せんそーはんたい。
ロロアとストリームマン。
お互いの戦争が始まるカウントダウンに入る。
「ストリームマン様。メルヴィアからメッセージが来ました」
「ふ。読まずとも結果は見えているわ。」
ストリームマンは白鳥型戦艦・ホワイトスペクターの自室でメルヴィアの降伏を認める書状を書いていた。
そこへ作戦参謀のフクロウ型アステロイドのアウルと、ツバメ型アステロイドのツェッツが報告しにやってきた。
ホワイトスペクターの周りにはマンタ型大型爆撃機が4機飛行していて、ホワイトスペクターの周りをダイヤモンドフォーメーションで展開していた。
マンタの背中には鳥型戦闘機が飛び立てる状態で20機ほど待機し、メルヴィア上空に飛来して闘えるウィング達が100人程乗船。
ニュートリノ発電所から敗走してきたZMシリーズのロボット達は、投下する焼夷弾を磨いたり願掛けの餅の制作に回されていた。
ホワイトスペクターはパワーマンが破壊されて以来メルヴィアの領空外のすれすれを飛行し、幾度とない挑発行為を繰り返してきたのだのだが今回は全ての艦隊が合流してメルヴィアの最終警告として領空内に入る計画だった。
「それが・・ストリームマン様。」
「ん?どうしたツェッツ?」
ツェッツがアウルを見る。
「それが・・メルヴィアが・・」
「メルヴィアが戦線布告を宣言しました。」
「な、なんだと!?」
「は、はい。それで・・。メルヴィア側は以下の兵器で攻めて来ると。」
アウルはストリームマンの書状を退かすと、テーブルにディスクを入れてホログラムを映し出した。
そこには2双式輸送機と、その下に1人しか乗れない小型機が付いていた。
「ストリームマン様、メルヴィア側は『アルムシュア条約』のもと爆撃機や戦闘機を所有してはいけません。また、奇襲も条約違反になるため、情報を開示してきたものだと推測されます。」
「つまりメルヴィア側は『これで攻めてくるから待っていろ』と言いたいのだな?」
「つまりそう言う事です。2双式輸送機にはスパークライフルが二丁あり。下に付いている小型機には女の子が搭乗予定だそうです。」
「女の子?」
「ロロア・フローラウス・メリアス。人間の住民票を持っている人間の女の子です。」
「その女の子はなんなんだ?」
「わかりません。小型機に炸薬は積まれていませんし。用途は不明です。おそらく脱出用の舟かと。」
「パワーマンを破壊したのは子ども型だったと噂があるが。」
「ストリームマン様。人間の住民票を持ったハルミオ小学校に通う5年生の女の子ですよ?人間の女の子にそんな事はできませんよ。」
「対空距離の届かない高角砲に、なけなしのスパークライフルに、脱出舟に乗ったガキ。随分なめられたもんだな。」
「ええ。」
「我が艦隊に擦り傷も負わす事すら出来ません。」
「ふふふ。アウルよ、我が艦隊の兵装をメルヴィアに送ってやれ。人間の知能がメカニロボくらいあるなら少しは無謀な作戦だと理解出来るだろうよ。」
「はっ!」
「仰せのままに」
「トントン。失礼しやす。餅を持ってきやした!」
「はいれ!ちょうど腹が減っていた所だ。あと、トントンは口で言うもんじゃない!」
そこへZM-300(ミーさん)が突きたての餅を持ってやってきた。
「ストリームマン様、ご要望通りつきたてでさぁ!」
「うむ。アウル、ツェッツ。紹介しよう。ZM-300のミーさんだ。ニュートリノ発電所ではパワーマンの右腕をしていたらしい。」
「なるほど。ボスの右腕が今では餅つきとは!」
「ストリームマン様の餅を突けるとは光栄な事でさぁ!」
「あー、そう言う考えもあるか(汗)」
ツェッツが意地悪く言うも、ミーさんは事務的に紅白の餅を切り分けはじめた。
やはりZMシリーズの性分か、ミーさんは焼夷弾の磨き上げや餅つきを嫌がる事なく行うのだった。
「時にミーさん、このメルヴィア側の作戦を見て思う事はあるか?」
ストリームマンがメルヴィア側のホログラムを見せながらミーさんに聞いた。
ニュートリノ発電所の戦場で戦った事のあるミーさんなら、メルヴィアの戦い方で分かることはあるのではないかと思ったのだ。
「へ?あっしの意見を聞くんですかい?うーん。ロロアちゃんが可愛いとしか思いませんで。」
「ロロアちゃんは人間の女の子なのか?」
アウルが聞く。
「えぇ。えぇ、そうですとも。クマのぬいぐるみの『おっかさん』をつれて発電所に来たんでさぁ。それで・・」
「なんだよ。人間かよ。これ以上の雑談はしなくてよろしい。」
「とっとと帰った帰った。」
「ちぇっ。これからが話のミソで・・」
「そんなくだらない話は他所でしなさい」
「今は大切な作戦中なのだ。帰った帰った。」
「ちぇー!」
アウルとツェッツは『ロロアは人間である』と分かるや否や続きを聞く前にミーさんを追い出してしまった。
彼らは、ぬいぐるみを抱いた女の子が発電所に遊びに来た話だと勘違いしたのだ。
「ミーさんの会話を聞いて分かるように、人間の女の子と見て間違いはないでしょう。よって脅威とみなしません。私のコンピュータによると、この2双式輸送機になんらかの仕掛けがあるものと予測します。」
「つまりロロアはカムフラージュと?」
「そう推測します。たとえ近づいて来たとしても内部スキャンを行なってしまえばわかりましょう。もしも破壊兵器が見つかれば『アルムシュア条約』の契約違反。これはメルヴィアの国としての地位を失うのみならず、国としての失墜を意味します。いずれにしてもメルヴィアの勝利は考えられません。」
「ではなぜ、我々に抵抗するのだ?」
「おそらく・・そうですねぇ。メンツの問題でしょうか。」
アウルは嘴に手をあてると考えながら言った。
※※※※※
道徳の授業になった。
先に先生が『ささいなことで喧嘩したら』と言うタイトルの電子教科書を読み上げる。
「・・つまり、仲の良かったヒロキとマモルは飼育小屋でどちらがウサギの世話をするかという些細なことで喧嘩してしまったのです。困りましたね。
メリルさん?あなたは友達と喧嘩した時、どうしますか?」
「は、はい!?」
メリルがすくっと立ち上がって質問に答える。
「がんばって、メリル!」
私が応援すると、メリルは前髪を何度も直しながら考えた。
ハルミオ小学校は夏休みが終わり、3学期にはいった。
ミラー大統領の『メルヴィアはいかなる場合でも反対勢力に屈しない』のスローガンは大々的に発表され、街の神社に高角砲やパラボナビームを配備していた。
皆も定期的に空襲に備えて避難訓練をし、私は校庭にある二双式輸送機の下の小型機に乗る準備をしている。
先生曰く、ストリームマンが領空に入り攻撃して来ないと反撃に転ずる事ができないらしい。
とても歯痒い事だけど、これがメルヴィアの現状なのだ。
本当だったら今すぐ飛び立ってストリームマンをギャフンと言わせたい所なのに。
「え、えーと!まず『現状を検索』をして・・」
ユミルが電子教科書の横にあるタブレット端末で検索をして読み上げる。
「え・・えっと・・。私だったら花を贈ります。ケンカは良くありませんし、これからの人間関係を構築する上でケンカと言うのはとても非生産的です。」
「・・俺、花なんて貰ったことないけどな・・」
「クスクスクス・・。」
リクトが横でぼやくので私は笑った。
メリルが席に着いてキッと睨む。
そういえば友達とケンカした時どうしていただろう?
私は考えてみる。
「ルルリアさんはどうですか?」
「はい、先生。私の経験から話しますと、特に答えは無いと思います。友情は信頼あってのものです。信頼があるからこそ、私達は言葉にせずとも仲直りできるのではないでしょうか?」
「そうですね、素晴らしい意見です!でも、皆さん聞いてください。信頼と言うものは経験や歴史がなければ得られません。
たとえばメリルさんのように仲直りの際に花を贈ったとしましょう。マモルは花を受け取り『仲直り』する事で信頼が生まれるでしょう。
また、ルルリアさんのように、もともと2人には動物を飼育すると言う目標があり、お互いに同じ目標を共有しているからこそ自然的に仲直りできたかもしれませんね。いずれにしても、そこには信頼と言うなの経験があり人間関係を構築する上で極めて重要なエッセンスであると思います。」
「せんせい!」
ガキ大将のダイチが手を挙げた。
「はいダイチ君」
「じゃあ先生、僕らメルヴィアがストリームマンの空襲に怯えていますが、同じように仲直りする事はできるでしょうか?」
先生は驚いた顔をし、他の生徒からどよめきが聞こえた。
「それは・・そうですね。この教科書では可能と言えます。喧嘩と戦争は如何なる時代の文献を調べても『自分達が正しい』という認識から生まれています。それは人間が『善悪』言う2つに分けた時から始まり、神代の時代から現代に至るまで戦争の引き金になっています。」
「じゃあ、僕らが間違っているのですか?僕らはロロアちゃんと模擬戦をして、戦闘に送り出した。それは喧嘩を外野から囃立てるのと同じではありませんか?」
「・・・」
ダイチが先生を見る。
黒板のディスプレイには様々な時代の戦争の映像が映り、先生はコクンと息を呑んだ。
「しかし、戦争と喧嘩の違いはあります。戦争はたくさんの『矢印』を持った群衆によって起こされている点です。その矢印は一本では折れてしまいますが束になれば絆となり、強い信念となります。矢印と矢印の矛先が向かい合えば・・分かりますね?」
「はい。」
「我が国、メルヴィアはアルムシュア条約のもと、2つの矢印には関与しない政策を取ってきました。この平和を絶やす事なく、新しい選択をする事もメルヴィアに求められる事なのではないでしょうか。」
「新しい・・選択ですか?」
私が先生に聞く。
「えぇ、ロロアちゃん。新しい選択です。あなたの右手に付いているバスターは、きっと傷つける以外にも可能性はある。私はそんな気がしてならないのです。」
私は校庭を見た。
校庭ではマナツとテリンコが輸送機に付くスパークライフルを機銃として改造していた。
本当に出撃する事が正しい選択なのだろうか?
私は考えた。




