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青派の若者達

メルヴィアと同じ中立国の、コーディアスと言う国があった。

彼らは後の『青派』と呼ばれる過激派の前身であり、また自由と平等を愛する平和主義者でもあった・・。


共民主義国家 コーディアス

3020年 12月の事だ。


『アルムシュアの戦いに抗議する血気盛んな若者達が道路を埋め尽くし、ダンスをしています!!皆、白いツナギの国民服をだらしなく腰にまき、公共の場において禁止されている大音量でダンスしています!!』


モニターには白いツナギのアナウンサーが、ダンスをしている白いツナギの男を実況していた。

この国では服装による金銭格差は許されていない。

国民服と言う形で皆同じ服を着用するのだ。


「うおっ!!俺が映ってるぞ!!おい!みんな見ろよ!俺だぞ!!おれーっ!」


タルマは、カウンター席でラオミャンと言う麺料理を啜りながら箸でモニターを指さした。

僕も麺を啜りながら厨房上に突貫で付けたモニターを観る。

他の人達は老若男女問わず肩を寄せあい、狭い席でラオミャンやチャーハンを食べている。




コーディアス国 ゾーン2にある工業集合住宅。


ゾーン1とゾーン3の工業地帯を通る滑走電車の下に法定外の味付けの美味しいラオミャン屋があると聞いてタルマと来たのだ。

破壊された輸送車に様々な廃材で組み合わせた粗末な店で、店主は極めて古いタイプのメカニロボで皆から『高架下のジッちゃん』と呼ばれている。



僕は国民学校の15年生で、タルマは16年生で来年就職だ。


僕は3月3日なので『トオル』と言う名前にあたり、

ゾーン2の上下2500階建ての巨大円型団地に住んでいる。

ファクトリーと呼ばれる施設で人工授精を経て同じ部屋に住み。

1年生から16年生で脳内に機械のノウハウを徹底的に脳内にBSSして学習する。


体力の差はあれど、みな平等の学習を受け、みな同じ集合住宅に住み、みな同じ賃金を得て、みな同じ所に就職するのだ。


食事はマンション内のフードボックスから配給され、

7時に滑走列車の迎えが来て、17時に終わる。

門限は20時で、22時には就寝だ。

服装は国民服である白のツナギに安全靴を着用し、髪型は男女共にモミアゲをカットした七三分けだ。


女性と判別するにはツナギの腰に付いているヒラヒラ(外す事もできる)を見るか、『3月3日の名前』でトオルではなく『トオコ』なら女性と分かる。


何も不満がない究極に平等な世界。

それが 共同民主国家 コーディアスだ。


はっきり言ってタルマが何に不満を持っているかわからないが、どうやら中立国だった筈のコーディアスが兵器の製造に着手し、その見返りを『インテリ(お偉いさん)』が得ているのが気に食わないようだ。


「おい!若者よ!もっと食え!」

「えっ?ちょっ!」

ボーッとしていたらタルマがチャオズーをラオミャンに放り込んできた。


「若者ってタルマさんも若いでしょうが!」

「いや、トオルの方が若いって!あっ!!カナコちゃーん!!」

タルマが後ろの4人席に手を振る。


カナコちゃんは色白の肌に青い瞳をしており、恥ずかしそうに黒髪の七三分けを直すと控えめに手を振った。

あんな綺麗な人がラオミャンを啜っている。

僕は暫く見とれてしまった。


「見過ぎだバカヤロ!」

「いて!」

「カッカッカッカ!」

タルマは独特な笑い方をしながら僕を見る。


「そうだトオル、ヒサヒコん家に来いよ?良いもん見せてやるよ!」

「えっ!?今からですか?というかヒサヒコって誰??」


僕は腕時計を見た。

時間は18時だ。

余裕はあるが大丈夫か?


「門限には帰してやっから!心配すんな!」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫!大丈夫!ちょっと待ってな!・・おっ。しもしもー?ヒサヒコー?・・今から行っていい?うん。うん。大丈夫だよ!信頼できる奴だから!」


タルマは何やらリモコンに話しかける。

どうやら学校にある内線を改造して持ち運びが出来るPHSにしたようだ。

ヒサヒコはよっぽど僕を疑っているように見えてPH S越しにタルマに聞いている・・。

ハッキリ言って疑われてまで行きたくないのだが。


「トオル!大丈夫だってよ!」



はぁ、付いて行って大丈夫かなぁ・・。

僕は不安になりながら『ヒサヒコん家』に行く事にした。



『1人が社会の為に、1人が国の為に』と書かれた飛行船がサーチライトで照らされ。

勇ましい労働の歌が流れる街を歩く。


『到着マデ10秒!!・・・3・2・1。到着!!』

上にレールが付いた滑走電車が時間通りに到着し、労働者達に紛れて乗り込む。


白のツナギが汚れている者が多い・・。

その中に疲れてくたびれた男もいれば、電車の広告を見ている奴もいる。


さて、彼らを見てどんな印象を受けるだろうか?

僕はツナギが汚れるほど精進し、コーディアスの為に貢献した良き労働者と感じる。


しかしタルマからしたら『社会に疑問に思わず、下を向いて働くアリん子』として映るらしい。


『コノ電車ハ、18時30分0秒ニ到着シマス。皆様ノ心掛ケデ早ク出発デキマスカラ。ゴ協力ヨロシクオ願イ致シマス』


電車のアナウンスが機械的に流れた。


車窓には電子基盤のような工場群と巨大な高層団地があり、様々な配管とパイプの間から安全灯の光りが点いている。

何かの企画に乗っ取った何かの企画の作りなのだろう。

しばらく眺めていると窓が曇り『社外秘』の文字が浮かび上がる。

別に気になんねーよとツッコミをいれる。


滑走電車を降りたらガラスのトンネルをずっと歩き、しばらくしたらエレベーターだ。

円型団地の中心を行き来するエレベーターは部屋の廊下まで来てくれて、僕に帰る口実を与えなかった。

ヒサヒコは2100号室に住んでいるらしい


『 入室を許可します 』


許可が降りて、玄関の扉が開く。

するとすぐにタオルを頭に巻いた仏頂面のヒサヒコが現れた。


「えっ。おわっ。」

ヒサヒコは僕を押しのけて廊下を見る。

「・・誰にも付けられてないよな?」

「大丈夫だよ!ヒサヒコ!まさか俺らがタケノコ族だなんて知られてねーよ!」

「バカ!」

ヒサヒコはタルマの頭を叩くと、いいから入れ!と乱暴に招き入れた。

間取りは、玄関をぬけると一直線の廊下があり右に浴室。

前にリビングがある。

左にはフードボックスと言う引き出しと、使用済みの服を入れるリネンボックス。

またトラッシュボックスと、清掃用メカニロボが行き来するボックスがある。

前方のリビングは6畳ほどの扇状で広い窓があり、壁からワイヤーで吊るして収納も出来るベットがある。

床から3尺(900ミリ)ほどだせる収納棚兼テーブルもあり、ベットと棚を収納してしまえば支給品のラグマットと椅子しか部屋に残らない。


極めてシンプルで無駄のない部屋。

当たり前だが、うちと変わらない・・。


「本当に信用できるんだろうな?」

「大丈夫だーーって!トオルは国民学校の一個下だし、スパイじゃねーよ!」

「・・・ふむ。メルヴィアに住むキュラーさんが『タバコ』と『酒』を持って来てくれた。やるか?」

「おう!」


「タバコ??酒??」

「知らないよな?主民主義の文化らしいぜ?」

「へぇ。」


「諸君、革命の匂いだよ」

ヒサヒコがタバコに火を点けると白い部分を咥えて思い切り吹いた。

タバコはオレンジに燃え上がり、頭がクラクラするような臭いを発する・・。

そして火のついたタバコを専用の皿に置くと、部屋中に匂いが行き渡るように手で仰いだ。


タルマは天井から液晶板モニターを出すと『ツクシ族』と呼ばれる男たちが一心不乱に街で踊る無音映像を映しだした。

映像はかなり不明瞭で、時折り早回しにしたように狂ったように動く。


白いツナギに青いラインが入った警察隊がメガホンで何かを呼びかける。

しかし男たちは街の中で踊るのをやめない。


「エレフィックサウンズ!」

「へ?」


その瞬間リズミカルな音楽が鳴り、映像の男たちがこの曲に合わせて踊っているのだと瞬時に理解した。


ドゥン、チャッツカ、ツカ、ツカ!!

ドゥン、チャッツカ、ツカ!!!

タチツテト、タチツテトテト、タチツテト!


と言うリズムの後にタチツテトの支離滅裂な言葉の羅列が続く。

「トゥルーマン・エディオンの『シティ・クライ』だ。意味がわからないだろう?」

ヒサヒコが僕に言う。

「わからないです。」

僕はヒサヒコとタルマに言った。


もちろんトゥルーマン・エディオンの曲もそうだが、彼らのやっている活動そのものが意味がわからなかった。

街の中で踊る?だから何だってんだ。

こんなことしている暇があったら国の生産性を高めた方がよっぽど効率的ではなかろうか?


「あのな・・おどろくなよ?俺らの言語は『規制』がかかっているんだ。」



「え??だって、今こうして喋れるじゃないですか。」

「それはそうだが違うんだよ。トゥルーマン・エディオンの相方にアステロイドがいるのだけれど、コイツがもともと翻訳用のメカニロボで『歌詞に使えそうな下品な言葉』を翻訳してトゥルーマンに繰り返えさせたら『タチツテト』に強制的に変換されたらしい・・。つまり俺らの中で潜在的に言語統制が行われているのだ」」


「そんでできたのが『シティ・クライ』!言語規制を皮肉った魂の叫び。共民主義国家の叫びって訳だ。」

タルマは膝をパン!と叩きながら一升瓶に入っている酒を注いだ。




「魂の叫び・・・!!!」

「そうだ!トオルも気付く筈だ。『この国の嘘』に。そしてトゥルーマンの発見した言語統制の中で俺らはこの国の腐敗を見たのだ。

この国は共民主義ではあるがお互いを監視せずに馬鹿みたいにお互いを信用し切っている。

俺らが汗水垂らして働いている横で、水で顔を濡らして汗と見立て、楽して甘い蜜を吸っている人間がこの国にいるのだ。

そしてソイツは甘い蜜を吸っているのを悟られないように『言語統制』を行うことで反乱分子を芽生えさせないようにした。」

「トオル。メディアも学校の教育も嘘っぱちだ。信じられるのはレールからハミ出たもの。この国のあり方に疑問を感じた者だけだ!」


タルマとヒサヒコが僕を見る。

タルマが僕に畳み掛ける。

「さあどうする?このまま国の下僕として死ぬまで働くか、戦争に加担している国に対抗してインテリ社会に革命を起こすか?どっちにするね??」

「えええ。急に言われても・・。。うーーむ。」

僕は灰皿に置かれたタバコを見ながら悩んだ。

ヒサヒコがコップに注がれた酒をクッと呷る(あおる)。

酒を呷る時も僕から目線を離さず、そこには男らしい強い決意が滲み出ていた。


おそらくタルマ達の縁を切れば、僕は将来はおろか最後まで安定した毎日に戻れるだろう。


将来。


それは、国民学校を卒業した先輩と同じ道だ。


その先、40歳の先輩のように愚痴を言いながら仕事をし。

60歳になったら若い世代に疎まれながら軽作業をするのだろう。


そして最後。


僕はこの部屋で死に、清掃ロボットに清掃されて一生を終えるのだ。


ほら、リビングの隅に排水溝があるだろう?


あれは、最終仕上げで洗浄した時に洗剤を流す穴なんだと。





窓を見ると都市内を流れるスチームが四角い集合住宅の間から湧きあがっていた。

あの住宅は築年数が経っているので、住人が消滅すれば解体されるだろう。

今も僅かなオレンジの非常灯が各部屋に疎らに点いていて、内部を循環する筈のスチームが道路に放出されているのだ。

中の人は暖房設備も受けられず、再開発の名の下に餓死するのである。


『♪〜〜。♪♪〜〜。門限、15分前ニナリマシタ。外出サレテイル方ハ、タダチニ帰リマショウ。規律ハ皆デ守ルノガ規律ト言フモノデス。』


「あーあ。門限だとよ。」

「ふう。」

タルマがぼやき、ヒサヒコがため息をついた。


「なんか。さいあせん。優柔不断で。」

「優柔不断も甚だしいよ」

ヒサヒコがため息をつきながら言う。


「そうだトオル。今度タケノコ族の集会に来いよ。カナコちゃんもいるぜ?」

「へ!?カナコちゃんもですか!?」

「おう!あの店に来るってことは大体『そう言うやつ』なんだよ。きっとトオルも気分が変わると思うぜ?」

「はい・・。」


僕はラオミャン屋に居たカナコちゃんを思い出していた。

正直、アルムシュアの戦争に加担しているからと言って僕からしたら遠い国の話だ。

それに、そこまで僕は社会に対して不満を持っているわけではない。

しかし僕の心の中で、カナコちゃんの存在が気になっていたのだ・・。





※※※


『アルムシュアの戦争に対して、抗議のダンスが続いていますがどう思いますか??街行く労働者に聞いてみましょう!』


『いやまぁ・・。いいじゃあないですか。若者のエネルギーの発散がたまたま戦争反対に行ったのでしょうから。

まぁ、なんですか。私にもそうした頃もありましたし。

社会に対して ナニクソ! って思うのは一つの通過儀礼のような物ではないかと思うのですよ。まぁなんですか。温かく見守ってあげても良いのではないでしょうか。ね?』


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