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ロロアちゃんの目覚め

失意のメリルと記憶を失ったロロア。


しかし、リクトの言葉をきっかけにロロアは自分に無かったものに気付く。

「ロロアちゃん、今日は大変だったみたいね。」

「うん。」


私のまわりをシャワーが行き来する。

頭皮を2つのシャワーヘッドが往復し、シャンプーを出して髪を洗いだした。

お母さんは高齢者見守り機能で話しているみたいだ。


「お父さんは大丈夫かな・・?」

「パパなら大丈夫よ。痛そうにしてたけど・・。」

「私、お父さんに暴力をふるっちゃった。」

「ロロアちゃん。私達も悪いの。あなたを『初期情報』のまま学校に行かせてしまった・・。『コピー構築装置』は完璧だった。パパも原因は分からないと言っていたわ。」


お母さんは、私が病気の後にロボットとして産まれ変わり。

学校で日常を送り。

パワーマンの鎮圧の為に特殊部隊の作戦に協力した事を話してくれた。

そこで私は『ニュートリノエネルギー』の影響でショートしてしまったらしい。



シャワーヘッドが温風を出して私を渇かす。

体の外骨格が付けられ、ようやくいつもの私に戻った。



ソファーの横にはブルーベリーが実をつけていた。

まだ青い(緑な)ので食べれないが・・。


私はテーブルユニットを出すと、冷蔵庫からAタンクを持ってきて飲もうとする。


お父さんがラボから出てきた。

右手をギブス用ロボットアームで固めている・・。

私はソリッド(固形飲料)を落として飲み物にして。

お父さんに渡した。

「ありがとう・・。少し、リハビリが必要みたいだ。」

と言って、右手でコップを頑張って取ろうとする。

「お父さん、ごめんなさい。」

「ん?いいんだよ。それより、『前のロロアの事』を話さないで学校に行かせてすまなかった・・。確かに装置は正しく作動した。でも、ロロアの記憶データベースにプロテクトがかけられたみたいに封印されているんだ。何かをトリガーにして解除されるのか『前のロロア』が思い出さないように意図的にプロテクトしているかは今の所分からないのだが・・。クラスメイトに会う事でプロテクトが外れるのではないかと・・すまない。」


「そうなんだ・・。」


「それよりロロア。ジュースを飲みたいと思わないのかい?」

「え?」

「ロロアを再構築するのに、前回より人間に近いパーツ(臓器)が組み込まれているんだ。昔から言われているのだが人の臓器には記憶しておく能力があって。感情の起伏、行動も左右してしまうらしい。つまり、より人間らしい事を出来るようにアップグレードしてある。それだけじゃないぞ??学習能力も向上して、相手の動きを見切る事もできるんだ!」


お父さんはボクシングのようにジャブをだした。

「うーん。でも私の栄養はA缶で足りるし、別に不自由はしていないけど・・。」

「そうか。そうか・・」

お父さんは少しだけ寂しそうな顔をした。


私は教室の皆の顔、メリルさんの顔を思い出した・・。


皆すごく寂しそうな顔をしていたっけ・・。

前の私は、どんな女の子だったのだろう?


「ロロアちゃん、教科書持った?」

「持ったよ!」

「A缶は?」

「持ったよ!」

私はお母さんに聞こえるように天井に向かって言った。

学生リュックに教科書が内蔵された本と、側面にA缶をしまう。


テーブルユニットが格納され、パパは食パンを咥えながら忙しそうに歩いている。

パパは今日、学会で発表があるらしい。


「お父さん!ネクタイが曲がってる!」

「おぉ!ありがとう」

「はい!」

「おぉ、いつの間にできるようになったのか!」


朝がこんなにバタバタしているとは思わなかった。

いつも病院のベッドで勉強していた私にとって、朝の時間がものすごく早く感じる。

前の私も同じ事を思ったに違いない。


「行ってきます!」

「行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい!ロロアちゃん!パパ!」


私はお父さんに軽く手をふると、学校に向けて歩きだした。


「ロロアちゃーん!おはよ!!」

メリルが走って私の所に来た。

「あ、おはようございます!」

私はお辞儀をする。

「えっ!?あ、そっか。」

メリルは悲しい顔をする・・。

しかし、またパッとした明るい顔に戻って話しかけた。

「今日はね、体育だよー!」

「そうでしたね!体育は嫌いだなぁ。」

「そうなの!?」

「え?はい。」




そして体育の授業になった。

男子達はアキレス腱を十分に伸ばさないでサッカーを始めている。

「男子ってサッカー好きだよねぇ!」

ユミルさんが私に話しかけた。

「サッカーって面白いの?」

私はユミルやメリルに聞く。

「ん?うふ。」

ユミルやメリルは交互に見て笑った。


そう話しているうちに

「あ、サッカーボールが跳んできた」


「おーいロロアちゃーん!!おねがーい!」

「はーい。」

私はサッカーボールを拾うとリクト君に投げた。

「お、おう。ありがとう。なんか、優しくなったな!ロロアちゃん?」

「え!?」



それから私はキーパーをそつなくこなし。

学校が終わる頃にはクラスの皆が集まって自己紹介がてらの『ロロア会』をする事になった。

私がどんな子だったのか聞くためだ。


「昔はサッカーボールを吹っ飛ばしてたな!あと・・」

「俺らを片手で持ち上げて投げ飛ばしてた!」

リクトやトモヤ、カイセイ、ダイチなど男子達が話した。

「ロロアちゃんの事、ストロングって呼んだ時はもう・・」

「メリルが止めなきゃ、俺ら殺されてたかもな・・。」


「すごい綺麗な円を書いてくれたよね!裁縫も得意で、家庭科の時はレースも編んでくれたのですよ?」

学級委員のルルが言うと、ティファナ、カコ、ユミルも頷いた。


メリルはまた泣きそうになっている・・。


「メリルさん。」

「ロロアちゃん、さん付けはいいから・

・・」

「メリルちゃん?」

メリルさんは目を見開いた。

「うん!!ロロアちゃん!」


「しっかし、ロロアがバスターを付けた時は死ぬかと思ったよね?」

ガキ大将のダイチが言った。

「うん」

「おう!」

「ん?バスターって?」

私が聞く。


「ロロアバスターって言って、よく右手を切り替えていたじゃんか!俺がロロアちゃんに『バスターで撃ってみて!』

って言ったら本当にぶっぱなして。ホラ!」

ダイチが先生の机のある奥の棚の花瓶をどかす。

そこには15センチくらいの穴が焦がしたように綺麗に空いていた。


「これ。本当に私がやったの?」


「う、うん。まぁ、言った俺も悪いんだけど。」

「当のロロアちゃんも驚いてたけどねー。」


「それで俺が特訓するように言ったんだよ!『ロロアちゃんがバスターが使いこなせる最強のロボットにする』って!」

リクトがエヘン!と咳払いした。


「ん?じゃあ、今の私にも?」

私は右手に力を入れた。

皆、(おぉお)と言いながら一歩下がる。


特に何もならない。


「実装されてないんじゃないか?」

リクトが言った。

「ちょっと、そのロロアバスターと言うのを。少し聞かせてくれないかな?」





それから、私は大急ぎで帰った。

昔の私にあって、今の私に無いもの・・。

それが・・。

「おかあさん!!おかあさん!」


家に帰るなり、私はリビングで叫んだ。


ヴンと言う音がして、リビングや空調が付いた。

「・・ん?どうしたのロロアちゃん。そんなに慌てて。」

「ロロアバスターよ!知ってるでしょ!?」

「えっ?」

「どこにあるの!?」

「パパのラボよ?」

「今すぐ出して!!」


私はラボを開けてもらうと、急いで中に入った。

週末が近いからか、ラボには様々なガラクタがあった。


「ロロアちゃん、その解析用の箱の中よ?」

そして、ガラクタの奥に中身を透視出来る機械を見つけ、開けて見ると私と同じカラーリングのパーツを見つけた!


「ちょっとロロアちゃん!パパに聞かないと・・」

「大丈夫よ!」

私は右腕の装甲を外すと、ロロアバスターに腕を入れた。

本当に大丈夫かな?

その瞬間、内部がグネグネと動きだし、私の腕を締め付ける。


「あぁっ!!!あぁあああああ!!!」

そして私は記憶が一斉に降り注ぐのを感じた!

「ロロアちゃん!!?」


「きゃぁああああああ!!!」


それは記憶の書かれたトランプが一斉に一つの所に重なるように、私の頭に入って行く。


胸のライフコアが輝き、被る事の減ったヘッドギアが連動してガラクタの中から輝いていた!


メリルやクラスメイトとの日々。

紅茶の味。

チームガンバとの日々。

ZM-200(ニイさん)とZM-300。

真夏さんの顔。

テリンコさんの顔。

女性隊員の青い目。

パワーマン。

戦場の死臭。

生きたまま体をバラバラにされる感覚。


あの時の憎悪と恐怖が私を支配する。


バチン!と言う音と共に私の頭で白い稲光が走り、私はうつ伏せに倒れてしまった。

不思議なのは、その時とても『気持ちがよくて』て私は体を丸くしながら暫く眠ってしまった・・みたい。



「ロロアちゃん・・ロロアちゃん・・」

クマぬいぐるみのママだろうか。

私に心配そうにキスをする。

「ロロアちゃん、大丈夫か?」


「う・・うん・・パパ?」

私は薄目を開けると、パパが心配そうに覗きこんでいた。

右手でパパの頭を触る。

「パパ、髪が生えてきて・・良かった。」

「・・・!ふふふ、そうだね・・。よし、おいでロロアちゃん。よいしょ!」

私はパパに抱き抱えられると、リビングに向かう。

パワーアームを付けているのか、パパの腕がしなる音がした。


「ロロアちゃん、重くなったな。」

「それはバスターのせいよ。パパ、ごめんなさい。またバスターに触っちゃった。」

「ふふふ。でも、やはりバスターがトリガーだったとは。解析して、トリガーだけ抽出できないか挑戦したのだが・・」


テーブルユニット付近で立たされ、私は自分の体の異変に気付いた。

少し骨が太くなったと言うか、丸みを帯びたと言うか。

背も少しだけ高くなった気がする。


「・・パパ、チームガンバの皆はどうしたの?」


ママがヴィシソワーズとパンを出してくれて。

遅めの晩御飯になった。


パパも椅子に座り、その後の事を話してくれる。


「あの後、ロボット達の猛攻があり。一般人である僕に避難勧告が出たんだ。

チームガンバはその後・・」

パパは淡々と語りだした。

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