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ブルーシグナルズ戦

連れ拐われたメリルと、それを追うロロア。


彼女すら知らない秘密兵器が炸裂する中、ロロアはブルーシグナルズに囚われたメリルを助けに行く。

「・・・ここは。」

「ハナゾノ・メリル。起きたみたいね。」

「はっ!・・くっ!!」

気がつくと私は後ろ手に拘束装置が付けられていた。

目の前にはフードを被り、電子音声の女性がいる。

古びた制御センターのモニターには何も映っておらず、代わりに歯車が真ん中に描かれた青い旗が貼られている。


そっか、私はロロアちゃんが心配で追いかけて来たのだ・・それで連れ拐われたのだ・・。


「大丈夫。私たちはあなたを傷つけたりしないわ。私たちは『ブルー・シグナルズ』。政府に異議を唱えるものよ。ここに居るのは『メロデアス新聞』の記者 サルダさんと有志の者達の20人。みんな政府の『暴力的な政治』に辟易しているの」

「ブルー・シグナルズ?」

「そうよ。知らないかしら?」

「・・すいません。」

「あなたSNSやSNSS(ソーシャル・ネットワーク・サイバー・スペース)をやっていないの?」

「母に禁止されているので・・」


「世界の情勢を見せないワールドブラインドの家族。メルヴィア国の衰退・・。」

私が答える間もサルダは写真を撮りながら表紙のタイトルのような言葉を呟く。

時より、ホログラム用の間隔の短いフラッシュが何度も焚かれ私は目を背けた。


「まぁ、ミュラー派の人間は世界情勢を知らないでしょうね。青派であり音楽で反戦を訴えたトゥルーマス・エディオンを知らないでしょう?」

「わかりません。」

「メカニロボに人権を訴えたエルディア・ルメイは?学校で習わなかった??」

「わかりません。」

「あきれたわ!ロロアのスクープ記事より『メルヴィアにおける小学校の教育現場』を取材した方がいいんじゃなくて??まさに『教育の失敗』!無知からなる『無言の暴力』!!」


「一番の被害者はメルヴィア国民ではない。メカニロボの人権や負の歴史を学習させないミュラー大統領にあるのだ。この子らも被害者だ。サルダ、これも記事にしてくれ『メルヴィアの子ども涙の訴え。教育機関への絶望』」

屈強そうな体格の、ローブを纏った男が私を覗き込みサルダもローブから右手を出して一生懸命頭を叩いて記憶する。

「私は被害者でもなければ、大統領に失望なんてしてません!」

私は少しムッとして男に言った。


「そうやって人間は嘘をつくんだよな。」

「アルガ、あなたは黙って頂戴。」


どうやら屈強そうな男はアルガと言うらしい。

腕や仕草を見る限り、みんなメカニロボのようだ。

私を皮肉ったり何かを言うのは人間らしいけど、どことなく『余計な動き』がない。

もちろんロロアちゃんはつま先立ちしてつまんなそうにしたり、リクトに膝カックンしたりするけど。

それは極めて高度な行動であり、アステロイド級の電子頭脳の証拠なのだ。



「メリルと言ったなクソガキ。その落ち着きぶりは『自分は法律で守られている』とか思っているのだろう。」

私はクソガキと言われてピクンとする。

『クソガキ』は倫理法にある禁止しているワードの一つだ。

「お前はメルヴィアと言う国に護られ、温室で育てられた『ウィジット(メルヴィア国内で存在する汚い言葉)』だ。自分の『ウンコ』すら見た事がない平和でクリーンな世界で育てられたアルダンス(性奴隷に近いもっとも汚い罵り言葉)なんだよ。」

男の口からあり得ないほど汚い言葉が発せられ、私は驚いて怖くなった。


未成年者誘拐は宇宙島流しに匹敵する極刑だ。

そうだ。

それを集団でやってのける団体、そんな団体が私やロロアちゃんを無事に済ませる筈はないのだ。


「おぃサルダ!チームガンバが兵器を携えて来たら真っ先に撮影するぞ?見出しは『武装したチームガンバ。暴力と独裁にまみれたミュラー大統領』だ!」

「これは明日の見出しになりそうですね!」

「そうだとも!マージンはブルーシグナルズか、マット博士の選挙事務所に入れておけよ?個人献金はなしだ!」

「はい!」


「おっと、そうだ。メリルのお嬢さん。その手錠はオモチャだ。外したい時にいつでも外せるからな。俺は確かに言ったぞ?皆も聞いたな?」

「聞いた聞いた!」

「記憶しました。」

「ふふふ。聞いたわ。」


私はあたりを見回すと手錠が本当に外れるか力を入れてみる事にした。

が・・。

『ハード・・ろっく・・アクティベイト・・』と言う古ぼけた機械的な音声とともに手に激痛が走った。

「い!!!!くくく!!!」

痛みのあまり、足の指に力は入り歯を食いしばる。

「ふははは!間に受けてやんの!!」

「ははははは!」

「ほほほほほ!!」

メカニロボ達は制御センターの机をバンバン叩きながら笑った。

私は悔しさのあまり涙が出た・・。

こんな人達が大統領を批判しているのだ・・。

こんな人達が反差別や暴力を訴えているんだ・・。


「ロロアちゃん・・!」

私はどうしたら良いか分からず。

ロロアちゃんに助けを求めたい反面、もしもスクープ記事としてロロアちゃんが見出しに載ったらと思うとゾッとした。

この人たちはどんな偏見記事にするか分からない・・どうしよう・・。

私は涙で歪んだ無機質な床を見ながら考えた・・。



**************



「『第110管区』ニュートリノ発電所から供給されていた工場ね・・。暴動の発生後、第90管区から第200管区内のメカニロボは全て破棄されたと聞いたわ・・。」

「破棄って、ゴミとして棄てるって事?」

「そうよ。でも、そんな政府のやり方に異論を唱え、稼働電力が供給されていない工場を高値で購入する組織が現れた。それが」

「ブルーシグナルズ・・。」

「そうね。」



私はチェイサーと言う滑空式飛行バイクに乗ってメリルの待っている『第110管区』を目指していた。

いくつもの摩天楼の照明が通り過ぎ、夜風がヘッドギアから出た髪を揺らす。

お尻に当たるエンジンの振動が、軽快にイオンサイクルを回転している事を私に語りかける。

ダッシュとはまた違う疾走感と一体感が心地よい・・。



ルルリアと相談した結果、通信が出来るママにだけ言おうと決めた。

暫くママは考え込み・・やがてワープを伴わない『第110管区の行き方』を教えてくれた。

バイクの乗り方はBSSで脳内にダウンロードして覚え、こうして夜に遠出しているのもパパには内緒だ・・。



「ブルーシグナルズはメカニロボ達のライフコアの色から来ているの。ロロアちゃんが産まれるずっと前の時代、1体のアステロイドがコーディアスと言う国の警察官に『イレギュラー』として破壊されたの。」

「原因は?」

「分からない。一説だとトゥルーマン・エディオンと言う歌手と『風紀を乱す音楽』を作ったからだと言われているわ。

トゥルーマンは未成年者を誘導し、政治活動を伴う署名活動を行った為『禁錮13年の刑』に処された。


アステロイドは任意同行の際に抵抗したため取り押さえられたが、その時抵抗したためCPUごと撃ち抜かれて破壊されたのね。」


「なぜ警察官にしたがわなかったの?」

「わからない。警察側は、アステロイドは武器を持っていてライフコアが赤かったから身の危険を感じ正当防衛を主張した。でも・・」

「でも・・?」

「防犯カメラの解析の結果、アステロイドのライフコアは『青』だったの。持っていた『武器』はただのキーボード。その一連の事件と、ロボの不当な扱いに抗議したのが『ブルーシグナルズ』と言うわけ。」


「でも、抗議する事は悪くないわ?」

「そうね、でもねロロアちゃん。彼らは『一番最悪な方法』で抗議したの。」

「・・・何をしたの?」

「『抗議』と称して街中を破壊し、殺戮して回ったのよ。コーディアスは警察組織の壊滅した無法地帯となり、やがて『アルム派』として各国で同盟を組む事で軍を要請し無理やり解決した。戦争に加担する見返りに、治安を維持したのよ。しかし、結果的にブルーシグナルズは海外に散り散りになり、その過激な思想は『青派』と呼ばれ政権を揺るがす勢力となった。一見すると善意ある思想だけど、それだけに討伐が難しくタチが悪いの」

「そのリーダーは何処にいるの?」

「リーダーはいないわロロアちゃん。『青派』は思想なの。誰しもが抱き、誰しもが仲間になり、誰しもが参加できる。いわば便利さを追求しすぎた結果に出る不純物。すすみたいなものね。」


道路が海辺を通り、電気の付いていない薄暗い工業地帯を駆け抜ける・・。

私はすこし動揺しながらアクセルを捻る。



「それじゃあ、倒しようがないじゃない。私はメルヴィア国内に居る目に見えない敵と戦うの?」

「ううん。違うわロロアちゃん。ミラー大統領はそんな貴方に『お守り』を用意したの。『特別警護要人』。つまり、ロロアちゃんは政府に特別的に護られる存在であり。有事に関しては武力も行使できるの。」

「それって・・・。」

「ロロアちゃんが危害を加えられたと感じたら、その場で射殺ができる。あなたの全ての破壊は正当化され、あなたの殺戮は正当防衛が適用される・・。ロロアちゃんミラー大統領の御守りを正義に使いましょう?」

「うん!私、正義の為に使うよ。メルヴィアに誓って・・。」

「さすが私の娘ね・・!さぁ、第110管区が近い!そこを降りて?」

「わかった!」



私は道路を降りると、荒廃した工場に続く道を走った・・。

道には六角形の白い灯が道路を照らし、運転用メカニロボが乗ったまま破棄されたタクシーや、燃えた看板が落ちている・・。

吐息が白くなり、環境維持装置すら働いていないことがわかる・・。

おそらく産業部分を司るガイアコアをフォレストマンが盗み出したからだろう・・。


「ロロアちゃん?作戦はさっき話したわね?」

「うん!ママを通風ダクトに侵入させて私が敵を誘き寄せる。」

「そうよ。危なくなったら撤退して?」

「もしも作戦が失敗したら?」

「それは聞かない約束よ?」


チェイサーを減速して慎重に工場内を見てゆく・・。

その時だった!!

「はっ!!!ロロアちゃん。正面の工場に大きな生体反応あり!」

「えっ!?きゃあ!!!」

ミサイルが私の右横を掠めて大爆発を起こした!!!

「わわわわわわ!!」

「ロロアちゃん!!それアクセル!!きゃあ!!!」

その反動でアクセルを捻ってしまい、暴走したチェイサーが私を振り下ろすとウィリーをしながら明後日の方向に走り出してしまった!!

そのバイクを目で追いかけるように、凄まじい金属音を出しながら巨大な兵器が動き出す。

そして、チェイサーが兵器の足の間をすり抜けると、工場の門に激突して爆発を起こした。


「ロロアちゃん!!隠れて!二足歩行兵器ルーマよ!!」

「ルーマ!?わわわっ!!」

二足歩行兵器ルーマは私たちの声に反応してガトリングガンを連射する!

私は飛び退くと、破棄されたトラックに隠れて腕をバスターに切り替えた。


震えながらトラックの隙間からルーマを見ると、サーチライトを点けて炎上するバイクを見ているようだった。


巨大な脚の二足歩行で、右にガトリングと左に小型のミサイルを搭載し、機銃の付いたコックピットが剥き出しになっている。

どうやらメカニロボが1人だけ乗っているようで、操縦桿を交互に動かしていた・・。


「どうしよう?ママ・・。」

「落ち着いてロロアちゃん。いまバスターを使うと後々面倒な事になる気がするわ・・。ポイズンバレットを使いましょう。」

「ポイズンバレット?」

「バスターをポイズンバレットに切り替えて?」

「うん。」

私は瞳の中に映る映像が『R バスター』から『P バレット』になるのを確認した。装弾数は6発らしい。


「じゃあ、慎重にコックピットを狙って?」

「うん・・。」

心臓を止めてフィンに切り替える。

バスターをトラックの接合部に固定して深呼吸した。

ルーマは後ろを向いて相変わらずバイクを調べている・・。

「すぅーーーー。」


ブシュン・・!


「・・・はっ!」

バレットを放った瞬間、ルーマが振り向き、咄嗟に隠れる・・。

サーチライトが照らし、次に光学迷彩探知用の青いライトに変わる。


「ママ・・当たったのかな・・。」

「命中したわ・・お見事、ロロアちゃん。少し待ちましょう。」


私はその場で腰を掛け背中のリュックからティーカップを出した、ママが右手からココアを出す。


「ロロアちゃん。これからは寒冷地用の液をいれないといけないわね・・。」

「こんなバスターがあるなんて知らなかったわ・・。」

「ミラー大統領とパパが改造したのね・・。」


私はココアを眺めると一口だけ口にした。

ママはトラックの隙間からルーマを見ている・・。


ルーマはバイクの鎮火を見届けた後、あたりに放置されている廃車の一つを巨大な足で小突き始めたらしい。


いちごジャムの挟んである小さなクッキーを食べる。

見上げるとママは観察したまま微動だにしない。


「ママ?ポイズンバレットの事だけど・・」

「ポイズンバレットは極小の、二重構造の徹甲バスターよ。これで軍の重装歩兵も破壊できる。」

「当たるとどうなるの?」

「高出力の極小弾丸は鋼鉄の装甲を貫通するわ。着弾した瞬間ーーーー」

「は・・っ」

機械の音がして私は思わず振り向いてココアを溢す。

ルーマが脚を折りたたみ、兵士が降りる準備を始めたのだ。


「な・・何かがおかしい。少しの間離脱する・・!!」



私はママを見た。

兵士は梯子を転げるように落ち、門の横にあるドアまで這いだした。

「着弾した瞬間、二つ目の弾丸が放物線を描き、回転しながら内部に侵入するの。最後の弾丸は貫通力が無く、もれなく内部を出口を探して彷徨うの・・内部機関をズタズタにしながらね。さぁ、行きましょう・・!!」

ママが私の背中に飛び乗り、バスターを構えて飛び出した。


「ぐあああああ!!!!誰か助けてくれ!!!」

兵士が必死にドアを開け、反り返りながら悶絶を始める。

私は兵士の落とした銃を突きつけ言った。

「メリルの場所を言いなさい!!」

「そんなもの知るか・・・アールズ、ルグ(これで勝ったと)・・・アンダーヒ(思うなよ)!!!!」

兵士は私の襟を掴むとアルム側の言語で叫んだ。

そして・・。

「ぐええあああああ!!!」

「きゃっ!!」

ブシュアッ!と言う音と共に胸が破裂して絶命した・・。


「コェアッ・・ペッ!」

私はポイズンバレットの破壊力に驚きながら、口に入った兵士のオイルを吐いた。


「それじゃあ、作戦通りに・・ロロアちゃん、ルーマを動かして好きなだけ暴れなさい。メリルを助けたら信号を送るわ。ロロアちゃん?」

「うん・・。」

「メリルの為よ?」

「うん。頑張る。」


私は口を拭うと立ち上がり、目の前で跪くルーマを見た。


さぁ、私に楯突いたブルーシグナルズに醒めない悪夢を見せてやろう。

私は誓い、ルーマに飛び乗った。


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