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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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86/199

81 奴隷娘モニカ

-数分後

@レンジャーズギルド ロビー


「ーッ!!」

「ーー!」


 カティア達と合流しようと、ロビーに戻ったが、何やら騒がしい。公共の場で騒ぐなんて、碌な奴じゃないと思ったら、カティアだった。…正確には、カティアと知らない男が、何やら口論をしているようだ。


「そこをどけッ!僕はモニカさんに用があるんだっ!!」

「いい加減にしてッ!この娘、怖がってるわ!!」


 男は、モニカの知り合い?らしいが、当のモニカはカティアの背に隠れてしまっている。


「どうしたよ、揉め事か?」

「ヴィクター!ちょっと、コイツ何とかしてよッ!」

「誰だお前?」

「ほら、ヴィクター…オークションの時に、最後まで粘ってた…。」


 男は、モニカを競り落とす際に、俺に最後まで付き合っていた青年のようだ。


「僕は、チェスター・エコーレといいます!エコーレ家の事はご存知でしょう?」

「知らんな。じゃあな。」

「お、お待ち下さい!モニカさんの処遇について、お話を…!」

「人の所有物に、口を出さないで貰いたいね? 邪魔だから消えな?」

「所有…物…だとぉ!? 僕のモニカさんに、よくもッ!」


 チェスターは、俺の言い方が気に食わなかったのか、突如拳を振り上げて殴りかかってきた。だが、明らかに素人だ。

 俺は、チェスターの顎と鼻に、素早くジャブを叩き込んだ。チェスターは何が起きたか分からないのか、ふらふらと膝をつき、鼻血を垂らした。


「いつから()()()になったんだ?」

「う…うぐ…?」


 素人相手だから加減したが、チェスターは(うめ)いて顔を押さえている。


「何なんだ、コイツは…? 行くぞ、カティア、モニカ。」

「え、ええ…。」

「は、はい…。」

「ま、待て…まだ話は終わってない!」


 俺たちが、ギルドから出ようとすると、チェスターはふらふらと立ち上がり、おぼつかない足取りでついて来ようとする。


「待って…ぶげぇッ!」


 そして、俺たちがギルドの出入り口を出ると、俺は勢いよくギルドの扉を閉めた。扉の向こうから、何かがぶつかって倒れた音が聞こえてくるが、俺には関係ない。


 その後、車に二人を乗せて、ガレージへの帰路へとついた。その際、助手席に座るモニカが、広場に吊られている自分の父親を見て、涙を流した。


「お父さん…。」


 そう呟いたのを、俺は聞かなかったことにした。



 * * *



ー数十分後

@ガラルドガレージ


 ガレージに到着して、俺とカティアが、モニカに向かい合うようにテーブルに座る。


「あ、あの…?」

「先ずは自己紹介だな。…俺のことは分かるか?」

「は、はい…。ヴィクターさん…ですよね?以前私に服をオーダーしてくれた…その服、私が作ったものですし…。」

「覚えててくれたか。ああ、ついでにコイツはカティアって言う、一応この家の家主だ。」

「ついでって何よ!? ああ、よろしくね!」

「は、はい…。」


「「「 ……。 」」」


 気まずい。モニカは、父親の死体の前でオークションにかけられるという、トラウマ物の体験をしている…。俺もカティアも、かける言葉が見つからなかった。

 一方のモニカにしても、怯えたような表情をしていることから、これから自分がどうなってしまうのか不安だったり、父親が処刑されてショックを受けているのだろう。


 しん…と静まり返る中、どうしたものかと考えていると、意外にもモニカの方から沈黙を破ってきた。


「あ、あの…私はこれからどうなるのでしょうか?」

「ん?」

「父はヴィクターさん達に、多大なご迷惑をおかけしたと聞きました。わ、私はやはり…その腹いせに、酷いことを…ううっ…グス…。」


 モニカが泣き出してしまった…。俺とカティアで、(なだ)めようとするが、逆効果になりそうだったので、カティアのベッドに連れて行き、しばらく一人にすることにした。

 パーテーションの向こうから、すすり泣く声が聞こえてくる。




 しばらくして落ち着いたのか、モニカが戻ってくる。


「…落ち着いたか?」

「は、はい…。」

「で、これからの事だが…」

「ッ!」


 モニカが身構える。


「まずは、色々質問させてくれ。」

「は?はい…。」

「まず、家事はできるか?洗濯とか料理とか。」

「はい…ある程度でしたら。」

「よし、じゃあ次にモニカは何ができる?やっぱり服飾関係か?」

「そ、そうですね…他にもレザークラフトとかも…。」

「そういった仕事は、好きでやってたんだよな?」

「もちろんです!あっ、ごめんなさい…。」


 その後も、色々と質問していく。回答を聞く限り、やはりモニカを買って正解だったと思う。


「よし、決まりだな!」

「ねぇ、ヴィクター…スリーサイズとかカップ数聞いてたけど、必要なの?」

「必要です!」

「あっ、はい。」

「……。」


 質問の結果を踏まえて、モニカの今後が決まった。もちろん、カティアには説得済みだ。


「モニカには、この家の家事を手伝ってもらう。」

「…わ、分かりました。」

「ああ、それから俺たちに(かしこ)まる必要はない。あと、モニカの親父がした事と、モニカは無関係だ。その事で、モニカを責めたりはしない。」

「そ、それは…。」

「ああ、あとモニカには家事とは別に仕事をしてもらいたい。」

「し、仕事…ですか?」



 * * *



-2時間後

@ローザ服飾店


-カララン♪


「いらっしゃ〜い!…って、モニカちゃん⁉︎ それにヴィクターちゃ…さんも!」


 俺はモニカを連れて、モニカの元職場であるローザ服飾店へとやって来ていた。


「…話は聞いたわよ。モニカちゃん、ヴィクターさんが買ったんですってね?」

「ああ、だが酷い事はしない。安心してくれ。」

「そう…。まあ、ヴィクターさんなら大丈夫だと思うわ。モニカちゃんも、安心して大丈夫よ?」

「は、はい…。」

「…随分と信頼してくれてるんだな?」

「う〜ん、女の勘ってやつかな?」

(お前は、男だろうがッ!!)

「それにしても、挨拶に来た…って訳でもないんでしょ?」

「…ああ、そうだな。」


 俺は、モニカに以前と同じように、家事がない時は服飾関係の仕事をしてもらおうと考えていた。ただ、家事をさせるだけでは無く、あのガレージにモニカの工房を作り、そこで商品を作り出す事が出来れば、俺達の収入につながると考えた訳だ。

 幸いにも、ガレージにはスペースが充分ある上に、モニカもやる気だった。素材は、俺達が狩ってくれば皮革などの加工費だけで済むので、安上がりになるはずだ。


 モニカは、奴隷にとっては破格の待遇だと気にしていた。衣食住が確保してもらえる上、好きな仕事をやらせてもらえるのだから…。だが、彼女は別に悪いことをした訳では無いし、それだけの待遇を与えられる腕前があると俺は思っている。


 俺は、ローザにその旨を伝え、工房設置に必要な機材を扱っている業者などを聞きに来たのだ。モニカはただの職人だった為、必要な機材は分かっても、取り扱っている業者までは分からなかったのだ。


「なるほどね…。分かったわ!」

「…随分とあっさり了承してくれるんだな?」

「あらん、どうして?」

「いや…ライバルが増えるとか、自分のところの職人が裏切ったとか、色々考えるもんじゃないか?」

「あら、私がそんな小さい女に見える?失礼しちゃうわ!」

「わ、悪かったな。」

「それに…職人は腕で勝負するものよ?モニカちゃんには、負けないわよ?」

「…高尚な精神だな。尊敬するわ。」

「あら、ありがと! それから、モニカちゃん。」

「はい!」

「貴女が使ってた作業台…持って行って良いわよ?使い慣れてるのがいいでしょ?」

「ええっ!?」

「…いいのか?」

「餞別よ!ヴィクターさんのとこでも、頑張ってね!」

「はい!ありがとうございます!」


 その後、店の奥の作業場から、他の職人達がミシンや万力の付いた作業台を運んでくる。俺も手伝おうとしたところ、ガシッとローザに肩を掴まれた。


「…何だ?」

「ヴィクターさぁん、ちょ〜っと着てみて欲しい服があるの…♡」

「またかよ!?」

「ほら、今回は真夏のレンジャーをイメージした新作よ!きっとヴィクターさんに似合うと思うの!」

「また上裸かよッ!? 断る!」

「あら…でも、今回は断りづらいんじゃなぁい?」


 ローザは、モニカと職人達が、俺の車に作業台を分解して積み込んでいるのを指さす。


「く、くそぉ…!」



 その後、ローザ服飾店にローザの黄色い声が響いた。




-1時間後


「もう、絶対に着ないからなッ!!」

「そんなぁ〜!似合ってるのにィ!」


 まさか、上裸だと思っていたら、ボディペイントだったとは思わなかった。…いや、多分それにかこつけて、俺の身体を触りたかっただけだ、きっとそうだ。


「あ、そうだヴィクターさん!」

「何だよ!?」


 帰ろうとする俺を、ローザが制止する。


「チェスター・エコーレって方、ご存知?」

「さあ?男の名前は、あまり覚えておかない主義でね。」

「あら、嬉しいわ!」


 ヴィクターのこの言葉は、名前を覚えているローザを、男性とは認識していないという解釈ができるのだ。それに喜ぶローザと、何でローザが喜んだか分からないヴィクターであった。


「で、そのチェスターって奴が何だって?」

「ああ、そうそう。チェスターさん、悪い人じゃないんだけど、モニカちゃんのことが好きみたいでね…。以前から、モニカちゃんに会いにこの店に来てたんだけど、ちょうどヴィクターさんが来るようになる前に出禁(できん)にしてね…?」

「出禁?」

「出入り禁止!店に入らないでって事よ!」

「何したんだ、そいつ?」

「お店の商品を買わずに、モニカちゃんに会いに来たり、酷い時は店の奥の作業場まで勝手に入って来たり、他のお客さんがモニカちゃんにオーダーした服を、無理矢理買おうとしたり…。モニカちゃんの帰りを待っていた時もあったわね…。」

「ストーカーじゃん…。やべー奴だな…。」


 そういえば、さっきギルドで絡んで来た奴がいたな…。多分、あいつか?


「分かった、気をつけておく。」

「ヴィクターさんなら大丈夫だと思うけど、変にお金持ってるから心配なの…。変な事起こさないといいんだけど…。」

「ご忠告ありがとう。」


 俺はギルドを出て、ガレージへと戻る。街は、バザールで盛り上がっている。モニカの工房は、バザールが終わってからだな…。

ロゼ《また、ヴィクター様の女性が増えたのですか?》

ヴィ《…今さらだけど、もしかして気にしてた?》

ロゼ《はい?》

ヴィ《いや、ほら良くあるじゃん。主人の寵愛は私だけに!みたいな?》

ロゼ《いえ、むしろヴィクター様は、もっと複数の女性と関係を持つべきです。》

ヴィ《何ですと!?》

ロゼ《私はバイオロイドですので、ヴィクター様と子を為せません。繁殖は、生物の使命です。ヴィクター様には、減少した人口を回復させるべく、頑張っていただかなければ…。》

ヴィ(マジか…崩壊後って最高だな。)

ロゼ《…でも、たまには私も抱いて下さいね?》

ヴィ《…毎日でもいいよ?》


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