対象物が動いているし、空中にあるからだよ。ニュートリノ発電所は動かないし、敵のレーダーに飛行機が捕捉される心配があったんだ。敵のマッド師団はストリームマンから譲り受けた主民主義の兵器を使用していた。俺らは主民主義であるアルメア共和国から敵の使用している兵器を探り出し、そして対空用のレーダーを使用している事を導き出した。よってロロアちゃんのママには、レーダーに捕捉されないギリギリを必要最低限の物資で飛んでもらう必要があったんだ・・最高出力のロケットで飛び、ロロアちゃんのバスターで着地する。

ロロアちゃんとママでしか出来ない作戦だったんだよ』


「私達しか出来ない・・。普通の人間がやったらどうなるの?」

『えっ!? それは、うーむ。飛行ユニットから身体が分離するか────』

「マナツさん・・!ロロアちゃん?私たちは普通の人間よ?」

「ママはそうかも知れないけど私は違うもん」

「そんな事言うもんじゃありません!」


「だって・・!」

私は少し熱くなってしまい・・反論する。

ママは私の熱量に驚いたのか操縦桿の前のモニターに立って向き直った。


「こんなミサイルに乗って敵の戦艦に体当たりするなんて並みの小学生じゃできないでしょ?いいえ!メルヴィアの歴史でも私が初めてだわ!それにブルーシグナルズとの戦いだって・・!それに、それに!!」

私の熱は後戻りがつかなくなり・・一番心につっかえていた『いってはいけない事』を言ってしまった。


「────ブルーシグナルズにいたメカニロボはお父さん”の造った機構にソックリだった・・!!まるで私と戦って、私を倒しているみたいだった!!私は『兵器』で、今もこうして兵器としてミサイルになってる!!まるで“お父さんの作り出した商品“みたいに!!」


「何を言ってるの!?ブルーシグナルズのデータに毒されてしまったの!?ロロアちゃん!!」

「違う!!これは私の意見だよ!!それにデータはトオルさん!!」

『ロロアちゃん!?俺の言い方が悪かったなら────』

「「マナツさんは黙ってください!!!!」」


『ヒェッ!!』



「“お母さん”!!ハッキリさせて!?“お父さん”は何をしていたの!?お父さんやお母さんは何を隠し事をしているの!?ぜんぶわかってるんだから!!」

「ロロアちゃん!!お願いだから私達を“ママ”や“パパ”に言い直して!!」


「お・か・あ・さん!!お・と・う・さん!!」

「もうっ!!ロロアちゃん!!」


『ザーーーッザザ・・。ロロアちゃん』

「パパ!?」

『横聞きしてすまない──ザザッ──会話を先延ばしにして。本当はもっとはやく話さなければならなかったのかも知れない・・』


「パパ・・今はその話をするタイミングでは────」

「ママは黙って頂戴!!」


『ロロアちゃん───ザザザ────どうやら僕は、ブルーシグナルズに───加担していたようなのだ』

「ようなのだ!?」

『本当にすまない───ロロアちゃん。あの頃の記憶が曖昧で・・』

「とぼけるつもり!?」

『違うん───だ!ロロアちゃん!!本当に忘れてしまったんだよ!!』

「パパのバカッ!!」



私は全てに頭がきてモニターのコネクトボタンをオフラインにした。

ブツン!!と言うすごい音とと共に、飛行機と私たちの会話だけとなる・・。


「ロロアちゃん・・ごめんなさい。私達の若い頃は、コーディアスのエレフィックサウンズが流行した最盛期だったのよ。アルムシュアの戦いをする世界、実力だけが物を言う主民主義的な政府。その全てが嫌になって・・私は歌い手として必死に世界平和を訴えたの。パパは、そんな私に賛同して戦争で体を失った兵士や子ども達に義手や義足を作ってあげていた・・。


パパはそれから更なる研究に没頭した。そして・・過ちを犯したの」

「過ち!?」

「義手や義足のみならず、機械化された身体を強化しだしたのよ。その可能性に気付いたのはパパを初めとするマッド博士や沢山の科学者だった。彼らは自分達の科学力を盤石化する為に、欠損した肉体を求め始めた。そしてコーディアスの内部紛争に目を付けたの。

コーディアスで戦うブルーシグナルズなら、非認可で医療が出来る。

パパは共民主義の平和的な思想の夢に囚われ、自分のやっている事を正当化した。つまり・・人体実験を正当化したのよ。この専門技術集団を『M号部隊』と呼ぶんだけど・・」


「・・・・」


「人体実験で改造された個体は様々な戦争や紛争で使用された。マットナンバーズまたはカインナンバーズと呼ばれ。そして事件が起こった。メルヴィア音楽堂前の爆破事件よ」


「メルヴィア音楽堂前・・爆破事件!?」


「ええ。西コーディアス崩壊後に、アルム派(主民主義)のブルーシグナルズの残党がテロを起こしたの。名前は・・マイキーとヒサヒコ。彼らは、いまロロアちゃんの持っているロロアバスターを携えてメルヴィア音楽堂にやってきたの。

ロロアバスターはM号部隊の兵器部門で作られた物だった。彼らはコーディアスの紛争のどさくさに紛れて入手して、解散したM号部隊の元隊員であるパパに揺さぶりをかけようとしたのね・・。

しかし扱い方を知らず・・ロロアバスターは持ち主の腕から切断された状態で輸送されていた。

そして、移動中の車の中でバスターを解放してしまった」

「だから・・私が見た時にバスターの中に腕のパーツがあったのね・・」

「そう・・。解放されたバスターは強烈な熱線をもって爆発した。マイキーとヒサヒコは即死し、コンサートを終えた私と・・パパと・・ロロアちゃんを乗せた車も巻き込まれたの」


「え!?」


私はブルーシグナルズの戦いの時に見た夢を思い出していた・・。

マナツさんの息遣いがマイク越しに聞こえる・・。


「ロロアちゃんもそこで死んだの・・私も───」

ビーーーッ!!ビーーーッ!!

突然のアラームにママも私もビクン!と飛び跳ねた!

『敵機来襲!!敵機来襲!!敵対象!バイパーイーグルス4機!!』


私が後ろを向こうとした瞬間、燕型戦闘機のバイパーイーグルスの黒い翼が双胴機を通り過ぎた!

その瞬間、凄まじいソニックムーブが全身を襲い、割れんばかりのジェットの轟音が轟いた!


「きゃあっ!」

「ロロアちゃんしっかり!」

「うん・・!!ありがとうママ!」

私はママを抱きしめると前屈みになり、被弾の衝撃に備えた。



『話は後だ2人とも!!本隊と連絡が取れた!!応援を要請する!!』

※『マナツさん!!本隊が来るまで僕らがもつかどうか・・!!』

『もたせるのだ!!ロロアちゃんとママを連れて行くのが任務だ!!』

※『はい!!』



ピピピピピピッ!!

『ロックオンされたぞ!!』

私が後ろを振り返ると、双胴機の尾翼の先に、わずかにバイパーイーグルスの機体が見えた。

尽かさず、マナツの機銃掃射の音がする。

ミドルバスターで応戦したいけど、ミサイルの中なので何も出来ない・・!!


ギュア!!ギュアン!!

と言う衝撃を伴う発射音がした後に、2つのミサイルが双胴機を掠め、放ったバイパーイーグルスも高速で通り過ぎた!

相手を見失った2つのミサイルが積乱雲の中に入り込み、カッと閃光して爆発する。


『くそっ!敵が早すぎて当たらない!!』

マナツはイライラしているのか歯を食いしばりながら叫ぶ!

様々なアラームの音、ミサイルの駆け抜ける音が遠くに響く。

その中で・・私はママの言葉を思い出していた。


ロロアちゃんもそこで死んだの・・私も───。


私はメルヴィア音楽堂前で死亡した。

そして、その真実を隠す為に『病気で入院していた』と言うカバーストーリーを私に教えたのだ。

私も────続きは何を言いたかったのだろう?


ふと、地上を見るとメルヴィア音楽堂が小さく見えた。

音楽堂を少し離れた所に、巨大な円形のバイパスがあり様々なワープエリアの合流地になっているようだ。


バイパスの周辺には赤色灯が焚かれ、この上空のドッグファイトを警戒しているようだった。



「ロロアちゃん。あそこが爆発があった場所だよ。あそこで・・モゴモゴ」

私はママの口を抱きしめると続きを言った。


「わたしは、あそこで産まれたのね?ママも産まれた。そうでしょ?」

「・・・」

ママは驚いた仕草をしながら私を見る為に振り返る。


私は続けた。

「きっとそうなのよ!もうパパがなんだって関係ない!今、撃墜されてしまえばみんな同じ!!

そうでしょ?

私もママも、今こうして現在を『生きている』。パパも昔に何かしたか知らないけど現在を『生きている』!

そして・・私は皆の笑顔を守る為に戦っている!

・・どうして気が付かなかったのかしら」


私は続ける。


「私は戦い続けるよ!これはパパの意志じゃない!私の意志よ!私は戦う!」

「ロロアちゃん!!ありがとう!」


ママが私を抱きしめ、さきほど思いついた事を嬉々としてマナツさんに言った!


「マナツさん!!」

『なんだい!?今忙しくて!────』

「高度5000まで下げて!!」

『何故だ!?』

「私たちが撃墜できないなら、撃墜して貰えばいい!」

『・・はっ!そうか!高角砲だな!!分かった!!メルヴィア音楽堂の周辺には大量に配備されているからな!!よーし!掴まっていてくれよ!!』

「うん!」


ママを抱きしめた瞬間、エンジン出力が止まり。

フワリと内臓が浮く感じと共に下降する!!


私の耳の円形パーツが開き、加圧による抵抗を緩めてくれる。


そして、翼のフラップが降りた瞬間に突然機体が上昇を始め、閉じた瞬間に機体が下を向いてさらに下降してゆく。



『来たぞ!!4機が並んで編隊を組んでいる!!絨毯掃射をやるつもりだ!!』

「くっ!」

私は何処にいるか分からない編隊飛行を首が取れそうになりながら探した!

その時だった!


『高度5000メートル!平行に飛ぶぞ!』

「うん!」


プロペラが回りだし、エンジンがプラズマを吹く。


敵の4機が高度6000メートルから遥か後方で横にならび、自機の速さを保ったまま絨毯掃射するのだ。


『来た!!』

後方から機銃掃射のバスターが雨のように打ち下ろされる!

それが徐々に双胴機を追いかけて来るのが分かった。


『下の高角砲主よ!爆発を高度6000メートルに設定!我々を構わず撃て!!』


マナツの叫びの後に地上がピカッと光って光りの柱がいくつもあがった。


双胴機は様々な光りの森を通り過ぎ、たまに巨大なバスターがキラキラと撃ち出されるのをみた。


キューーー!

と言う音と共にバイパーイーグルスが煙を吐きながら通り越した!

被弾をすると悲鳴をあげるらしく、やがて羽根のまわりが炎上するとメルヴィアにある巨大な運河に墜落して爆発した。


キュァアアアア!ワン!!

もう一機も煙を吐き、デタラメに機銃を撃ちながら通り過ぎる。

すでに頭が吹き飛んでいてツバメの背中にある機銃手が最後の抵抗をしているようだ。

そして目の前の空中で爆発した。


破片が双胴機の機体にパラパラと当たる。

そして吹き飛んだ破片の中に死んだウィングが風に乗って飛んで行くのが見えた。


キュワッ!ヒュンヒュンヒュンヒュン!ドォン!!

『よし!討ち取ったり!』

マナツの機銃が敵機を捉え、左翼側を破損したバイパーイーグルスが煙を出しながら抜かして行く。

そして放物線を描くように港付近に墜落し、大きな水柱をあげた。




残りの1機は負けを悟ったのか、数回こちらにデータを転送した後に敗走した。

『ロロアちゃん!敵が逃げていくぜ!!俺らの勝利だ!!』

「やった・・!!はぁ・・!!」

私は極度の緊張から解放されてひと息ついた。

「一安心って・・とこかな」

ママは空を見ながらホッとため息をつく。



いつの間にか戦闘機との攻防をしているうちに海に出て、私たちの双胴機はプロペラの燃費を少なくするようにジェット気流のある高度まで昇った。

ここで時計は12:00になり、お昼ご飯にすることにした。

「ロロアちゃん!先生レイズに無理を言って、今日は給食にしてもらったの!」

「え!?やったあ!!」

「そこの引き出しを開けてごらん??」

私は座席の横にある壁に手を添える。

すると壁が消え、中から真空パックの電子フィルムに入ったいつもの給食セットが出てきた。


フィルムを解除すると、金属のプレートに様々な食材が乗せてあった。

献立は

ホウレンソウのバター和え

ライ麦パンと合成コンビーフ。

そして大豆ミートのハンバーグとポテトとリンゴだ。


・・驚くほどいつもと同じな給食をミサイルの中で食べる。

なんだかそれだけで非現実的でクラクラしてくる。


「わぁあ!いただきます!!」

それでも給食を手配してくれて嬉しい!

私はライ麦パンにコンビーフを乗せると食べ始めた。


ママはお尻からコードを引っ張り出すと、電源を求めて機械をいじる。


『ありがとうロロアちゃん。君の機転がなければ撃墜されていた!敵機からのメッセージが来ているぞ。

食べながらで良いので聞いてくれ。

『此度の戦、見事なり。僅か一機の機体で勇猛果敢に戦う様は虎の如し、臆病さの中に確かに牙あり』』

「もぐもぐ・・それは、私たちを褒めているの??」


『あぁ。こんな最弱装備で相対したのを敵ながら褒め称えているのだ。』

「敵なのに不思議ね」


『ロロアちゃんには不思議に思うかもしれないが、戦士というのは、いつの時代もそう言うものなんだよ。毅然として高貴で、フェアでなければ美しくない。たとえば超変形や合体するロボや、戦って勇ましく死んだ兵士には、死体を片付ける時間や変身する時間を設けてやるんだ。

それは、この戦場において命を奪い合う者達の礼儀作法であり敬意であるんだよ』



「モグモグ・・ごっくん。でも、なんで私たちはプロペラ機なの??」

『アルムシュア条約で、最新鋭の兵器には制限がかかっているんだ。他にもデータによる言語制限や通信制限。残忍な兵器への使用制限もある』


「相手はロックオンしていたみたいだけど手こずっているみたいだった」

『それは・・俺らの戦闘機が遅すぎた事が関係していると思われる。相手は高速戦闘機による空中戦を想定して作られているんだ。こんな遅いプロペラ機ではロックオンして発射した頃には自分の戦闘機の速さで通り過ぎてしまったのだろう』

「それは皮肉ね」

ママが充電しながら言う。


『あぁ。パワーマンの時もそうだが、彼らは傍受されないように”電話線“を使用する為に黒電話を使っているんだ。戦闘も高度なテクノロジーになり・・やがて禁止され・・さらに高度になり・・やがて俺たちは規制のない棍棒と盾で闘う時代が来るかもしれない。データの破壊もデリートして消滅するより物理的に破壊する方が良いと言うし、古いテクノロジーで敵の意表を突き、勝利を掴む事もできるかもしれない。人間というのは────』


「なんか哲学的だねマナツさん。難しい事は分からないや・・モグモグ」

マナツとママが『人間とは何か』を議論している間、私は昼食の続きをすることにした。

リンゴを食べるのは戦いの後に取っておこう。


そういえばと、給食の横に消えそうな壁があり、開けてみる。

みると筆箱ほどの四角い粘土が入っていて、匂いを嗅ぐとほんのり甘い匂いがした。

『CX』と言う巨大な赤いロゴが描かれており、ドクロマークが包装に描かれている。


どうやらガムのようで、少しだけ手に取って口に入れるとやっぱり甘い。


「ママ?この飛行機にはデザートもあるのね?」

「え?マナツさん??飛行機にはデザートも積んであるの??」

『デザート??』

「CXって書いてあるけど・・」


『うわーー!!ロロアちゃん!!それは粘土爆弾だよ!!デザートじゃない!!!デザートじゃない!!』

「わわわ!」

私は粘土爆弾を吐き出すと、他の爆弾にくっつけた。


「とても爆弾には見えないけど・・」

『これは変形自在な爆弾なんだ。衝撃を与えても火を加えても爆発はしないが・・』

「ホッ。よかった。なら、どうしたら爆発するの??」

『内部に雷管を挿入して電撃を加えれば爆発する。たとえば、小さな爆弾があったとして・・それを手のひらで爆発させると熱いだけだが、爆弾を握った状態で爆発させると手のひらはどうなると思う??』

「うーん。火傷する??」

『いいや。内包して居るエネルギーが逃げ場を失って弾ける。つまり手のひらは木っ端微塵に吹き飛ぶのさ。この粘土爆弾は単体では爆発の威力はさほどでもないが・・例えば、船体に小さな穴をあけるか、動力部に差し込めば致命的なダメージを与えられるんだ』

「なるほど!」


『ロロアちゃん。君はホワイトスペクター内部にミサイルに乗って突入した後、内部のエネルギージェネレータにこれを挿入してきて欲しいんだ。そして、仕掛けた後に脱出ポットで速やかに離脱する。ストリームマンは爆弾を仕掛けられたとは気づかずにホワイトスペクターで高出力の動作を行うだろう。

しかし、それが起爆剤となりホワイトスペクターは内側から大爆発するというしかけさ』

「・・ホワイトスペクターはいつ高出力になるの??」

『それは、誰にもわからない。空襲が終わった後か・・メルヴィアを離れた後だろうな』


「マナツさん・・それって」

ママが絶句する。

「空襲自体を止める為に私は来た訳ではないのね・・!?」


『そうだ。いま揃えられる戦力ではストリームマンの艦隊を止めることはできない。しかし俺らは何としてもストリームマンに一矢報いる作戦をせねばならないのだ』

「・・・」


『・・だから、テリンコをはじめとする地上部隊がストリームマンによる地上決戦の準備をしているんだ。作戦が失敗しても成功しても・・メルヴィアが戦場になる事は確かだからな』


「そうなの・・」

私は粘土爆弾を練って嘴のある人間を作った。

このアステロイドのせいでメルヴィアは戦々恐々としているのだ。

私は・・マナツさんを裏切る事になるけど自分の中の作戦を密かに考えていた・・。







────




一方、ホワイトスペクターでは『歌舞伎』が終わり、本格的なメルヴィア攻略戦について作戦会議が行われていた。


五重塔の前に、ストリームマンの三菱ミサイルの家紋で陣を築いた木造の台と骨組みのみの大きな梁が建てられた作戦会議室には、メルヴィア国全体がテーブルに映し出され、トレーシングペーパーに記入して透けさせて会議をしていた。

そこにはロロアの乗る双胴機や、チームガンバの旅団。

地上作戦用の師団。

そして、高角砲などの対空兵力が事細かく描かれていた。


奥にはストリームマンが座るように鎮座し、他の艦隊の長やマッド師団の参謀のブラックアイがテーブルに囲むように並んだ。


戦闘から帰ったウィングが展望台にあがるハッチを開けて、忙しなく木造の台を駆け上がる。

そして障子を開けると片膝を突いて報告した。


「報告します。チームガンバの双胴機と応戦。4機で襲撃したところ、3機が撃墜されました」

「ふむ。・・それは双胴機にか??」

「いえ・・双胴機は高度5000メートルまで降下。我々の戦闘機は全弾当たらず、銃弾掃射を敢行。

されど、地上にある対空砲にやられました」


「つまり、下まで誘い込まれて、対空砲にやられた訳だな??」

「ええ。左様の通りで・・」


「あい。わかった。ご苦労。羽根を休めるがよい」

ウィングがお辞儀をして障子を閉める。

参謀達がお互いの顔を見る中、ストリームマンは腕組みをした。

ツェッツがテーブルを指さしながら言う。



「チームガンバが編隊を組んで此方に向かって来ています。編隊はここ・・。そして小学生ロロアを乗せた双胴機は一度ハルミオ小学校を飛び立ち。なぜか逆方向を飛行しています。

そして偵察に来ていたバイパーイーグルスと応戦しています」

「小学生は何処に??」


「この双胴機に装備されているポットの中です。

炸薬が積んであるためミサイルではないかと意見もありましたが・・たとえミサイルだとしても艦隊を破壊せしめるには炸薬が足りず、我が艦の電子妨害でたどり着く事は困難でしょう。なにより人道に反していますから、まさか小学生の女の子を乗せて発射するとは考えられません」


「じゃあ・・なんとする??」


「様々な観点から分析したところ・・導き出されたのは『士気向上による生贄』かと」

「生贄!?」


「ええ。考古学、民俗学の広い観点から分析したところ、メルヴィア神は鬼神でありますから、生贄は必要なのではないかと・・彼女はニュートリノ発電所を訪問したと証言もありますから、高い身分の娘なのでしょう。ハルミオ小学校からの不可解な離陸も、戦闘要員ではなく儀式的な物だったと予想ができます」

「なるほど・・して、編隊はどのように仕掛けて来ると考えているか??」


「編隊を成している双胴機は極めて遅く・・。されど、機銃と搭載されているミサイルでは我が艦隊に傷をつけれません。これは予想ではありますが、編隊は犠牲を覚悟で我が艦に特攻し、肉弾による決死の白兵戦を展開しようとしているのではないかと・・」

「そんな事が可能なのか??」


「実質不可能です・・メルヴィアはアルムシュア条約上、戦争の資料が無く・・どのような作戦を仕掛けてくるのか予想ができません。我々は可能な作戦を予想したまでで・・」

「つまり・・本質の作戦は分からないと??」


「ええ・・。どう考えても、相手の負け戦なのです。空襲に対する地上作戦部隊の防衛力を高めるための時間稼ぎなのでは無いかとも思いましたが・・ハッキリ言って効果は無いものと予想できます」

「うーむ」


「如何なさいますか??ストリームマン様」

「・・たとえ負け戦でも自国の最大の戦力で抵抗する・・素晴らしき武士道ではないか。ならば全力で相手して差し上げろ」


「はっ。ならば艦隊の陣形は如何するおつもりで??」

「陣形は『円型鎖の布陣』とする。マンタ型爆撃機を円形に配置し、センターにホワイトスペクターを。甲板での白兵戦を想定し、雲梯と雲を用いて艦隊同士を橋わたしとする。チームガンバを捕らえたら、避雷針に串刺しにして見せしめとせよ!!」

「ははっ!白兵戦とならば皆が喜びます!手柄になりますから!」


「それより、メルヴィア降下作戦はどうなっている??」

「は!まず、音楽堂を破壊した後────」


ホワイトスペクターに集まった参謀達はチームガンバの飛行隊をそこまで脅威として見ず、すぐさま上陸作戦に向けての作戦会議を初めてしまった。

なにより、彼らの目的はメルヴィアの素早い制圧と低損害による勝利であり、フォレストパークで展開している主民主義国のアメルア共和国の兵団をいち早く叩く必要があったのだ・・。

もちろんストリームマンの艦隊で打撃を与える事も可能ではあったのだが・・軍資金に富んだアメルア共和国や、他国のキグナスの部隊の反撃も想定でき、ならばアルムシュア条約で兵器の制限が限られているメルヴィアの一国を陥落させ、すぐさま部隊をフォレストパークに集結させる手段に打って出たのだった。

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