メリルの一撃
“ママ”から連絡を受け取ったロロア。
ロロアの怒りの電撃戦が幕をあげ、ブルーシグナルズは壊滅する。
それは時代の流れか、共民主義の終焉か。
一つの思想が力でねじ伏せられた時、ロロアの反抗期が始まる・・。
ロロアは足のエアーすら出すのを忘れて、弾けるように走り出した。
その様は肉食獣のようであり。
息は高揚で高まり。
腰下に規則的にある通路灯がロロアのエネルギーで点滅した。
最愛の友を奪われた怒りはチャージに変わり、全身を駆け巡ってバスターに集中する。
そんな殺意のエネルギーが迫っているともしらず、管制センターではアルガ(トオル)達が兵士を分解しながら立て篭っている。
サルダはカメラを構えたまま動けずにいた。
戦闘はロロアの奇襲作戦から幕を上げた。
最初に異変に気付いたのは負傷したガガだった。
「なにか来たぞ!!足音がっ!!」
ガガ(カネダ)が扉をロックして耳をドアに付けた瞬間、ロロアが叫んだ!
「いけぇえ!!」
叫びと共に青と黄色の閃光を放ったバスターが発射される!
───ロロアのバスターは対ストリームマン仕様に改造されていた。
連射性能に富んだバスターの他、チャージを行ったミドルバスター。
そして、フルチャージしたヘビーバスターだ。
ロロアの放ったミドルバスターは彼女の感じた生体反応に向かって追尾性があり、二重構造の中心は、時計回りに推力を出しながら内側に高速回転し、外側は反時計回りに外側に回転した。
「ぐぅわ!!!!」
その刹那。
ミドルバスターが扉を焼き切るように分解しながら突き進み、貫通した瞬間、速度を失う事なくガガの胸部に入り込んだ。
バスターは、体内を突き進みながら急所である胸のフィンの上を通り過ぎ、ガガの内部エネルギーの射出と共に軌道をやや斜め上に外れ、脊柱を破壊して灼熱の破片と共に飛び出した。
「ガガッ!?」
ジジが機材で作ったバリケードから顔を上げた瞬間、
ミドルバスターによる外側回転で灼熱のガガの破片が降り注ぎ、それがジジの顔面に強烈に降り注いだ。
「ぐわぁあああ!!」
ジジが顔を押さえて倒れ込み、ガガが崩れ落ちるように絶命した。
アルガは静かにそれを見ていた。
────
ドォン!!
「ひっ!!」
「大丈夫・・まだ遠いわ・・」
メリルは用具室で“ママ”に抱かれながら戦闘が終わるのを待っていた。
ぬいぐるみの身体が衝撃波で震え、棚に置いてあるテープや工具などが震える・・。
どれくらいの戦闘が行われているのだろう?
ドォン!!
チュチュチュチュチュン!!
ドォン!!
「ロロアちゃんのバスターの音ね・・」
「ロロアちゃん・・勝てるかな・・」
「きっと大丈夫・・!私の娘だもん!」
暫くの静寂・・。
タッタッタッタ・・。
「誰か来る!メリル!伏せて!!」
メリルが棚に隠れてママが両手に電撃の準備をする。
「・・・メリル!?私!ロロアだよ!開けるね!」
「「ロロアちゃん!!」」
「メリル!!!!」
扉が開き、メリルがロロアに駆け寄る。
ロロアは素早く後方にバスターを向けると後ろに下がって扉を閉めた。
「クリア・・ふう」
ロロアは脅威がないと分かるとようやくひと息つく。
「大丈夫!?ロロアちゃん!!ブルーシグナルズは!?」
「全滅させたの!?」
ママとメリルの問いにロロアは一瞬黙った。
そして
「・・管制室に居たブルーシグナルズは全滅したよ」
と、ポツリと言った。
「そっか・・よかった」
メリルはロロアの頬についたオイルを拭った。
それから間髪入れずに爆発音がする・・。
「ガードロボと警官隊が戦っているみたい。ブルーシグナルズの誰かが通報したみたいね」
「じゃあ助けてくれるの!?」
「いいえとにかく安全な所まで避難しましょう。この工場には危険な物がありすぎるわ!」
「うん。ここには急拵えの危険な発電システムがあるみたい。はやくここから出よう!」
ロロアは取り回しが効く様にスパークライフルのバレルの部分を最低出力にしたバスターで焼き落とすと、ストックを肩に当てて撃ちやすさを確かめた。
そして、忙しなく首を傾げると用具入れからクッションとダクトテープを取り出して巻きはじめる。
「ロロアちゃん・・どこで覚えたの?それになぜ、ここに急拵えの発電機があると??」
ママの問いにロロアが答える
「ふがふが!」
ビリッ!
ロロアがダクトテープを口で破るとコッキングハンドルを引いて内部を確認する。
そしてジェネレータの入った弾丸クリップを乱暴に上から装填するとコッキングハンドルを引いて無理やりジェネレータの単発を装填した。
「できたよメリル。撃つときは左手でストックを押さえて、肩と頬で衝撃を吸収してね!目で見たら、それに銃口を添える感じで!」
「う・・うん」
「ライフルの使い方、クリアリングの仕方はわかるよね??」
「うん。ロロアちゃんと放課後やってたから」
「貫通性能とストッピングパワーを高めているから弾詰まりに注意して?撃つときはしゃがんでね?」
ロロアの戦場の適応ぶりにメリルが引きながら言う。
「その・・ライフルを改造するなんて・・まるで歴戦の戦士みたい」
「うん。教わったから」
「えっ!?だれから??」
「トオルさん!」
「トオルさん!!?」
ママがビクリと反応する。
「話は後! じゃあ、ドアを開けるよ?」
ロロアがバスターを構えたまま左手で開ける。
「メリル、落ち着いて狙えば外す事はまず無い筈・・できる?」
「うん」
ママがメリルを勇気付けた。
爆発音と、遠くでビームの放たれる音がする。
ロロアが先頭に立って安全を確認すると、メリルは後方を警戒して銃を構えたままママの合図でロロアの方向に進んだ。
「・・・!!」
ロロアが左手で握り拳を作って止まるように指示すると、膝をまげてバスターを構えた。
プシュー!
その瞬間突き当たりのT字路から、10体の足のない人型ガードロボ『ペッパ33ガーディアンスピリット』がエアーを出しながら通り過ぎた。
「いったみたいね・・ガードロボみたいだったけど・・気づかれなかった?」
ママがロロアの肩を叩き、T字路の左側を進む。
「この先に職員用地下鉄道がある。そこから出ましょう」
「うん」
見ると確かに『職員用サブウェイ』と書かれた古びた看板があった。
暫く降ると明らかに材質の古い、白いタイル貼りになり。
停止したエスカレーターを降りると巨大な円型の改札口にたどり着いた。
その天井には『社会の歯車に君はなれるか?』と書かれた大きな看板が掛かっており。
何処からか湿り気の帯びた冷たい風が鉄道のホームから吹いていた。
電子アルコール(気化したアルコールを吸う趣向品)や、固形食料の殻が捨てられており、機能停止してペーパー基盤が盗まれた円型掃除ロボが内部を晒し、古い型番のメカニロボに埃が積もっていた。
「進もう(ムーヴ)」
ロロアはそう言うと壁伝いに前進し、vサインした手を自分の目に向けて、駅員の居たであろう詰所を警戒するように指をさした。
メリルが詰所にライフルを向け、ママが後方を警戒する。
詰所には駅員型メカニロボが放置されていた。
「敵発見」
ロロアが発見して、左手を下に向けてメリル達に伏せるように指示をだす。
椅子に何者かが座っていたのだ。
「動くな」
ロロアはすぐさま落ちていたスパークピストルを蹴飛ばすとメカニロボにバスターを向けた。
ローブを着た人毛が生えたメカニロボは静かに顔を上げた。
「・・・あんた達の悪事は世界中の同輩達に拡散されるでしょう。まず世界に発信する為、莫大な翻訳金がかかります。24時間以内にあなた方の誠意ある謝罪がない限り、それは実行されるでしょう」
メカニロボのメルダ(ヒトミ)はプログラミングされた言葉のように言った。
「ヒトミさんね。もう学生連合は壊滅したわ。警官隊が来ているから、自首してください」
ロロアが言い、メルダがゆっくりと此方を見ながらワナワナと立ち上がる。
胸のライフコアが点滅しながら光り、激しい怒りを表現していた。
「何年ぶりに言われた名前かしら。ただね、お嬢ちゃん。・・ただね!あなたに言われたくないわよ!!あんたの父親が私達を狂わせたのよ!?父親に狂わされ、娘に翻弄されるなんて・・!!このアルダンス!!メフィスト(悪魔の名前)め!!」
「メリル!下がって!」
メルダのただならぬ声に、ロロアが後ずさる。
「お友達を救えてさぞ嬉しいでしょう!?そりゃ、私達は人様に危害なんて加えないわよ!最初から分かっていたのよね!?だから攻めて来れた。同輩達を散々殺していたぶって、ただで済むと思わないことね!!」
「ロロアちゃん!メルダを撃ちなさい!メルダの生体反応を検知してガードロボが来てしまうわ!」
「でも、私は更生の余地を与えたいの!この人たちが本当に悪い“人”か分からないから・・!!」
「ロロアちゃん!」
メルダがピストルを一瞥する。
「ヒトミさん!!きっと私達、話し合える筈よ!!私は・・パパが何をしてきたか知りたい!!」
「ロロアちゃん!!」
『テキ、ハッケン!!』
「はっ!!」
ロロアが素早く振り返ってペッパ33にバスターを当てた刹那、メルダが素早くピストルに飛びかかった!
メリルはメルダの身体にライフルを構える。
「メリル!撃っちゃダメっ!!」
ドッパン!!
と言う凄まじい音と共にメリルのライフルの薬室からジェネレーターが吐き出され、強烈な閃光がメルダの片腕と胸に大きな穴を開けて吹き飛ばした!
ビームはそのまま貫通してホームの通路に飛び去り、その有り余る破壊力でメルダは悲鳴すらあげずに倒れ込んで絶命した。
「ハァ・・ハァ・・」
「よくやったわ、メリル。彼女は思考回路が欠如したイレギュラーよ。イレギュラーと会話なんて出来ないわ」
「・・・」
ロロアは打ち捨てられたメルダの死骸を見た。
ホームに着くと古びた電気駆動列車が停車していた。
扉が開け放たれ、弱々しく青白い照明が点いている。
「2人とも、運転席に行きましょう。次のホームでチームガンバが回収してくれる手筈になっているわ」
「うん!ロロアちゃん行こう?」
「・・うん」
「電車の中も注意して!?」
ママが運転席を操作して、ロロアとメリルが乗り込む。
長い椅子が左右に通路に沿うように付けられた、古い型の電車だ。
ここもかつては労働用メカニロボや労働者で賑わい、使われていた筈だ。
しかし、おそらくはパワーマンがニュートリノ発電所を占拠してから使われなくなり・・社会は最も容易くロボ達を見捨て、ロロアやメリルには気づかない些細な事のように生活の表舞台から姿を消し去ったのだ。
「運転席にアクセス・・!私達以外に生体反応なし!発進するよ!?」
「うん!!」
扉が閉まり、電車が発進する。
それと同時にペッパ33が数台駆けつけるも、すぐにスピードの残像になった。
「「はぁーーー」」
ようやくロロアは熱くなったバスターを切り替えて椅子に倒れ込むと、メリルは力みすぎて外れなくなったライフルの指の一本一本をこじ開けた。
「“メリル“だいじょ────」
メリルがロロアを抱きしめた。
「ごめんねロロアちゃん!ロロアちゃんの為に買ったモンブラン。なくなっちゃった」
「ううん。私も迎えに行くのが遅くなってゴメンなさい」
それから電車は地上に昇り、幾つもの蜂型ヘリが向かうのが見えた。
東から太陽が昇り、車内を明るく照らす。
いつしかメリルは安心したようにロロアの肩にもたれかかり、ママは外部と通信しながら運転している。
「ブルーシグナルズ・・。なんだかとても・・メルヴィアの闇を見た気がした」
「・・そうだね」
「ロロアちゃん?」
「なに??」
「わたし、パパが何をしたか聞かないと・・!」
「うん・・。そうだね・・わたしも・・せんせいにブルーシグナルズのこと・・」
メリルがもたれかかったまま眠り、ロロアは真っ直ぐ外を見た。
外は市街区に入り、所々に高角砲やパラボナビームが顔を覗かせた。
────
『この度は・・すまなかったロロアのママさん。メロディアス新聞のの記者がいる手前、我々の出動が遅れてしまって・・』
『いいの、マナツさん。それで・・ブルーシグナルズの事だけど・・』
『警官隊の報告によると共民兵は全滅、ロロアのサンダーブレイクでメモリーは破壊されていた』
『うん』
『ブルーシグナルズも同様、ロロアのバスターによるショックで修復は不可能だった。メロディアス新聞のサルダはイレギュラーとして資料を破棄。・・ただ』
『ただ??』
『ブルーシグナルズのひとり、アルガことトオルは自決していた。どうやら自決する前に自らの記憶メモリーを自力で取り出したらしい・・』
『それで??』
『メモリーは現時点で見つかっていない』
『まさか・・ロロアちゃんが・・?』
『可能性は考えられる。しかし、他人の記憶メモリーを自分のメモリーに挿入することは考えられない。自分の頭を割ることになるからな』
『・・・そうね』




