ロロアの復活(再始動)
カイン博士の新装置のもと、復活したロロア。
しかし、日常に戻ったロロアだったが・・。
2xxx年。
人類はロボット工学の発展と共に繁栄と栄華の絶頂にいた。
科学者マット博士のもと世界規模の都市計画事業が進められ。
空気から水を作り上げる浄水場。
地底のマントルから得られる火力発電所。
人工樹木のあるフォレストパーク。
スペースデブリを回収する宇宙要塞。
そして、未来の宇宙開発の基礎となる重力センターなど多岐に渡り、それを統括する優れた頭脳を持つロボットが作られていった。
そして理想都市『メルヴィア』。
そこはマット博士を初めとする優秀な科学者達が住む近代都市だ。
しかしそんな繁栄と栄華の中で労働ロボット達は金属疲労に体を壊し、過重に堪える。
やがてフォレストパークであがった小さな火はパワーマン、フォレストマン、ストリームマンのクーデターに発展する。
そして軍を巻き込んだ大戦争がはじまろうとしていた・・。
※※※※※※
私は緊張しながら、自分の名前が紹介されるのを廊下で待っていた。
心のフィンが鳴り、その振動が教室に聞こえてしまうんじゃないかとヒヤヒヤする。
「皆さん、ロロアちゃんの心をサポートしてあげましょう・・」
教室の中から、私の事を説明する声が聞こえる。
無理もない、私の体には深刻な病気があり。
おとうさんが新しい体に作り替えてくれたのだ。
きっと他の子達からしたら私はロボットに見えるかもしれない。
とても女の子とは思えない青緑の大きな足。
鎧みたいな腕。
赤いランプの付いた胸。
歩くと足に内蔵されたエアーで、皆と変わった足音だってする。
皆、私を見て驚くかもしれない。
恐がるかもしれない。
『ロロアちゃん、学校を楽しんできておいで。笑顔を大切にするんだぞ?』
お父さんに言われた事を思い出して、窓ガラスに反射させて笑顔を作った。
大丈夫、きっと私なら、大丈夫。
「じゃあ、ロロアちゃんが入りますよ!ロロアちゃーん!!」
「はぁーい!!」
先生に呼ばれ、私は意を決して教室に入った。
「ロロアちゃんが帰って来た!!」
「ロロアちゃーん!」
クラスメイトが私に手をふる。
なかなかの好感触だ!
教室は色とりどりの装飾でパーティーみたい!
私は少し安心すると皆に一礼した。
そして簡単な自己紹介をする事にした。
「 私は皆とかけっこしたり、体育を行いたいです。私は小さい頃から体が弱くて。
父に体を作ってもらい、こうして歩けるようになりました。
・・私を仲間に入れて皆でスポーツをしてくれたら嬉しいです!宜しくお願いします!」
私は緊張しながら一礼する。
すると弾かれたように1人の女の子が駆け寄ってきた。
「ロロアちゃん・・私、ハナゾノ・メリル。覚えてる?」
女の子が目を見開きながら自己紹介する。
私がよっぽど珍しいらしい。
「ハナゾノ・メリルさんね!!私の名前は、ロロア!!よろしくね!!」
私が自己紹介するとメリルさんは私を見たまま唇をワナワナと震わせはじめた。
そして顔をクシャッとさせる。
「ロロアちゃん!!!私だよ!!覚えてないの!?」
メリルさんは私に掴みかかりそうになるくらい近くに行くと、もう1人の男の子に止められた。
「えっ!?えぇえ?」
私はキョトンとしたまま、教室を見る。
教室の子達は皆、泣きそうな顔をしている。
先生ですら口に手を当てて驚いている。
なにかの冗談?
「リクト離しさなさい!!ねぇ!ロロアちゃん!!ロロアちゃん、前に髪止めあげたの覚えてる!?ユミルと作った、キラキラしたヘアゴム!あげたよね?」
「ん?うーん。」
「俺、ロロアちゃんの事、ストロングってからかったよな?覚えてるか!?」
男子が言う。
「んんん。」
「綺麗な円を書いてクラスを驚かせたよね!?」
と女の子。
「えっ・・うん。」
皆が食い入るように迫り、私を見る。
「ご、ごめんなさい。人違いじゃ・・?」
そう言った瞬間、クラスの何人かの泣きながら嗚咽する声が聞こえた。
「私の名前は、ルル。メリルからロロアの事を聞きましたが・・まさか・・。これ程、残酷な事があるなんて・」
「ロロアちゃん!!あの日、急に大人の人に呼ばれて・・さよならも言わずにいなくなっちゃったんだよ!?もっと、もっと遊んであげれは良かったって後悔したんだから!!それで、それで何!?戻ってきたら!戻ってきたら私達の事、綺麗サッパリ忘れちゃうなんて!!」
「ロロアちゃん!!俺の名前はカガミ リクト!俺がもっと鍛練してあげてれば!最強のロボにするって約束したんだ!一緒にバスターを撃てる練習だってしたんだぜ!?」
「ロロアちゃん!私はユミルだよ!一緒にピクニックに行って美味しそうに紅茶を呑んでいたじゃない!!」
「わ、私は。A缶しか飲めません!」
それは流石におかしいので否定する。
私の体はロボットだ。食べ物を食べれる筈はない。
「ロロアちゃん!あなたは飲めるようになったの!すごく幸せそうにチーズケーキだって食べてたの!!・・うわーん!!ゴメンね、ロロアちゃん!!私が止めていれば!」
「わわっ!」
メリルさんが私を抱きしめると、
おもいきり泣いた。
私の肩の装甲にメリルさんの涙が当たる。
普通の人間だったら・・ここでもらい泣きでもするのだろうか?
私は悲しみや痛みの感情をどこかに置いてきてしまったみたいだ・・。
いえ、私にはびっくりするくらい心当たりが無い。
何も思い出せない・・。
何も思い出せないのだ。
「私・・帰ります・・。」
私は静かに言った。
心のフィンの音が聞こえるくらい静かな教室で、私は確かに言った。
「ロロアちゃん!」
メリルさんが泣きながら、私の頬を触る。
「大丈夫よメリルさん。お父さんに聞いてくる。だから、そんな悲しい顔をしないで・・。」
私はそういうと廊下を駆け出した。
昇降口を抜け、道路に出る。
そして、力の限り走った。
『 しっかりして!みんな怖いの!!強くなれ!ロロア!』
頭の中で誰かが叫ぶ。
私は駆け抜け、運送用のランナーメカニロボを抜かす。
『みなさん!ロロアの命を繋いで下さい!お願いします!!』
お母さんの声だ。
お母さんが・・なぜ?
私は車を抜かし、足はダッシュの状態のまま地面を滑るように走った。
『おう!!』
『おうよ!!』
『やってやろうぜ!!』
鎧と盾を叩く音。
私は頭の中に響く音を消すために、頭を
抱える。
いつしか足は地面を離れ、鳥達を越えて
大きなムササビのような形で飛行していた。
『ロロアちゃんに続けぇえ!!第一前線まで保護ー!!』
男達や女性の怒号、体を震わす砲撃の音。
「やめてぇええええ!!!」
私は頭の中の声を振り払うように白い空気の壁を作ると上空に旋回した。
雲を越えて大気圏が見える。
そして
地球の表面が見えた時。
右手を前に出し、左手を添える『あの形』を地球に向かってやった。
しかし、右手は右手だった。
この形・・なんで私はやったのだろう?
私は疑問に思ったまま、落ちた。
雲をぬけ、下が見える。
眼下に広がるメルヴィアの都市。
そして私は・・川に落ちた・・。
川底を蹴り上に上昇する。
川から出た瞬間、ボートがあったので掴みあげ、捨てられた廃車めがけて投げ込んだ。
廃車が爆発する。
私は無我夢中で石を掴むと炎上した廃車に投げ込んだ。
投げた瞬間、石がオレンジ色に熱をもち車を貫通する。
「あそこです!!」
「ロ、ロロア!!」
パトカーが数台来て何人か駆け寄る。
「どうしますか!?このままだと人間に危害が・・。」
「私の娘だ!話をさせてくれ!!ロロア!!」
私は石がなくなったので砂利や泥をかけた。
右手に何か感触があり、私は思わず振り払う。
「あぐっ!!」
「カイン博士!危険だ!!このロボットはイレギュラーの可能性があります!」
「やめろ!!私は大丈夫だ!話をするまで待て!!」
私は一心不乱に黒コゲになった車のパーツを引き剥がし破壊する。
リフレクトを破壊し、錆びたエナジーコアを引き摺り出す。
パワードレンを引きちぎり、叩きつける。
「ロロア!!ロロア!!お父さんだ!!」
エネルギーサーキュレーターを潰し、4輪駆動部を足で潰して破壊する。
雷雨が降りだし、私は髪を振り乱しながら破壊した。
「ロロア!!!」
パシッ!!
と言う音がして頬の痛みを感じた後、私は自分の作った泥だらけのクレーターの上に吹き飛んだ。
「いたい!!」
「ロロア!!落ち着け!」
「おとうさん!!私の記憶が変なの!!どうしたら良いかわからないの!!」
私はお父さんの後ろにあった岩を雷鳴に轟く雷のように真っ二つにした。
「カイン博士!危険です!!」
レーザーポインターに目がちらつき、気付いたら警官隊が20人ほど銃を私に構えている。
「やめろ!!分かっただろ?ロロア!破壊をやめるんだ!家に帰ろう!」
左肩を捕まれ、私は我にかえった。
「おとうさん!!きゃっ!?おとうさん!腕がっ!?」
「大丈夫だ・・。なんて事はない。」
私はお父さんに片腕で抱きしめられ。
濡れた白衣に顔をうずめる。
頭の中の声が消え・・ここで初めて自分が泣いている事に気付いた・・。
「おとうさん・・ごめんなさい・・。私・・自分が分からない・・。」
「家に帰ろう。ロロア・・。顔が真っ黒じゃないか・・。」
私はお父さんに抱かれたまま車に乗った・・。