狂気と寵愛の先にあるもの
ロボを斡旋するカナコと、ロボになったトオル。
思想と狂気が支配する学校で、マイキーは駆け抜ける・・。
月の光のみが照らす暗闇の学長室で、私はキュラー様の潤滑油による寵愛を受けていた・・。
「カナコ・・。私の住むメルヴィアの由来を知っていて?」
金をあしらったベットがギシリと鳴り。
キュラー様が私の身体を蛇のように這う。
潤滑油が溢れ、水のような音を立てる・・。
「いいえ・・わかりません・・」
私はキュラー様の長い寵愛が欲しくて嘘をついた。
その瞬間、冷たい息が耳にかかり、私の胸のフィンが興奮と感動を焚きつけた。
「私に嘘を付くなんて、いけない子ね・・。メルヴィア神はアカナ神と違って一途なの。嘘は付けない神様なのよ」
「ご、ごめんなさい!」
「謝らなくてもいいのよ・・貴女は見事にメルヴィアを演じて迷える兵士達を導いている。んっ!」
「はぁっ!」
キュラー様が私の両肩を持ち、溢れる潤滑油で身体を泳ぐ。
私は多幸感とキュラー様の芳醇な薔薇の香りに満たされ、心身が浄化されてゆくのを感じた。
「あぁっ!キュラー様っ!!」
私は感動と欲望が抑えきれず、咆哮するように呼んだ。
「寵愛を受ける時は・・お姉様と・・呼んでいいわよ!」
キュラー様のとろみの付いた妖艶な手が、私の頸や頬を撫でる。
私は悦びあまり指を舐め、慶びと親しみを込めて叫んだ。
「お姉さま!!」
「もっと!呼んで頂戴!」
「お姉さま!お姉様!!お姉様!!お姉様あぁああ!!」
その瞬間、私の身体は反り返り、快楽が電撃のように頭から足先まで駆け巡るのを感じた。
月の光が雷のように強さを増し、身体の反り返りと痙攣に同調しながら、快楽が波のように押し寄せては引いた。
「あんっ!!あんっ!!あぁあ!」
最後の反り返りの反動でキュラー様に無理やり半身を起こされ・・。
水気を帯び、ヌルヌルしたキュラー様の手が、優しく、そして力強く私の顔を腰のくびれの部分に密着させた・・。
「ハァ・・ハァ・・」
「ふふふふふ・・可愛い子ね・・」
私は快楽の余韻に浸りながら、自然と手を合わせて天を仰ぐように上を見た。
巨大な月が学長室の窓から覗き、キュラー様の身体の輪郭を光沢をもって浮かび上がらせる。
乳房の先にキュラー様の顔が見え、その顔は聖母のようだった・・。
「カナコ・・貴女にお願いがあるの」
「何でしょうか・・?」
「これからメルヴィアは、共民主義に向けて決起するわ・・。フォレストマンが抗議し、パワーマンが武装決起し、ストリームマンがクーデターを起こす。
サイバーガールが思想を操作し、グラビティーボーイが世界に脅威を与え・・ミスバーニングが文明を破壊する」
「すごい・・」
「そして、ブルーシグナルズが世論を操作し・・貴女が未来を作って行くの・・」
「私が・・未来を・・?大丈夫でしょうか・・」
「ふふふ・・。きっと貴女ならできるわ。あなたに最強の武器を2つ与えるから・・」
「最強の武器・・?はぁんっ」
キュラー様が私の耳たぶに唇を這わせながら囁く・・。
「一つは・・・・────・・・・ね。もう一つは────ね・・」
「ロロア・フローラウス・メリアス・・?」
「ええ。そうよ」
「ロロア・フローラウス・メリアス・・未来を担う希望の娘・・」
「そうよ・・ふふふふふ」
───────
あれから随分経った・・。
毎日のように遠くから聴こえた音楽や、スパークライフルの銃声がしなくなった・・。
「・・・・」
今では、聴こえるのは僕の息くらいだ。
僕は『食糧備蓄番』と言う名の軟禁をされていた。
もう配給を取りに子ども達も来ない・・。
外はどうなっているんだろう??
僕はドアに作られた配膳用の覗き穴を開けた。
やっぱり学校内には人の気配はしない。
みんな、何処に行ってしまったんだろう?
「マイキー・・!おおい・・!マイキー!!」
突然声がして飛び上がりそうになる。
男がやってきた。
あれは、随分前にゾーン1に
『主民主義の歪んだ活動を見に行く!』と偵察に行ったヒサヒコさんだ。
「お前はまだ『人間』なんだな?偵察から久しぶりに戻ったら、このザマは一体何だ??なんで閉じ込められている?」
ヒサヒコさんが鍵を開ける。
「トオルさんが僕を『敗北者』だって」
「敗北者?」
「『思想は同じなのに、同じ同輩を傷つけるなんてちゃんちゃら可笑しい』って言っちゃったんだ」
「トオルにか?」
「うん」
「はははは・・あの大人しかったトオルが・・まるでゾーン3の共民主義者だな。よっと」
ヒサヒコは様々な共同住宅から奪ってきた物資にドカッと座ると、リュックから何かを取り出した。
僕はヒサヒコさんと言う、久しぶりに『話せる人』が来てくれて正直嬉しかった。
「これは?」
「リンジ(オレンジとリンゴのゲノム操作した混種)だ。主民主義国の農家で採れた物だよ」
僕は黄色い果実のリンジを受け取ると恐る恐る手で剥いた。
「うわぁー」
柑橘系の香りが鼻をくすぐって、水々しい白い果肉が溢れた。
僕は『いただきます』も言わずに齧り付く。
全身に果汁が染み込み、細胞一つひとつに栄養が渡る感じがする。
「本当は子ども達にも食わせてやりたいが・・きっともう必要ないだろう・・しばらく来ないうちに変わっちまったな」
ヒサヒコさんもリンジを二の腕で軽く拭いて思い切り齧り付く。
「ヒサヒコさん?なんで『もう必要ない』んですか?」
僕は聞いた。
「マイキー、本当に何も知らないのか??」
僕はヒサヒコさんに連れられて薄暗い廊下を歩いた。
小さな教室にはディスカッションをした用紙が散乱し、自動ドアが用紙の入った箱に何度も当たりながら閉まろうと苦闘していた。
この紙は共同住宅において学徒が行う『自己啓発』だ。
他にも『トオル同輩』『キュラー様』と書かれた似顔絵がいくつかある。
他の教室の壁には
『お前は共民の為に戦えるか?』
『真の共民とは、思いやりである!』
『共民は自分との見つめ合い』
『ピットを積んで共民住宅を成し。皆が歩んで共民となる』
『自分の甘えは、共民の恥』
と言うスローガンのような言葉が赤い字でビッシリと書かれており、もう一つの教室には・・。
「ひっ!」
「未就学児だ。内観(※1)をさせていたのだろう」
・・壁に頭を付けた状態で白骨化している子どもの遺体が並んでいた・・!!
「うぅ・・!オェッ!!」
僕は吐きそうになるのを堪えながら思わず目を逸らした。
あまりの壮絶さに、しゃがみ込み。
涙がとめどなく溢れる・・!
「ふぅうううう!!ふぅううう!!」
僕は慟哭したいのを必死で堪えながら息を吐く。
あのスローガンは僕よりずっとずっと下の子らが書いた物だろう・・。
ヒサヒコが言う。
「自己啓発は・・本来は他人から自分がどう言う風に見られ、自己を再認識するプロセスだ。でも、ここの奴らは自己認識から『自己否定』にシフトしたんだろう。あれを見ろ・・」
教室の自動ドアを塞ぐように人毛が生えたメカニロボが座って機能を失っていた・・。
「コイツは自分の機能が停止するまで子ども達に我慢を『自己啓発』として問うたのだ。
心身共に同じ思想を持った『共民戦士』を作るために・・。
バカだよな。
自分はロボの肉体になったまま、生身の人間に同じ苦行を強いたのだから。」
「・・・・」
僕は『バカ』と片付けられた精神主義の成れの果てを見た。
ピピピピ・・。
ピッピーー。ピピ。
ピピピピ。
正門広場を展望する廊下には、マクスをした主民主義の特殊部隊が仰向けで死んでいた。
天井に潜んでいたのを、もろとも撃ち落とされたみたいだ。
ピピピピ・・。
ピッピ。
ピピピピ・・。
そのタクティカルベストから絶えず司令が送られている・・。
「トオル達は主民主義の二波を撃退したようだ。そして、ここに居る諜報員が殺されたと言う事は・・じきに大軍がここに来るだろうな」
「えっ!?そうなんですか?」
「あぁ。主民主義者達は是が非でも此処を奪いに来る。ここはアルムシュアの戦いの代理戦争のホットスポットだからな」
特殊部隊が銃の引き金を引こうとした手の形のまま死後硬直していた。
それが指をさしているようで、自然と僕は指している窓から外を見た。
ルーマと言う二足歩行の兵器が、折れた監視塔の下敷きになるように倒れ、噴水には警察隊の装甲車が突っ込んでいた。
ベレー帽を被った主民主義の兵士が、最初に突入してきた警察の装甲隊に覆い被さるように死んでいる。
そして、共民兵の上半身が至る所に転がっていた・・。
まるで兵士の祭典。
特殊部隊が引率する死の行軍だ。
「俺がエレフィックサウンズをトオル達に教えたんだぜ?」
沈黙を破ってヒサヒコが言った。
「へぇー。それってタケノコ族時代ですか??」
「そうだよ?あの頃は・・はぁー。よかったなぁー」
「いつから変わってしまったんですかね?」
「いつからだろうね」
「…しばらく見ないうちに、トオルは遠い所へ行ってしまった。
タルマもカナコちゃんも。
カネダもトシヲも。
俺達はどうなっちまうんだろうな」
「全部、あのキュラーとか言うアステロイドのせいだ。アイツが居なきゃ!」
「うぅう・・!!」
突然の呻めき声に飛び上がりそうになる。
何かの機械の音なら良いのだが・・。
「なんだ!?」
「こっち!」
僕らは声のする教室に入った。
「うううう!」
女性の呻めき声は奥から聞こえるようだ。
教室と言ってもシルバーの様々な機材が置かれていて、時より空気を圧縮するブシュゥーと言う音が機械の穴からした。
取って付けたような大型シンクには『揚腸用』と書かれた洗面器が乱暴に重ねらせており
『マッド博士と研究員達』と書かれた記念写真がシンクの上に飾ってあった。
「見ろ・・。ドクター・カインだ」
「へ?ドクターカイン?」
「カイン・メリアス。マッド博士と並ぶロボット工学・・強いては人工ロボット関節の第一人者だ。
このドクター・カインが俺らをロボットにしようとしているんだ。いわば人体実験だな」
「じ、人体実験!?」
「・・そうだ。臨床試験もしていない危険な人体実験を、肉体の強化と称して紛争地帯で行っているんだ。主民主義のSNSで見た・・」
「なぜ!?」
「おそらく名声欲しさにだろう・・。」
「名声・・欲しさ!?」
写真の中に3人の家族の写真があった。
にこやかに映るその顔は、とても人体実験を行う人のようには見えない・・。
女の人は煌びやかな服を着ていて、女の子は小さい・・。
「うううう!!」
あまりの近さにギョッして、よくわからない器具をシンクに落としてしまった!
僕は思わずヒサヒコさんを見た。
ヒサヒコさんはコクリと唾を飲み込むと、声のした方を睨んだ。
「ううううう!!」
僕らは忍足で声のした方に向かう。
「うわっ!」
「これは・・メカニロボの…失敗作か!」
そこには、人間が巨大なカプセルに入れられている様々な『失敗作』があった。
頭に強靭な顎のついた者。
両脚が異様に大きく改造された者。
首と心臓だけの者もいた・・。
カプセル越しに悲鳴が聞こえそうだ・・。
皆、苦悶の表情をしたまま硬直し、苦痛から逃れるように身体を捻ったり、拳を作っている。
「うわっ!!」
「・・・っ!!」
僕とヒサヒコさんは同時に発見して絶句した・・!!
「タ・・タスケテ・・」
「うわぁ!!オ、オエエ!!」
僕はあまりの惨状に吐いてしまった!
ヒサヒコさんは叫ぶ。
「・・腕に無理やり武器が仕込まれてやがる・・!!これが共民主義のやり方か!!」
「ほぁーーーーーーーー!!!!!」
僕はヒサヒコさんの言葉の続きを聞きたくなくて、耳を押さえてうずくまった・・!
絶望と恐怖が冷水の滝のように押し寄せ、僕はたまらずに叫んだ!
「もう嫌だ!!もう嫌だ!!もう嫌だ!!
この呻き声も、同輩を殺すのも、死体の山も!!
どいつもこいつも自分の理想ばかりで馬鹿野郎だ!!」
僕が震えるなか、ヒサヒコさんは驚くほど冷静に女性を調べ始めた。
「こいつは驚いた・・この『成れの果て』・・カナコちゃんだぜ・・!」
「えぇえ!?う・・うっぷ!!」
「その声は・・ヒューー・・。マイキー・・ヒューー。ヒサヒコさんね・・」
「カナコちゃん・・なぜ・・こんな!」
僕は震えながらカナコちゃんだった物が横たわっている解剖台を見た・・。
「わたしは・・キュラー様のご期待に応えられなかった・・ヒューー・・この武器は・・人間はおろか・・わ、私ですら・・扱えない物だった・・」
「・・カナコちゃん!今、武器を外してやる!!」
ヒサヒコさんはカナコちゃんの言葉もそこそこに、近くにあったレーザーメスで武器を取り外しにかかった。
レーザーが光り、機械が焼けるような独特な臭いが立ち込めた。
「・・よし!外れるぞ!!くっそ!なんて重さだ!!」
カチャカチャと音がして、ヒサヒコさんが持ち運べるように武器を分解しているのが分かる・・。
この人は最初からカナコちゃんを助けようとは思っていないのだ・・。
「ヒサヒコさん、一体何をしているのです!?」
僕は声を振り絞りながら言った。
「携わった研究者。極秘の人体実験。そして武器の一部。
これだけ情報があれば十分だ!」
「は!?」
「マイキー?このままブルーシグナルズに留まって『成れの果て』になるか・・。西コーディアスに亡命して共民主義の生活をするか・・コーディアスで主民主義になって戦争に加担するか・・どっちにする??」
「えっ!?・・・!!」
「なぁ、この情報。きっと世界が喉から手が出るほど欲しがるぜ? 俺はこの情報を餌に共民主義に脅しをかけ、主民主義者にこの武器の復元の金を出させようと思うのだ!
・・マイキー?お前はどうする??」
「えーーー!!」
「きっと楽しい事になる・・!!マイキー!俺の所に来い!!一緒にこのクソみたいな世界を渡って行こうや!!」
僕はカナコちゃんの成れの果てを見た・・。
カナコちゃんはうわごとのように天井を見て
「うううう・・キュラー様・・キュラー様・・ごめんなさい・・」
と小さくつぶやいた・・。
「さぁ、モノは全部揃った・・ここを脱出するぞ?マイキー?」
「脱出ですか??」
「ああ。主民主義者の金持ちの船が来ている。総攻撃が始まる前にここから出よう?」
「それって」・・つまり・・。主民主義になると言うこと??」
「いいや。主民主義は個人が金を所有し、個人の実力でのし上がってゆく世界だ。個人の自由が確保されているんだよ・・!!」
ヒサヒコさんが言った瞬間、遠くで爆弾が炸裂する音が聞こえた。
その轟音で、周りの機材が振動する。
「・・っ!!」
「・・・!!始まった!そらきた!!今に言った!!始まったぞ!!」
ヒサヒコさんが跳ねながら言う。
「僕もヒサヒコさんとご一緒します!!でも・・最後に・・最後にトオルさんにお別れを言わせて下さい!!」
「わかった・・!!裏門で待ってる!!必ず来い!!」
「はい!!」
僕は教室を飛び出した!
その瞬間、爆弾が真後ろの窓付近に炸裂し、もの凄い爆風で吹き飛んだ!
「うぅわっ!」
思わず吹き飛び、廊下が崩れて内部が露わになる!
「とつげきーー!!」
「うぉあーー!!」
「自由の為にーー!!」
学校前広場の正面の門が吹き飛び、3体のルーマと共に兵士達がなだれ込む!
地雷か何かが反応し、広場に幾重も火柱が立った!
「ぎゃあああーー!!」
「ぐぉあああー!!」
「サルディアーー!!」
とてつもない轟音と共にコーディアス特有の叫び声が聞こえる。
「うわーー!」
僕は立ち上がると、叫びながら廊下を走った!
階段を駆け上り、即席のバリケードを抜ける。
機関砲はそのままで、不思議と誰も防衛していない・・。
意を決してホールを開け放つ。
「トオルさん!!!!うわっ!!」
そこにはたくさんの同じ顔のメカニロボの群れが集まっていた・・!
「トオルさん!!トオルさん!!何処にいるんだ!?トオルさん!?」
僕は1人の国民服を着たメカニロボに話しかける。
「お、俺はトオルじゃないぞ?」
「トオルさんは・・!トオルさんはどこ??」
「自分で探せ敗北者!!我々はブルーシグナルズだ!!」
「は・・うわっ!!」
僕はブルーシグナルズを名乗るロボットを見て絶句した。
これは『みんな』なのか・・!?
「何だ・・?敗北者よ!」
「ここはブルーシグナルズの領域だ!志のない者は立ち去れ!!」
「え・・っ」
僕はメカニロボに突き飛ばされながら見回した・・。
「・・その声は・・マイキーか??」
「え・・!?タルマさん??」
「おお!!マイキー坊やじゃねーか!!」
ドォン!!
と言う音がして建物がゆれる・・。
「もう俺はタルマじゃねぇ!キュラー様に立派な名前を授けて貰ったのよ!」
「えっ!?」
「俺の名はギーーーガーーー!!ぐわっはっはっは!!」
「タルマだかギーガーだか知らないけど主民主義の大軍が押し寄せてくる!!みんな逃げよう!」
「ああ!!分かってる!!」
「えぇ!?」
ギーガーことタルマさんは余裕だ。
そして聞き覚えのある声がした・・。
「マイキー・・!!お前には食糧備蓄番を命令した筈だ!誰が開けた・・?ここで何をしている??」
「ト・・トオルさん!?」
そこには一際大きな身体のメカニロボが居た・・。
全身に黒い光沢があり、頭は人間だがスキンヘッドでサングラスをしていた。
「俺はトオルじゃない・・アルガだ!!」
「ア・・アルガァ!?」
「そうだ!!」
「マイキーさんよ!残念だがお前は、次の世界に進めない!」
「次の世界??」
「そうだ。キュラー様がメルヴィアに連れて行ってくれるそうだ。そこで俺らは共民主義の再建を行う!!我々の志はメルヴィアで花開くのだ!!」
僕が振り返ると巨大な箱が配られ、メカニロボ達が自分の脚や腕を器用に分解し始めた。
おそらく身体をバラバラにする事で入国管理局をパスするつもりだろう。
「アルガ!!メルヴィアに行く前に反乱分子を血祭りにあげるか!!」
「そうだなギーガ!!」
トオルはスパークライフルにジェネレータを装填するとホールに掛けてあったドレープを引き剥がしてマントにした。
「うぉおおおお!!」
タルマは銃を持ち、他のロボ達を鼓舞する。
「第一陣の先発隊はメルヴィアへ!!他の者は外敵を蹴散らせ!!学校内に誘い込み、各個撃破だ!!」
「うおおおお!!」
もうだめだ!!
僕は鬨の声を聞きながらホールを出た。
やっぱりダメだった!!
もうトオルさんは・・タルマさんは・・みんなは・・カナコちゃんの心配すらしない・・!!
もう皆んな・・『遠い所』に行ってしまった・・!!
僕はホールを飛び出し、廊下を走った。
時折、廊下の遠くの方で足音が聞こえるのは主民主義の兵士だろうか・・?
しかし、次の廊下の曲がり角を曲がった時だった!「うわあ!!」
「ブルーシグナルズか!!」
たくさんの兵士達と鉢合わせになり、たくさんの銃口が僕の方に向いた!!
「動くな!!」
「ひぃい!!」
1人のヘルメットを被った兵士がレーザーを照射して僕が武器を持っていないか調べる・・その時だった。
「君・・もしや、マイキー?」
「へ??」
「僕だよ!“マイキー”だよ!!」
「“マイキー”??あっ!!」
兵士がヘルメットを脱いで挨拶をする。
コーディアスの同輩の証であるモミアゲの切られた七三分け、それは紛れもなく・・襲撃したワゴンに乗っていた”マイキー“だった!!
「みんな!!彼が噂のマイキーだ!!君は最後まで同輩を殺すことに抵抗したね!!僕は脚と腕を失ったけど元気さ!」
”マイキー“は軍服からマシーンの義足や人工皮膚の腹を見せた。
その痛々しさに僕は瞳から涙が溢れ、申し訳なさと情けなさで涙が出た。
「”マイキー“!!”マイキー“!!ごめんよ!!僕がもっとトオル達に言っていれば・・!」
「あれは仕方がなかったと思う・・。もしも僕が君と同じ境遇だったら同じ事をしていたと思う・・」
”マイキー“は他の兵士からテープを貰うと、僕にペタペタと貼り出した。
テープには『非戦闘員』と書いてある。
「嬉しかった。ブルーシグナルズを見直した。君の進む道なら僕は理由を聞かずに道を開けよう。さぁ、行くんだ!」
「ありがとう!!“マイキー”!
もう、ブルーシグナルズは共民の思想をもった人間じゃない。
ホールに居るのを見たから気をつけて行ってくれ!!」
「ありがとう・・!!」
僕と“マイキー”は固く握手をすると抱きしめ合った。
ふと、トオルさんの言葉を思い出す・・。
『マイキー!これはお前の過去だ!!タケノコ族に入る前の、エレフィックサウンズを聞く前のお前だ!!』
トオルさんは確かに僕に言ったんだ・・。
でも、もしも過去の僕なら・・同輩を殺した手先と握手が出来るだろうか・・?
こうして理由を聞かずに通してあげることはできるだろうか??
「さぁ!みんな行こう!!マイキー、達者で!!」
「ありがとう!“マイキー”もどうかお元気で!!無事を祈ってる!!」
僕は手を振ると背を向けて走り出した・・。




