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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/悪魔と天使
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80 暗躍する者と魔王城

 

 「お帰りなさい。問題なく済ませて来たようですね」


 魔王城のとある一室。

 暗躍する者は■■■の帰還を歓迎した。


 「やはり他の者達と違って貴方は期待を裏切らない。縛り(・・)のせいで自由に扱えないのがとても残念ではありますが、それを補って余りあるほどの……おっと、お客様ですね」


 部屋の扉を叩く音と共に来客の声がする。


 「おやおやこれは……魔王様の腹心自らお越し頂けるとは、すぐにお茶の用意をしましょう」

 「不要だ。それよりもすぐに私と共に来てもらおうか。魔王様がお呼び(・・・)だ」


 暗躍する者の表情は、その意味を理解しながらも笑顔から変わる事は無かった。

 彼にとっては想定内の出来事だった。


 「魔王様が?一体どんな御用で……」

 「それは当然"憤怒"の事であろう?」

 「……そうですか、分かりました。魔王様にはきちんと説明しなければなりませんね。ではすぐに向かいましょう」

 「ああ、それで――」


 途端に、迎えの男が昏倒した。


 「やはり少し早計でしたかね。もう少し整えさせてから動きたかったのですが……流石にちょっかいをかけた七大罪がああなってしまえば誤魔化しきれませんね。少し早いですが動きましょうか」


 暗躍する者はコートを纏い、倒れた男など一切見向きもせずに扉に手をかける。


 「貴方も行きますよ?続けてで申し訳ありませんが、相手は人類の敵(・・・・)ですから貴方の力を適度に振るってください。あ、城を傷つけるのは駄目ですよ?私の物になるのですから」


 帰還したばかりの■■■が、再び動き出す。


 「その〔認識阻害の腕輪〕も外してしまっていいですよ。もう必要ないですから」


 その指示に従い、すぐに腕輪が外される。

 

 「ふむ……やはり美しい。無粋なものを付けさせて申し訳ありません。折角の美貌は飾って愛でていたいのですが、貴方のその容姿はこの魔王城ではマイナスにしかなりませんからね。ですがもう隠す必要はありません」


 そこに立っていたのは黒髪の女性だった。


 「それでは行きましょうか。借り家暮らしも今日でおしまいです」

 「させ……るか……」


 昏倒していた男が意識を取り戻し、暗躍する者の足を掴む。

 だが力は入らない。

 再び落ちようとする意識を無理矢理繋ぎ止め、何とか抗っているに過ぎない。

 

 「流石は魔王の腹心ですかね?まぁ私は要らないので、ヤッちゃってください」

 「ガ――」


 魔王の腹心は一瞬で消え去った。

 文字通り跡形も無い。


 「良い配慮です。ただ潰しては色々と汚れてしまいますからね。この部屋は割りと気に入ってましたから、移るにしても綺麗なままであって欲しいですから……では改めて、行きましょう」


 二人は部屋を後にした。

 そのまま目的地へと向かう。

 そしてその道中に遭遇した者全てを選別(・・)していく。


 「使い捨てで頭の弱い、命令通りにしか動けない雑兵の低級ばかりですね……人型でありながら何故ここまで酷いのか……簡単に数が揃うとはいえ、こんなのを警備として城に徘徊させる者の気がしれませんね。お、やっと良いのが来ました。〔デュラハン〕は生かしておいてください」 


 その直後、上級モンスター(・・・・)であるはずのデュラハンが一瞬で無力化された。


 「とりあえずはそのまま放置です。種を植えるか染めるかは他を片付けてからです」


 二人は止まることなく目的地を目指す。




 「――お呼びでしょうか、魔王様」


 そうして目的地、魔王の御前へと辿り着いた。

 

 「ふむ、よく来た。――では死ね」

 「遅いですね」


 その会話が交わされた間に、二人の間には山が出来上がっていた。

 暗躍する者はその山を眺めながら、魔王のもとへと近づいてゆく。


 「〔デーモン〕……良いものをお作り(・・・)になりましたね。魔人の方は……あらあら幹部も混じって、わざわざ拾いに行く手間が省けました。相変わらず魔王様は良い仕事をしてくださいます」

 「――」


 流石の事態に言葉が出ない魔王。

 魔王軍の中でも上位に位置する、魔人に次ぐ大戦力である〔デーモン〕三体。

 更には幹部〔七大罪〕の一人を含んだ、四人の魔人。

 彼らによる不意打ち・襲撃が、ただの一瞬で一人の女に返り討ちに合ってしまったのだ。 


 「ですがいきなり襲ってくるとは、魔王様も礼儀知らずでしたか?」

 「……我が腹心と共にやってくるのであれば話し合いにも応じていた。だが殺したではないか」

 「はい。その通りですね」

 「なら反逆であろう。処分するのは当然……なのだが、何者だソイツは?」


 異常な強さを見せた女を凝視する魔王。


 「駄目ですよ?女性に対してそのような不躾な視線を送っては。彼女は……そうですね。言うなれば〔対魔王軍兵器〕とでも言いましょうかね?……自分で言ってなんですが、何ともつまらない名称です。とっさの思い付きを口にするものではないですね」


 自らの発言に愚痴をこぼす暗躍する者。

 だが魔王にそれを気にする余裕などない。

 

 「まさか勇者!?だが奴はダンジョンに――」

 

 言葉が完全に出きる前に、魔王の右腕が飛んだ。


 「あらあら。その娘の〔禁忌〕に触れてしまいましたね?――痛めつけるのは良いですが殺しちゃ駄目ですからね?それ(・・)は使うんですから」

 

 魔王も必死に抗った。

 だがその誰からも恐れられた魔王の持つ力は、彼女に対して掠り傷を付けることしか出来なかった。

 そして魔王も、部下たちのように無残な姿で床に転がる事になった。


 「とは言えやはり魔王。相性が悪い中でもきちんと爪痕は残しましたか。となればご褒美に〔蝶〕を差し上げる事にしましょうか……ですがまずはこちらが先です」


 先程まで魔王が座っていた玉座の背後(・・)

 そこにある扉を開き、本当の目的の部屋へと辿り着いた。


 「あ、それ持ってきてください。引き継ぎしなくちゃならないので」


 ■■■は、倒したばかりの魔王を引きずり、そのまま暗躍する者のもとへと近づく。

 

 「さて……魔王城という〔不正規ダンジョン〕を管理する〔コアルーム〕。そして中央のあれが、心臓たる〔ダンジョンコア〕ですね」


 暗躍する者は部屋の中央で青白く光る〔ダンジョンコア〕に近づいてゆく。


 「このダンジョンも、魔王も、魔人も……そしてダンジョンモンスターたちも、私が全て貰い受けましょう」


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