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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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33 臨時収入とグルメ

注:お店や地域により、ピザは切り分けられた物を手で食べるのでは無く、ナイフとフォークで切り分けて、ハンバーグやステーキのように食べる事があります。あと、ハンバーガーもナイフとフォークで食べる所もあります。(事実)

 友人が海外でやらかしたので、知らない人がいたらご注意を…。

 しばらくミシェルと話していると、精算が終わったようで、声がかかる。


「お、お待たせしました~♪」

「ああ。」

「こちらがぁ、今回の報奨金になります♡」

「報奨金?金がもらえるのか?」

「はい♡ 回収したドッグタグに応じて、少ないけどお礼を支払ってます♪」


 ドッグタグの回収なんて、本来誰もやりたがらない事だ。死体によっては腐敗が酷く、近づきたくもない場合もある。だが報奨金が貰えるのであれば、喜んで回収される=レンジャーの名簿管理(死亡者の記録)になるという訳か…。


「では、どうぞ45,000Ⓜです。」


 ずずいっ、とコインやら金属のプレート?が載ったトレーを突き出すと共に、ブレアは俺の耳元で囁く。


(うふ…ちょ~っと色付けといたからぁ♡ もしよかったら…。)

「そうか。」


 俺は、トレーの中身を全て財布に入れると、さっさとその場を立ち去る。


「あ、ちょまッ…!」

「さあミシェル、行こうか!」

「え、ええ…。」


 後ろから何やら呼び止める声が聞こえるが、知るか。無視だ無視!

 ギルド入り口の扉を開け、外に出る。


「そういえばヴィクターさん、いくらになったんですか?」

「45,000Ⓜだ。」

「えぇ!す、凄いですね…。でもあれだけの量があれば、当然なんですかね?」

「さあ?」


 俺は、先ほど受け取ったコインと小さな銅製の金属版を思い出す。レンジャーズギルドが発行している通貨…メタル。金銀銅鉄といった金属で作られたコインや、小さな金属板には、レンジャーズギルドの前身である、かつては「オリーブレンジャーズ」と呼ばれていた組織のシンボルが彫られている。

 俺は、財布から先ほど受け取ったコインを取り出し、手で弄ぶ。


「硬貨とはまた前時代的な…。」

「わあッ!ヴィクターさん何してるんですかっ!!」

「ああ、こんな物に価値があるとは思えねえなって。」

「何言ってるんですかぁ!?それ、銀のコインですよね?1,000Ⓜじゃないですかッ!!」

「って、言われても相場が分からねぇからなぁ…。」


 崩壊前の社会は、完全にキャッシュレス化されていた。貨幣は存在するにはしていたが、使えない場合が殆どだった。俺自身、見たことはあったがどんな物だったか思い出せない。見たことも無いって奴もいたはずだ。

 ……今考えれば、そんな実体の無い数字に価値があった事に驚くべきなのだろうか?だが、そんな社会で育ってきた俺には、今手に持ったコインに価値があるなんて言われても信じられなかった。だってただの金属の塊だろ?確かに、銀はg単位で値段が付いてはいたが、俺にとってはただの銀のコインに過ぎなかった。これが(きん)とかなら、扱いも変わるが…。


「そうだ!ミシェル、腹減ってないか?」

「え…もしかして、聞こえてました?」

「ん?腹でも鳴ってたのか?」

「な、鳴ってないですッ!!」


 ミシェルが顔を赤らめ、否定する。そんなに恥ずかしい事か?女の子じゃあるまいし…。


「ま、いいや。この後暇だろ?」

「ええ…本当ならクエントさんの所に行きたいんですが、救助隊が向かった以上、低ランクの僕がいても足手まといになりますし…。」

「そういえばミシェルのランクって、どの位なんだ?」

「この間、Eランクに昇格したばっかりです。」

「お、じゃあ先輩だな!ってことで、飯食いに行こうぜ!案内のお礼に奢るからさ!!」

「え、そんな…いいんですか?」

「もちろん!金はあるぞ?…あっ、あと美味い店も紹介してくれよ!」

「ええと、じゃあお言葉に甘えて…。」

「あ、でも先にあのトレーラーの中身を処理したいんだが…。」



 * * *


-10分後

@カナルティアの街 スカベジングステーション


「これ、全部か!?」

「ああ。」

「わ、わかった。じゃあこっちで登録と書類を書いてくれ…。」


 俺とガラルドで集めた(大半はガラルドがやったが…)、死体などから集めた武器や廃品などは、ここスカベジングステーションと呼ばれる施設で引き取ってくれるらしい。決してゴミ捨て場ではない。

 スカベジングステーションは、レンジャーズギルドも関わっているらしいが、一応は独立した施設のようだ。

 あの後、俺達は車に戻り、ミシェルにここへ案内してもらった。車のトレーラーが邪魔だったので、さっさと処理したかったのだが、ステーションでトレーラーを見せたら驚かれてしまった。


「……あの中身、やっぱり全部遺品だったんですね。最初は武器商人か何かかと思ったんですが…。」

「ああ。いや~邪魔だったから清々したぜ!じゃあ、飯行こうぜ!」


 精算には時間がかかるらしく、後日来てくれと言われた。トレーラーをステーションに置いていき、街へ繰り出す。


「やっぱ軽いな!!」

「そんなに変わるものですか?」

「ああ。全然違う、ミシェルも車を運転するようになれば分かるさ。」

「はは…そんな時が来るとは思えないですけど。あ、そこの店です!」

「お、あれだな。了解!」


 俺は歩道に車を寄せて停める…いわゆる路駐というやつだ。法律とか無いらしいし、大丈夫だろ。

 店は街の中央地区にある「ベアトリーチェ」という名前のレストランだった。中央地区らしく、比較的綺麗な外観をしている。店に入ると、そこそこ混んではいたが待つことなく席に案内された。


「ふ~ん。本日のおススメ、マリナーラピザが2,000Ⓜね、これにするわ。」

(どうしよう…。勢いで、前にクエントさん達に連れて来てもらった所に来ちゃったけど、このお店高いんだよね…。 ヴィクターさんに悪い事しちゃったかも…。)

「お~い、ミシェルはどうするんだ?」

「あっ、はい!ええと…じゃあ、これで。」

「ハンバーガーか?そんなんでいいのか?」

「は、はい!それでいいです!」

「ふ~ん。お、ハンバーガーにトッピングとかつけれるじゃん!スープとかサラダもあるぞ!」

「えっ……。」

「すいませ~ん!!」


 店員を呼び、注文を告げる。


「マリナーラピザをスープとサラダセットで、あとハンバーガーのトッピング全部つけて!あ、これにもスープとサラダつけてくれ。」

「ヴィクターさん!?」

「それですと、ハンバーガーはベアトリーチェバーガーがおススメです。変更されますか?」

「じゃあそれで。」

「畏まりました。」

「ヴィクターさん…。」


 ミシェルは、注文する前に自分の眼と脳をフル稼働させ、瞬時にこの店で一番安いメニューを選択することに成功した。ハンバーガー、900Ⓜ。幸いなことに、ハンバーガーはミシェルの好物だったので、一番安い物を選ぶことでヴィクターの負担を最小限にし、ミシェルは自分の好物を食べられるという、まさにWin-Winの状態だったのだ。以前も食べた事があったハンバーガーが、一番安いメニューだった事は驚きではあったが…。

 だが、ヴィクターはハンバーガーにトッピングが可能な事を知ると、トッピングを全部つけたという憧れの「ベアトリーチェバーガー」を注文したのだ。

 ベアトリーチェバーガー、4,000Ⓜ…。いつか食べてやろうと思っていたものが食べられるのは嬉しいが、台無しである。ミシェルは知る由も無かったが、ヴィクターはトッピング類は基本的にある物は全部つける派だったのだッ!!


(失敗だ…もっと安い店にするんだった…。)

「崩壊後にもこんな店があるとはな…楽しみだな♪」

「そ…そうですね…。」

「なんだミシェル?そんな浮かない顔をして。」

「……何でもないです。」



 先に来たサラダとスープを味わいつつ、しばらくすると注文した料理が届けられる。


「お待たせ致しました。マリナーラピザと、ベアトリーチェバーガーになります。」

「お、来た来た!」

「ゴクリ…美味しそうです…。」

「じゃあ、ミシェル。」

「ヴィクターさん!」

「「いただきま~す!!」」


 ナイフとフォークを手に持ち、目の前の大皿に乗ったピザを切り分け、口に運ぶ。

 美味い。味付けは、トマトとニンニクと塩のみ。以上!だが、このシンプルさがピザ生地にマッチしている。

 崩壊後は、食文化まで衰退しているのではないかと思っていたが、撤回しなくてはな…。ガラルドと過ごしていた時は、基本は狩ってきた動物のジビエ?と焼いたパンのみの生活だった。あれはあれで美味かったが、やはり文化的な食事が一番だ。

 ふとミシェルをみると、ナイフで切り分けたハンバーガーを食べていた。


(お…おいしい…。いつかは食べてやるって思ってたけど、まさかその日が今日になるとは…。)

「ミシェル、美味いか?」

「は、はい!とっても!!」

「俺のも美味いぞ!いや~いい店紹介してくれてありがとな!」

「う…。」



 * * *



「会計は7,000Ⓜになります。」

「な、ななせん…。」

「ほーい。えっと、銀貨7枚でいいのかな?」

(ヴィクターさんごめんなさい!そして、ありがとうございます!)


 ガラルドから引き継いだ財布の中身と、先ほどの報奨金を合わせると、俺は今20万Ⓜ近く持っている…らしい。(ミシェルに確認させた。)

 別に、大した支払いではない……この時はそう思っていた。

 支払いを済ませた俺たちは外にでる。すると、俺の車の周りに3人ほど男が取り囲んでいるのが見える。男たちは皆、赤いシャツの上から鎖帷子(くさりかたびら)の様なものを着ていた。


「げ、ヴィクターさん!あの人たち、自治防衛隊の人たちですよ!?」

「マジか…。」


(まずい、路駐はまずかったのか!?)


 切符切られる!と思って様子を窺う。だが、どうもそうでは無いらしい…。


「おい、どうなってるんだ?」

「クソッ…この車、動かせないぞ!!」

「次は俺がやる!どけよ。」

「じゃあその次は俺だな。」


 ……これはアレか、日中堂々と車泥棒ですかね?どうしたものか……まあ、決まってるんだけどね。俺の恩人(ガラルド)の遺してくれた車(もはや別物だが…)に手を出すとは許せんッ!!

【メタル】

 崩壊後の世界における、共通通貨。表記はⓂ。

 元々は、ボランティア活動に参加した者に配られていた記念品で、活動に応じて、記念コインやが配布され、それらをオリジナルグッズと交換することができた。また、金や銀などの貴金属製の物は、運営資金獲得とチャリティー目的の為に一般販売されており、世間でも実物投資の対象として一定の人気があった。小地金は、基本的に長方形の小さな札状をしている。

 崩壊後の世界では、偽装が難しく、ギルドが銀行の運営を行っている為、物々交換に代わる、貨幣として扱われている。

 かつてのオリーブレンジャーズのシンボルである、剣とオリーブと鳩のレリーフが施されている。

 小地金は、コインの約10倍の重量の長方形型の板で、当然価値も10倍ある。

 崩壊前から、金などの貴金属は掘り尽くしており、崩壊後においても価値が非常に高くなっている。

 


鉄のコイン・・・1Ⓜ

銅のコイン・・・10Ⓜ

銅の小地金・・・100Ⓜ

銀のコイン・・・1,000Ⓜ

銀の小地金・・・10,000Ⓜ(1万)

金のコイン・・・100,000Ⓜ(十万)

金の小地金・・・1,000,000Ⓜ(百万)


の価値がある。

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