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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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53/199

48 賞金稼ぎ2

-1時間後

@ブラックマーケット ヤグリのアジト


 ヤグリは、現在ギルドから賞金首として指名手配されている。というのも、ギルドのキャラバン護衛を裏切って、積荷の現金やギルド製の高品質な武器を奪い、それらの売却益を元手にギャング組織を創ったからだ。

 今は、ここカナルティアの街のブラックマーケットの小さな組織に過ぎないが、いずれは街を…いや、あの狼旅団のように周辺の村々や街にも勢力を持つ、大組織にするのだと思い描いていた。

 彼の日課は、このような妄想をアジトの自室で行うことだったのだが、その日課は急遽妨げられた。どうも、アジトの様子が騒がしい…怒号と銃声が聞こえてくる。


「なんだぁ?いい所だったのに…。」

「カ、カシラぁ!大変でさぁ!!」

「どうした!?」


 部下の一人が、ヤグリの部屋に飛び込んできた。


「カ、カチコミです!」

「カチコミだとぉ!? どこの奴等だ?」

「そ、それが…鉄砲玉は一人で、見たことない奴でして…。」

「なんだとぉ!!」

「ぐあぁ!!」

「敵一人くらい、テメェらでなんとかしやがれってんだ!!」


 ヤグリは怒りに任せて、部下を投げ飛ばし、部屋の壁に叩きつける。叩きつけられた部下は、気を失ったのか動かなくなる。


「チッ…この軟弱者めッ!!」


 倒れた部下の横腹を蹴りつけると、ドシっと椅子に腰掛ける。


(しかし、妙だな…。敵は一人…一旗あげようとした無謀な奴か、相当な腕自慢か…。もし、後者なら厄介だな。)


 ここ、ブラックマーケットは特殊な場所だ。目立った武装をした人間が入って来ると、警備隊やレンジャーの襲撃を想定して、見張りが警戒を呼びかける。だが、それが無かったということは、敵は大した武装はしていない筈だ。それに対して、こちらは充分な武装が用意出来る為、負ける要素が無い。

 それでも、ここを単独で攻める事ができる奴がいるとすれば、高ランクのレンジャーくらいだろう。だが、現在高ランクはこの街にはいない筈だ…一体誰なんだ?

 しばらく考えていたが、気がつくと騒ぎが静まり、部屋が静寂に包まれていた。


(…ま、まさか全滅したのか!? おもしれぇ、相手になってやるぜ!!)


 机の下から、レンジャー時代からの相棒である二連式の散弾銃を取り出す。ヤグリはかつてこの銃で、数々のミュータントや野盗との戦闘で勝利を掴み取ってきた。…今では、その野盗と同じところまで堕ちてしまっているのだが。


(さあ、来るなら来い!俺のショットガンが待ってるぜ!!)


 銃を構えたちょうどその時、部屋のドアが蹴破られ、若い男が部屋に入って来た。…そう、ヴィクターである。

 謎の人物が、想像していたよりも若かった為、驚いたヤグリは引き金を引くか戸惑ってしまった。そして、ヴィクターから声がかけられた。


「よう!ヤグリってあんたか?」

「テメェは一体…それより、他の連中はどうしたんだ!?」

「ああ、全員やっつけたよ? それで、ヤグリってあんたで合ってるのか?」

「ああ、そうだ!おもしれぇ兄ちゃんだな、相当強いんだろ? 誰かは知らんが、覚悟し…。」


-ドシュッ!

「あ、そういうのいいんで。」


 ヴィクターは、ヤグリが銃を構えるより早く、目に見えない早さで持った拳銃を構えると、ヤグリに向けて引き金を引いた。いくら歴戦の元レンジャーであるヤグリといえど、口上の最中の不意打ちと、そのあまりの早さに反応が遅れてしまい、その無防備な大腿部には短い矢のような物が刺さっていた。後に、ヤグリはあの時サッサと撃っておくんだったと後悔した。


「なんだこ…れ……は…ッ!!」

「おやすみ〜。」


 ヤグリはその場に倒れると、段々とその意識を手放していった…。



 * * *


 何人かの腕を折って、ようやくヤグリのアジトを特定できた。今回は、敵の捕獲が必要なので、殺さずに相手を無力化する必要がある。

 今回俺が用意したのは、ノア6で開発してきた武器の一つである、敵を無力化する麻酔銃…名付けて【ダートピストル】だ。空気圧で短い矢を飛ばすこの拳銃は、独自の注射器(シリンジ)状の矢を飛ばす事ができる。この特殊な矢の中には薬品を封入しており、着弾時に対象の筋肉内に薬品が注射されて、即座に相手を無力化することができるのだ。

 開発した時は、ロゼッタに「スタンガンでよいのでは?」と言われたが、スタンガンだと無力化できる時間は短い。今回の様に、対象を生きたまま捕獲する必要がある場合は、この麻酔銃はぴったりだろう。


「んじゃ、帰るかミシェル!」

「……もう、慣れるべきなんですかね?」

「ん?何か言ったか?」

「何でもないです…。」


 俺は、眠ったヤグリを縛って担ぐと、出口へと歩いて行く。ヤグリのアジトの前は、騒ぎを聞いて駆けつけた野次馬が大勢いたが、俺がヤグリを担いで出ていくと、皆蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 ちなみに、ヤグリのアジトにいた部下達は、俺がアクション映画さながらの活躍(自称)により、拳銃で頭に風穴が開けられていたり、体術を食らって昏倒している。

 ブラックマーケット内は、俺達が現れると静まり返り、あちこちからヒソヒソとした話し声が聞こえて来たが、無事に外に出ることができた。そのまま、ヤグリを車の荷台に乗せて、ギルドへと車を走らせる。



 * * *



-昼

@レンジャーズギルド


「やっぱり、ヴィクターさんってすごい人なんですね♪」

「なあ、もういいだろ…そろそろ賞金くれないか?」

「え~、もうちょっとお話ししましょうよ♪…ね?」


 …ブレアの態度に思わず、「悪く無いな」と思ってしまった自分が恥ずかしい。捕まえた賞金首をギルドに連れて行くと、ギルドの奥からゴツイ男が2人出てきて、賞金首を連れて行った。

 そして、しばらく賞金首の確認と査定を待った後に、呼び出されたカウンターに行くと、ブレアが長々とお喋り…いや、一方的に話しかけてきた。つい、色香に惑わされ?返事してしまったのが運の尽きだ…。


「あっ、貴方はッ!?」

「げぇ、フェイ姐! ヴィクターさん、これ賞金になりまぁす!!」

「…どうも。」

「あっ、ちょっと待ちなさいッ!」


 賞金を受け取ってやっと帰れると思ったのに、また面倒な女が出てきた。こうなったら、とことん無視してやる。ミシェルを連れて、そそくさとギルドを出る。


(…ヴィクターさん、フェイさん…後ろついてきてますよ!?)

(ミシェル、振り返るんじゃない。無視するんだ、お前が見ているのは幻だ!)

(えぇ…。)

「ちょっと、待ちなさいってばッ!!」


 あのヒス女…まさかギルドの外まで追ってくるとはな。 超怖いんですけど!?

 自然と歩く速度が上がる…気づいたら走っていた。


「ヴィ、ヴィクターさん!? 速いですよぉ!!」

「ミシェル、走るんだ!! 急いで車に乗り込め!」

「ま、待ってってばッ!!」


 俺達は車に乗り込むと、全速力で駐車場を飛び出した。


「はぁ、はぁ…な、なんなのよぉ…もぉ!!」

「いよぉし!! 上手くいったな、ミシェル!!」

「……もうやめましょうよ、こんな事。」


 その後、二人で先日も訪れたレストラン「ベアトリーチェ」で昼飯を食べて、賞金を分配した。

 基本的に賞金は、生け捕りは想定していないらしく、死体を持って来た時の減額分を考慮した額が設定されているそうだ。賞金首は大抵の場合、ギルドを裏切ったり、敵対した人物なので、ギルドが裁くのが面子(めんつ)を保つことになる。その為、生け捕りが望ましいのだが、当然敵も反撃したり抵抗するので、中々上手くはいかないのが現状だ。

 今回は生け捕りに成功した為、報酬は満額貰えたのだが、案の定ミシェルは山分けを固辞した。相談した結果、俺が100,000Ⓜ︎、ミシェルが50,000Ⓜ︎ということで落ち着いた。


「1日で5万も…何か悪いことしてる気分になります…。」

「なあ、本当に山分けじゃなくていいのかよ?」

「いや、申し訳無くてそんなに受け取れませんよ!これでも充分多いですよ!!」


 と、いつものような会話をしながら、車を警備隊本部に置きに行く。警備隊本部では、二日酔い状態の警備隊長が絡んできた。


「よう、弟子ぃ…あ〜頭いてぇ…。」

「よう、おっさん。年甲斐も無く、調子に乗って飲むからそうなるんだ。」

「うるへ〜、俺はまだ若いんだぞっ!! 何でテメェは、あんなに飲んでてケロッとしてんだよ!!」

「はいはい…大きな声出すと、余計に頭痛くなるぞ。」

「…くそう! 悪いが、ちょっとだけ休ませてもらうぞ。じゃあな!」


 警備隊長は、気持ち悪そうに去っていった。俺も酒はほどほどにしなくてはな。ここの所、毎日飲んでる気がする…。というのも、テレビもネットもない世界だ…ノア6ならロゼッタとイチャついていればよかったが、娯楽というか、暇を潰す手立てというものが圧倒的に少ないのだ。酒に逃げる?のも仕方あるまい。

 警備隊本部を出て、宿への帰路につく。今日はもう帰って、午後は武器の手入れでもするかと考えながら街を歩いていると、ミシェルからとんでもないことを暴露された。


「…あの、ヴィクターさん。僕、謝りたい事があって…。」

「ん?突然どうした?」

「じ、実は昨日…フェイさんにヴィクターさんの宿を教えろって迫られて…その…。」

「なっ!……ま、まさか…ゲロっちまったのか!?」

「ごめんなさいッ!! 悪いのは僕だけなんですッ!クエントさんはそのせいで…。」

「個人情報流出してるぅ!?」


 それにしても、クエントは女にぶたれたとか言っていたな…。まさか、その女があのフェイとか言うヒス女だったとは…。許せん、許せんぞ!! 俺の少ない友人に何てことしてくれるんだっ!!

 アイツが何か俺に用があろうが知ったことかっ!こうなったら、徹底的に無視してやる! そっちがその気なら、レンジャーだって辞めてやるわッ!!


「あ、あの…ヴィクターさん?」

「あ、ああ…すまないミシェル、ちょっと怒りで我を忘れてた。」

「ッ!…ご、ごめんなさいッ!恩を仇で返すような真似をしてッ!」

「ああ、許せねぇ…許せねぇぞあのヒス女…フェイ!」

「……え?」

「ミシェルも怖かったのに、よく頑張ったな。後は俺に任せておけ!」

「え、あの…。」

「こうなりゃ、徹底抗戦だ!」

(……許された?けど、また面倒な事になっちゃいそう…。)


 徹底抗戦を誓い心を燃やすヴィクターと、彼と出会ってから心休まる時の無いミシェルであった…。

【ダートピストル】

 元は競技用の空気銃だった物を改造したもの。タンクをより高圧な物に変更し、発射圧を高めている。また、銃身を改造し、専用のダートや、シリンジを差込む事で、これらを発射する事が出来るようになっている。

 シリンジには予め、解離性麻酔薬と速効性の催眠鎮静剤を混合した特殊薬を仕込む事で、対人用の麻酔銃として使用出来る。

 ヴィクターが使用。


使用弾薬 ダート / シリンジ

装弾数  1発

モデル  FX Ranchero Arrow

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで読んで凄く楽しみで更新されてる分をよむのが楽しみです! [気になる点] いくらロゼッタがいてフェイがヒステリックな女だとしても さすがにひどすぎませんか・・・(泣)
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