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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/悪魔と天使
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83 ワイバーンで行く空の旅



 「……凄い光景になってるなぁ」


 ヤマトが目覚めた翌日。

 レイダンの町の外のとある場所には、八体もの翼龍(ワイバーン)が並んでいた。


 「ヤマト、時間だぞ」

 

 この光景を眺めていたヤマトに声を掛けて来たのは、八体のワイバーンを召喚し従えているブルガーであった。


 「分かりました。行きましょう」

 「……お前、本当に大丈夫なのか?仮にも龍種のワイバーン八体分の召喚維持だぞ?」

 「このくらいなら多分大丈夫です。流石に最後のほうはどうなってるか分からないですけど、今のところは問題ないです」

 

 素直に平気と答えるヤマトに、ブルガーは呆れた表情を見せる。


 「……全く、勇者パーティーに入ってから出会うのは理不尽なものばかりだな」


 ヤマトの左腕と、ブルガーの右腕に付けられた腕輪。

 そしてその二つを繋ぐ鎖。

 見た目は手錠のようにも見えるが、今回の仕事はこの一対の腕輪が要になっている。

 〔魔力共有の腕輪〕。

 文字通り、装着者同士の魔力を共有化し、お互い自由に扱えるようにする魔法具だ。

 欠点として二人が繋がれ、行動が制限されてしまう欠陥品らしいが、今回の役目には問題にはならない。


 「途中で落ちる訳にも行かないからな。遠慮なく使わせて貰うが、キツくなったらちゃんと報告しろよ?」

 「了解です」


 今回の魔力馬鹿の使い方。

 ブルガーが召喚したワイバーン八体を、ヤマトの魔力で維持し、長時間活動させる。

 その目的は単純に移動・輸送の手段だ。


 「二人とも、準備は良いわね?出発するわよ」


 そしてグリフォンのレドに跨ったシフルが、一番目に空へと舞い上がった。


 「それじゃあ行くぞ。しっかり掴まっておけよ」


 それに続いて順番にワイバーンも空へと舞い上がり、その殿をブルガーとヤマトの跨るワイバーンが務める。


 「一人だけ後ろ向きは……少し怖いなぁ」


 腕輪の鎖の都合と後方警戒の為に、ブルガーとは背中合わせで跨るヤマト。

 八体のワイバーンは、それぞれ荷物や人員、負傷者を運んでいる。

 一応はシフル製の保護魔法が働いてるが当然限度はあるので注意が必要だ。

 だがそれを気にしつつ進んだとしても、空を進んでいるため陸路を進むより圧倒的に早い。

 その速度もあり、後ろ向きに座り進行方向の見えないヤマトの位置は少し怖い。


 「(それにして、馬車で数日の距離を数時間……空移動って反則染みてるなぁ)」

 「(ヤマトの自転車も大概だけどね)」

 

 ヤマトの中でアリアが指摘する。

 実際、陸路をあの速度で移動できる自転車の方が反則染みている。 

 というよりも、実際に反則な気がする。


 「(それにしても……召喚したワイバーンに荷運びね。速度重視とは言え随分と贅沢な使い方をするわね)」


 ワイバーン単独であれば言うほどの魔力消費ではないが、今回は並行して八体。

 合わせれば相当な魔力量であり、いくら空が速くとも平時であれば手間と費用の都合で取りたくはない手段だろう。

 今はなるべく早く戻れる手段が必要な事と、そして一人で八体分を賄える魔力馬鹿が存在しているからこそ実行した手段だ。


 「(ところで、カゴの乗り心地って実際どうなのかしらね?)」

 「(実際に乗れば分かるでしょ。アリアならこの下のカゴに今からでも……あ、いや、この下のは流石に駄目だな)」

 「(そうね。向こうのカゴには流石に届かないし、後でナデシコ達に感想でも聞いてみようかしらね)」


 ワイバーンが抱えている八つのカゴ。

 一番にはタケル・レインハルト・ラウル。

 二番にはフィル・ピピ・メルト。

 三番にはティア・ナデシコ・レイシャ。

 四番には眠るそよ風団と騎士団の治癒師。

 五番には騎士団の重症者と治癒師。

 六番には例の保護されたロドムダーナの住民三名と護衛騎士。

 そして七番八番には積荷(・・)が収められている。

 ちなみにヤマト達が跨るのは八番のワイバーンである。


 「……ん?今の魔法の反応って」

 「先頭のシフル様が何かを撃ち落としたみたいだな」

 

 ここは空ではあるが、同じく空を飛ぶことの出来る魔物に遭遇する事も当然あり得る。

 先頭を行くシフル&レドは先導と共に露払いの役割を担っている。

 そして殿を任されたヤマト達は……


 「(ヤマト、何かが追って来てる。追い払うわよ)」

 「了解任せた。後ろから何か来てるらしいので追い払います」

 「分かった、頼んだ」


 ブルガーの返事を待たずにアリアは後方へ魔法を放つ。

 一発目はあくまでも威嚇だ。


 「(ちゃんと逃げてくれたわね)」

 「(ありがとうアリア)」

 「今のはアリアとか言うヤマトの精霊の魔法か?」

 「はい。すいません、非実体だと聞こえませんよね」

 「ここに三人目が乗られるよりもマシだ。これからは一々確認を取らなくていいからそっちの判断で追い払ってくれ」 

 「了解です」


 横槍は追っ払いつつ、予想よりも静かな空の旅が続く。


 「(……さっき過ぎた湖を見ると精霊界の、精霊女王のあの場所を思い出すなぁ)」

 「(あそこが気に入ってるのなら、騒動が一段落着いた後にでも遊びに来ればいいんじゃない?頻繁に来られても困るけど、たまに遊びに来るくらいなら文句はないわよ?)」


 自然豊かというか、自然しかないあの場所は確かに避暑地として良さそうだ。


 「……合図だな。もうすぐ着くぞ。少しずつ高度が下がるから気を付けろよ」


 隊列を組んでいるワイバーン達が、徐々に高度を下げていく。

 ゴールはもうすぐようだ。

 そしてあちら側の姿もヤマト以外の視界に収まった。


 「あれが迎えだな」


 ヤマトは後ろ向きの為確認が出来ないが、ゴール地点には王都からの迎えが待っている。

 流石にワイバーンの群れを王都に直接向かわせる訳には行かない為、王都からおよそ三十分程の場所をゴールに定めていた。


 「着陸するぞ。最後の最後で落ちるなよ」

 

 そして締め。

 荷物からゆっくりと接地させ、そしてワイバーンもこの地に降り立った。

 これで数時間かけた空の旅もお終いだ。


 「……もう降りていいぞ」


 ブルガーの指示で、数時間ぶりに地面に足を着いた。

 周りを見渡すと、先に着いたシフル達や迎えの者達が早くも作業を開始していた。


 「後は還すだけだから、もうその腕輪は外していいぞ」


 ワイバーンからカゴは離され、出番もようやく終わりのようだ。

 後は召喚者たるブルガーの役割だ。

 ヤマトはそのまま腕輪を外した。


 「残りは全部こっちの仕事だ。ヤマトの仕事は終わりだ」

 「はい、お疲れさまでした。後はお願いします」

 

 役割を終えて、ブルガーとヤマトのコンビも解消。

 挨拶を済ませてヤマトはティア達のもとへと合流した。


  

 


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