青派の若者達(2)
ブルーシグナルズの歌声が聞こえる・・。
それから僕はタルマとヒサヒコの率いるタケノコ族の集会に参加した。
巷では、僕ら学生の中でエレフィックサウンズが大流行し、その流行に拍車をかけるように若者がツイストと言うダンスを歩行者天国で踊ったのだ。
広場に突如としてオートマタのアイスクリームの営業用の車が止まり、スピーカーから大音量の音楽が流れる。
そして僕らはそれを聞いて集まり、突然踊り出す。
それは、まるでタケノコが予期せぬ所からピット(コンクリートの意)を突き破って生えて来るようにゲリラ的に行い、やがて蜘蛛の子を散らすように解散するのだ。
統制への抗議、戦争への抗議、進路への抗議、暴力への抗議、金銭の抗議。
皆、少なからず社会に不満があり。
レールの上を走るだけの平等すぎる世界に疑問があったのかもしれない。
または、ただ騒ぐ口実が欲しかったのか・・。
僕はタルマやヒサヒコ達が踊るのを見ながら最初は、控えめに手拍子した。
もちろんタバコに火を灯すのもかかせない。
大音量の音楽を流すアイスクリームの営業車の前に陣取り、タルマが音楽に負けじと叫ぶ。
「なぁ!!このダンスはなぁ!!前の先輩が試験をサボって踊り出したのが最初らしい!!それでな!?試験の結果はどうだったと思うー!?」
「不合格ですか!?」
「ところがな!!合格したらしいぜ!!試験の競争なんて共民主義には無かったのだ!!本当に馬鹿馬鹿しいだろ!!!」
「それは馬鹿馬鹿しい!!!」
「だろ!?だから・・おい!!踊れよトオル!!お・ど・れ・よ!!」
「えーっ!」
僕が迷っていると、他の人達もワラワラと集まりだす。
「トオル!シェイク!シェイク!!」
「うーむ。よおーし!!僕も踊ります!!」
「そうこなくては!!!おぉーい!シャイなトオル様のお通りだー!!みんな道を開けろーー!!」
「や、やめてください!!」
「トオル!これから俺らは共民主義者の正当なる答えで答えであり同輩だ!
一生に一度しかない人生だ!!楽しもうぜ!!」
「おー!!」
僕が見よう見まねで踊りだすと
「トオルって言うのか!!俺はゾーン1から来たアルガだ!よろしくな!!」
「私もゾーン1から来たミドリよ!一緒に踊りましょう同輩!!」
「その服は何ですか??」
「この服は沈没した人(社会的にドロップアウトした人の意)の古着よ!こうしてパッチワークして繋いでも何もアウトじゃないのよ!」
「すげーー!!」
「じゃあ、仲間に入れてやるよ!!皆で踊ろう!!」
「今度、私たちのゾーンでも踊りがあるの!!あなた方も参加して欲しいわ!!」
「ガッテン承知の助!!みんなで踊りの輪を広げるぞ!!」
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それから僕らはタケノコ族から『ゾーン2学生連合』を発足。
それはエレフィックサウンズの熱狂的なビートのように驚くべきスピードで急成長し拡大してゆく・・。
学生連合 機関紙
『はらはらでぃー』の年表だ。
3015年 4月
アルムシュアの戦いにおける兵器の製造を容認。
カルダ派の議員がコーディアスの議員数名が労働中に牛肉を焼いて会食している件を追求。
さらに、タイムカードを偽装して違法に定休を得ている疑惑を突いた。
3015年5月
権利保護団体のエルディア・ルメイがコーディアス国内の汚職を指摘。
支持率の急落に伴い、皮肉にもアルムシュアの戦いの一派であるカルダ派が議席をおさえる。
3016年 4月
カルダ派の議員が大統領に就任。
戦争部品の供給に本格的に方向転換。
アルムシュア特需と言われた戦争特需による好景気になる。
3017年9月
旧コーディアスの議員の大規模な労働調査が始まる。
カルダ派の法律の改正により労働違反者の大規模粛清が行われる。
それと同時に民間企業でもお互いを監視する社会が産まれ『窓際族』と呼ばれる年長層のイジメが深刻化した。
権利保護団体のエルディア・ルメイが民間で行わぬよう訴える。
3019年12月
若者達の間でエレフィックサウンズが流行り、歩行者天国で『タケノコ族』なる団体が現れる。
就職適正試験の出席をしない学生達が連日奇行を行う。
3020年4月
タケノコ族の学生らが『ゾーン2 学生連合』を発足。
一部、破壊活動が認められたため取り締まりを行う。
エルディア・ルメイを逮捕。
歩行者天国の廃止と大規模集会を禁止した。
3020年 7月
取り締まりに抗議した学生が警察官と乱闘。
警察官の所持していたスパークピストルを何者かに奪われた為問題となる。
『ゾーン2 学生連合』の内部で内部抗争が勃発
。分裂を起こす。
また、メディア内において好感的な報道がされなくなり、より有害音楽や悪影響として取り上げられる事が多くなる。
3020年 11月
コーディアス国内において有害音楽による取り締まりを強化、エレフィックサウンズの父ことトゥルーマン・エディオンと仲間のアステロイドを拘束。
その際、仲間のアステロイドがスパークピストルを向けた為、警察官によって破壊された。
しかし防犯カメラによる解析の結果ライフコアは青であり、スパークピストルではなく所持していたのはキーボードだった。
3020年 同月
・・・
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「・・よって、警察組織による弾圧は多岐に渡り、我々の師と呼ぶべきトゥルーマン・エディオンと仲間のアステロイドがイレギュラーとして拘束され、破壊されたのである!これはロボットの命を軽視した犯行であり、共民主義へ冒涜である!!」
ヒサヒコが集まった有志の氏達に語りかけた。
そこに武闘派であるアルガが加わり、様々な地域の同輩達がオンラインで僕らの言葉を聞いていた。
「俺らは国を変えていかなければならない!もうタケノコ族の時代のように『ダンスで抗議する』と言った時代は幕を閉じたのだ!国の規制が厳しくなった今、俺らは武装し共民革命戦士として動く時が来たのだ!
今なら、アステロイドの殺害事件で警察への批判も高まってきている!俺らはこれに乗じて民衆を味方につけ新しい国を構築しようではないか!!!」
僕はカナコちゃんの手を握って2人の演説を聞いていた。
僕らは学校を卒業した後、就職せずにそのままタルマや他の同輩と『学生連合』の活動に従事した。
生活は、ラオミャン屋からさほど離れていない貸し倉庫の中にパーテーションで仕切って共同生活を送り。
コーディアスの現状を世界に発信し、本当の共民主義は何たるかを世界に問うた。
「それで僕らはこれからどうするんだ??」
「同輩トオルよ。いい事を聞いた!」
「これからメディアに俺らの行動を知らしめる!!まずは警察の抗議としてカルディア学校、ザマ学校他55の施設を占領する!!俺らはブルーシグナルズと言う軍団を組織し、自由を奪われた者達の弔い合戦を行う!!全ての命に平等を!!全ての民に平等の評価を!!!」
「おーーー!!!!!」
男達が工場用のヘルメットを叩き、破棄されるはずの団地から来た老人達が万歳した。
す、すごい!!
僕は学生達、民衆の生命の強さに驚いた。
これから僕らは国と言う巨大な組織に喧嘩を売るのだ。
「素晴らしい演説でしたわ・・。」
「キュラーさん!」
「みんな!!遠いメルヴィアの国から来てくださったキュラーさんだ!!俺らの金銭的なスポンサーをしてくれている!」
「キュラーさん!?」
「みなさん、キュラーさんに会って居なかったね・・。」
キュラーは白いツナギを脱ぐとみんなに挨拶をした。
その身体はピンクの光沢があり街骨格は鎧のようだ。
顔は緑の長髪で普通の女性のそれだが、どことなく人間らしさがない神々しさがあった・・。
「初めましてコーディアスの同輩達よ!わたしはアステロイドのキュラーです。マット博士の使いで参りました。」
「アステロイド!?ロボットか?」
ヘルメットを被った男が騒ぐ。
「はい。私の故郷のメルヴィアではロボットの共存が進んでおり、私はマット博士の思想を国外に広める活動を行なっているのです。あなた方の足音は既にメルヴィア国内に響き渡り。あなた方の活躍に共に立ち上がらんと言う血気に満ちています!共民主義のエネルギーがメルヴィアを革命へと目覚めさせているのです!!」
「おぉ!」
「おおお!!」
「メルヴィアでそのような事が!!」
「えぇ!わたくし達は『志す者』に出資を惜しみません!さぁ、革命を!!」
男達の勇ましい労働の歌が倉庫にこだまする。
『剛鉄を叩く音がする♪ 東の国から西の諸国まで♪
人々は歓喜し、理想郷と呼ぶだろう♪我らコーディアスの大地を!!この大いなる思想を!!♪
剛鉄を精錬する音がする♪北の要塞都市から南の密林まで♪
人々は歓喜し、教えを乞うだろう♪我らコーディアスの教育を!!この大いなる思想を!!♪』
僕はその熱気から逃れるように非常口を出て、錆びついたシガーボックスからタバコを取り出し。
咥えて火をつけた。
「うっ!!ゴホッゴホッ!」
そして灰皿にタバコを立てると香りを聞きながら歩く・・。
薄暗いオレンジの灯の鉄の階段をのぼり、倉庫の上にある職員の詰所が並ぶ廊下を歩く・・。
電気が非常灯しか付いていないのは電力を大量に使うと怪しまれるからである。
「トオルさん!!」
「カナコちゃん!」
声がして振り返ると暗闇から月明かりのようにボヤッと、カナコが現れた。
白いツナギは何処かブカブカで、新春の風のような良い匂いがした。
僕はこうして放浪しているのが少しだけ恥ずかしくなる。
「どこにいるかと思った!トオルさんも革命の熱気に冒されてしまったの??」
「ん?うん・・。」
「それは・・?」
「・・革命の匂いだよ・・。」
「ふぅん。」
カナコが髪の毛を耳にかけるとタバコの小さな光を眺めた・・。
僕はカナコに隠すように歩き出す・・。
カナコも後を後についてくる。
男達の歌声が小さく響き・・。
ふと見ると、詰所にマイキーがいた。
「あっ!!!マイキー!!」
「あっ!トオル!!トオル!トオル!トオル!!カナコ、カナコ、カナコ!!」
マイキーは僕らのチームの最年少の戦士だ。
いつも革製のクッションヘルメットを被り、僕の胸くらいしか背がない。
「トオル!ブルーシグナルズの旗を作ったんだ!!見にいこう??」
「旗ぁ?」
「軍旗だよ!!早く!」
マイキーに引っ張られながら詰所の中に入る。
すると火炎瓶が蝋で封をされた状態で大量に並べられていた・・。
他にも盾や金属を研いだ手製のナイフ。
アルコールを蒸留するための機械が並ぶ。
詰所にいる同輩達は僕の持っている『タバコの火気』を警戒し、小さく囁き合う。
ちなみに蒸留して芳香剤で香り付けしたものは飲みやすく、他の同輩の取引の物品としての需要があり、火炎瓶や爆弾の作り方を『はらはらでぃー』で共有することで組織としての統括がしやすくなった。
皮肉にも、学校でBSSした兵器を組み立てる知識が僕らの革命の手助けに一役買っているのだ・・。
「じゃじゃーん!」
「おぉお!!」
パチパチパチ。
マイキーが軍旗を得意げに広げ、カナコの小さな拍手が静かな詰所に響いた。
大小の青い歯車が2つ噛み合って描かれたシンプルな旗だ。
同じ青でも色の濃淡があるので歯車の影にも見える。
「これはマイキーが考えたのか?」
「うん!!みんなで絵の具で描いて出し合った!最後に僕が生き残った!」
マイキーは拙い言葉で得意げに説明すると鼻の下を掻いた。
「すごいねマイキー!おねえさん、尊敬するわ!」
カナコに頬を撫でられ照れるマイキー・・。
「大学を攻略したら、これを掲げよう!」
「おう!約束する。ヒサヒコやアルガ達にも伝えよう!」
僕はマイキーに約束した。
「この旗が、世界にはためくといいわね・・。」
カナコが僕に言う。
「うん。メルヴィアも共民主義を積極的に取り入れていると聞くし、僕らの未来は明るいね。」
「そうね・・。」
タバコの煙が終わり、僕は年季の入ったパイプ椅子に腰をかけた。
これから大変な事をするのだ。
カナコは僕を見ながら火炎瓶が積まれている物騒な箱に腰をかける。
「ねえ、トオル君。大学を占拠したらどうするの?」
「僕らの思想をメディアに報道してもらう。人質をとり、アルムシュアの戦争の加担をやめさせる。暴力は暴力しか産まない。僕らが世間に気づかせてやるんだ。」
「その先は?」
「警察組織を解体し、政治家を全て処刑する。」
「その先は?」
「僕らが政治を動かし、コーディアスに絶対的な平等をもたらす。」
「その先は?」
「へ?その先!?」
僕はカナコを見た。
僕の間抜けな顔が火炎瓶にいくつも映った・・。




