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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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44/199

39 門出

-夜

@カナルティアの街東部地区 大衆酒場


 カナルティアの街の東部地区は、俗に言う歓楽街のような所で、酒場や飲食店の他、ネオンの明かりの怪しげなお店が軒を連ねている。ギルドでの精算を済ませた俺達は、今日のウサギ狩りが上手くいったことを祝して、酒場で打ち上げを行っていた。酒場は仕事終わりの男達で賑わっており、昨日のバーとは対照的だった。


「「「乾杯ッ!!」」」


 小型の樽の様な外観のジョッキに入ったビールを飲み干す。崩壊前とは比べるまでもなく不味い味なのだが、一仕事やり終えた後の仲間との一杯は悪く無い物だった。

 とはいえ、仕事といってもやった事といえば無抵抗のウサギの捕獲だったのだが…。


「しかし良かったのか? 俺は山分けで良かったんだが…。」

「いや、今日の仕事は殆どヴィクターの手柄じゃねぇか……。それで山分けなんて、恥ずかしくてできねえよ!」

「今日の報酬だって、多すぎるくらいですよ…。」

「まあ、二人が良いって言うなら、ありがたく頂戴するけどな。」


 しばらくビールを飲みながら話していると、ウェイトレスのお姉さんが注文した料理を運んで来る。


「お待たせしました~♪」

「お、来た来た!」

「あ、お姉さん俺ビールおかわり~!」

「俺はウイスキーの水割りで。」


 テーブルの上に揚げ物や、肉料理が並び、俺はウイスキー、クエントは再びビールを注文する。ちなみにミシェルは水を飲んでいる。


「しかし、昨日のバーも良かったが、この店も中々いい所だな。…雰囲気が。」

「だろ、ヴィクター。それにここはほら、ウェイトレスが可愛いだろ?」

「……そうか?」


 店内を見ると、数人のウェイトレスがせわしなく働いている。彼女たちは、皆同じ制服を身に纏っていた。所謂ディアンドルタイプの物で、パフスリーブのブラウスの上から、身体のラインが出るぴったりとした胴衣を腰の部分で絞り、ミニスカートの上からエプロンをかけている。

 制服は確かにエロ可愛いのだが、ロゼッタというこの世全ての美を極めた(ヴィクターの主観)女と過ごしてきた俺には、免疫ができていた。よっぽどのことが無い限り、俺は女に流されたりはしない!…ハズだ。


「またクエントさん、ウェイトレスさん達を変な目で見てますね…。」

「おいおい何言ってんだミシェル、この店にいる連中の殆どがアレ目当てで来てると言っても過言じゃないぞ?」

(……この変態。)

「ん~、何か言ったかミシェル?」

「何でも無いですッ!!」


 そんな話をしていると、追加の酒が運ばれてくる。


「お待たせしました~♪」

「お、ご苦労さん!」

「ッ!!」

「あっ…クエントさんの馬鹿ぁ!!」


 何と、酒をテーブルの上に置くために屈んだウェイトレスの尻を、クエントが触っているではないか!

 ウェイトレスのお姉さんは、手に持っているトレーを縦に構えると、無言でクエントの頭に振り下ろした。


「ひでぶっ!!」

「…ふんっ!」

「……クエント、お前何やってんだ?」

「俺の実家じゃ、女の子は尻を叩いて労ってたんだ…。」

「だぁかぁらぁ!! それは貴方の家だけですって、何回も何回も何回も言いましたよね、僕!!

 ほんともう、いい加減にしてくださいよッ!!」


 ミシェル、激おこである。苦労してるんだな…。俺はクエントに対する認識を改めつつ、ウイスキーの水割りをあおる。…うん、マズい。酒は、昨日のボリスの店の方が美味いな。



 * * *



-その後

@カナルティアの街東部地区 歓楽街


「……結構飲み食いしたけど、昨日の昼よりちょっとは安かったな。」

「う……ごめんなさい、ヴィクターさん。」

「ああ悪い、そんなつもりじゃなかったんだ、気にしないでいいぞ!」

「……お前ら、どこ行ったんだよ?」

「なんだっけ、ベアトリーチェだっけ?」

「ああ、あそこか。ランチでも高いからな、あの店。」

「でも、美味かったぞ?」

「だが、ミシェル。普通勧めるような店じゃないだろ。」

「美味しい店って、僕あそこしか知らなくて……。」


 店内を出て、だべりながら歩いていると、いつの間にかネオンの輝く妖しいお店が立ち並び、エッチな衣装のお姉さん達が客寄せをしている。……ほぼ下着だろ、アレ。風俗店の類だろうか?

 だが、ロゼッタという女のお陰で…略。


「なんだよヴィクター、気になるのか?」

「まあな、男だし。」

「娼館か…ミシェルを弟子にしてからご無沙汰だなぁ。」

「ダメです!! あんな所に行く必要ありませんッ!」

「…ミシェルにはまだ分からねぇか~、幼いねぇ。なあヴィクター?」

「ミシェル。男は溜め過ぎると大変な事になるんだぞ?」

「溜める…って何をです?」

「…なあ、ミシェルって何歳なんだ?」


 レンジャーの登録は14歳から可能らしい。ということはミシェルは14歳以上のハズだが、流石にそのくらいの歳になれば性に目覚めているだろう。ミシェルは小柄な為、実年齢よりも幼く見えてしまうのかもしれない。

 ちょっと気になってしまった。


「ええと、14…じゃなくて! 15ですッ!!」

「…なんか必死だな? サバ読んでる訳じゃあるまいし。」

「う…。」

「俺も、去年ミシェルを弟子にしたけどさ……何か怪しかったんだよなぁ……。去年よりかは大きくなったと思うけど、あの時は子供が何言ってんだと思ったね。」

「う……。」

「ま、いいんじゃね。登録できたってことは、問題無いんだろ?」

「ま、そうだな。」

「…ほっ。」


 俺達は、道を走っていたタクシーを止め、それぞれの宿へと帰る。タクシーと言っても車ではなく、3輪のオートバイやスクーターを改造したような外観の、かつて南国の都市で見たことのあるような乗り物だった。

 この街の中では、車はあまり走っていない。崩壊後の世界では、基本的に機械は全て手工業で生産している。

 その為、生産に技術と手間がかかる分、値段が高い事、また燃料などの維持費がかかる事、馬やバイクで事足りるので、車を個人で持つことは少ないのだ。


 その一方で、バイクやスクーターなどの二輪車は製造コストが安く、燃費がいい事から普及率が高いようだ。また、その派生型の3輪車(トライク)は、軽輸送やタクシーなどで広く使われている様だった。

 つまりは、俺の造った……いや、カスタムした車はかなり浮いていたという事か。変な連中に目をつけられたのも、自業自得だろうか?



 その後、3輪タクシーが俺の滞在している宿に到着し、クエント達と別れる。昨日と今日の収支から考えれば、今の宿に泊まり続けても問題なさそうだ。

 俺が泊まっている宿は、とてもFランクのレンジャーが滞在できる所ではないようだが、この宿よりも安い所だと相部屋だったり、ベッドやシーツがボロボロで、セキュリティーにも不安があるらしい。……俺としては、この宿でもセキュリティーは不安なのだが、一人部屋なだけマシなのだろう。


 さて、明日に備えて寝るとするか。レンジャーの朝は早い。明日もあの二人と仕事をする約束をしている…遅れる訳にはいかない。



 * * *



-ヴィクター達が酒場でどんちゃんしてる頃

@カナルティアの街南門


 時を少し戻し、クエントがウェイトレスの尻を揉んでいた頃……門の前で警備隊の青年と、明るい栗色の髪が特徴の娘が揉めていた……。


「おい、嬢ちゃん。何の目的で、この時間に街から出るんだ?」

「だから! 依頼だって言ってるでしょうがッ!?」

「この時間にか? 怪しい奴だな、まさか狼旅団の構成員じゃないだろうな?」

「なんでそうなるのよッ!?」

「狼旅団って、落ち零れたレンジャーも加わってるんだろ? ドッグタグでレンジャーの身分は確認できるが、旅団の連中とどうやって見分けりゃいい?

 当然、全員疑うのが筋ってモンだろ?」

「ああもう! 面倒くさいっ!!」


 カナルティアの街南門。ヴィクターが街に入った際に通過したこの門は、街の4つの門の内の1つで、死都へと赴くレンジャーの他、街周辺に存在する村からの交易品を運ぶキャラバンが利用している。

 だが現在、狼旅団と名乗る野盗集団の活動の活発化により、カナルティアの街周囲では、襲撃されるキャラバンが後を絶たない。本来であれば、警備隊がレンジャーズギルドに依頼をだして、共同で対処するところなのだが、副支部長の方針により、現在、周辺の村々にレンジャーの多くを派遣している為に、対処するにも人手が足りていないのだ。


 また狼旅団の一部は、最近では街の外だけでなく、街の北東に存在するスラム街を拠点に、犯罪活動を行っているとされているため、街は日没後の街の出入りを原則禁止することにしていたのだ。


「ちょっと、偉い奴呼んで来なさいよ!」

「なんだ、さっきから騒がしいな?」

「こ、これは隊長! 怪しいレンジャーの娘が門を通りたいと言ってまして……。」

「げ…カティアじゃねえか。」

「あ、おっちゃん……げ、って何よ! 失礼するわね!」

「いやすんませんね……それから、俺はまだ30代だ!」

((……いや、充分おっさんでしょ。))

「あ、おい新入り! てめえ今、おっさんだろって思っただろ!?」

「ええ、なんでバレ…ぶげ!」


 警備隊長が、新入りと呼ばれた青年の頭に拳骨(ゲンコツ)を落とす。


「で…カティアさんは、一体こんな時間に何しに行くんですかね?」

「依頼よ。フェイからのね……もちろん副支部長にはナイショのね。」

「なるほど…じゃ通っていいぞ。悪いな、待たせて。」

「いいのよ、仕事でしょ?」

「へへ、まあな。おいお前ら、門を開けろぉ! 人が一人通れるくらいでいいぞ!!」


 警備隊長の号令と共に、門が少しだけ開けられる。カティアは門の隙間を通り、街の外へと出て行く。


「た、隊長! いいんですか!?」

「ああ、()()禁止ってのは別に完全に禁止じゃねぇ、例外はある。例えば、レンジャーズギルドの依頼とかな。」

「そうじゃなくて! あんな女の子一人で、こんな時間に街の外に出て大丈夫なんですか!? 危ないでしょうが!?」

「あ〜、奴は大丈夫だ。」

「えっ?」

「お前は新入りだから知らないと思うが、彼女はガラルドさんの弟子だ。」

「ええ! あんな可愛い娘が、アーマードホーンを倒しちゃうんですか!?」

「違う、あいつじゃねぇ! そいつはガタイの良い兄ちゃんの方だ。」

「な、なんだぁ〜。」


 ホッとして、次に会う時には先程の態度を謝らなくてはと思う新入り。そして、あわよくば一緒にお茶でも……とか考えていた。カティアは、明るい栗色の髪と、緑の瞳を持った可憐な娘だったのだ……喋らなければ。

 だが、隊長が釘をさした。


「ああそうそう、あの娘はやめとけよ。暴れたら本当に大変な目に遭うからな……。思い出すだけで、寒気がする……。」

「な、何があったんですか…。」

「ちょっとおっちゃんッ、聞こえてるわよ!!」

「げ、やべ…早く門を閉めろォ!!」

「あ、ちょっと!帰ったら覚悟しなさいよっ!!」

「……新入り、後でゆっくり教えてやるよ。」

「は、はい…。」

「ちょっとォ!変な事言ったらタダじゃおかないからぁ!!」


 閉められた門の向こうに向けて、声を荒げるカティアであったが、街の外へと歩き出す。目的地は死都。その外縁部にあるという、狼旅団のアジトを調査するのが仕事だ。


(さてと…フェイも心配するだろうし、さっさと片付けましょ!)

ロゼ《ヴィクター様、ノア6から出て2日目になりますが、問題無いでしょうか?》

ヴィ《そろそろ、女…ロゼッタが恋しくなってきたかも。》

ロゼ《ご用命とあらば、直ぐにでも参上致しますよ?》

ヴィ《ダメだ!ロゼッタが街中にいるだけで、視線が集まっちまう。また、昨日みたいに変な奴に絡まれるとも限らないからな。》

ロゼ《では、引き続きここからサポートさせていただきますね。》

ヴィ(とは言ったものの、想像してたより辛いかもしれん。物理的なサポートが欲しいよ…。)

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