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小さな戦線布告

パワーマンの撃破と言う突然の事件に動揺するストリームマン。


メルヴィア国立公園でロロアは小さな選択をする。



パワーマンが撃破された。

そして、ニュートリノ発電所が奪還せしめた情報は、ストリームマンを初めとする全ての反乱軍と、撤退していたキグナス率いる艦隊にまで轟き、大きく動揺させた。

特にストリームマンの動揺はかなりのもので。

発電所の詳しい様子を聞こうと、敗走したロボ達をストリームマンの本陣があるホワイトスペクターに乗せて目撃情報を募るほどだったと言う。




「なぁ、聞いたか?」

「聞いた、聞いた!」


「パワーマンが・・!」

「パワーマン様が!」


「破壊されたと!!」

「破壊されたそうだ!」


「それも女型アステロイドだと!」

「は?女型のメカニロボと聞いたが?」


「身の丈は8尺(2m400)あまり!」

「いや、140センチと聞いたが?」


「なに?そんなに小柄なのか?」

「あぁ。発電所から逃げて来た奴から聞いた!!」


「いや、それはおかしいってもんだろ?」

「なぜに、なぜに?」


「そんな小さな体じゃ、パワーマンを見たらチビッちまうよ!」

「そうだな!そうだな!」


雀型アステロイドのウィング達が噂話をする。


白鳥型戦艦ホワイトスペクター内、空が一望できるセンターホールでは、たくさんの帰還してきたロボ達を集め『パワーマンを破壊したロボ』のホログラム描写(人相描き)が行われていた。


人相描きをしているフクロウ型アステロイドのアウル。

そして軍配を持ち、イライラした顔をして玉座に座るストリームマンがいた。



ストリームマンは雄の鶏の頭の二足歩行型アステロイドであり、空軍のシンボルである巨大な翼と。

鳥類型アステロイドの頂点としての鶏冠(トサカと肉ぜん(顎)を付けていた。


装甲車をも貫く着脱式の強靭な爪をもっていて、鳥類型アステロイドの伝統的な決闘や式典で用いる為に装置している。


ストリームマン配下のウィング達も空軍である血筋と鳥類型アステロイドである事に強い誇りがあり、翼の手入れや装飾品の飾り付けに余念がない。


キグナス艦隊が撤退し、一応の軍備が揃っている今。

メルヴィアを恐怖と力で屈服させて、絶対的な優位性を持って対話の座を儲ける。

ウィング達は如何に自分を大きく見せるか、絢爛で勇敢に見せるかに心血を注いでいた。

その中でストリームマンだけが得たいの知れないロボット『ロロア』の存在を警戒し恐怖していたのだった。




「ところでアウル。メルヴィアの外交官は対話に応じたのか?」

「いえ、ストリーム様。人間は対話どころか我が軍が手土産に渡した兵器をニュートリノ発電所から 鹵獲(ろかくし、それを町中に配備しています。」

「メルヴィアの民は対話する気は無いのか!?」

「そのようで。」

「メルヴィアのアバズレめ。ロロアの懸念がなければ直ぐにでも陥落できるのだが・・。そっちがその気なら、こちら側にも手はあるわ。」

「ストリーム様、どのようにお考えで?」

「砲をくれてやるのよ!我が軍事力を見せつける。さすれば、ロロアとやらも黙ってはいないだろう。さらに応じなければ街を焼き払い、メルヴィアのシンボルを赤く塗ってくれるわ。」

「さすがはストリーム様。」

「ロロアの警戒も怠るなよ?」

「仰せのままに。」



※※※※※※※※※


今日はユミルとメリルとリクトで夏休みの自由研究に外に出かけた。

みんなで課題を決めてタブレットに写生し、データと感想を添えて記事にして提出する。


メルヴィア神殿の外にある国立公園。


外はカラッと晴れているけど、すごしやすく。

耐熱性の体とあって気持ち良い天気だ。

「ロロアちゃん!よお!」

「あ、リクト!!」

「もう体は大丈夫なのか?」

「うん!」


「ロロアちゃん!」

「メリル、ユミル!こんにちは!」

そんな会話をしてメルヴィア神殿駅の転送ステーションから皆で歩く。


ユミルはタブレットの他にピクニックバックを持ってきていた。

きっと3時のオヤツにはケーキもあるだろう。

なんだか突然日常に戻ったので少し頭が混乱した。

「リクトは何描くの?」

「俺か?うーん、高角砲かなぁ。滅多に見れるもんじゃないし。」

「こうかくほー?」

「知らないのかロロアちゃん?ストリームマンがこの街を狙っているらしい。だから街の至るところにパワーマンが持っていた武器を配備するって話らしい。」


「ストリームマン・・!!」

私が言うとメリルが腕を優しく握ってくれた。

メリルの手を触ろうとした時、無意識にバスターになっている事に気付く。


「大丈夫だロロアちゃん。これだけ沢山の武器があればストリームマンなんてへっちゃらだって!ストリームマンはキグナスの部隊の裏切り者らしいし、そんなに脅威じゃないってニュースでもやってたぜ?」

「そうなんだ。」

「ま、ロロアちゃんが訓練したいなら相手になるけどな!俺の目標はロロアちゃんを最強のロボにする事だから!!」

「言ったなーリクト!」

「おぉっ!?やんのか!??」

「はいはい、ロロアちゃんもリクトも落ち着いて!じゃあ、高角砲のある展望台に行きましょう!」

「「はーい!」」


私達は散策コースを歩いて展望台に向かった。

少し登り坂なので私がピクニックバックを持ち、リクトが私のタブレットを持ってくれた。


時より翼の生えた女性の像や石畳のサークルが苔の生えた地面から顔をのぞかせる。

「あれは何?」

「あのサークルは、月明かりの下で踊るための舞踏場ね。メルヴィアは月の化身でもあるから巫女達が踊ったのかもね。」

「ふーん。」

遊歩道からは見えないが、かなりの遺跡が眠っているようだ。

たまに工事用メカニロボ達が資材を運んだり木を伐採している。


ユミルとメリルはタブレットをかざして道端にあるコントロールパネルから遺跡の歴史をダウンロードして見せてくれた。

リクトは飽きてしまったようであくびをする。



「ふぅーーついたぁー!」

「くはぁー!」

「じゃあ、準備をしましょ!」

メリルが一番開けた場所を探して手を振る。


私がシートを広げるとリクトがテントを組み立てだした。

テントと言っても1人が入れるくらいの白いキャンパス地で三角形の簡単な奴だ。

ピクニックバックを置き、お洒落なティーカップやブリキの古びたラジオを置く。

ユミルが絶妙に配置を変え、メリルが(さすがユミル、分かってるぅ!)と言った。

  


「なぁ、ユミルとメリル?毎回思うんだけど、この世界観ってなんなのさ?」

「えぇ?逆にリクト『なんなのさ』と疑問に感じるなら普通のピクニックって何?」

「普通のピクニック?」

「そう!私たちのやっていることにが普通じゃないと感じるなら、普通のピクニックと言う物差しで見ているリクトが、そもそも間違いなのよ。」

メリルがバターナイフを向けながらリクトに言った。

「ははぁ、意味分かんねーよ。」

「おあいにく様。ロロアちゃんをロボ扱いする方が普通じゃないわ!ねえ、ロロアちゃん?」

「私は、ロボでも人間でもいいけど・・」

「そんなんじゃダメよロロアちゃん!」


「う、うーん」

私は両手を見た。

そう言えば、私は自分がロボなのか人間なのか深く気にした事は無かった。

物心ついた時から病院にいたし、今はこうしてメリル達と遊べるのだし・・。


「ま、とりあえず宿題終わらせて飯にしようぜ!」

リクトが会話をきりだす。

「ティータイムねミスターリクト!」

「わかったよメリル。ロロアちゃん、高角砲のあたりまで競争な!」

「うん!」

リクトが私が頷くとすぐに走りだした。

私も走りたくてウズウズしていたのでリクトに続く。


土や芝の匂い、太陽の匂い。

無限に走れる足。

疲れをしらない体。

リクトやユミル。そしてメリルやクラスメイト。

私は全てが愛おしくて、嬉しくて。

リクトを抜かすと誰よりも早く展望台のある丘に向かった。

丘の上には小さな木造の展望台があり、その少し離れた遺跡の石のサークルの中心に、3メートルくらいの砲身が付いた高角砲が空に向かって伸びていた。


「ぐぁああ!!ロロアちゃん早え!!はぁはぁ!」

「私に勝つなんて200万光年はやいよ!」

ようやくリクトが到着し、私はリクトとハイタッチをした。

心臓のフィンも穏やかで、息もあがらない。

メリルやユミルは歩いて来るみたい。

そうだ写生に良いポジションを探しておこう。


「メリアス氏の娘さんだね?」

私が振り返ると他所行きのパパみたいな格好(モーニングにシルクハット)をした白髪の男性が居た。

黒い高級車が高角砲の影に停まっていて、山高帽の気品のある格好の男の人達がこちらを見守っている。


「えっと・・どちら様でしょうか。」


リクトがチラッと私を見ると(ワァアッ!)と驚いた顔をして駆け寄った。

「ロロアちゃん!はわわわわ!」

「リクト?お知り合い?」

「お知り合い?なんてもんじゃないよ!!メルヴィア第15代大統領、ヴェルナー・ド・ミラーだよ!!」

「大統領!?」

私は驚いてミラー大統領を見た。

「ははは・・こうして驚かれると少し照れくさいね。そう、私が15代大統領のミラーだ。お初にお目にかかれて嬉しいよ、ロロア・フローラウス・メリアス。そしてカガミ・リクト。」

大統領はそう言うと私の背丈くらい深々とお辞儀をした。

私はどうしたらいいかわからずリクトを見る。


「ロロアちゃん」

「はっ、はい!!」

「この間はパワーマンを討伐してくれて感謝する・・。おりいって話したいのだが。実はここに居るのは偶然じゃないんだ・・。私は直接君に頼みたいことがあってここに来たのだよ・・。ふぅ。」

「はい・・何でしょうか?」


私が聞こうとした矢先、高角砲の周辺に軍用機と、パパのサポートカーが飛来した。

「パパ!ママ!マナツさん!テリンコさんも!」

「ロロアちゃん!」

パパがクマさんを抱えながらサポートカーから降りてきた。

「ロロアちゃん!意識が戻ったみたいだね!」

マナツさんが私に言うとテリンコさんがバツの悪そうに小突いた。


皆が私の前に集まる。

そして、なんとなく私に言いづらそうに上を向いて遠くを見る・・。

きっと私にしか出来ない事を頼みにきて、きっと私が想像するより切迫しているのだろう。

なんとなく察しがついて私は吹き出した。

「ぷっ!あはははははははは!」


「ロロアちゃん!」

リクトが驚いた顔をする。

「だって!みんなリクトが先生に叱られた時と同じ顔をしてるから!ふふふふふ!」

「ロロアちゃん、俺の名前を出すのやめて!」


「ひとまず笑顔で安心したよロロアちゃん。マナツ君。説明を頼む。」

ミラー大統領が具合の悪そうに座り込む。

脳内検索(BSS)で調べたのだけどミラー大統領には私と同い年の娘がいるらしい。

きっと私と娘を重ね合わせたのかもしれない。


「ロロアちゃん。現在のメルヴィアの状況をおさらいするね。」

マナツさんがテリンコさんと移動式ボードを広げた。

気付いたらメリルが後ろに居て心配そうに私の腕を握る。

「まず、世界は聖地バルバモンガを中心にして、アルムとカルダという二大勢力に分かれている。一連の戦争を『アルムシュアの戦い』と呼び、我が国メルヴィアは中立国と言う立場にある。中立国である以上、大量破壊兵器、大規模作戦部隊、大規模動員兵器の使用と製造は『アルムシュア宣言』の元、実質禁止されている。我が国は条約を守り200年もの間平和を維持してきたんだ。わかるね?」

「はい。」

「昨今のパワーマン達によるロボットの武装決起は、そんな我々の不意を突いたものだった。それ故に、我々は彼らに対抗する十分な兵器や人員を用意できず。また、兵器の大量輸入や製造は条約上できない。チームガンバはあくまで国内の治安維持組織であり、武器や弾薬は治安維持に必要な物しか輸入できない。。ロロアちゃんが居なかった初期のニュートリノ発電所では、しかたなくアルム側から野戦砲を輸入したんだ。」

「はい。」

「しかし、問題はそこからだった。アルム側の軍勢のキグナスの艦隊がパワーマンの討伐に協力を表明した。チームガンバが押されていたので我々の中では朗報ではあったのだが。アルム側はパワーマンの討伐に利子をつけてメルヴィアをアルムシュアの戦いに巻き込もうと画策しているのは明白だった。

しかし、アルム側のキグナス艦隊の1人であるストリームマンが謀反を起こしキグナス艦隊は戦いの末に撤退。

パワーマンの軍勢が増えるも、我々は大規模な戦争に加担する事を回避できたのだ。そして。ロロアちゃんが現れた。」

「おぉ。」

「ロロアちゃんは民間人としてチームガンバと共に戦い、パワーマンを撃退した。アルムシュア宣言で武器の無い我々の希望の光となったのだ」

「・・・」

「いいかい?ロロアちゃん。俺らは国際法上、これ以上の戦力の増加はできないんだ。しかし敵はそんな俺らを知っていて身くびってかかっているのは間違いない。敵の油断を利用し、敵の裏をかく。ロロアちゃんの戦闘を命にかえてでもサポートするから」


私と真夏さん達の間を強い風が駆け抜けた。

ふと胸に手を当てる。

胸のフィンの奥に、確かに動く心臓がある。

カイン博士が『人間に近いように』入れてくれた人工内臓だ。


・・本当だったら私の成長に合わせてパパが作ってくれた人間と同じ臓器の入っている体なんだ。

しかし私は、メルヴィアに居るどの人間よりも出来ない事をし。

メルヴィアに居るどのロボットよりも殺戮するのだ。


ふと音がして空を見上げると、一機のバード型戦闘機が太陽の光りでキラキラ反射させて飛んでいた。

「ストリームマンの偵察機ですね。」

「メルヴィアを、あんな低空で飛ぶとは・・」

「私達の軍事力を探っていますね・・」

「あんな物が低空で飛んでいると、こちらの士気が下がるな」

テリンコと大統領が囁き合う。

高角砲のロボット達は普通に作業している。


「ロロアちゃん、一度に沢山の情報を言ってしまったが大丈夫かい?」

「大丈夫です。後でBSSしますから。」


「それで・・ロロアちゃんの答えは?」

「この国は民主主義よロロアちゃん。何も今日決めなくても良いのよ?」

マナツさんとテリンコさんが私を見る。

メリルが私の腕を掴み、パパとママが心配そうに見ていた。

私は息を大きく吸ってマナツさんに聞いた。

飛行機は相変わらず上空を旋回している。


「ねぇ、マナツさん?」

「なんだいロロアちゃん?」

「あの飛行機、うるさいから撃ち落としてもいい?」

「えっ!?あぁ。そんな事出来るのかい?」

私は右手をバスターに変えると左手をそえて飛行機に狙いを定めた。

心のフィンが高まり心臓の拍動が聞こえなくなる。

暫く『人間でいる事』はおわずけだ。



「リクトと練習しましたから!これが私の答えです!」

「えっ!!うぉっ!!」

空間が弾けるような音と共に私の腕からバスターが放たれた。

正義の青いバスターは、綺麗な一直線の軌道を描きながら飛行機に向かう。

飛行機は一瞬たじろぐような仕草をし。

そしてカッ!と光ると翼の後方から黒煙が出た。

少し遅れて爆発音。


マナツさんが双眼鏡をむける。


飛行機は叫び声のような駆動音を出しながら燃え上がり、斜めに降下する。

そして森に突入すると鼓膜を震わさんばかりの大爆発を起こした。


大統領は爆発した飛行機を見ながら唸った。

「うむ。これがロロアちゃんの答えか!!」

「うん!」

私は大統領を見て頷く。


「よし。分かった!これからメルヴィアは総力を挙げてイレギュラーを叩く!!!チームガンバ全員に伝えよ!!これから反政府組織ならびにストリームマンに宣戦布告を通知すると!これが答えである!」

「「はっ!!」」


マナツさんとテリンコさんが敬礼をし、軍用機に乗り込む。

「ロロアちゃん!詳しい話は次回するから!失礼するね!」

テリンコさんが手を振り大統領も車に乗り込む。

「ロロアちゃん、戦う勇気をありがとう。ロロアちゃんの向かう所、私も行こう。責任は全て私が取る。好きなだけ暴れたまえ。」

「はい!」

「カイン博士、カイナさん。」

「はい。大統領。」

「あなたの娘さんは、愛国心にあふれた素晴らしい女の子だ。話がまとまったら、また話をしよう。」

「わかりました。」

「大統領、お元気で。」

パパの肩に乗ったクマさん(ママ)が手を振る。


車はボディーガードの車で編隊を組んで飛び、最寄りの高速道路に転送された。


「始まるな。」

パパが空を見ながら呟いた。

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