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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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74/199

69 あれは嘘だ

-翌朝

@警備隊本部


「…んっ、んん〜!ふぁ〜あ…あれ?ここどこ?」

「よう…目が覚めたか、乱射姫?」

「えっ、ヴィクター? ここどこ?」

「ここか? 警備隊本部の牢屋だよ。」

「牢屋ですってッ!? な、何でッ!?」

「テメェが、酒場で暴れたからだろうがッ!!」

「えっ!どういうこと!?」

「昨日の事を思い出してみろ!」

「ええと…ヴィクターと酒場に入って、それから…あれ?」

「…覚えてないと。」

「う〜ん…何か楽しかった気がするんだけど、何したんだっけ?」

「お前が酔っ払って、店の中で銃を乱射したんだよッ!! お陰でこのザマだよ!!」

「う、嘘でしょ…?」

「カティア…今後、お前は飲酒禁止だッ!!」

「いやぁぁッ!!」


 カティアが店で大暴れしてくれたお陰で、俺たちは警備隊に捕まってしまったのだ。カティアはかなりの酒乱で、以前も似たような騒ぎを起こしているそうだ。それでついた渾名(あだな)が『乱射姫』という訳だ。

 いつもの警備隊長のおっさんが苦笑いしながら教えてくれたのだが、そういうのは先に言って欲しい…。しかも、今回はいつも以上に被害が大きかったそうだ。幸いにも怪我人こそ出なかったものの、カティアが乱射したり、手榴弾を爆発させたお陰で、店の修繕費用は高くつくらしい…。


 カティアが起きてしばらくすると、例のおっさんがやって来た。


「よう、起きてるかお前ら!」

「ああ。…で、どうだった?」

「おう、話はつけて来てやったぞ。釈放だ。」

「悪いな。」

「…何の話?」

「チッ…テメェの尻拭いの話だよ、カティア!」


 俺はおっちゃんに、カティアが暴れた店との仲介を頼んで、店に賠償金を支払った。…お陰で、俺の全財産が吹き飛んだが。ピートから貰った100万Ⓜ︎の金塊が、まさかこんな所で役に立つとは…。

 ちなみに、別に警備隊に捕まったからといって、全員が犯罪奴隷とかにされる訳ではない。今回のように、身元が保証できて、賠償金を支払うなどすれば釈放されることが多い。


「ほら、二人ともさっさと出な! 弟子、貸しにしとくぜ?」

「いや、俺の貸しを返して貰ったからチャラでいいぞ、おっさん?」

「ん?…何の話だ?」

「新聞…インタビュー…。」

「ああッ!あ〜、うん。あれはだな…。」

「あれは?何?」

「その…チャラでいいです…。」

「だよなぁ?」


 俺には分かってる。新聞で、俺の特集でインタビューされていた〈警備隊の鬼隊長〉はコイツだ。本来なら、後でお礼参りしてやる予定だったが、こんな形で礼を返してもらうとは…。

 インタビューで俺の事を、『名前が言いにくい』って言ったせいで、『本人の前で名前を気安く言うと、殺される事になる。』って解釈されたのは許してやるか。…何か腹が立ってきたな。


 ひとまず、カティアを連れてガラルドガレージに戻るとしよう。今後の話もしないとだしな。



 * * *



-数十分後

@ガラルドガレージ


「……。」

「……ごめんなさい。」

「…俺、お前の尻拭いに全財産つぎ込むハメになったんだけど? 返して貰えるのかな?」

「お、お幾らでしょうか…?」

「130万Ⓜ︎くらいかな?」

「ひゃっ……そ、そんな大金…持ってない…です…。」

「で、どうするの?」

「は、働いて返します…。」

「いつ完済出来るの?」

「…分からないです。」

「はぁ…もういいや。何か疲れちまった…。」

「ほ、本当にごめんなさいッ!!」


 カティアは貯金がほぼ無いらしい。つまり、あの時俺が金を出さなかったら、カティアは借金奴隷か犯罪奴隷になっていたかもしれない。それを理解しているカティアは、普段の勢いが衰え、ただ謝罪を口にするだけになってしまった。


「まあいい。とりあえず、ギルドに行くぞ。このままだと、金が無くて飢え死にだ!」

「…そうね。」


 とりあえず、ギルドで仕事を探そう。二人とも、今は金がない。このままだと、食べ物も買えない。今まで、金の価値が分からんとか言っていたが、失って初めてその価値が理解出来た。……無いと死ぬ…飢え死にだ!

 それに、働かないことにはカティアからの返済も無い。とりあえず、手っ取り早く稼げる依頼を探さなくては…。

 

 …あれ?俺って、カティアと一緒にいる意味ある? チームを組んでから1日しか経たないが、炭を食わされるわ、起こした事件の尻拭いをさせられるわ、挙げ句の果てに、こうして返済の手伝いをさせられる。…返済の為に受ける依頼だって、俺一人で依頼受ければ報酬総取りできるよな?

 …俺はいつ、カティアの保護者になったのだろうか?


「…カティアを奴隷として売れば、幾らになるかな?」

「や、やめてよッ! 冗談でも、そんな事言わないで!」

「……。」

「…えっ?冗談よね?」

「…チーム、解散しよっかな〜。」

「嫌ぁ!!やめてぇ〜!!」



 * * *



-1時間後

@レンジャーズギルド


「とほほ…今日もマッチングしなかったか。」

「仕方ないですよ、クエントさん。僕達だけで出来る依頼を探しましょう。」

「はぁ…スカウトって、なんでそんな人気無いかな…。」

「まぁ、地味なイメージはありますよね…。」


 ギルドのロビーで、二人組のレンジャーが仕事を探していた。クエントとミシェルのチームだ。彼らは二人とも、『スカウト』というポジションでギルドに登録している。スカウトは、偵察や工作などを行う役割だが、それらはどちらかと言えば裏方の仕事だ。


 そんな彼らは、ヴィクター達のチームが『基本的にパーティーは組まない』という方針を採用したのに対して、『絶対にパーティーを組む』という方針を採っていた。スカウトは、工具やら爆薬を携行すると、携行できる装備や弾薬量が限定される為、どうしても他のポジションより戦闘力が落ちてしまうのだ。

 その為、前線を張ってくれる他のチームとパーティーを組むのが望ましいのだが、中々上手くいかなかった。他のチームから見れば、碌な戦力にならないスカウトを、パーティーに入れたところで、自分達の分け前が減ってしまうだけだと考えていたのだ。


「もう、朝のピークが過ぎちゃいましたけど…まだ粘りますか、クエントさん?」

「…もう少し!おれの勘が正しければ、スカウトを必要とするチームが、もうすぐでやって来るはずだ!!」

「…当たるんですか、それ?」

「わからん!」


 その時、ミシェルの背後に影がさしたかと思うと、ミシェルの身体がフワリと持ち上がった。


「えっ!? きゃあッ!」

「ミィ〜シェ〜ルゥ〜ッ!! 会いたかったぞコラァ!」

「ヒィィッ!! だ、誰ですか!?」

「俺だよ。ヴィクターだよ!」

「えっ、ヴィクターさん!?」

「おっ、ヴィクターじゃねぇか! 今まで、どこ行ってたんだよ?」

「これはこれは、期待の若手レンジャーQ氏じゃないですか!」

「ギクッ…!」

「それから…おやぁ? 知り合いのミシェル君かと思って、つい持ち上げちまったけど、これはこれはM氏じゃありませんか! その節は世話になったなぁ?」

「ひっ…あわわ…。」

「ちょっとヴィクター、ミシェルが可哀想よ!いい加減に下ろしてあげたら?」


 カティアに言われ、持ち上げていたミシェルを下ろしてやる。…ミシェル、超軽かったけど、ちゃんと食ってんのかな? 持病の事といい、心配になる。


「すまん、ヴィクターッ!! 記者がしつこくて!」

「ヴィクターさん、ごめんなさいッ!」

「…貸しにしといてやる。次にこんな事があったら、タダじゃおかねぇからなッ!!」

「「 はい! 」」

「はぁ…。で、お前達も仕事か?」

「うんにゃ、仕事を探しに来たはいいものの、マッチングしなかった。今日はもうダメだな。」

「他の方とパーティーを組もうと思ってたんですけど…。」

「なるほど…。そういや、カティアはこの二人と顔見知りなのか?」

「ええ。何回か一緒に仕事したことがあるわ。」


 なるほど。だから、ミシェルの事を知っていたのか。


「そうそう…俺、カティアとチーム組むことにしたわ。…今じゃ後悔してるけどな。」

「うっ…。」

「そうなのか!? 俺らも誘っとけば良かったな、ミシェル?」

「そ、そうですね…!」

「だ、ダメよ!ヴィクターは渡さないわッ!!」

「カティア、お前は黙れ! 悪い、二人とも邪魔したな!行くぞカティア。」

「あ、待ってよ!」


 カティアを連れて、受付に行く。見たところ、受付のピークは過ぎたようで、結構空いていた。しばらく待って、受付に呼ばれる。

 今日は、俺のレンジャー登録を担当してくれたアレッタが受付をしてくれるようだ。…清楚な感じだが、裏で金持ちのオヤジの相手をしてるというのは本当なのだろうか?


「あ、ヴィクターさんにカティアさん、こんにちは。依頼の受注でよろしいでしょうか?」

「ああ。」

「依頼の希望はございますか?」

「報酬が高い依頼がいいな。」

「高い…と言いますと、具体的にはお幾らでしょうか?」

「う〜ん…10万とか20万とか…あわよくばもっと…。」

「えっと…あるにはあるのですが…その…。」

「何だ?」

「あっ!ヴィーくんッ!!」


 受付の奥から、フェイが飛び出してきた。


「ヴィーくん、昨日は大丈夫だったの!?」

「ああ。お陰で全財産吹き飛んだがな。」

「カティア!貴女、また暴れたのね!? お酒は飲むなって、言ってるでしょ!! ヴィーくんにも迷惑かけてッ!」

「は、反省してます…。」

「だいたい貴女はいつも……!」



 * * *



-10分後


「……もう!カティア、分かった?」

「ヒック…はぃ…ごべんなざいぃ…!!」


 あのカティアを泣かすとは…!フェイ…恐ろしい娘!

 フェイのお説教タイム中に、アレッタから話を聞いたのだが、報酬の高い仕事はあるにはある。だが、どれも死都に潜る必要があり、危険度が高いそうだ。しかし、Dランクの依頼ではない為、俺たちだけでは受けられないそうだ。


「…最低でも、Cランクの依頼になりますね。」

「マジか…こりゃ、地道にランク上げるしかないか…。」

「あ、ヴィーくん。ちょっと待っててね!」


 フェイが受付を出て、ロビーへと歩いていく。何をするのかと思えば、ロビーにいたクエントと話をしたかと思うと、クエント達を連れて来た。


「…やあ。また会ったな、ヴィクター。」

「連れて来たわ!」

「…フェイ、どういう事だ?」

「依頼…受けたいんでしょ? だったら、この人Cランクだから、パーティー組んだらいいんじゃない?」

「なるほど。そういえば、クエントってCランクだったな…。」


 基本的にパーティーは組まないと言ったが、あくまで()()()()だ。例外はあるし、必要があれば組む。早速の例外になるが、今回はパーティーを組む必要がある。

 依頼受注のピークが過ぎてしまった今の時間は、Dランクといえど碌な依頼が残っていない。だが、Cランクの依頼が受けられるのであれば、危険だが高報酬の依頼が残っているのだ。


「…という訳で…組んでくれないか、クエント?」

「まあ、事情は分かった。依頼は、どれどれ……げぇッ!これ、死都に潜らないとならないだろ!」

「そうだな。」

「きゃ、却下だこんなの!大体、何でこんな依頼がCランクにあるんだよッ!?」

「あれ、お前…俺に貸しがあるよな?」 

「うっ…!」

「なあ…期待の若手レンジャーQ氏?」

「ッ! そ、そうだよ!フェイさん、あんた自分の男をあんな危険な所に送り込んで良いのかよッ!?」


 何か、クエントが悪足掻きを始めたぞ…。


「私はヴィーくんのこと、信じてるから♡」

「く…この人もダメだぁ〜!」

「それよりも……。ヴィーくんに迷惑かけたら、許さないから…。覚悟してね?」

「く、くそぅッ!こうなりゃヤケだ!受けてやるよッ!!」

「く、クエントさん!? 正気なんですかッ!?」

「あれ? ミシェル君は反対かな?それともM氏と呼んだ方がいいのかな?」

「うっ…分かりました…。」



 こうして、フェイからの説得(きょうはく)もあり、クエント達とパーティーを組むことになった。この後、お互いに準備を済ませた後に、死都へと向かう。

 ひとまず、目指すはガラルドの秘密基地だ。

ロゼ《ガラルドさんの秘密基地…とやらに、部外者を招いて良いのですか?》

ヴィ《ああ。カティアは関係者だし、他の二人も心配しなくていいと思う。》

ロゼ《クエントさんと、ミシェルさん…でしたか。そういえば、ヴィクター様の車はシートが2つしかありませんが、残る2人はどうなさるのですか?》

ヴィ《荷台に乗せるのさ。一応、荷台に積んであるクレートを、椅子代わりに使えるはずだ。》

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