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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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32/199

27 サイとの再戦

-数刻前

@平原


「……よし、こんなもんか。」


 俺は軽く地面を掘り、ガラルドが使っていた手製の指向性地雷を上向きに設置すると、GPSにマーキングする。

 アーマードホーン。要は鎧を着たサイなのだが、奴の弱点は首もとの装甲の隙間だ。以前はここに槍を突き刺して倒したが、今回は平野での戦いになる。ガラルドの話では、奴は走る車に迫る速度で走り回るらしい。

 大体40~50km/hくらいか?そんなのに飛び乗るのは、難しいだろう。


 そこで、俺はもう一つの弱点である腹部を狙うことにした。奴の腹は装甲が薄い。だが、普通に戦っていては腹は攻撃できない。そこで、ガラルドの使っていた地雷と、その他爆薬を穴に詰めて、ペグを地面に打ち込み、起爆用のワイヤーを張る。

 何世代も前の装甲車も、敵地のゲリラや民兵の仕掛けた地雷やIEDにより、大きな損害を被った戦訓もある。奴が装甲車だとしたら、この作戦も有効なハズだ!


「さてと…急ぐか。」


 先程見えた、横転したトラックの元へ急ぐ。不整地だが、草原の為かなり速度がでている。これなら奴を振り切れる筈だ。

 大体100m程の距離に接近すると、アーマードホーンに人が突き飛ばされていた。生き残りは、トラックの荷台の影に男が一人と、離れた所に少年が一人。マズい、奴が少年の方に狙いを定めて走り出した!


「マズいッ!!」


 俺は車を停め、助手席に置いていた【槍】を持って外に飛び出した。この槍、かつて使っていた包丁槍ではなく、俺がノア6で作った物だ。石突の部分を分解して、簡易的なアトラトル(原始的な投槍器)として使用出来る。

 馬などの動物は、先端が鋭いものを避ける習性がある。この槍を、あの少年とアーマードホーンとの間に突き刺せれば、奴の足を止めることが出来るかもしれない。サイも馬と同じ奇蹄目の動物だったはずだ。賭けるしかない。


「…ッおりゃぁ!!」


 アトラトルを振り抜くと、槍は後方からのベクトルにより一瞬上向きになりながら天高く飛び、その後穂先の重みで弧を描きながら飛んでいく。

 槍はちょうど、少年とアーマードホーンの間に突き刺さり、アーマードホーンは驚いたようでその脚を停めた。


「よしっ!作戦成功だ!後は…」


──ガシャッ…ダダダンッ!ダダダンッ!


 俺はアサルトライフルのコッキングレバーを引くと、奴の頭部目掛けて発砲した。

 だが、奴の装甲の前に弾は防がれてしまったようで、少し怯ませる事が出来た程度だった。


「クソ、やっぱり効かねぇか…。」

(6.8mmでも効かねぇのか!?今度相手する時は重機関銃でも持ってくるか?)


 何て事を考えていると、奴の身体がこちらを向く。どうやら俺にターゲットを移したようだ。


「ブモォォォッ!!」

「お怒りだな…。付いてこい!このデカブツがっ!!」


 俺は車を走らせ、先程仕掛けた罠までアーマードホーンを誘導する。


──ガタガタガタガタッ!


 不整地を爆走し、車体が振動する。なんだろう、ラリーカーとかこんな感じなのかな?結構楽しいかもしれない。

 命のやり取りをしているはずなのだが、俺は崩壊前では味わった事のない、胸の高まる感覚を覚えていた。


(そろそろだな…。)


 GPSを電脳内で確認しながら車を走らせ、奴を誘導する。ちょうどアーマードホーンが、罠の地点に到達すると後方からデカい爆発音が聞こえてくる。


──ドォォン!!


 ミラーを確認すると、土煙りが上がっている。その後、だんだんと土煙りが晴れていくと共に、アーマードホーンが倒れているのが見えた。

 車を近くに停め確認に向かうと、地雷を仕掛けた箇所は地面が抉れ、そこからアーマードホーンの身体に引き摺られたのか、耕された土が見えている。


「よし!作戦成功っ!」


 やはり腹への攻撃は有効だったようだ。


「あ、剥ぎ取りしなくちゃ…。」


 獲物の剥ぎ取り…ガラルドからは獲物を仕留めたら、さっさとヤれと教わった。俺は、腰からナイフを抜きアーマードホーンの脚の関節部の装甲を剥ぎ取っていく。特に、角や関節部の装甲は高い価値があるらしいからな。


「…あ。」


 後ろ脚の装甲の表面が、ズタズタになっている。爆弾で仕留めたせいだ。もし、素材取りが目的なら爆弾は避けた方がいいな…。


「おーい!」

「ん?」


 関節の装甲を剥ぎ終えたところで、後ろから声が聞こえてくる。…そういえば、生き残りがいたの忘れてたな。

 後ろを振り返ると、先程襲われていた男と少年が駆け寄って来る。


「はぁはぁ、クエントさん…速いですよぉ。」

「お、悪い悪い。いや~助かった!感謝する、ありがとう!ほんと死ぬかと思ったぜ。」

「あ、僕も危ない所を助けて頂いてありがとうございます!」

「ああ、どういたしまして。」

「しかし、凄いなアンタ!アーマードホーンをやっつけちまうなんてな…。」

「いや、たまたまだって!手持ちにちょうど爆弾があったから、何とかなっただけだ。

 それより、アンタらの獲物を奪っちまったみたいで悪かったな…。」

「と…とんでもない!俺みたいなCランクに成り立てのレンジャーなんかが相手になる訳ねぇ。」

「そんなもんか?」

「あ、ああ。もしかしてアンタ、この辺の人間じゃないのか?」

「ああ、カナルティアの街を目指してたところで、ちょうどアンタらを見かけたんだ。」

「そうなのか!俺は、カナルティアの街のレンジャー、クエントだ!よろしくな!」

「あ、僕はミシェルって言います。よろしくお願いします。」

「ヴィクターだ、よろしく!」


 お互い、自己紹介を済ませる。どうやら彼らは、俺の目的地であるカナルティアの街のレンジャーらしい。近隣の村から街への輸送の護衛をしていたところ、アーマードホーンに襲われてしまったそうだ…。


「目的地は目と鼻の先なのによぅ…。パーティーも俺たち二人を除いて全滅だし、ついてねぇ。」

「まぁ、なんだ…ご愁傷様だな。」

「悪い、つい愚痴っちまった。剥ぎ取りしてたんだろ、ギルドに任せればいいと思うんだが…。まあいい、手伝うぞ。」


 クエントが剥ぎ取りの手伝いを申し出てくれた。アーマードホーンの角はノコギリで取るのだが、これが結構重労働なので助かった。

 クエントに角を任せて、関節部の装甲を荷台に積み込んでいると、ミシェルと名乗った少年が声をかけてきた。


「あの…ヴィクターさん、これ…。」

「ん? ああ、持ってきてくれたのか、悪いな!」


 ミシェルは俺が投げた槍を、ここまで持って来てくれたらしい。槍を受け取って、彼と話をする。


「いえ、こちらも助けて頂いてありがとうございます!あの時、僕…足が竦んで動けなかったんです。」

「まあ、無理も無い。俺も初めてアーマードホーンと戦った時は、冷や汗が止まらなかったよ。」

「えっ、以前にも戦った事があるんですか!?」

「ああ、あの時は廃墟の中だったから飛び乗れたけど、やっぱ平野だと難しいな。」

「飛び乗るって……ヴィクターさんってもしかして、高ランクのレンジャーなんですか?」

「ん?ああ、まだ登録してないな…。」

「えっ、それってどういう…。」

「おーい!ヴィクター、角終わったぞー!」

「お、すまんな!」

「あっ…。」


 クエントが、角を持って来たのでそちらに向かうと、角を荷台の箱に積み込む。この箱の中には、ガラルドと倒したミュータントや動物の皮や、角、牙などの素材が入っている。


「この後、どうするんだ?」

「トラックは動かせないからな…。街に行って、救助を要請するしかないな。と、先ずは散らばった荷物と、死んだ奴らの遺体を回収しないとな…。」


 こちらに来る前に、他に戦っていた人間の死亡確認はしてきたらしい。普通、ドッグタグの回収で済ませるのだが、街が近いので、できるだけ連れて帰ってやりたいらしい…。


「手伝うぞ。」

「おい、せっかく街が近いんだから、ソレはいいのか?まだ体の装甲が残ってるぞ?持って帰れば、英雄じゃねぇか!」

「いや、目立つのはちょっとな…。出来れば、今日の事も黙っていてほしい。」

「な!?……わかった、訳アリな感じか。アンタは命の恩人だ、任せておけ!」

「頼む。」


 ガラルドは、死都という敵がいつ襲ってくるか分からない環境上、手早く換金性の高い素材のみを剥ぎ取るようにしていた。今回は、開けた平野ではあるが、これからレンジャーとして登録する予定の新人が、アーマードホーンを倒したというのは目立ってしまう為、避けたかったのだ。


「ク、クエントさーん!!」

「ん、ミシェル?どうしたんだ?」


 一足先に、トラックの積み荷を片付けに行ったミシェルが走ってくる。


「はぁ…はぁ…。と、トラックのドライバーさんが、生きてました!ケガしてるみたいなんです!来てくださいッ!!」

「何!?運がいいな、死んだと思ってたぜ!」

「……クエント、お前確認してなかったのか?」

「え、だって正面からアーマードホーンに突進されて、キャビンがひしゃげてたからてっきり…。

「まあいい、とりあえず見に行ってやるか!」



 トラックの下へ行きドライバーを診ると、脚が骨折しているがどうやら軽傷で済んだようだ。

【槍】

 アーマードホーンなどの、銃が有効で無いミュータントを相手にする為に作製された短槍。

 全長164cm、刃渡り25.4cm。シャフトはカーボン製で、分解して携行することができる。また、石突を引き抜くことで、簡易的なアトラトルとなり投槍の際の射程と威力を向上させる。

 穂先はリーフ型の両刃で、刃の中心線上に血抜き用の穴が数カ所穿たれている。

 ヴィクターが使用。


モデル  M48 Magnum Spear



ロゼ≪仲間を失ったにしては、あの二人、あまり悲しんでいる様子はありませんね。≫

ヴィ≪…仲間じゃないとか?≫

ロゼ≪仲間じゃない…と、言いますと?≫

ヴィ≪ただの同業者で、たまたま同じ仕事をしていただけとか?≫

ロゼ≪なるほど。≫

ヴィ≪それか、命の価値が安いかだな。仲間が死ぬのは日常茶飯事とか。≫

ロゼ≪…なんだかヴィクター様のことが、心配になりますね。≫

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