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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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31 レンジャーズギルド

明日はいつも通りに投稿します!

「…すごい所だな。」

「ええ、僕も初めて来た時は街の大きさに驚きました。」


 カナルティアの街に入った俺達は、レンジャーズギルドを目指し、車を走らせている。

 ミシェルの話から察するに、ミシェルはこの街の出身ではないようだ。だが、俺がすごいと言ったのは街の大きさの事ではない。カナルティアの街は、俺が知っている崩壊前の都市の街並みとは明らかに異なっていた。道路はかろうじてコンクリートで舗装されてはいるが、そこに信号機、道路標識といった類のものはない。

 ……交通ルール、大丈夫なのか?事故が多発するのでは?車を運転していて、とても不安になる。現状、車道に人が入り込まず、他に走ってる車が少ないのが救いだろう。


「それにしても、事故とか起きないのか?」

「道は広いですし、自動車と馬車で車線が分かれてます。そもそもそんなに自動車は走ってないですし、ほぼ直線ですから見通しも良いです。歩行者が気を付けてれば大丈夫ですよ。あ、そこを左です。」

「はいよ。」


 街は方角設計(碁盤の目状)のようで、今走っているような主要な道路は車と馬車で車線が分かれており、それぞれ対向車線が存在していた。方角設計の街は、方角さえ分かれば迷いにくいと言われているが、実際は初めて見る景色や、同じような景色が続いたりして、慣れていないと迷ってしまうものだ。今も、無骨な打放しコンクリート製の建物や、粗末な木造の建物だったりと、よくわからない景色が広がっている。今は、隣に座るミシェルだけが頼りだ。ギルドまでの道すがら、色々聞いてみよう。

 角を左折すると、大きな広場の様な所に人が集まっている。見るとトタンや廃材でできた屋台や、馬車の荷台の前にシートを敷き、その上に商品を並べているのが見える。


「あ、あそこはマーケットです。」

「マーケット?」

「あそこで各地の交易品を取引してるんです。美味しいものもありますよ!」


 なるほど。情報収集も兼ねて後で行ってみるか。


「あ、でもスリとか乱暴な人もいるので、気をつけて下さいね!」

「ああ、その辺は心配しなくていい。」

「あっ。そうでしたね、あのガラルドさんの弟子なんですもんね!」

「……頼むから、黙っててくれよ?ホントに…。」

「もちろんですよ!こう見えて僕、口は堅いですからね!!」

「そういや、ガラルドってそんな有名だったのか?一応、弟子ってことになってるけど、そんな事聞いたことないぞ?」

「もちろんです!!この街の人間で知らない人はいませんよ!なんでも一時、ギルド前に像を建てようって話もあったらしいですよ?」


 それ、ガラルドが絶対嫌がりそうだな。俺でも嫌だ。


「それにしても、この街の英雄がもういないなんて……。あっ…。」

「気にするな。」

「ご、ごめんなさい!関係者の前で…。」

「そんだけ街の人に尊敬されてんだ、あのおっちゃんも浮かばれるさ。」

「……僕もガラルドさんに憧れて、村を飛び出してきたんです。」

「そうなのか?」

「ええ、僕には5人の兄がいるのですが…。」

(兄弟多くねっ!?)

「全員レンジャーで、村を守ってるんです。僕も、兄達のようにレンジャーになって、ガラルドさんのように、人々を守る仕事がしたいとおもってたのですが…。」

「ですが?」

「その…反対されまして…。ほら、僕こんなですし…。」


 レンジャー。元は猟兵という意味で、軍の精鋭部隊や特殊部隊の役割を担っていた。ガラルドは「秩序から縁遠いこの世界で、秩序を守るため戦う仕事」と言っていた。当然、危険な仕事も多く、命の保証もない。野盗やミュータントとの戦闘に駆り出されることもある。

 ミシェルは小柄で華奢な身体つきをしている。その上まだ子供だ、確かに荒事に向いているようには見えない。止められてしまうのも、無理はないのかもしれない……。

 だがッ!!


「俺は尊敬するぜ。」

「えっ!?」

「周囲の反対を押し切ってまで、この街に来たんだろ?それだけ、自分の夢を叶えたい思いが強いってことだ。違うか?」

「ええっと、そうですね?」

「その大胆な行動力は、常人においそれとは発揮できない。俺は、そんなミシェルを尊敬するよ。だから、胸を張れよ!」

「あ、ありがとうございます…。」


 かつては自分も、宇宙開発機構への入構という夢に向かって努力していたことを思い出し、変なスイッチが入ったヴィクターと、思わぬ激励を受け顔を赤らめるミシェルであった。



 * * *



@カナルティアの街 レンジャーズギルド 駐車場


「崩壊後にも駐車場があるとはねぇ…。」

「ヴィクターさん、ありがとうございました!!僕は一足先に、ギルドへ行きますね!」

「おお、俺も車を停めたら行くわ。」


 ミシェルが、状況報告と救援要請の為、一足先にギルドへと入っていく。

 俺は、車を駐車場に停めようとしているのだが、牽引しているトレーラーのせいで上手くいかない。仕方ないので、駐車場の壁に向かって前向きに駐車する。出やすいように、本当はバックで駐車したかったのだが仕方ない。幸い、駐車場は空いているので、出るときは困らないだろう。

 しかし、馬用の厩舎もあるとは驚いた。駐車場には、自動車以外に馬車の荷台が停まっている。どうやら、馬は厩舎に、荷台は駐車場に置いておくようだ。


 車にロックをかけると、ギルドの入口へと歩いていく。ギルドは、カナルティアの街【中央地区】の西側に位置し、崩壊前の銀行を利用しているようだ。街の中央地区は他の地区とは異なり、崩壊前に開発途中だったニュータウンをそのまま利用するような形で成り立っている。その関係で、崩壊前の建物が多く遺されており、それらの建物を再利用していることが多いようだ。


「何だアレ?」


 ギルドの建物の前には、広場がある。その広場の中央には、木でできた2本の柱が立っており、それぞれの頂部を結ぶように、一本の木材が渡されていた。ランドマークか何かかな?

 そんなことを考えている内に、建物の入口へと辿り着く。すごく緊張する…。

 ゲームとかだと、入った瞬間ジロジロ見られたり、厳つい人に絡まれるのが定番だ。


(ええい、ままよッ!!)


 勢いよく……開けるつもりで静かに、そ~っと扉を開けて中へ入る。


「って、ガラガラじゃねぇかッ!!」


 そう、ギルドの中はガラガラであった。中は、かつての銀行と大差無いようだが、人が少ないせいでロビーはとても広く感じられた。


「あっ、ヴィクターさん!」

「お、ミシェル。報告は終わったのか?」

「ええ、これから救助隊が向かうそうなんですが、アーマードホーンの話をしてたら急に防衛隊の人たちが来て、ギルドと揉めはじめてしまって……。」

「なんだそりゃ?」

「最近、多いんですよ。ギルド支部長がいなくなってから、今ギルドは荒れてまして…。」

「いなくなった?死んだのか?」

「死んでいませんッ!!」


 ミシェルと入り口で話していると、横から制服を着た眼鏡のお姉さんが乱入してきた。


「あ、フェイさん。防衛隊の人達は?」

「ほんと、何なのよアイツら!!いきなりしゃしゃり出てきて、アーマードホーンを寄越せですって!?バッカじゃないの!?碌に働きもせずにデカい顔すんじゃないわよッ!!」

「はは…。」

「それに、あのガラルドさんが亡くなったってガセが回ってくるし、支部長不在のこの時に何でこう問題が次から次へと……。そういえば、報告してきたのはミシェルよね?ギルドに嘘つくなんて、いい度胸してるわね?」

「ひゃいッ!?う、嘘じゃないんですけど…。」


 ギロリと、眼鏡の奥から鋭い視線がミシェルを貫き、ミシェルは身震いする。


「ミシェルが言ってる事は、本当だぞ。」

「貴方は?」

「ヴィクターだ。レンジャー登録をしに来た。」

「じゃあ、貴方がガセを吹聴している犯人ってことね!?」

「はあ?おいおい、話を聞けよヒス女!ええと、これを見ろよッ!!」

「誰が、ヒス女ですってッ!?……こ、これは!?これを一体どこで?」

「死都でな、託されたんだ…。彼は、俺を庇って…。ウゥ…。」

「そ…んな…。」


 ガラルドとの経緯はもうさんざん話しているので、正直面倒くさい。とりあえず、ロゼッタとのロールプレイを通して身に着けた演技力を発揮して、この場を乗り切ることにした。お涙頂戴の演技で、ガラルドのドッグタグをこのフェイとかいう女に渡す。


「ああ…。もうダメ……。色々ありすぎて、疲れ過ぎて死にそう。ああミシェル、ごめんなさいね。」

「い、いえ…。」

「ちょっと、私は休ませてもらうわ……。」

「お、お疲れ様です。」

(ふ、勝ったな。てか、俺に謝罪は無いのかよっ!?)


 フェイはフラフラと、周りの同じ制服の受付嬢達に心配されながら、ギルドの奥へと引っ込んでいった。


「……ヴィクターさん、やっぱり辛かったんですね。」

「ん、そんなこと無いゾ?」

「え、あれ?今さっき泣いてましたよね?あれ?」

「ああ、あれは演技だ。」

「ええッ!演技!?」

「正直、ガラルドとの経緯って話すのもう面倒臭いし、弟子って知られるのもちょっとさ?」

「あ、報告の時にヴィクターさんの話はちゃんと控えましたよ!」

「でかした、ミシェル!……という訳で、俺はレンジャー志望の田舎者として振る舞いたい。これからも協力してくれるな?」

「ええっと…。でも、あれだけの活躍ができるなら、もっとアピールしていった方がいいんじゃないかなと…。」

「ミシェル。今はその時じゃないんだ。さっきも言ったが、目立つと俺が敵に狙われやすくなるかもしれない。助けると思って、協力してくれ!」

「でも…。」

「目の前の人間を助けられずに、他の人を助けられると思うのか?」

「え?う~ん、た、確かにそうかもしれないですね!」

(チョロい…。)


 ミシェルを言いくるめた後、俺はレンジャー登録をすべく受付へと向かった。

【カナルティアの街 中央地区】

 崩壊前の、郊外の住宅地であるカナルティアニュータウンが基になっている地区。カナルティアニュータウンは、伝統的な旧市街他風の街並みを基にしている為、他の4地区とは異なり、石畳の道路や、地球でいうところの西洋建築が立ち並んでいる為、比較的美しい街並みをしている。

 レンジャーズギルド本部や首長邸宅、自治防衛隊本部などがある。主に、崩壊後は富裕層が居住している。


【カナルティアの街 レンジャーズギルド支部】

 崩壊前の大手銀行『モーガン・デューン銀行』の支店を、そのまま利用している。カナルティア旧市街地の、伝統建築風の建物で、いわゆる洋風建築の建物。建物内の床は大理石を使用していたりと、崩壊後の世界では非常に豪華な造りとなっている。



ロゼ≪突然、ママになってとか、看護師さんになってと言われた時は驚きましたが、演技力を磨く為だったのですねっ!!≫

ヴィ≪……。≫

ロゼ≪さすがヴィクター様!先見の明とはこのことですね!!≫

ヴィ≪……頼むから、もう何も言わないでくれぇ!!≫

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