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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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42 第2作戦

-第1作戦終了より十数分後

@カナルティアの街 スラム


「そこの角を右折して直進すれば、目的地です!」

「…あそこか。お、やってるやってる。」


 俺達は、第2作戦の舞台であるスラムに入っていた。さすがにスラムというだけあって、建物は街中よりもボロボロな上に、道路は舗装されておらず、踏み固められた土が剥き出しになっていた。開発が遅れていた所に、貧困層が住み着いたのか、スラムだけ敢えて開発していないのか…もしくはその両方だろうな。

 スラムに入り目的の建物に近づくと、警備隊のトラックが2台、建物の入り口を塞ぐように駐車していた。そして、警備隊長とその他複数人が拡声器を使い、建物に向かって大声で何か叫んでいる。


『お前たちは包囲されている!大人しく投降しろッ!!』

『これから突入するぞッ! 覚悟しろ!!』

『抵抗しても無駄だぞッ!!』

『降伏しろ!全員死ぬ事になるぞッ!!』


 俺は車を近くに停める。これから突入する建物は、3階建ての集合住宅のような建物だ。こういう建物を責める場合は、敵に察知されない内に静かに素早く制圧するのが理想だが、今回はあえて攻撃を敵側に通告し、建物に篭らせるように誘導している。


「お、ヴィクター!首尾はどうだった?」

「ああクエント、そこで寝てる奴が色々と話してくれたよ。」

「こっちも準備は出来たぞ。注文された手榴弾も準備できてるぞ。」

「それは良かった。」

「おお、弟子!来たな…さっそく突入するか?」

「ヴィクターだ。いや、すまないがまだ呼びかけを続けてくれ。」

『おう、任せとけや!!』

「うるせぇ!こっちに向かって喋るなっ!!」

「はっはっは! よぉしお前らぁ、俺達の美声をもっときかせてやれぇ!!」

「「「 へいッ!! 」」」


 警備隊の人間には、もう少し呼びかけを続けてもらう一方で、俺はポケットからハエのような物を取り出す。これは、電脳で操作できる偵察用の使い捨て小型ドローンだ。見た目はハエそのもので、敵に見つかったとしても、まず機械だとバレない優れものだ。……電脳で操作できる行動半径とバッテリーの持続時間が短く、ハエは絶対殺すというポリシーを持った人間がいるという短所はあるが。

 尋問した男の言葉を、完全に信用することは出来ない。情報は、直接見た物の方が信用度は高い。第1作戦を省略して、初めからコレを使うという手もあったが、あれは建前というか、警備隊…崩壊後の人間を信用させる為の方便の様なものだ。「俺には建物の中が見える」と言っても、とても信じてはもらえないだろう。


 ドローンを飛ばして、内部の様子を窺う。尋問で聞いた通り、1本の通路を挟んで部屋が続いている構造をしている。階段は1つ……崩壊前なら法律違反だ。だが、これなら突入しても挟撃されることはなさそうだ。階段は建物の奥にあり、2階3階へと続く上りと、地下へと続く下りがある。ドローンを地下へと飛ばすと、大きな両開きの扉が見えた。幸い、扉の底に隙間が空いてたのでそこから中に入ると驚愕の光景が広がっていた。

 そこは、例えるなら質の悪い刑務所だった。1階と同じように通路を挟んで牢屋が向かい合っており、中には薄汚い服を着た子供達や、若い男女が収監されていた。牢屋の先には扉があり、武装した男が両脇に立って扉を守っているようだ。…男達がなにやら会話をしているようだ。


「なあ、あいつら攻めてくる気あるのか? あいつらが呼びかけを始めてから、結構経つよな?」

「20人くらいで、この建物に攻め込むなんて無謀だな。しかも、ご丁寧に呼びかけまでして、こっちに襲撃を教えてくれるなんてな。」

「外はどうなってるんだかな。」

「さあ? 連中も足踏みしてんじゃねえか?」

「だろうな。攻められても、この建物の部屋に隠れた連中が、部屋に入った瞬間にズドンッ!だしな。」

「違いねえ。」

「ははは!」


 よし、俺の思惑通りだな。俺の考えた第2作戦の流れはこうだ。まず拠点に呼びかけを行い、敵に襲撃を知らせて防御態勢を取らせる。こういう建物だ…十中八九待ち伏せをしてくるだろう。

 その後建物に突入し、建物の部屋全てに手榴弾を投げ込み、手榴弾の爆発直後に部屋の中に突入し、銃を乱射していく。その際、建物の外には数名の人間を残し、窓から逃げようとする敵がいたら狙撃させる。またこの戦術を続けると、ストレスで敵が部屋から飛び出してくる可能性があるので、制圧していない部屋に常に銃を向ける人員を配置する。

 人員は、警備隊が20名、俺とクエント達で3名の計23名だ。建物は地上3階、地下1階の4階構造だ。人員を突入係2名、前方警戒係2名、弾薬運搬係1名の5人組に分けて、それを3組編成する。1階の制圧後に、それぞれ2階と3階、そして地下を制圧していくという流れだ。そして残った者は、窓の警戒を行う。

 

 ドアを守る男達の話を聞いていると、突然ドアが開けられる。


「おい、お前たちうるさいぞ!ちゃんと見張ってろ!!」

「「 す、すいません!ピート様! 」」

「ふん!これだから下賤の民は困るんだ!!」


 ドアが再び閉められる前に中に入る。部屋の中には、顔がボコボコのブサイクなデブがいた。デブは、ぶつぶつと部屋を駆け回り、鞄に物を詰めている。まるで夜逃げのようだ。


「クソッ!クソッ! 何で警備隊がここにくるんだ!?

 一昨日と言い、なんでこう上手くいかないんだッ!!」


 それにしても、この男…ブサイクすぎだろ。まるで誰かにタコ殴りにされたみたいな痛々しい顔をしているな。そして部屋を見渡すと、部屋の奥に穴が開いているのに気が付いた。


(…トンネルか? 秘密の抜け道ってやつかな?)


 俺はドローンをトンネルの奥へ飛ばしていく。すると、なにやら建物の中の様な所にたどり着く。隙間から外に出ると、どうやらスラム街の中の小屋のようだ。

 …作戦を一部変更しよう。この小屋の前に見張りを何人か置いておこう。



 * * *



-数分後

@スラム 建物前


「よしッ!突入!」


 警備隊長が、狼旅団の拠点となっている建物のドアを蹴破り、俺達は中に入る。


「…廊下はクリアだ。よし、打ち合わせ通りにやるぞッ!!」

「「「「「 了解ッ! 」」」」」


 廊下を進み、部屋のドアに差し掛かると、素早く2名の隊員がドアを通り過ぎて、前方を警戒する。そして、突入係の隊員が手榴弾に火をつけ、部屋のドアを蹴破り、部屋の中へと投げ込む。

 この手榴弾…クエント達に頼んで、導火線を短くしている為、部屋に投げ込んですぐに爆発するようになっていた。


「なっ…うわぁぁぁ!!」

「ぐ、手榴弾(グレネード)ッ!!」

 

 さっそく当たりだったようだ。


-ドォンッ!!


 爆発の直後、隊員が(ほこり)の舞う部屋の中に突入して、突撃銃(ダム)を乱射する。


-ダダダダダダッ!…カラランッ!


 撃ち尽くした保弾板が床に落ち、全弾撃ち尽くしたことを告げる。その時には、爆発によって舞い上がった埃が晴れ、部屋の中がよく見えるようになる。そこには、男が2人倒れていた。


「……制圧完了(クリア)です!」

「よし、次ッ!」


 皆、この様子を見てこれからの行動をしっかり理解したようだ。口で説明はしたが、やはり実物を見せた方が分かりやすいのだろう。この調子で1階の制圧を続けていく。


-ドォン!!ダダダダダッ!

制圧完了(クリア)!」


-ドォン!!ダダダダダッ!

制圧完了(クリア)!」


-ドォン!!ダダダダダッ!

制圧完了(クリア)!」


 しばらく続けていると、ストレスに駆られたのか、先の部屋のドアが開けられ男が飛び出してくる。


「う、うわぁぁぁぁ!」


-ダダダダダッ!


「うっ……。」


 飛び出してきたはいいものの、すぐさま前方警戒係の餌食になり、銃を構える前にハチの巣にされる。

 …自分で立案しといてなんだが、けっこうエグい作戦だったな。相手の逃げ道を完全に塞いだ上で、一切の慈悲なく殲滅していくのだ。敵が可哀想に思える……。

 だが連中は狼旅団だ。他人(ひと)様に迷惑をかけて生きてる連中に、容赦する必要はないだろう。事前に警告もしてるしな……。


 そのまま順調に部屋を制圧していき、遂に1階の制圧が完了した。


「よし!お前達はこのまま、2階と3階の制圧にかかれ!

 階段を登る時と、通路に出る時は注意しろよ!!」

「「「「「 了解! 」」」」」


 警備隊長の号令と共に、男達が階段を登っていく。想像していたよりも、動きが良い。隊長が精鋭揃いと言っていたが、本当だったようだな。

 俺とクエント、警備隊長、後2人の隊員が地下を担当する。事前の偵察通りなら、地下にいる敵は3人だけのはずだ。そいつらを始末した後、俺達は第3作戦……囚われている人達の救出に移る。

【スカウトバグ】

 ハエ型の昆虫擬態型偵察ドローン。小型で、敵に察知され難い特徴がある。電脳により遠隔操作でき、映像と音を直接電脳に共有する。使い捨てで、バッテリーの再充電は出来ない。

 短所は、遠隔操作できる距離が短い事と、バッテリーの持続時間が短い事、虫絶対殺すマンが居ると偵察に支障がでる事が挙げられる。



ヴィ《……俺が直接戦わなくても大丈夫そうだな。》

ロゼ《意外と活躍してますね、警備隊の方々。》

ヴィ《なんでも、各管区から招集した精鋭…らしい。》

ロゼ《それと、ヴィクター様の作戦が優れているのもありますね。》

ヴィ《…結構有名な作戦だぞ、これ。》

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