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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/悪魔と天使
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78 白昼夢のようなもの


 「――ここって」

 『上手くいったみたいで良かったです』


 ヤマトは最早懐かしき神様空間に立っていた。

 女神様から使い魔のオファーを受けた場所であり、五十日間の使い魔訓練を行った場所である。

 そして目の前には、ティアではなく元の大人の姿の女神様が立っていた。


 『ここはまあ、白昼夢とか明晰夢とか精神世界とか、そんな感じの場所だと思ってください。そこにティア(わたし)と繋がる回線を利用して干渉しています。あ、この姿はあくまでも再現したものなので、中身はあくまでもティア(わたし)ですよ?お兄ちゃん』

 「必要ない場面でその呼び方は本当にヤメテ」


 とりあえずただの夢で無いことは理解した。


 「……あれ?それじゃあ現実のほうはどうなってるんです?」

 『直前の事を覚えていませんか?緊急手段だったので少し記憶にズレがあるのかも知れませんね……現実のヤマト君はもうすぐ死にそうって状況です』


 死の間際。

 こんなところで油を売っている場合ではないのではないだろうか。


 『あ、この白昼夢と現実の時間の流れは違うので安心してくださいね?人の見る夢が時間間隔が曖昧なように、ここでのやり取りも現実からしてみれば一瞬ですから』

 「それ便利かつ都合良すぎません?」

 『そんなに便利でも都合良くもないですよ?効果は大きいですけどその分は脳への負荷やらのデメリットもあるので、意識が現実に戻った後、油断して緊張の糸が途切れた瞬間にプツンと意識が途切れちゃうと思いますから。タイミングによってはそれで詰みです』


 負荷がどうこうの話なので、ブレーカーが落ちるような感じだろうか?

 確かに戦闘中に意識が強制シャットダウンしてしまっては元も子も無い。


 『興奮状態とかで自然と脳が活性化してって事ならまだマシなんですけど、これを外部からの干渉で意図的に引き起こすと人間の脳には負荷が大きいんですよねぇ。死ぬよりマシですが』

 「まぁ何もできないまま死ぬよりはマシですけど」 

 『と言う訳で戻ってからも頑張って意識を繋いでください』

 「頑張ってどうにか出来る問題なら頑張るけど……」


 どうにかなる問題なのかどうかは知らない。


 「……そう言えば、そもそも女神様がそういう人の生き死に干渉して良かったんですか?」

 『割と駄目ですけど、あくまでも現世の分体(ティア)の行動なので多少の融通は利きます。地上で活動する上でのちょっとした制限緩和みたいなものです。まぁ他の神に知られれば確実に怒られますけど、勇者・巫女・使い魔がいっぺんに居なくなるかもって状況を見過ごせる訳ないですよ!』


 どうやら危機的状況なのは、ヤマトだけでなく勇者一行も同じようだ。


 「死の間際か……結局は何が起きたんですか?」

 『話自体は簡単です。乱入者の放った大規模魔法の余波(・・)で周囲が大惨事という事です』

 「それは……一体どんな魔法を?」

 『何と言っていいか……この世界では到達していない分野なので……仮に名付けるなら《超爆(ビックバン)》という所で……あ、ヤマト君の知る宇宙関連のビックバンとは別物ですが、それぐらいに威力がすごい魔法と認識してください。等級は……低く見積もっても特級、いやあれだと等級外(・・・)。ハッキリ言って、アレに太刀打ちできるものはこの世界には存在しないだろうという程のものです。余波はまだマシですけど』


 等級外の《超爆(ビックバン)》。

 しかも話だと、あくまでもその余波(・・)で、ヤマトだけでなく勇者一行までもが危機的状況に陥っていると言う。


 「その《超爆(ビックバン)》は憤怒の魔人に対して?」

 『はい。しっかりと着弾したので、足掻いてはいますが悪魔に堕ちきる前に消滅するのは確定でしょうね。なので問題だった〔悪魔誕生〕による〔世界の汚染〕や〔天使降臨〕による〔世界の浄化〕の危機は去るでしょう』

  

 何か納得しにくいが、ひとまずあの乱入者により世界は救われたらしい。

 問題はその側で、この世界の二つの希望が潰えようとしている事だ。


 「俺はともかく、勇者と巫女が居なくなるのはマズイですよね?」

 『そうなんですけど……自分を対象外にしてますが、ヤマト君が居なくなるのも相当の痛手だってのは認識しておいて欲しいですけどね?使い魔としての役目や力は勿論、現状でティア(わたし)を維持してるのはヤマト君なんですよ?』


 そう言えばそうだった。

 ヤマトが居なくなれば《神降ろし》により留められているティアが消えてしまう。

 それですぐに世界がどうこうなる事は無いが、女神を救うための今後の行動には確実に支障が出る。


 『そう言う訳でこうして裏技染みた事をしてまで、ヤマト君に情報提供と選択肢(・・・)を与えに来ました』

 「選択肢って……女神(じょうし)として「あーしろこーしろ」って話じゃないんですか?」

 『選択肢です。実行するのはヤマト君なので、ヤマト君が後悔しない(・・・・・)選択を実行してください。実行のタイミングがギリギリで、迷いが過ればそれで詰む可能性が高いので、ご自身が納得出来る行動を選んでください』


 そして提示されたのは二つの選択肢。


 『一つは〔転移結晶〕を用いてヤマト君・タケル君・フィルの三人だけ(・・)を確実に逃がす方法です。――厳密にはアリアもヤマト君にくっついてるので四人ですが。準備はここで出来るので、現実に帰還してすぐさま発動できるのでギリギリ間に合います。魂と繋がっている《次元収納》にはここからでも干渉できますから』


 そう言い、ティアはヤマトの収納から最後の〔転移結晶〕を取り出して見せる。


 「……それは、他は見捨てる選択肢?」

 『はい。他の勇者一行も、三人の冒険者も、騎士団も……後は余波次第ではレイダンの町へも影響が出るかもしれません。ですがそれら全てを見捨てて、自分達だけ助かる選択肢です』


 失うものが多いが、本当に重要な者だけは助かる。

 見捨てた者も行動と運次第では無事になるかもしれないが、状況としては博打にしても分が悪すぎるようだ。


 『もう一つは、ヤマト君の全力の《女神の盾》でその余波を受け止め、真っ向から対峙する選択です。ヤマト君の全力でも耐えきれる保証が無いのでこれも賭けになりますが、性能的には他よりも可能性は高いです。駄目なら全てを失うかもしれませんが、やり切れば全てを救えるかもしれない行動です』


 幸いなことにヤマト達の立ち位置と残った騎士、撤退中の騎士、そしてレイダンの町の方角は同じだ。

 ここでヤマトが《盾》を出せば、その後ろの全てを余波から守る事が出来る。

 あくまでも耐え切れればの話であるが。


 「……《盾》って、何処まで強度を上げられる?」

 『仕組みとしては何処までも、《女神の盾》として発動出来た時点で一定の性能は保証されていますが、強化しようと思えば使い手次第でどこまでも、性能上限はありません』

 「それなら使える物も人も、全て使って全力以上を……」

 

 回答もせずに、ヤマトは既に考えを纏めていく。


 『――やっぱりヤマト君には選択肢として提示する必要は無かったですかね?』

 「上司命令なら大人しく従いますけど、自分で選んでいいと言うのなら分の悪い賭けだとして後々に後悔しない(・・・・・)選択肢を選ばせてもらいます。後になって『これで本当に良かったのか?』って悩み悔やみながら生きるの嫌ですから。そんなの前世(・・)でお腹いっぱいです。賭けに巻き込む人には申し訳ないですが、失敗した時はあの世で土下座でも地獄でも何でも償いはしますから、分が悪かろうとこっちをやらせてもらいます」


 ヤマトの選択は二つ目。

 折角の異世界での使い魔人生。

 〔いのちだいじに〕は当然ながら、それよりも何よりも〔後悔しない〕生き方をしたい。

 失敗した時はあの世でもこの世でも煮るなり焼くなりお好きにどうぞ。

 だが最初から失敗させる気でいるつもりなどない。

 

 「とは言え、やらずに後悔するのも嫌だけどやって後悔するのも御免です。やるからには何が何でも成功させます」

 『はい、頑張ってください。片が付いたら今後の事とか〔黒い神域宝具〕の事とか〔他の世界〕の事とか、話さなきゃならない事も色々あるのでちゃんと生きて帰ってきてください』


 生死がどうこうで気にせずにいたが、その辺りもかなり気になる話だった。

 女神ルール的に教えて貰って良い事なのかは知らないが、言質は取ったので片が付いたらきちんと話して貰う事にしよう。


 「――さて《盾》の準備は整った。これで即座に全力展開は出来るでしょう。そして上乗せ(・・・)は戻ってから即行動。――あとは二つ目(・・・)かな」

 『二つ目?』

 「二つを同時に選べないってだけで、別にどちらか一方しかやっちゃいけない訳じゃないでしょ?俺は渡すだけ(・・・・)で、完全に人任せになるけどやっぱり保険(・・)は欲しいですからね。……それじゃあ行きましょう」


 そしてヤマトの意識は現実へと戻って行った。

 

 

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