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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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24/199

19 事後

 ――グゥゥ…。

(腹減ったな。そろそろ起き…。) 


 腹が減り、目を覚ますと隣に金髪の美女が寝ており、妖しげな赤い瞳で俺を見つめている。


「うわぁッ!! びっくりした!!」

「おはようございます。ヴィクター様。」

「…ど、どなた!?」

「ヴィクター様、悪い夢でも見られたのでしょうか?」

「…ああ、思い出してきた。」


 昨夜、自分の欲望に任せるままこの女(バイオロイド)を抱いた。完全に事後だ、こりゃ…。


「お疲れのようでしたので、お目覚めになるまで、同衾してお待ちしておりました。」

「そうか。…もう、昼近いな。」

「はい、本日はどうされますか?」

「まずは風呂だ、大浴場を使う。その後メシかな。」

「では、直ぐにご用意致します。お食事は、こちらに持って来させますか?」

「いや、久しぶりに食堂で食べよう。」


 いつもは、研究の為に自室に籠もりがちだったが、久々にノア6の食堂で好きな物を食べようと思った。食堂では、自動調理機器により、好きなメニューを注文することができる。

 この自動調理機器は、元は大手外食チェーンが開発した物で、崩壊前は小型のものが家庭にも普及し始めていた。マイクロマシンにより、調理技術は誰でも身につけられるが、調理する時間を拘束されたくない人間には注目されていた。

 

 俺は何か着ようとベッドから出て、クローゼットを開ける。


「ヴィクター様、お着替えでしたら私が。」


 振り返ると、金髪ロングの美女が全裸で立っている。


(改めて、凄いプロポーションだな。少子化が危惧されるのも理解できる。いや、設定したの俺なんだけど…。)


 返答しようとして、ある事に気がつく。


「あ!そういえばお前、名前ってあるのか?」

「私は、ノア6のマザーコンピューターの管理AIでございます。」

「いや、知ってるけど呼びづらいだろ。やっぱ無いか…何か名前があった方がいいな。」

「そんなものでしょうか?」

「何か希望とかある?」

「ヴィクター様のお気に召すままに…。お望みでしたら、命名辞典などもございますが?」

「…あ~。いざ名前を付けるとなると、思いつかないもんだなぁ。」


 どうしようかと周りを見ると、ソファー前のサイドテーブルに、昨日飲んだ酒の瓶が置いてある。何て言ったか、確か…。


「…決めた。お前は今日からロゼッタと呼ぶ。」

「ロゼッタ…私の名前……。ありがとうございます、ヴィクター様。このロゼッタ、誠心誠意尽くしていきます。」


 何か目が輝いてる気がする…。


「じゃあ、さっそくだがロゼッタ。」

「はい。」

「お前も風呂に入って来い。…使い方は分かるよな?」

「承りました。お背中お流し致します。」


 ロゼッタと一緒に風呂…。

 想像したら、完全に妖しいお店だな。大変魅力的な提案だが、そのまま1日潰れそうだな…。


「いや、一人で入る。ロゼッタ、お前は女湯行けよ?」

「承りました。」


 その後、二人でバスローブに着替えて、大浴場に向かう。



 * * *



 ――ザブン…。


「…ふぅ。生き返る。」

 浴槽に浸かり、ため息をつく。


(…やっぱ、気まずいよなぁ。)


 名前を付ける前に、「身体のチェックだ」と称して色々ヤってしまった。

 …実際溜まってたし、あんな美人だし、気持ちよかったし…。


「はぁ…これからどうするか。」


 などと考えていると、電脳通信が入る。


≪ヴィクター様。≫

「ッ!うおっ!!」


 いきなりの出来事に、湯船から飛び跳ねる。


≪?…どうかされましたか?≫

≪いや、何でもないぞ!≫

≪左様でございますか。≫

≪で、どうしたんだ?≫

≪何をお召し上がりになるか、伺っておりませんでした。≫

≪あぁ、そうだな。じゃあ、鹿肉のステーキがいいな。≫

≪鹿…ですか。ノア6の畜産施設にはおりませんので、生物実験棟のサンプルを使用して、クローンを作ってからになりますので、数日ほどお時間を頂きます。≫

≪…あ、やっぱ無しで。牛肉で。サーロインステーキをレアで頼む。≫


 基本的な食肉は、培養肉がある。崩壊前はクローニング技術を用いて、細胞を培養することで食肉を生産していた。この技術の恩恵で、上質の肉を必要な時、必要な分生産できるので、畜産業は家畜の管理や食肉への加工の手間、及びそれらにかかる費用から解放された。その為、昔ながらの牧場生産の畜産肉は高級品だった。

 

≪承りました。ヴィクター様が食堂に到着された時に焼き上がる様に、調整致します。≫

≪気が利くんだな。≫

≪あと、それから…≫

≪うん?どうした?≫

≪身体を洗っていました所、何やら性器から白い粘液が…≫

≪…。≫

≪これは何でしょうか?≫

≪ロゼッタ…。≫

≪身体の異常かもしれません、至急健康診断を…≫

≪ロゼッタぁ!!≫

≪…はい?≫

≪悪かった!俺が悪かったからッ!!

 問題無いから、ちゃんと洗ってくるんだゾ!!≫

≪?…分かりました。≫


 後から知ったが、ノア6の管理AI様には一部の人体知識はインストールされていなかったらしい…。通りで、管理者の俺が233歳という事に違和感無く接していたのだろう。そういえば昨日も、何の疑いもなく俺と寝たし…。


 全く、先が思いやられる…。

【Robo CookⓇ】

 大手外食チェーンが開発した、全自動調理機器。指定された料理を全自動で、調理し提供することができる。施設一体型の大型機器で、食材さえあれば古今東西の豊富なメニューを提供してくれ、栄養量やカロリーなどを指定したり、おススメのメニューを提案してくれるので、ダイエット中の女性から、飽きっぽいお父さんまで対応可能という謳い文句だった。

 崩壊前は、家庭用の小型のRobo Cook HOMEⓇが発売されたばかりだった。


【ノア6 大浴場】

 普通の大浴場。男湯と女湯がある。

 ホログラム技術や、ディスプレイなどにより様々な景観を演出することができる。ノア6建造当時は、予算の無駄遣いを指摘されたが、アーコロジー内の娯楽提供の研究の一環として必要であるとして、研究者のゴリ押しにより予算が通ったという逸話がある。

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