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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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65/199

60 変貌

注:ノロケ回です。

-1時間後


「グスッ、ヒグッ…うぅ…。」

「……。」


 フェイ…マジで初めてでした。最中、何度も泣き叫びながら痛みや、中止を訴えてきたが、爆発した性欲は自分でも止める事はできなかった。俺は、彼女に凄い酷い事をしてしまった…気持ち良かったけども…。

 落ち着いて考えてみれば、護身用で拳銃を持ってるなんて、崩壊後の世界では普通のことだ。執行官用の拳銃だって、もしかしたらギルド職員全員に支給されていて、使う所を目撃される事が多い執行官の装備なのだ、と皆に誤解されていただけかもしれない。それを、俺が制服を着てくるように指示していた為、彼女は律儀に制式の拳銃を装備していただけなのでは…?


「な…なあ。」

「グスッ…痛いって…初めてだって、何度も何度も言ったのにぃ……!」

「わ、悪かったって!」

「ヒック…誤解だって…言っても、話を聞いてくれないし…。」

「ご、ごめんな…?」

「うわぁぁぁん!」

「……。」

「こんな…こんな初めてなんて嫌ァ!もう、お嫁に行けないッ!」


 フェイは抱きついた枕に顔を埋めると、えんえんと泣き出した。

 確かに俺は悪いことをしたように見えるが、見方を変えればそんな事はない。報酬はフェイの身体だったので、俺はそれを受け取ったに過ぎない。…たまたま、彼女が初めてであって、行為の前に誤解を招き、思わず激しくなってしまったのも、彼女のせいと言えなくもないはずだ。

 まあ色々あったが、悲しいすれ違いという奴だ。どうも俺とフェイは、そういう事が多いみたいだしな。


 とにかく、フェイが泣いてる所悪いのだが、回数勝負派の俺としては、そろそろ2回戦目といきたいのだが…。


「グスッ、ヒグッ…うぅ…。」


 この状態でなんて、鬼畜過ぎる!なんとかして、フェイを宥めなくては。さて、どうするか…。

 …適当に、何かそれっぽい事言っとけば流されないかな? 俺が学生だった頃も、委員長タイプの女の子が、不良と付き合ってたりしたしな。…その後、その女の子は不良少女となってしまったが。

 とりあえず、ラブロマンス映画から口説き文句をパクってくればいいかな?



 * * *



-夜

@ヴィクターの宿の前


「ここがあの男の宿ねッ!!」


 ヴィクターの滞在する宿の前に、一人の娘が仁王立ちしていた。その髪は明るい栗色をしており、宿の入り口を見つめる瞳は緑色である。そう、カティアだ。

 カティアはギルドから解放された後、真っ先に家に帰りシャワーを浴びた。何日も独房で監禁され、その間はジュディに水をぶっかけられるくらいしか、身体を洗う機会が無かったのだ。風呂好きなカティアに、これほど辛いものは無かった。

 その後、街中でヴィクターを探していたところ、クエントとミシェルのコンビが、マーケットで買い食いしている所に出喰わし、ヴィクターの宿を聞き出したのだ。


(宿の場所、ちゃんと聞いとけば良かった!クエント達が知ってて良かったけど…。)


 カティアは、宿の扉を開けて中に入る。そして、宿の受付にいたおばちゃんに声をかけられる。


「いらっしゃい。こんな時間に、お嬢ちゃん一人かい?空いてる部屋はあるけど…。」

「ああ、違うの。人に会いに来たの…ヴィクターの部屋はどこかしら。」

「ああ…あの人ね…。」

「歯切れ悪いわね、何かあったの?」

「いやね、今は収まったみたいだけど…。あそこまで絶倫だとはね…。夕方からお盛んなこって。」

「ゼツリン?…何それ?」

「お嬢ちゃんも、あの人の相手かい?そうは見えないけど…。今回は運が無かったね…まあ、仕事ならアンタも頑張るんだよ!」

「…?」


 どうも受付のおばちゃんは、カティアを娼婦か何かだと勘違いしているらしい。その後、おばちゃんからヴィクターの部屋を教えてもらい、ヴィクターの部屋の前に立つ。

 カティアは、ヴィクターに用があった。カティアはソロで活動することが多いレンジャーだ。だが、別に彼女は望んでソロ活動をしている訳では無かった。

 カティアはガラルドの弟子という事もあり、ガラルドとチームを組んでいたのだが、当のガラルドは単独で死都の偵察に行ってしまい、彼女は放置されていたので、誰ともチームを組むことが出来なかった。臨時で他の者とパーティーを組むことはあっても、ヴィクターとクエント達の関係のように、同じメンツと組むことはなく、一度カティアと組んだ相手は、何故かカティアから離れていくのだった。


(欲しいわ…あの男…!あの男がいたら、きっとガッポリ稼げるはずよ!)


 カティアは、ヴィクターとチームを組みたいと考えていた。ヴィクターの戦闘力があれば強い相手も倒せるし、彼の車があれば持ち帰れる物が増え、高難易度依頼達成の高額報酬と、素材や廃品の売却益で相当儲かるはずである。


(乗るしかないッ!この大波(ビッグ・ウェーブ)にッ!!)


 支部長が帰還した以上、副支部長の政策は破棄されるだろう。つまり、街周辺の村々に派遣されていたレンジャー達や、この街のギルドを不安視していた他の街のレンジャーなどが、じきに帰ってくるだろう。

 そんな時、ヴィクターのような優秀な人材は、他のチームから引っぱりだこになるはずだ。だから、今のうちにヴィクターを確保しなくてはならないのだ!!


(レンジャー辞めるとか言ってたけど、ゼッタイに辞めさせるもんかッ!)


 カティアは、ヴィクターの部屋のドアを叩く。何としても彼を確保する為に。

 いざという時の為に、勝負下着もバッチシだ。経験はないが、人よりもスタイルが良い自信はある。最悪、既成事実を作って脅すのも作戦の内だ!


-ドンドンッ!

「ちょっと、開けてよ。ねぇ、ヴィクター、いるんでしょ!」

「ふわぁ…何、ちょっとどなたですか?こんな夜中に…。」

「わわわ、ちょっとヴィクター!何であんたハダカなのよッ!」


 ドアが開き、ヴィクターが欠伸(あくび)をしながら出てきたが、その姿は下着一枚だけでほぼ裸だった。


「ん?カティアか…どうしたんだ?」

「えっ!? えっと、その…。」

「まあ、中入れよ。」

「ええ、おじゃましま…って、何ここ!?蒸し暑ッ!」

「ああ…。さっきまで運動してたんだ…激しく…。気づいたら、寝ちまってたみたいだな。」

「そ、そうなの…。」


 部屋の中は蒸し暑く、何やら変な匂いが漂っていた。カティアが部屋の中に入ると、ベッドが膨らんでいるのが見える。誰か寝ているのだろうか?


「あれ?他にも誰かいるの?」

「ああ。」


 騒がしかったのか、ベッドで寝ている人はゆっくりと起き上がると、両手を頭上で組み、腕を伸ばして欠伸(あくび)をした。


「んっ、ん〜! あれぇ〜?ヴィーくん、どうしたのぉ?」

「……フェイ?」

「へ?……カ、カティア!? どうしてここに!?」

「フェイこそ!それに、何で裸なのよ!?」

「えっ…そ、それは…。」


 フェイは顔を赤らめると、シーツで顔を隠した。カティアは、フェイの初めて見る姿にしばらく呆然とする。その後、カティアはフェイとヴィクターを交互に見つめて、先程ヴィクターが放った言葉を思い出した。


(ああ…。さっきまで運動してたんだ…激しく…。気づいたら、寝ちまってたみたいだな。)

(さっきまで()()してたんだ…()()()…。)

(……運動…激しく…そ、それって…!!)


「……。」

「おい、カティア?どうしたんだ?」

「ななな何でもななないわよッ!…き、急用思い出したから、か、帰るわッ!」


 カティアは、ボンッと顔を赤らめると、ヴィクターの部屋から飛び出した。そのまま、宿の中を走り抜けると、宿から飛び出して、自分の家へと帰って行った。


「ヴィクターさんだっけねぇ…。あの人は要注意だねぇ。」


 カティアが走り去る光景を、受付から見ていたおばちゃんは、ヴィクターに対して警戒感を強めていくのであった。



 * * *



「…何だったんだ、カティアの奴?」


 フェイとの連戦の末、俺たちは疲れ果てたのか、気がつくと眠りに落ちていた。ちなみにフェイは、あの後俺が映画やら小説やらの知識をフル稼働させて、口説き落とした。

 ……その結果、


「ねぇヴィーくん、カティアに私達の関係…見られちゃったね?」

「…そうだな。」

「やぁん…どうしよう!?」

「んなもん、見せつけてやれよ。それよりもさ…。」

「キャッ!…んもう、ヴィーくんのエッチ…♡」


 とまあ、こんな具合になってしまった…。気づいたら、俺の事『ヴィーくん』とか呼んでるし…俺はお前の彼氏か何か!?と初めは思ったが、意外と悪くない。

 フェイも受付嬢だけあって可愛いし、スタイルも良い。…もちろん、ロゼッタ程では無いが。だが、この街に滞在する以上、フェイのような存在は必要かもしれない。それに…。


「…そういえば、彼女っていた事無いな…俺。」

「え〜、じゃあ私がヴィーくんの初めての彼女だね!何か嬉しいなっ♡」

「こいつめ、調子に乗るとこうだぞッ!」

「やんっ!ヴィーくんのケダモノ♡」

「…あ〜、そういえば腹減ったな。夕飯食べて無かったな。」

「何か食べに行く?」

「…もう夜中か、開いてる店あるかな?」

「あるわよ。私知ってる!」

「お、じゃあそこ行くか!ちなみに何処だ?」

「Bar.アナグマ!」



 * * *



-数刻後

@Bar.アナグマ


「クソ…何でこうも女に殴られなきゃならないんだ?呪われてるのか俺は!?」

「まあ、日頃から女性のお尻とか触ってますからね…。バチが当たったんじゃないですかね、クエントさん。」

「クソ…。こんな生意気なガキが弟子なんて、どう思いますか、ボリスさん!?」

「……知らんな。」


 アナグマでは、クエントとミシェルが飲んでいた。…ミシェルはジュースだが。先程クエントは、カティアにヴィクターの宿の場所を聞き出された際に、頬を殴られていた。…グーで。


「いてて。あの暴力娘…グーで殴ってきたんだぞ!俺は何でヴィクターの宿が知りたいのか、理由を聞いただけなのにッ!」

「…ははは。」

「ミシェルも、何さっさとゲロってんだよ!もうちょっと根性だせよ…。」

「…ごめんなさい。」

「…それにしてもヴィクターの奴、大活躍だったらしいな。」

「ええ…。執行官二人を瞬殺したらしいですね。」

「俺ら、とんでもない奴と知り合ったみたいだな…。あいつ、今頃何してんのかなぁ…。」


 クエントはグラスを飲み干して、ため息をついた。その時、バーの扉が開かれて男女が中に入ってきた。女は、男の腕に抱きついている…カップルだろうか。


「チェッ、羨ましいね〜。」

「あれ、クエントか?」

「ん〜…おい、よく見たらヴィクターじゃねぇか!何だよ、女なんて連れて羨ましいな、オイ!」


 クエントは、ヴィクターの胸に軽く拳を突き出して挨拶する。


「お前も隅に置けないなぁ〜!で、その娘誰だよ?クエントさんにも紹介してくれよ!?」

「ん?お前らも知ってるだろ?」

「ッ! クエントさん!?この人…!」

「ん〜? んっ!ま、まさか…!」

「ど、どうも…ギルド受付嬢のフェイです…。」


 * * *


「「 えぇぇぇぇぇッ!! 」」

「……。」


 クエント達に、『私達、付き合う事になりました!』的な事を説明すると、二人に大声で驚かれた。


「なっ、なんでまた…。お前ら一触即発の仲だったろうが!?」

「そ、そうですよ!いつ爆発するかヒヤヒヤでしたよ!!」

「酷い!ヴィーくんとは、そんな事しないもんッ!」

「「 ヴィーくんッ!? 」」

「おいお前ら、驚きすぎだろ? 少しはボリスを見習えよ。」


 ボリスは、気にも止めずグラスを磨いている。


「ボ、ボリスさん!? 驚かないんですか!?」

「……男女の仲だ、険悪なら改善する事もある。……好きの反対は、無関心だからな。」

「は…はぁ…。」

「……それよりも、二人共。何か頼んだらどうだ?」

「じゃあ俺は、いつものやつ。それから、何か食べる物くれ…二人分!」

「あ、私はプランテーションで!」

「……了解。」


 その後ヴィクターとフェイは、二人でイチャつきながら食事と酒を楽しんだ。そして、その姿を呆然と眺めるクエントとミシェルだった…。

ヴィ《明日あたりに、多分そっちに帰れると思う。》

ロゼ《ギルドにて、事情聴取とやらがあると仰っていませんでしたか?》

ヴィ《ああ、後日な…。別に、明日と言われている訳ではないし、言質もとってある。大丈夫だ。》

ロゼ《…ギルドの方は、混乱されるでしょうね。》

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[一言] ロゼッタにこの関係を言ったらどんな反応するんだろうなあ
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