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終末世界へようこそ -目覚めたら世紀末でした-  作者: ウムラウト
本編

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20/199

15 帰還準備

 ガラルドは、死都での偵察活動の任務を行なっている。偵察活動と言えば聞こえはいいが、やってる事は、周辺地理の把握、レンジャーの死体からの装備やドッグタグの回収、ミュータントなどの生態調査など、地味でどちらかと言えば、裏方のやる仕事だ。


「なあ、アンタほど腕の立つレンジャーが、なんで偵察活動なんて裏方やってるんだ?」


 夕飯の時、ガラルドに聞いてみた。


「ん~それはだな、俺が優秀だからだよ。」

「ん?どういうことだ?」

「お前も見てきただろ?キラーエイプの大群や、アーマードホーンみたいな危険なミュータント共、それに崩壊前の戦闘ロボを。」

「ああ。」

「ここ、死都にはそんな奴らがウジャウジャいやがる。ギルドはここを危険地帯として周知している。だからこそ、まだ手付かずの遺跡や遺物が多くてな、それを目的に来る人間は少なくない。」

「ふ~ん。」

「偵察ってのはな、情報を集めるだけが仕事じゃないんだ。集めたモンをしっかり、生きて持ち帰らにゃならん。この死都で、それが出来るのは一握りの人間しかいない。」

「あ~なんか納得したわ。」

「そう、この俺しか出来ない仕事って訳よ!ガハハハ!」

「違いねぇな!」


 ガラルドは自慢気に笑う。

 それにつられて、俺も思わず破顔する。


「それにな…」


 ひとしきり笑い合った後、ガラルドは呟く。


「他にも恐ろしいのがいるからな…」

「……?」


 そう呟いた、ガラルドの目は笑っていなかった。



 * * *



 ---翌日。


「明日だっけ?街に帰るのは?」

「ああ、そろそろ本格的に冬が来る。ここにも雪が積もって、まともに活動出来なくなるからな。これまで遭遇したミュータントの記録と、素材、死都の情報、回収した装備や死んだレンジャー達のドッグタグを持ち帰って、冬はのんびりするさ。」

「今日はどうする?」

「お前さんもほぼ一人前と言ってもいいからな、今日は明日の荷造りと、秘密基地の周辺確認だな。」

「そこはもう一人前って言って欲しいねぇ。」

「……いや、まだだ。まだ教えてないことがあるからな。」

「何だよ、もったいぶらずに教えてくれよ。」

「……そのうちな。それより、荷造り手伝ってくれよ。」

「お、おう!」


 俺たちは、武器庫の武器や弾薬、死体から回収した武器や装備などの使えそうな物をまとめて、牽引用のトレーラー(荷車)に載せる。ガラルドの車で牽引して持っていくらしい。

 荷台にはあまり荷物を載せないようだ。


「荷台は使わないのか?」

「ああ、いざって時に、荷台を切り離して、身軽にして逃げやすくするのさ。」

「へー、なるほどな。」

「後は、車に接続すれば終わりだな、じゃあ基地の周りを見回りに行くか!」


 荷造りを終えた俺達は、地下駐車場を出て周りを見回る事にした。

 そうして、ちょうどホテルの裏にあたる道路に出る。


「異常はなさそうだな。」

「そうだといいな。」

「おっちゃん、どうしたんだ?」

「何かな、嫌な予感がするんだ。」

「嫌な予感?」

「ああ、誰かに見られているような…。」


 ーッバシン!…パァン!


 ガラルドの予感は的中したようだ。ガラルドがそう呟いた瞬間、俺達の足元に穴が空き、道路の向こうから、破裂音が響く。


「ッ!狙撃だ、走れ!!」

「そ、狙撃ぃ!! 誰から!?」

「いいから走れ!そこの路地裏に隠れるんだ!」


 急いで路地裏まで走りだす。


 ーッバシン!


 音速を超えることで生じる、弾丸のソニックブームの音が、俺の目の前に響く。その瞬間、以前もあったように、世界がスローモーションのように感じる。


(なっ!弾道が見える!?)


 俺は目の前に、弾丸が周りに衝撃波を起こしながら、右から左へと進んで行くのが見えた。


「無事か!?」

「あ、ああ!」

「クソッ、どっから狙ってきてやがる!」

「…あっちの道路の向こう側、恐らくバスの残骸の影から撃ってる!」

「何!?見えたのか?」

「多分な!」

「よし、信用するぜ!ちょっと持っててくれ!」


 そう言うと、ガラルドは持っていた銃を差し出して来た。

 ギルド製のセミオートカービンで、高級品らしい。木製のボディが、猟銃のような、大昔の軍用ライフルのような、そんな雰囲気を醸し出している。


 俺が銃を受け取ると、ガラルドはポケットから鏡を取り出し、俺が示した方向を鏡を使って覗く。


「……多分ビンゴだ!いたぞ、バスの影だ!」


 どうやら、俺の憶測は当たったらしい。走馬灯に感謝だ。


「何で撃ってくるんだ?」

「連中は野盗だな。多分、俺達が狙いだ!」

「野盗?」

「ああ。街の外で人を襲う連中だ!」

「そんな連中が野放しなのか!?」

「いや、捕まえれば犯罪奴隷として一生強制労働になる。」

「でも、何でこんなところに。」

「こんなところだからだろうよ。大方、悪さし過ぎて街にいられなくなったんだろ。」

「なるほど、人が寄りつかない所で、ほとぼりが冷めるのを待つってことか。」

「そんなところだろう。この死都は、ミュータントやロボットがいるから危険って訳じゃない。そんな所は他にいくらでもある。ここは、危険地帯な上に崩壊前の廃墟が多い。だから、連中みたいな凶悪な人間が隠れ家にしようと寄って来るんだ。」

「なんだって!?」

「ヴィクター、いいか!この死都で、いや、この世界で一番恐ろしいのは人間だ!人間は簡単にお互い騙し合い、殺し合うことができる。」

「…。」

「かく言う俺も、野盗はいつも皆殺しにしている。」

「な、何故?捕まえたら、奴隷になって懲役なんじゃ!?」


 ガラルドはため息をつき、語りだす。


「…俺には息子がいた。」

「あっ…。」

「俺に似て優秀な奴だったよ。優しくて、いい奴だった。だが、その優しさが仇となったのか、捕まえたと思った野盗に殺されちまった。」


 ガラルドの目が怒りに燃える。


「俺はな…。連中を許さねぇ。絶対にだ!出会ったら、確実に息の根を止めてやる!!」

「…私怨か?」

「いや、違う!これは、俺の使命だ!俺みたいな…息子のような犠牲をこれ以上出さない為だ!!」

「…。」

「聞け、ヴィクター。さっきの続きだ、これが出来たら一人前だ!

 野盗を…奴らを殺せ!皆殺しにしろ!!それが出来れば一人前だ、この世界でも生きていける!!」


 人を殺す。軍の訓練でも、バーチャル訓練などで吐き気や気分が悪くなる奴がいた。それだけ、殺人には心理的負荷が掛かるのだろう。

 俺は、殺れるのか?バーチャルではなく、リアルで。個人的に悪党には人権は無いと思っているが、本当に殺せるのだろうか?


 悩んでいると、ガラルドが俺の肩に手を乗せる。


「いいか、覚悟を決めろ!殺らなきゃ、お前が殺られる。お前が殺らなきゃ、違う人間が殺られるんだ!」

「…そうだな、やってやる!まだ、街で女の子を紹介してもらってないしな!死んでたまるかってんだよ!」

「…ガハハハ!その意気だ! いいか、油断するなよ!!」

「了解!!」

【レゴリス】

 ギルド製セミオートカービンライフル。

 崩壊前は、スポーツや狩猟などで、民間で広く使用されていた7.62×33mm弾を使用する。反動が小さい上、取り回しが良い。人間からミュータントまで、幅広く相手にできる威力があると言えば聞こえは良いが、カービン弾は通常のライフル弾より威力は劣る為、耐久力の高いミュータントを相手取る時は、弱点を正確に撃ち抜く技量が要求される。

 玄人向けで価格が高く、装備する人間は少ない。

 フレームは木製で、曲銃床。

 ガラルドが使用。


使用弾薬 7.62×33mm弾

装弾数  15発

有効射程 300m

価格   300,000メタル

モデル  M1カービン

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