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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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82/199

77 金塊ハント1

-数日後 朝

@レンジャーズギルド 支部長室


 あれからカティアと一緒に、毎日依頼を受けて過ごしている。時にはクエント達と組む事もあり、かなりの報酬を手に入れることが出来たが、村のことを考えると全然足りない。

 既に難民キャンプの連中は、キャンプを引き払ってグラスレイクへと向かったらしい。いつの間にか、難民キャンプが無くなっていたのには驚いたが、彼らが既に動いている以上、資金が底をつく日は近い…。


 そこで、俺は思い出したのだ。カティアを救出した時に捕まえた、狼旅団の構成員達の報奨金をまだ貰っていない事を…。

 そこで、ギルドの受付でフェイを呼び出して、支部長に会いたいと伝えたら、アポ無しにも関わらず即刻御目通りが叶った。やはり、ギルド職員を物にしたのは正解だったな。


 しかしいざ支部長に、金がいつ支払われるのか尋ねたら、まだ支払われないと言われた。…あれから、結構時間経ってるよな?職務怠慢じゃないのか?


「…まだ払われないのか?」

「ええ。申し訳ありませんがバザールが終わるまで、もうしばらくお待ちください。」

「そういえば、そのバザールって何なんだ?」

「えっ?」

「んっ?」


 支部長がきょとんとしている…。あれ、もしかして知ってないとおかしい事だったのかな?


「ゴホン…ヴィクターさんは、この街の出身では無いのでご存知無いかもしれませんね。バザールとは、ギルド支部が主催するイベントで、罪人の公開処刑や、犯罪奴隷のオークション、露店やフリーマーケットなどが開かれ、街中がお祭り騒ぎになる期間の事です。2〜3ヶ月に1回、3日間連日で開催されます。」


 フェイが流れを読んで、説明してくれた。ナイスフォローだ!フェイを見ると、こちらにウィンクをしてくる。…後でお礼しなきゃな。…もちろん身体で。

 しれっと物騒な事が聞こえた気がするが、要はお祭りがあって、そこで犯罪奴隷が売れないと、俺に金が支払われない事は分かった。


「なるほど、事情は分かった。で、そのバザールはいつ開かれるんだ?」

「予定では明後日ですね。ヴィクターさんも、ギルド前にある広場で、何やら準備が行われているのをご覧になったのではないでしょうか?」

「ああ、アレか…。」


 フェイが言った通り、確かにギルドに入る前に、広場で何かを組み立てたり、建設しているのは見た。あれがバザールなのか…。


「そうか、事情は分かった。邪魔したな。」

「ええ…。ああ、そういえばヴィクター君、きみは一体何処の出身なのかな?」

「邪魔したな!」

「…行ってしまいましたか。」



 * * *



-その後

@レンジャーズギルド ロビー


「あっヴィクター、どうだった?」

「ダメだな。バザールが終わらないと、どうにもならないらしい。」


 支部長室を後にしてギルドのロビーに戻ると、待たせていたカティアと合流する。


「でも、アンタも変な事するわね。私には借金返済しろって迫るくせに、難民達には随分優しいじゃない? その優しさを、少しは私にも分けてくれてもいいのに…。」

「あ?利子取らないだけ優しいだろうが! それとも、身体でも売ってきてもらった方がいいか?」

「な、何でもないですぅ!!」

「はぁ…。まあいい、仕事に行くぞ。」

「あれ? ちょっと、依頼は?受けないの?」

「今日は別件だ。」


 カティアと共に、ギルドを出る。目の前の広場では、座席やら観覧席のような物を組み立てている。広場中央にあった、木製の二本の柱と、その頂部を結ぶ木材で出来たΠ(パイ)字型のモニュメントには、何本かのロープが垂れ下がっており、ロープの先端は輪っかに結ばれている。


 …あれ、絞首台だったんだな。てっきり、何かのモニュメントとか、ランドマークかと思ってたが…。人があんまりいなかったから、何回かあそこで買ったホットドックとか食ったことあるぞ? 恐らく、その度に変な目で見られてたんだろうな…チクショウ。


「ねぇヴィクター、今日はどこ行くの?」

「ん? 死都だぞ。」



 * * *



-6時間後

@死都 官公庁街:セルディア中央銀行前


「あ…あわわわ…。」

「何してるんだ、カティア?ほら、大丈夫だって!」

「ほ、本当にこんなので襲われなくなるの!?」


 俺達は、死都の中心部にあるセルディア中央銀行を訪れていた。


 セルディア中央銀行…。かつてこの国の、中央銀行だった所だ。セルディアは地政学的に見ても、山脈に周囲を覆われている関係上、他国からの侵略を受けづらい立地にある。国という枠組みが弱まり、連合という大きな枠組みになってからは、セルディア中央銀行は連合陣営の、有事に備えた「(きん)準備銀行」として機能していた。

 確か、俺が子供だった時に、学校の課外授業で見学した時には「世界の(きん)の5分の1がここにある」と習ったはずだ。つまり、ここには大量の(きん)が遺されている可能性が高いのだ。


 現在、俺は資金不足の他に、ノア6の(きん)不足という問題を抱えている。金は、化学物質の製造の他、電子機器などにも使われる為、需要が高い。また、純粋に(きん)(かね)になる為、この銀行から金を持ち出せれば、問題は一気に解決するはずだ。


 …だが、当然この銀行のセキュリティはトップクラスに高く、24時間専用の衛星により監視され、館内はテトラローダーを始めとする警備ロボットが目を光らせている。現に、銀行の入り口前にも、重武装したテトラローダーが6台ほど整列している。


 こうした崩壊前のロボットにとって、カティアのような崩壊後の人間は、マイクロマシンが入っていない身元不明の不審者として、文字通り処分されてしまう。その為、崩壊後の人間達にとって、こうしたロボットは脅威だ。

 そんなものが目の前で整列しているのだ…流石のカティアでも、顔を青くして、らしく無くブルブルと震えて、俺の背中に隠れている。


「カティア、もう一度確認するぞ? 武器は車に全部置いたな?」

「う…うん。だ、だけど…本当に大丈夫なの?これじゃ丸腰じゃない!」

「多分、武器を持っていたら、その場で消し炭になるぞ?」

「ヒッ…。」


 当たり前だ。俺達が向かうのは、銀行だ。武器を持っていたら、銀行強盗と判断されてしまう。それも、ただの銀行ではなく、中央銀行だ。内部には、侵入者迎撃用のシステムが満載されている。

 とても生きては出られないだろう。


「よし、ちゃんと【腕時計】つけたか? じゃあ行くぞ。」

「待って!あ、足元ッ!!」

「ん?どうかしたのか?」

「それ、骨ェ!? 人間の骨じゃないの!?いっぱい転がってるじゃない!!」

「だからなんだよ…。」

「ね、ねぇ…やめよ? もしかして、私が何か悪いことした?だったら謝るからさ…。ね?」


 カティアには、腕時計と呼ばれていたウェアラブル機器を付けさせている。これは、マイクロマシンに適応できなかった障害者向けの機器で、身分証明なんかもできる。

 ちなみに、ロゼッタを除いたノア6の女達には、全員の身分を作った上で、この腕時計を装着させている。こうした仕事は本来なら役所が行うが、裏技として軍属の身分を司令官権限で作ることが出来るのだ。


「ほら、行くぞ。」

「あ…も、もうどうにでもなれ!」


 俺達が、銀行へと歩みを進めると、テトラローダーの一台が近づいて来る。


『止まって下さい。現在、非常事態宣言が発令中です。身分を提示して下さい。』

「認証しろ。ヴィクター・ライスフィールドだ。で、コイツは護衛だ。」

『……ようこそ、総司令官殿。護衛の方も身分の提示をお願いします。』

「あ…ああ……。」

「…カティア?」

『…身分の提示をお願いします。』

「カティア、腕時計を見せろ!」

「えっ?…あ、はい。」

『……認証完了。お務めご苦労様です、カティア・ラヴェイン二等兵。』


 テトラローダーは、そう言うと元の位置に帰って行った。ちなみに、カティア如きに高い階級を与える必要は無いと思っている。

 それにしても、ロボットの音声機能が正常なところをみるに、まだ整備機能も生きているのだろう。


「えっ?な、何が起こったの…。」

「どうした?ほら行くぞ。」

「あ…ちょ、ちょっと待って!」

「何だよ…?」

「そ、その……ちょっと漏らしちゃった…。」

「…お前、帰りは荷台な。」



 * * *



-数分後

@セルディア中央銀行 行内


「え〜、警備室はっと…」

「ねぇ、さっきから何なの!? ロボットは襲ってこないし、今だってアイツらも何もしてこない!ってゆうか、あのロボット何!? 初めて見たんだけど!」

「あ? 確かに、実物は俺も初めてだな…。」


 俺達の目の前を、小型の武装したロボットが横切って行く。屋内用の警備ロボットは、カティアにとって未知の存在なのだろう。さっきから、視界に入る度に俺に引っ付いて来る。…後で服を洗わないとな。


 まあ、そんなこんなで俺達は銀行の警備室を目指している。そこに行けば、銀行の警備ロボットのコントロールが出来るようになるはずだ。万が一、誤作動で襲ってきたらたまらないからな。

 ちなみに、銀行のロボットは軍の所属では無かったので、俺が動かすには色々と面倒な手続きが必要だった。手っ取り早く、現地でコントロールを奪った方が早い。


「よし、ここだな。」


 警備室の扉を開けて中に入る。中に入ると、警備室の電源が入り、壁一面に多数の映像が映し出される。銀行内の監視カメラの映像のようだが、何台かは経年劣化で壊れたのか、反応が無いようだ。

 その他には、現在稼働中のロボットや、タレットの状況や、銀行内の人間の位置などが、部屋の中央にホログラムで立体的に表示されている。


「…ん?何だこれ?」

「ど、どうしたの?」

「いや…多分誤作動なのか?」


 ホログラムには、今いる人間やロボットの位置がリアルタイムで表示されるのだが、そこには()()()()()()()()()()があったのだ。しかも動いている…。


「場所は…ここか。カメラは…映った!」

「ッ!ヴィクター、これって!?」


 壁のモニターを操作して、反応があった所のカメラの映像を、壁一面に映し出す。そこには、廊下を歩く赤黒い怪物が映し出されていた…。

【腕時計】

 マイクロマシン非適合障害者向け、ウェアラブル機器。身分証明から通信、インターネット、ホログラム投影、その他便利な機能が搭載されており、障害者の日常生活をサポートしていた。

 カティアに渡したのは、ヴィクターがノア6で設計図を入手して、万能製造機で製造した物。

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