表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/199

67 結成

-十数分後

@街南部地区郊外 ガラルドの家


「…ガレージか?」


 カティアに案内させて、カティアが現在住んでいるという、ガラルドの家へとやって来た。ガラルドの家は、家というよりもガレージ倉庫のようで、恐らく崩壊前の運送業者のものを改修したのだろう。中には作業台や、銃の掛かったガンラック、壊れたバイク?のような物が転がっていたり、如何にもガレージといった感じだった。

 ガレージの中はトラックが5台程駐車出来るほど広いスペースがあり、がらんとしてスペースを持て余しているように見える。さらにガレージ内にある階段を上ると、事務所として使われていたのであろう、吹き抜けの超広いロフトのようなスペースがあり、そこにベッドやらソファなどの家具を置くことで、生活空間としているようだ。


「…ガラガラだな?」

「本当は、車が一台あったんだけど…。って、そうだ!貴方、オヤジの秘密基地の場所、知ってるんでしょ!?」

「あ? ああ。」

「お願い!連れてって! 多分あそこに、車が残ってると思うの!」

「えっ?え〜と、それはだな…。」


 ガラルドの車は、ノア6で部品ごとに細かく分解されている…。いや、ガラルドの車は俺がカスタムしたので、「さっきまでお前が乗ってたのが、ガラルドの車だぞ?」と言うべきか…?


「じ、実はな…ガラルドの車は、ミュータントに襲われた時に壊されちまったんだよ…。」

「な、何ですって!? そんな…私の車が…。」

「そういうわけで、諦めた方がいいぞ?…ってか、お前のじゃないだろ?」

「…そういえば、貴方の車は?どこで手に入れたのよ!?」

「こ、これは…そう!拾ったんだ!たまたま動くのがあってさ!」

「えっ!この車って遺物なの!? 通りでハイテクな感じがすると思った!」


 何だかんだ、話を逸らして車の話題から離れ、本題に移る。


「で、俺とチームを組みたいって?」

「そう!ランクも同じDだし、なんて言っても同じ師匠の姉弟子(あねでし)弟弟子(おとうとでし)だし。これは組むべき…いや、組むしかないわッ!」

「そ…そうか…。」


 カティアは身を乗り出して、力説する。


「で、お前と組むとして、俺にメリットはあるのか?」

「えっ? えと…ほら、こんなに若くて可憐な女の子と一緒にいられるわよ!」

「…自分の評価高くね?」

「べ、別にいいじゃないッ!!」


 確かに、カティアはそこらの女よりはレベルが高い。虹彩が緑色なのも、かなりレアだし。ただ、何だかピーチクパーチクうるさい感じがちょっと残念だ…。


「…何か失礼なこと考えてるでしょ。」

「い、いや…分かった。お前と組んでもいいが、聞きたいことがある。」

「えっ!いいの!?やったぁ!! 何でも聞きなさい!」

「お前とチームを組んだら、俺もここに住んでいいか?」

「えっ!そ、それって…私と同居するってこと!?」

「まあ、そうなるな。居候(いそうろう)だな。同じチームだし、寝食を共にするものじゃないか?」

(ど、どうしよう…。フェイに悪い? 一つ屋根の下…何も無い訳無いよね? えっ、どうしよう…。)

(…とか考えてそうな顔してるな。)


 いきなり家に居候させてくれ、と言われて即答出来るはずがない。カティアは何故か顔を赤らめているが、そんな事をするつもりはない。…ガラルドの忘れ形見でもあるしな。

 それにチームを組む以上、同じ戦場に身を置くことになるだろう。そうなった時、男女の仲になっていると、お互いに無謀な行動を取る傾向になると、軍の統計で知られているのだ。


 一番大事なのは自分の命だ。緊急時に冷静でいる為にも、カティアを襲うような事はしないつもりだ。フェイもいるしな。


「あ〜、別にお前を襲ったりしないから安心しろ?」

「ふぇっ!? な、何を…ってか、信用できないんだけど!?」

「いや俺、彼女いるし。」

「あ!そういえば、いつの間にフェイとあんな関係になったのよ!?」

「はぁ…で?俺はここに住んでもいいの?ダメなの?」

「そ、それは…。」

「…わかった。じゃあ、この話は無かった事に…。」

「わーッ、待ってよ!分かったからッ!」

「ん?」

「ここに住んでいいから、私と組んで下さいッ!!」


 はい、言質取れました!とりあえず、この街での活動拠点は確保できたな。実は、ガラルドの家はスペースがかなり広く、敷地も広いので、俺にとって魅力的な物件だったのだ。

 その後、ロフト?に上がり、カティアから説明を受ける。ベッドは二つ、それぞれパーテーションで分けられている。それからトイレとシャワー室があるようだ。小さなキッチンもあるが、カティアは自炊をしないのか、埃をかぶっているようだ。

 他には、ソファーとローテーブル、書棚と酒瓶の並べられた棚で作られた、リビングのようなスペースがあるくらいか。


 その後、ベッドをどうするかでひと悶着あった。


「じゃあ、オヤジのベッド使っていいわよ。」

「え…。」

「…何よ?」

「いや…何か気になるというか…。」


 恩人とはいえ、野郎の寝ていたベッドだ…何か抵抗がある。


「…カティアがガラルドのベッドで寝るってのは?」

「…何でよ?」

「いや、何か抵抗あるな~って。」

「あらそう? じゃあ、私の使ってたベッドで寝ていいわよ。…てか、私のベッドに抵抗は無いの?」

「ああ。女の子のベッドは、何かいい匂いがするから大丈夫だ。」

「へぇ~、ってキモっ!? や、やっぱ無し!無しッ!!」

「…だよな。まあ、後で新しいのを買うか。」


 ベッドは新しいのを買うとしよう。


「じゃあ、さっそくギルドに行きましょう。チームになるからには、さっさと登録しなくちゃね!」

「そうだな。…あっ、その前に少し寄りたいところがあるんだ。」

「…?」



 * * *



-数十分後

@街中央地区 ローザ服飾店


「あ〜、この店ね。ヴィクター、何か依頼でも受けてるの?」

「いや、個人的な用件でな。新しく服を作ってもらおうと思って…。」


 そう言いつつ、ローザ服飾店のドアに手をかけた瞬間、カティアが俺の腕を掴んだ。


「ちょっとちょっと!貴方分かってるの!? この店でオーダーすると、超高いのよッ!?」

「知ってる。この服もここで作ってもらったからな。」

「な…何ですって…!? いくらしたの!?」

「ヴィクター割引きで15万Ⓜ︎くらいだったかな?」

「高ッ!? えっ、高ッ!?ありえないッ!ってかヴィクター割引きって何!? あっ、待ってよ!」


 あの時は、ローザの着せ替え人形になったおかげで、料金を割引きしてもらったが、本来はもっと高いのだろう。

 カティアが喚くのを無視して、店のドアを開ける。


-カララン♪

「あらヴィクターさん、いらっしゃい。」


 今日は俺の服を作ってくれたモニカではなく、ローザが店番をしているようだった。


「へ、へ〜この店初めてだけど、中はこんな感じなのね…。」

「あら、ヴィクターさん。彼女さんかしら?」

「ふぇッ!? 違う違う、そんなんじゃないわ!」

「違うぞ。」

「あらそうなの? でもヴィクターさん、すっかり有名人になったわね〜。新聞見たわよ!」

「やめろ。あんなのを鵜呑みにするな!」


 あの新聞…そんなに影響あるのか!? 新聞では顔が割れてないのが、不幸中の幸いか…。


「それで、ヴィクターさん。今日はどうしたのかしら?」

「ああ、そろそろ夏用の服を作ろうかと思ってな。モニカはいるか?」

「ああ…。モニカちゃんは…その…。」

「ん?何かあったのか?」

「モニカちゃん…この店辞めちゃったのよね。何か、実家の方で問題があったらしくて。」

「何だって! 辞める前に注文しとくんだった!」


 モニカがいないとなると、服を現地調達するのは難しいか…。仕方がないが、一度ノア6に戻って準備を整えた方がいいかもしれないな。幸い、拠点となるガラルドガレージがあることだし。

 …しかし、残念だ。この服、着心地が良くて気に入ってたんだが…。実家で問題があるなら、仕方がないか。


「あの、ヴィクターさん? 別にモニカちゃんじゃなくても、他の職人か、何なら私が作ってあげるわよ?」

「いや、ローザ。お前はダメだ。」

「酷っ! どうして〜ッ!?」

「うわぁ!近寄るな! お前の着せ替え人形は、もう懲り懲りなんだよぉ〜!!」

「も、もうそんなことしないわよ!…多分。」

「今、多分って言ったよな!絶対するじゃん!」


 俺がローザの着せ替え人形になるまいと抵抗している間、カティアは店の一角にある防具コーナーを眺めていた。服よりも防具が気になるらしい…。

 てっきり、店のドレスやら鞄が気になるものだと思っていたが、意外だった。




 その後、ローザに家具屋を紹介してもらい、そこでベッドを購入した。購入したのは、ダブルサイズの高級なベッド(30万Ⓜ︎)だ。これで、いつでもフェイを呼ぶことができるぞ!


「ねぇ、何であんなデカイベッドにしたの? しかも超高いし…。」

「そりゃ、俺以外にも入る奴がいるからな。」

「ん?どういうこと?」

「…あっ、忘れてた。」


 カティアの存在を忘れていた…。ガラルドガレージの中には、部屋は無い。一つの空間で繋がっているのだ。

 ベッドの位置は後で考えるとしても、どう足掻いても音は聞こえてしまうだろう…。


「なあ、カティア。お前、寝つきは良い方か?」

「ええ、まあ。」

「ならいいんだ。」

「…?」


 その後、ベッドの配送を頼み、ガラルドのベッドは処分することにした。



 * * *



-昼

@レンジャーズギルド


「あっ、ヴィーくん♡ それに、カティアも…。何かあったの?」

「ええ、フェイ。私、この男とチーム組むことにしたから。」

「えっ、そうなの!? ちょっと待ってね!」


 買い物を済ませ、ギルドにチームの登録に来た。

 チーム登録の際は、ランクが高い者がチームのリーダーになることが多いらしい。そうすることで、リーダーのランクに応じた依頼をメンバーが受ける事ができるので、低ランクのメンバーでも高ランクの依頼を受けることが出来るようになるのだ。

 といっても、リーダーがチームの戦力を考えず、無茶な依頼を受ければ全滅する。実際、そういう事例は多いそうだ。


「おまたせ!じゃあヴィーくん、カティア、こっち来て。」


 フェイがチーム登録の準備をして、俺達を受付に呼んだ。流石に昼になると、ギルド内は朝より空いていた。今ギルド内は、雑談をするレンジャー達や、明日の依頼を相談する者、壁の賞金首のポスターを眺める者、銀行窓口を利用する者などがいる。


 受付でチーム登録の用紙に記入をする。ちなみに、リーダーは俺だ。俺はカティアと同じDランクではあるが、ランクに+が付いている。この場合、俺の方がランクは高くなる。

 ランクが高い者が、リーダーをした方がいいので、俺にお鉢が回ったというわけだ。…まあ、カティアより年上だしな。仕方ないか。


「ふっふっふっ…こ、これで私達はチームよ!」

「そうだな。」

「あっ、カティア!ちょっとこれ書いて!」

「何これ?」

「相続の書類。ガラルドさんの遺産…といっても、家の権利くらいしかないけど。」

「えっ!? 私が!?」


 俺がレンジャー登録の際に見た書類によれば、レンジャーが死亡した際、その遺産は子供が相続する。…配偶者は詐欺を防止する為に、非情だが相続できないらしい。

 だが、子供がいない者はどうするかというと、師弟関係の弟子を養子にすることで、万が一に備えているそうだ。ガラルドも同じことをしていたようだ。確かに、カティアのことを「娘みたいなもの」と言っていたが、養子にしていたのか。


 しかし、当のカティアはその事を知らなかったようだ。二人がどういう関係だったかは知る由も無いが、この事を見るに、悪い関係では無かったのだろう。


「な、何よ…それ! いつも私を放っておいたくせにッ!そんなの…ズルい…。」

「でも、カティア? ガラルドさんは、貴女の事をちゃんと考えてくれてたわ。じゃなかったら、養子に何てしないわよ!」

「そういえば…確かに、ガラルドはカティアのことを、自分の娘だって言っていたぞ。」

「…ッ!そ、そう…。」


 カティアは、無言で書類を記入する。恐らく、混乱しているのだろう。フェイに間違いを指摘されたり、誘導されながら書類を書き上げていた。


「はい、それで終わりね。」

「…うん。」

「ほら、しゃんとしなさい!カティア・()()()()()さん!!」

「…何か慣れないわね。」

「いいじゃない、ファミリーネーム!憧れちゃうわ〜。ヴィーくん!期待してるから♡」

「あ、ああ〜もっとランクを上げてからな? フェイに相応しくならなきゃだし…。」

「そ、そうなの!嬉しい…頑張って♡」


 フェイが何か重い事言ってきたな…。でも悪くない!何とかなるだろ…。

 そういえば、俺の同居の話をした時は、あの家の権利はカティアには無かったんだよな…?


「なあ、カティア。もし、ガラルドがお前を養子にして無かったら、あの家の権利は無かったよな?」

「ギクッ!?」

「…相続とかの話の前に、俺の同居を許可してたけど、もし家の権利が無かったらどうしてたんだ?」

「そ、それは…。あ、貴方となら…その…稼げると思って…。」

「なるほど。お前が無計画なのは、よく分かった。俺も人のことは言えないが、同じチームになる以上、無謀な事はするなよ!」

「わ、分かってるわよッ!!」


 こうして俺、ヴィクター・ライスフィールドと、カティア・ラヴェインのチームが誕生したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ