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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/悪魔と天使
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73 襲撃者



 「――なんだ、お前ら?」


 フェンリル最後の一体。

 《生命吸収》を持った個体を、一人で倒しきった勇者タケル。

 これでようやく終い……そう思いたかったが、そこに彼ら(・・)が襲い掛かって来た。


 (中級冒険者……にしては動きに迷いが一切ないのは実力と言うよりも何かをされているからみたいだな)


 襲撃者は三人。

 《鑑定眼》によると全員が中級冒険者で同一パーティー。

 それぞれ武器は剣・弓・魔法。

 なかなかの連携を見せてくる。

 そして三人全員が〔精神封印〕状態にあった。

 

 (心を無くすだけなら単純に動かなくなるだけだと思うんだが、他にも何か干渉されてるのか?何にせよ本人の意思を無視した行動だろうし……あぁクソ!躊躇ないなコイツら!こっちは疲れてる時にわざわざ加減しながら相手をしなきゃならないっていうのに、お構いなしにぶん回しやがって!)


 人対人。

 本来ならば多少なりとも思うところがありそうな戦いも、今の人形状態の三人は何も感じていない。

 純粋にただ勇者を殺すために一切を気にせずに自らの武器を振るう。

 

 (……仕方ない。少し荒いが大人しくしてもらおう)


 タケルが反撃に転じる。

 相手の目的は不明だが、だからこそあまり時間を取られたくわない。

 かと言って殺すつもりもないので、あくまでも行動不能に留める。

 それが出来るだけの実力差はあるはずだ。

 

 (……良し)


 一瞬の出来事。

 それぞれの持つ剣・弓・杖は折れ、彼ら自身は地に伏していた。


 (やっぱり荒いな。命がどうこう言う状況にはならないだろうが……今度安全に無力化する小技を習っておこうかな?)


 勿論峰打ちではあるが当分は身動きが取れないだろう。

 やり過ぎない程度にそれだけのダメージは与えたつもりだ。

 とは言え負傷には変わらず、傷は勿論、〔精神封印〕に何らかの操り状態でもあるため、後できちんとした医者や治癒師に三人を預ける必要があるだろう。


 「やれやれ……素材は良かったが所詮は人か。これは脆弱過ぎる。失った部下の穴埋めに少しでもと思ったのだが……」

 「――お前の仕業か。コイツらに何をした?魔人(・・)


 タケルの前に現れた四人目。

 【サルタン(魔人:七罪の二/"憤怒")】。

 その男は、魔王軍七大幹部の一人であった。


 「()から頂いた力の極々一部を分け与えただけだ。ここへと来る道すがらにたまたま拾い、使えそうだったから無くした部下の代わりにしていたのだが……まぁ期待外れではあったが、最低限の役には立ったので良しとしよう」

 「それは……!?」


 サルタンはその左手に持っていたボールサイズの魔石(・・)を握りしめ、そのまま力尽くで砕いた。

 いつの間にやらフェンリルの死骸から抜き取った魔石のようだ。

 すると砕かれた魔石から溢れだした〔黒い何か〕が、サルタンの肉体に吸収されていった。

 そしてたった今(・・・・)手にしたその力を振るう。


 「――《生命吸収》」


 タケルの背後で横たわる騎士の亡骸。

 彼らの命を奪った、フェンリルの《生命吸収》と同一の力が、目の前の憤怒の魔人から放たれた。


 「クソッ!《風乱》!!」


 とっさにタケルの放った風魔法は、サルタンではなく冒険者三人に向けて放たれた。

 強力な風が地に伏した三人の肉体を吹き飛ばす。


 「随分と乱暴なやり方だな。だが圏外(・・)か。成程、一度経験しているからこそ〔効果範囲〕は把握済みなのか」


 三人の肉体は《生命吸収》の範囲外へと追いやった。

 魔人サルタンは、自分が使っていた(・・・・・)三人を一切気にする事なく《生命吸収》を発動した。

 本当に乱暴ではあったが、あと数秒でも判断が遅れていれば、この場の遺体が三つ増えていただろう。 


 「……何でお前がそれを使える?まさか魔人は誰でも使えるなんて寝言は言わないよな?」

 「不思議な事を聞くものだな。フェンリルの持っていたこの力は、元々は我が主(・・・)の与えた力から発したものだ。同じ力をより多く(・・・・)与えられた私が、その力を取り込めない道理はないだろ?」


 元々サルタンは《生命吸収》を持っていなかった。

 それを持つフェンリルの魔石から力を取り込んだだけ。

 そう語った。  

 

 「とは言え肝心の勇者には効かず、雑魚(・・)の駆除にしか使えないとなるとあまり意味は無いな。折角得た力でゴミを生み出したか。つまらない犬め」


 その言葉に、タケルの体が自然と動いた。

 とっさに魔人サルタンの抜いた剣と聖剣がぶつかり合う。

 勇者の眼は血走り、フェンリルを相手していた時同様に、怒りの感情で力を振るっていた。

 一度経験した事で、勇者タケルの〔狂化の扉〕が開きやすくなっていた。


 「――なんだ。お前の仲間を雑魚と蔑んだ事に怒ったのか?〔彼らはゴミに殺された雑魚〕などではないとでも言いたいのか?……この程度に抗えなかった者達は正真正銘雑魚でしかないだろう。随分と沸点の低い勇者だ。――そもそも、我を誰だと思っている?」


 空気が熱を帯びる。

 勇者と斬り合う魔人の体が熱を発している。


 「"憤怒"の名を持つ私に、怒りの感情で勝負を挑むなど愚かな事だと思わないのか?――まぁ良い、それならば見せてやろう!本物の"憤怒"の力を」


 

 

  

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