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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
精霊界騒動/精霊界の行く末
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93 死霊魔法



 「――晴れてはいないけど、今のところは雨の気配はしないわね」

 「なら降らない内に出発するべきかな。……先輩を起こして来て」

 「はいはい……ピピ、朝よー起きなさーい」

 「むにゃむにゃ……あと五分」


 スタドで一泊した精霊組。

 宿のベットは二つ並ぶ部屋だったので安心していたのだが、夜中にヤマトのベットに寝ぼけたピピが潜り込む事件が発生。

 当然ヤマトは退避し、別のベットを使う事になった結果、就寝時とは使っていたベットが入れ替わった。

 その上で二度目が無いようにわざわざ《物理結界》まで張った。

 今の言葉もあり、わざとやってるんじゃないのかと疑ってしまう。


 「……おはようこーはいくん」

 「おはようございます。食堂行きますから顔を洗って着替えて来てください」

 「いってくる……」 


 そして準備を整え、食堂で朝食となった。


 「モグモグモグモグ」

 「……朝から良く食べますね」

 「朝こそしっかり食べるべき。それにアリアもいっぱい食べてるー」

 「アリアは朝昼夕一切問わずにいっぱい食べてますから……それで、これ食べ終わったら町を出ようと思いますけど、寄っておく所とかはありますか?」

 「出る前にギルドー。森の情報を仕入れておく」


 冒険者ギルドに行けば、その町の周辺の警戒情報等は簡単に手に入る。

 何があろうと目的地に向かう事には変わりないが、情報を仕入れておけば不測の事態への対応も取りやすくなる。

 

 「分かりました。それじゃあまずはギルドで」


 食後、話の通り冒険者ギルドへと向かう。

 基本的にギルドが抱えている情報は有料。

 だがその町の周辺や、生活に直結する情報は無料で専用の掲示板に随時掲載されている。

 ヤマト達はそこで一通り目を通し、特段極まった情報は無い事を確認してからスタドの町を後にした。


 「――初日はしっかり歩いた道程も、自転車に掛かればあっという間か……理不尽」

 「だからあのジテンシャはずるいって言ってるー」

 

 町を出て、あっという間に辿り着いたのは見覚えのある〔森〕の入り口。

 ヤマトにとっては、この異世界使い魔人生の始まりの地であった。

 

 「森に棲む魔物が少し活発になっているみたいだけど、この森の魔物なら大した相手とは遭遇しないはず。でも油断はせずにしっかり警戒していこう」

 「了解です」


 ピピからいつもの緩さが消える。

 やはり上級冒険者らしく、仕事となればしっかりと引き締める。

 そこに関しては頼りになる先輩だ。

 ……この姿を見ると、宿でのあのだらしない人と本当に同一人物なのか疑ってしまうところだ。

 そんな事を考えながらも、改めて気を引き締めヤマトは森へと足を踏み入れた。


 (ここは正真正銘の〔スタート地点〕だな。だけど目当てはまだ先だ)


 人生のスタート地点を通り過ぎ、一行は更に森の奥へと進む。

 ここまで遭遇した魔物はゴブリン一体。

 特に問題も無く進み続ける。

 問題ないように見えているのだが……アリアは何かを感じ取っているようだ。


 「このざわざわする感じは……」

 「何かあった?」

 「分からないけどちょっと寒気が……何も無いはずなんだけど……」


 その正体がアリア自身にも分からない。

 その様子に一行は警戒を強めながらも、立ち止まる事無く前と進む。


 「目当ての洞窟はその辺りなんだけど…何か居るわね」

 「……何でこんな場所に〔スケルトン〕が?」


 目的地は〔精霊界〕。

 その入り口となる小洞窟のすぐ側までやって来た一行。

 だがその洞窟の前には、まるで門番であるかのように二体の〔スケルトン〕が立ち塞がっていた。

 三人は近場の木々に身を隠し様子を伺う。


 「こっちには気付いてないか」

 「スケルトンの感知範囲は狭い。特殊個体でもない限りこの距離からは気付かれないはず。今みたいに隠れていればだけど」

 「そもそも何でこんなところにスケルトンが?」

 「分からない……けどダンジョン以外の場所にいるスケルトンは要警戒」


 スケルトンが最も目撃されるのはダンジョンに生み出された〔ダンジョンモンスター〕としてのスケルトンだ。

 だがダンジョンモンスターはダンジョンの外には出られない。

 ゆえにダンジョン以外の場所で遭遇するスケルトンに当てはまる可能性は三つ。


 一つ目は〔魔王軍〕。

 魔王の生み出す最も数の多い戦力がスケルトン。

 ロドムダーナでもフェンリル騒動前には目撃されている。

 つまりは魔王の先兵である可能性。


 二つ目は〔アンデット化〕。

 放置された死体がゾンビやスケルトンなどの〔アンデット〕と化すパターン。

 アンデットの多くは腐肉付のゾンビだが、焼死など死体の状態によっては骨だけスケルトンになる場合もある。

 その場の環境にも左右されるためあまり多くない例ではあるが、素材となった死体のポテンシャルを部分的に引き継いでいる場合があるため、ダンジョンスケルトンよりも危険度が高くなる。


 そして三つ目は〔死霊魔法による眷属〕。

 系統そのものが〔禁魔〕とされる《死霊魔法》。

 つまりは〔死霊魔法使い(ネクロマンサー)〕によって人為的(・・・)に生み出された〔眷属〕や〔使い魔〕である可能性。

 


 「……多分死霊スケルトン。魔王軍の量産スケルトンは使い捨てか数のごり押し前提の雑魚。けどあのスケルトンはしっかりとした存在感を感じる。特別強いわけじゃないけど雑魚でも無い。ちゃんと最低限戦えるような設定で生み出されてる」

 「死霊魔法使い(ネクロマンサー)……の見張り役?もしかしたらあの先に」

 「居るかも知れないわね……精霊にとってネクロマンサーはあまり相性が良くない。あのぐらいのスケルトン程度ならどうとでもなるけど、ネクロマンサーがいるなら面倒な事よ」


 あの小洞窟の先にあるのは〔精霊界〕への道。

 もし洞窟にネクロマンサーが居るのなら、進ませる訳にはいかない。


 「ならなるべく急いだ方が良いか。あの位置だと避けて通るのも無理だし……二人で近接速攻と俺が遠距離射撃のどっちが良い?」

 「「遠距離」」

 「《二連/風弾》」


 二体のスケルトンはそれに気付く間もなくヤマトの魔法で粉々に砕かれた。

 そして死骸は跡形も無く消え去った。


 「確定したー。ネクロマンサーの生み出したスケルトンは他と違って倒すと跡形も無く全部消える。……だが、眷属で在る以上は起きた異変は全て主に知られる。相手が何かを仕掛けてくる可能性があるから気は抜いちゃだめ。いい?」

 「了解」

 

 三人は再び歩き出し、目的の小洞窟へと踏み込んだ。

 その先に何が待っているかは分からないが、引き返す理由にはならない。

 謎の死霊魔法使い(ネクロマンサー)の存在。

 その存在が〔精霊界〕の命運を左右する事になる。



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