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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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22/199

17 最期

「これで全員か?」

「いや、まだスナイパーとその護衛がいるだろ。

 多分、今頃こっちを覗いてるか、逃げる準備でもしてるんだろ。」

「どうするんだ?」

「逃がすと思ってるのか?」


 ――ガシャコン…。


 ニヤッ…とガラルドが口角をあげると、手に持つカービンの槓桿(チャージングハンドル)を動かし、銃の装填状態を確認した。…逃がす気はないな、これは。



* * *



@公共バスの残骸の影(野盗の狙撃ポイント)


「遅い!どうなってやがる!!」

「アイツら、まさか殺られたんじゃ…。さっきの爆発音も気になる…。」

「7人だぞ!!2人相手に手こずるはずがねぇだろ!!

 おい!お前、敵の人数数え間違えたんじゃねぇか!?」

「ボス!?そ、そんなことねぇッスよ!

 スコープを覗いた時は、確かに二人でしたぜ!!」

「まあまあ、落ち着けよボス、俺も考えすぎてたみてぇだ。

 多分敵が廃墟ん中に逃げ込んで、今頃追い込んでんだろうさ。」

「…だと、いいがな。俺は気が短けぇんだ!おい、しっかり見張っとけよ!!」

「へ、へいッ!」


(敵は3人だけか…。)


 俺たちはスナイパーが警戒しているであろう、最初に狙撃された道を避け、待ち伏せした路地裏を通り隣の道を使って、そのまま敵の背後に回り込むことに成功した。

 敵は、リーダー格と見られる男が1人と、山刀(マチェット)の様なものを持った男、そして俺たちを狙撃したと思われる狙撃手の男の3人だった。


(俺は、スナイパーを殺る、さっきのお返しだ!お前はボスっぽい奴を頼む!)

(了解!)

(よく狙え!いくぞ…撃てぇ!!)


――パァン、パァン!

――ダダダダダダッ!


「なッ!」

「うがッ…。」

「ぶべ…。」


 銃声と共にボスが倒れ、スナイパーの頭と背中に風穴が開けられる。

 銃声が止むと、最後に立っていた一人が、即座に武器を捨て、両手を挙げる。


「こ、降参する!!撃たないでくれッ!!」

「…だってよ?ガラルド、どうするんだ?」

「おいおい、決まってるだろ?」

「お、おい…降参だ!おい!!や、やめてくれぇ!!」


 ――パァン!

 手を挙げ、降伏した野盗の頭にガラルドが銃弾をプレゼントする。


「こうするのさ。」

「うわ、ホントに容赦無ぇんだな…。」


 ガラルドに頭を撃ち抜かれた野盗が、膝をつき倒れる。


「さてと、ちゃんと死んでるか確認しに行くぞ。」


 ガラルドと共に野盗の元へと歩いていく。


「ん、どうした?」

「て、手が…」


 野盗の元へ着き、死体を見てから手が震えて止まらなかった。


「初めて人を殺したんだ、無理もない。その内慣れるさ…。」

「…慣れたくはないな。正直。」

「違いねぇ。いいか、深呼吸だ。ほれ、やってみろ!」


 大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐く。何度か繰り返すと、気持ちが和らぎ、手の震えも収まってきた。


「…だいぶマシになった。」

「そうか、そいつは良かった。じゃあ、コイツらの確認を済ませるぞ。」

「そうだな。」

「…ッ!ヴィクター、危ない!!」

「えっ…。」


 死体の確認に戻ろうとしたその時、俺はガラルドに押し倒された。その刹那、俺の背後からパァンという、乾いた発砲音が聞こえる。


「…グゾォ、よぐぼ…やっべぐでだな…。」

「うっ…クッソォ!」

「なっ!お前、まだ生きてたのか!!」


 どうやら、野盗のボスにまだ息があったらしい。俺が打ち損じたのか?クソッ!!


「…借りるぞッ!!」


 ガラルドは、俺の腰に差さっていたリボルバーを抜き取ると、俺の後ろで虫の息の状態で銃をこちらに向けようとするボスにトドメを刺す。


 ――ズダァン!ズダァン!カチッカチッカチッ!


 弾倉(シリンダー)内の弾を撃ち尽くし、撃鉄(ハンマー)が空撃ちを繰り返す。何回か空撃ちを繰り返すと、ガラルドは銃を地面に落とし、横向きに倒れた。


「ガ、ガラルド!?」

「……ハハ、俺と…した事が、ヘマ…しちまったみてぇだな…ゴホッ!」


 ガラルドが咳き込むと、口から血を吐く。


「おい、喋るな!今、救急車を…。」


 すぐさま電脳通信で救急に連絡を試みるが、回線が繋がらない。それはそうだ、文明は崩壊し、消防や警察なんて物は存在しないのだから…。


「クソッ、病院に…ダメだ。どうすれば!?」


 ガラルドが俺の手を掴む。


「…ヴィクター、聞け。」

「ガラルド、喋るな!今何とかするから!」

「いいから聞け!ゴホッ…内臓をやられた、今日は…寒いってのに、身体ん中は…焼けるように熱い。俺はもう…ダメみたいだな…。」


 血を吐きながら、ガラルドは喋る。


「頼む、喋らないでくれ!諦めるな!」

「ハハッ、お前はいい奴だ。死んだ…ゴホッゴホッ…息子にそっくりだよ…。」

「ガラルド…頼む…!」

「いいか、秘密基地の…管理人室の机の中に…車の鍵がある…アレはお前にやる…。」

「ガラルドォ…。」

「それから…地図がある。それで街へ行け。」

「俺一人じゃ無理だ!ガラルド!!あんたが一緒じゃなきゃダメなんだ!!」

「……お前はもう…一人前だ。自信を…持つんだ!」


 ゼェ…ゼェ…とガラルドは力なく呼吸している。


「それから…俺が回収したドッグタグと…報告書が…机の上にある…それをギルドに…!」

「わかった!分かったから!もう喋るな!」

「あと…コイツも頼む…。」


 ガラルドは、震える手で自分の胸に手を伸ばし、ドッグタグを引き千切る。そして、引き千切った自分のドッグタグを俺に差し出してきた。


「ガラルド…?何やってんだよ!それはダメだろ、諦めないでくれ!!」

「頼む…。」

「…。」


 俺はガラルドの手を握る。


「…わかった。」

「街に入る時…見せるといい…。それから、街に行ったら…カティアという娘に…。」

「わ、分かった!カティアって娘を探せばいいんだな!」


 ガラルドが満足そうに頷く。


「……俺の…弟子…いや、娘みたいなもんだな…。ヤンチャだが、良い娘だ…街に帰ったら、お前に…会わせて…やりた…ゴホゴホッ!」

「何言ってんだよぉ、ガラルド、アンタが紹介してくれなきゃ!俺一人で話しかけたら、ナンパになっちまうだろうがッ!!」


 俺は泣いていた。理解してしまったのだ。ガラルドがもう助からない事を…。


「ハハ…違いねぇ……ゴホッ。…何…泣いてんだよ、ハハッ…せっかくのガタイが…台無しだぜ…。」

「うぅ…うぅ…うるざい!…。」

「…いいか!よく聞け!!」


 ガラルドが握った手に力を込め、語りだす。


「お前は、スゲェ奴だ…。この世界で、遺物を扱え、崩壊前の知識がある…。」

「…。」

「…お前には、何でも出来る力がある!これからは、自分がやりたいことをやってみな!好き勝手に自由に生きて、そして生き抜いてみせろッ!!」

「ああ…!」

「よし…それでいい。お前がこの崩壊後の世界にいるのは、きっと…運命みたいなモンかもしれない。存在理由って奴も、まあそのうち見つかるだろ…。」

「ガラルド…。」


「ハハッ…ゴホッ、ゲホォ!…あと…は、頼んだ…ぞ…!!」


 握っていたガラルドの手の力が抜けて、パタリと落ちる。

 

 ――俺がちゃんと仕留めていれば…。

 ――俺を庇わなかったら…。

 ――俺と出会わなければ…。

 ――俺のせいだ…。

 ――俺が…俺がガラルドを…。


 俺の手の中には、ガラルドのドッグタグが握られていた…。俺は、ドッグタグを握り締め、慟哭する。


「ガラルドォォォ!!」

【電脳通信】

 脳内にインプラントされたマイクロマシンによる、無線通信技術。高度に暗号化され、日常生活から軍の連絡まで崩壊前には無くてはならない技術だった。

 通話機能は、まさに「こいつ直接脳内に…!」のような、テレパシーのような感覚。


【電脳化】 

 崩壊前のほとんどの人間は、脳にマイクロマシンをインプラントしており(電脳化)、現実でいうスマホを脳内に常に持ち歩いているような状態になっていた。電脳化はほとんどの人間が、乳幼児期~幼少期(一般に6才が限界とされる)にマイクロマシンをインプラントすることで行われる。これには、脳の発達とともに感覚が固定され電脳機能を扱えなくなる、幼少期の生着率が高い、今後の教育に影響がある(崩壊前の教育は電脳化が前提となっていた)など様々な理由がある。一度、電脳化に成功していれば、その後マイクロマシンの更新などをしても、問題無く使用できる。

 崩壊前のトランスヒューマニズムの象徴だったが、ごく一部、先天的にマイクロマシンが適合しない人間(電脳不適合者)がおり、社会的不自由を余儀なくされた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 眠ってたあそこに連れていけば何とか助からないかなあ、、、
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