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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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84/199

79 換金

-翌朝

@死都 秘密基地


「グヘヘ…大金持ちらぁ〜…」

「はぁ、幸せそうな顔しやがって…。」


 あの後、既に夜になってしまっていたので、秘密基地で一夜を過ごした。カティアは、あれから目覚める事はなく、こうして朝までぐっすりと眠っていたようだ。

 だが、そろそろ起きてもらわねば困る。


「おい!カティア、起きろ!」

「うぇ!…ハッ、金は!?金塊はどこ!?」

「…お前は何を言っているんだ?」

「え、ヴィクター? あれ…私は一体…金庫を開けて、それから…あれ?」

「大丈夫か?」

「それよりも、金は?金はどうしたの!?」

「ほら、そこ。」


 俺は、傍に置いてある金のインゴット2本を指差す。


「…えっ…それだけ?あの、山のようにあった金はどうしたのよッ!?」

「だから、お前は何を言っているんだ? 金庫にはそれしか入って無かっただろうが。」

「う、嘘よ!私は確かに…」

「お前…金庫開けて中に入る時に、また足(くじ)いて転んで頭打って、そのまま気絶しただろ。…夢でも見てたんだろうな。」

「嘘ォォォッ!?」


 カティアには、夢でも見てたという事にして、誤魔化す事にした。気絶した時の記憶が曖昧なので、カティアは俺の話を信じるしかない。


「そうだ。…ほら、受け取れ!」


 俺は大小二つの、丸まった布をカティアに渡す。


「何?…って、これ私のパンツとズボン!? え…きゃぁぁぁッ!なんで私、下穿いてないのッ!?」

「お前が漏らしたとか言ってたから、洗ってやったんだよ。焚火で乾かしたから、ちょっと煙臭いかもしれないがな。」

「だからって、普通女の子を脱がす!? ちょっと、変なことしてないでしょうねッ!? てか、煙臭いって…まさか嗅いだの?」

「何もしてないわッ! だいたい、お前いつもシャワー浴びた後、下着でうろついてんだろうがッ! 今さら恥ずかしがってんじゃねぇよ!」

「そ、それとこれとじゃ、事情が違うでしょうがッ!!」


 その後、カティアを(なだ)めて朝食を済ませた。そして、カティアがどうしても信じられないとゴネたので、再びセルディア中央銀行へと向かうことになった。ちなみに、カティアに渡していた腕時計は、寝ているときに回収済だ。そのことに気が付いたカティアが「消し炭になっちゃう!」とか言って騒ぎ出したが、既に銀行はもぬけの殻となっているので、必要ない。


 そして、すっからかんになった大金庫を見たカティアは、その場で膝を突いた。


「嘘でしょォォォッ!!」


 カティアの叫びが、大金庫の中に空しく響き渡る…。



 * * *



-4時間後

@カナルティアの街 南門


「……。」


 現在、南門で街に入る為に、馬車やトラックなどと共に検問の列に並んでいるが、かれこれ1時間ほど待たされている。そのせいか、車内の雰囲気が重い。というか、カティアが不貞腐れている。


「なあ、カティア?」

「…何よ?」

「前から聞きたかったが、何でお前はそんなに金を稼ぐ事に固執するんだ? 俺からの借金を返す為って訳じゃないだろ?」

「はぁ!? 別に固執してないし! それにお金を稼ぐのに、理由なんて要るの?」

「それを言われたら、何も言えないな。」

「それに…貴方には関係ないから…。」

「……。」


 え…めっちゃ気になるんだが? すごく重い事情があったりとか…いや、騙されないぞ!どうせカティアの事だ、しょうもない話に決まってる。


「…ヴィクター、今失礼な事考えたでしょ?」

「いや? 何のことやら…。」

「よし、次! よう弟子、待たせたな!」


 俺らの順番が回ってきたようだ。いつもの隊長のおっさんが、車に近づいてくる。


「本当だぞ。何でこんなに混んでるんだ? いつもはガラガラだろ?」

「ん?何だよ知らねえのか? 明日からバザールだぞ。近隣の村とか街から、人や物がわんさか集まってきてる。この門は空いてる方だぞ?西門とか3時間待ちらしいからな。」

「ああ、そういや明日とか言ってたな。」


 支部長との会話を思い出す。明日からバザールが始まるとか何とか…。

 門をくぐると、街は屋台の準備をしていたり、飾り付けがされたりと賑わっていた。娯楽が少ない世の中だ…皆、全力で楽しむのだろう。


「本当にお祭り騒ぎだな…。」

「ヴィクターは初めてなんだっけ?」

「ああ、どんな事するんだ?」

「明日は初日だから公開処刑とオークションがあって、その後はサーカスとか色々あるわよ。」

「…公開処刑って、あの絞首台か。」

「そうそう!死ぬまでじっくり眺めて、その後皆んな石投げたりするわね。その日は見せしめで、1日吊るされたままになるのよ。」


 おっかねぇ…。崩壊後の人間の倫理観は、一体どうなっているのだろう。


「それにしても、この金塊…一体いくらになるかな?」

「ふんっ!どうせ私には一銭もくれない癖にッ!」

「勘違いするな。これは、俺達の共同資金だ。俺達の、俺達による、俺達の為の金だ!」

「わ、分かったから! 顔近い、顔近いぃ!!」


 俺達が入手した金塊は、一つが難民達の村の資金として、もう一つが俺達の共同で使う軍資金とする事に決まった。というか、認めさせた。

 カティアはかなりゴネたが、今回は…いや今回も、殆ど俺が働いているので、文句は言わせない。


 まあ、だが流石に小遣いくらいはやるか…。順調に借金も返せてるし、金には当分困らなそうだしな。



 * * *



-数分後

@レンジャーズギルド


「フェイ、ちょっといいか?」

「どうしたのヴィーくん?」

「ほら、カティア。」

「お、重いぃ〜ッ!!」


 カティアが、受付に金塊が入った麻袋を載せる。そして、中身を確認しようとしたフェイの手を止めて、そっと警告する。


「ッ!どうしたの、ヴィーくん?」

「フェイ、なるべく周りに見えないように、中身を確認してくれ…それはかなりヤバい。」

「わ、分かったわ…。ッ!こ、これは…! ヴィーくん、付いて来て。カティアは、それ持って来て!」

「えっ、またぁ〜!?」




-1時間後…


「で、では…こちらの金額を、全額ヴィクター様のチームの口座に振り込んでよろしいですか?」

「いや、半分をチームの口座に…もう半分は俺の口座に入れといてくれ。」

「う、承りました…!」


 あの後、支部長室にて金塊の換金が行われた。最初は、大金を提示されたのだが、なんだか納得出来なかったので、交渉の結果、同重量の金の地金(100万Ⓜ︎)と金貨(10万Ⓜ︎)と交換する事にした。

 そして、持ち込んだ金塊が本物か調べられた後に、支部長室に大型の天秤が運ばれて、同重量の金硬貨が幾らになるか計算した。…その結果、支部長が初めに提示した額より1.2倍程大きい結果となった。


 支部長の爺さん…やはり油断できないな…。


「で、では…6605万Ⓜ︎をチームの口座に…残る6605万Ⓜ︎をヴィクター様の口座に入金させていただきます…!」


 本日の換金額…1億3210万Ⓜ︎也…。

 流石に、そんな大金を持ち歩く気は無いので、ギルドの口座に入金する事にした。だが、全額俺の口座に入金するのも、カティアの目が痛い。だからといって、カティアの口座に入金するのも論外だ。


 レンジャーズギルドの規則上、口座は一人一つしか持てない。だが、俺が困っていると、フェイが裏技を教えてくれた。店や団体などの法人用の口座なら、年会費は掛かるが作る事が出来るという。

 年会費も、そんなに高くはなかったので、俺は法人を立ち上げ、口座を作ったのだ。とりあえず、俺達のチームの軍資金は、この口座に入れることにする。


「あ、すまん。10万Ⓜ︎程、チームの口座から引き出して、現金でくれないか?」

「は…はい…?」


 アレッタから現金を受け取って、カティアと合流する。


「遅かったわね…。」

「そう不貞腐れるなよ。…ほら、コレやるよ。」

「何これ…って、お金ッ!?」

「小遣いだ。ほら、バザールとかあるし…現金無いと困るかと思ってな? 借金もちゃんと返せてるし、今回はサービスだ。」

「ヴィ、ヴィクター…。ありがとうっ!!」

「よし、腹減ったし飯でも食いに行くか!当然、今日は金もあるし、奮発するぞ!」

「やった!行く行くッ! …あっ、でも待って。」

「どうした?」

「…下着変えてきてもいい?」

「…帰るの面倒だから、新しいの買ってけば?」



 この時…大金を得て余裕が出来た俺は、かなり舞い上がっていた。そして…再び金欠に陥る事になるなど、夢にも思わなかった。



-少し前…


アレ「あ、あの…フェイさん。」

フェ「どうしたの、アレッタ?」

アレ「法人の登録なのですが、これ…登録しちゃっても、大丈夫なんでしょうか?」

フェ「どれ?」


-----------------------------------------------------------

法人番号:○○-×××××-△△△△△△

商号  :ヴィクターのチーム

本店  :カナルティアの街南部地区

業種  :サービス業

業務内容:ヴィクターと愉快な仲間たち

目的  :特になし

代表者 :ヴィクター・ライスフィールド

-----------------------------------------------------------


フェ「…どこに問題があるの?」

アレ「えっ!?」

フェ「手数料も貰ったんでしょ?登録して大丈夫よ。」

アレ「で、でも…業務内容とか、設立目的も意味不明で…!」

フェ「アレッタ…。」

アレ「は、はい…?」

フェ「やりなさい。」

アレ「わ、分かりました…。」


フェ(ヴィーくんったら、私達を笑わせたいのかしら♪)

アレ(フェイさん…どうしちゃったんだろう…。)

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