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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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21 加速装置

 ――訓練を終了します。ポイントは72Pでした。これからも頑張って下さい。


「まあまあ…ってところか。」


 VR訓練は、ポイントによる評価を受けることができる。ポイントはその人物の個人戦闘力を示し、訓練中のターゲット撃破数や、終了時間などで変動する。

 俺が今やっていたのは、ウェーブ制・被弾したら即終了のモノで、段々と敵が強くなるというものだった。


 一般的な兵士の平均が65Pなので、まあまあ出来てる方だろう。


「ヴィクター様、インストール終わりました。」


 振り返るとスポーツブラ、短パンに髪をポニーテールにした動きやすそうな姿のロゼッタがこちらを見ていた。


「平均点以上ですね。流石でございます!」

「だろ!?これでも訓練受けてるからな。」


 美女に褒められて、嬉しくならない奴はいない。そんな奴は、あのゲイ教官を紹介してやる!


「あ、そうだ!ロゼッタもやってみれば?」

「私が、ですか?私、銃器は扱えませんが。」

「ああ、規則とか法律は後でどうにかするけど、とりあえずさっきインストールした奴あるじゃん?あれを試してくれよ。」

「なるほど、ヴィクター様は近接戦闘技術を学びたいと仰っていましたね。見本となれるか分かりませんが、精一杯努めてみせます!」

「じゃあ、やってみっか!ほい、ナイフ。」


 インストールしたての、いわばペーペーのロゼッタが良い点な訳がない。ましてや銃も無く、武器はナイフ1本のみ。ちょっと意地悪かもしれないが、これで俺の方が高得点だぞっとマウンティングできる。

 褒められて調子に乗ってしまった俺は、好きな子に意地悪をする男の子の様な気持ちで、ロゼッタにナイフを渡すとVR訓練を起動する。



 * * *



「おお、スゲェ!」

「はっ!やぁッ!!」


 ――ぶるん、ぶるるん!


 激しく動くロゼッタのたわわが、身体を動かす度に揺れる揺れる!俺は、目の保養としてその様を見つめていた。いや、目からビームがでそうなほど凝視していた。


「…ふっ!せいっ!!」


 ロゼッタが遮蔽物から飛び出して、敵にナイフを振る。


(…スポブラもいいな。今夜はあの格好で、部屋に来てもらおう。)


 何て邪な思いで眺めていると、気がつく。


(あれ、結構長引いてるな…。)


 この訓練は、都市部での銃撃戦を想定している。ナイフ1本のみでは、すぐに被弾判定を受けて終了してしまう筈だった。


(…あれ?えぇ!! っちょ、アレはヤバいんじゃない!?)


 気がつくと、ロゼッタは巧みな身のこなしと、人間離れした動きで次々と敵を撃破し、なんとナイフ1本で最終ウェーブまで到達し、最後残り3人というところで被弾判定を受けてしまった。


「…あら。もう少しでしたのに。」


 ――訓練を終了します。ポイントは98Pでした。お疲れ様でした。


 ちなみに、最強と言われていた特殊部隊の隊員の平均点は、95Pだったらしい。ってことは、ロゼッタはナイフ1本で特殊部隊員に匹敵するってことなのか!?


「…。」

「ふぅ…。ヴィクター様、申し訳ありません。最後にミスをしてしまいました…。」

「……いや、お見事でした。」

「ありがとうございます!」


 ロゼッタは美しい笑顔をこちらに向ける。

 怖い。バイオロイドって怖い。軍事技能のインストールが制限されていたのも納得する。こんなのが反乱とか起こしたら、被害がとんでもないことになる。

 何か、今後ロゼッタと接する時に、心が怯えてしまいそうだ。…うん、忘れよう。何かほかの楽しいことを思い浮かべるんだ!


(…ロゼッタは俺の女。俺の女はおっぱいデカい。ロゼッタはおっぱい…。)

「…ブツブツ。」

「あの、ヴィクター様?どうされました?」

「あ、そうだ!ロゼッタ、今夜はその格好で部屋に来い!」

「?…分かりました。」


 今夜の楽しみを想像し、心を落ち着け(逆に昂ぶってしまったが…)、その後ロゼッタを教官に近接戦闘技術の訓練を行うことにした。



 * * *



「…ダァー!つぇぇ!!

 一本もとれねぇ!!」


 先程からロゼッタと組手しているが、やられてばかりである。


「…あの、ヴィクター様?一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「どうぞどうぞ、こんなクソ雑魚から聞きたいことがあるなら、何でも教えてやるよォ…。」

「ヴィクター様は、【ニューロアクセラレータ】は使用されないのでしょうか?」

「…何だそれ?」


 ニューロアクセラレーター。ロゼッタいわく、崩壊前、俺がコールドスリープに入ってすぐに解禁された軍用の電脳ソフトらしい。軍用のマイクロマシンを投与されている者(軍人)なら、誰でも使用できるそうで、神経の伝達をマイクロマシンを介する事で高速化させる。それにより、思考の高速化と、随意運動の高速化により、正確かつ迅速な行動が可能になるらしい。自分で意識して発動させるか、危機的状況下になると発動し、まるで時が遅くなるように感じるらしい。

 分かりやすく言えば、加速装置?みたいなもんか。 


 そういえば、心当たりがある。キラーエイプの群れから逃げる時と、死都で狙撃された時だ。あの時の感覚、あれはこの加速装置が発動していたってことみたいだ。


「なるほどね。じゃあ、使ってみるか!!

 さあ、もう一本頼む!!」

「はい。よろしくお願いします!」


 加速装置を使用して、もう一度ロゼッタに挑んだ。だが、先ほどよりも善戦できるようになったが、結局は、ロゼッタから一本も取れずに終わってしまった。



 * * *



@夜 ヴィクターの部屋


「なあロゼッタ、VR訓練の時、何で最後ミスったんだ?」

「踏み込んだ時に胸の重みを計算にいれておらず、少しつまづいてしまいました。私の失態です。次は失敗しないよう、肝に銘じます。」


(………俺じゃん、設計したの。)


「…まだ同期して間もないからな。自分の身体になれれば次は満点の100P取れるさ…。」

「はい!頑張ります!!」


 ロゼッタには苦労をかけるかもしれないが、後悔はしていない!!

 そう自信を持って宣言できるぜ、とロゼッタのスポブラから覗く谷間を見つめるヴィクターであった。


「じゃあ、今夜も身体検査すっぞ!」

「……ヴィクター様、『口説き』の項目を学習されてはいかがでしょうか。」

「ゴメン。今のは自分で言ってて、キモかったわ…。」

【ニューロアクセラレーター】

 通称、加速装置。神経伝達をマイクロマシンを介することで高速化し、思考の高速化と運動の高速化を実現する。自分で意識して発動させるか、危機的状況下に陥った際に発動する。発動時は、時の流れが遅くなったように感じる。脳が疲労する為、長時間の使用は訓練が必要になる。「1日に最大3分を超えないこと」という目安が存在していたが、科学的根拠は不明。

 当時最新の軍用マイクロマシンに標準搭載されていたが、ソフト面の調整が長引き、ヴィクターが冷凍睡眠に入った3日後に機能が解禁になっていた為、ヴィクターは存在を知らなかった。



【バイオロイドの学習制限】

 バイオロイドは、軍事技能などの一部項目の学習に制限があった。人間と比べてバイオロイドは、肉体に対する先入観のような物が薄い為、技能学習時の「慣らし」をしなくても学習した技能を、インストールしてすぐに、ほぼ完璧に実行できる。

 バイオロイド兵を造る計画の実験時に上記の事が判明し、人間以上の戦闘力を保持するリスクが無視できないとして、バイオロイドの学習に制限がかけられることになった。また、その後バイオロイドの軍事利用は禁止となった。

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