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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/悪魔と天使
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72 精霊仲間



 「――で、ヤマトは一体何をしてるの?」


 アリア・ピピ・レインハルト・レドの面々は、戦いを終えてフィルとヤマト……そして意識不明の仲間たちと合流を果たした。

 果たしたのだが……


 「何って、移送準備」


 そこで見たのは、総勢十体の〔土ゴーレム〕が意識不明者たちを次々と抱えて行く光景であった。


 「人手が足りないからゴーレム任せにしてみた」


 ヤマトの《人形創造(ゴーレムクリエイト)》はまだ訓練段階であり、戦闘用の動作の安定にはまだ至っていないが、こういった単純労働ならば現段階の完成度でも問題はない。

 目の前では十体のゴーレムがせっせと仕事をこなそうとしていく。


 「……パッと見だと人攫いにも見えるわよ?」

 「絵面は気にしないでくれ。実利優先で」

 「――この子が契約者ー?」

 「うおッ!?」


 ヤマトの背後に突然現れた女性が一名。

 油断していた訳でもないのに、その接近に全く気付くことが出来なかった。


 「……これ全部後輩君(・・・)のゴーレムー?」

 「後輩?……あぁ、精霊術師としてのか」


 《鑑定眼》で見えた情報。 

 ピピが精霊術師である事から、恐らくその面での先輩後輩関係を主張しているのだろう。 

 もしくは冒険者としてか?


 「確かにこのゴーレムは俺が出したものですけど」

 「フィルの《干渉防壁》も肩代わりしたって聞いたけどー?」


 ヤマトと契約の絆で意思疎通の取れたアリアには、こちら側の状況は伝えてあった。

 なのでピピも、そのアリアから聞いていたようだ。

 

 「はいしましたよ。制御はフィルのままで、あくまでも魔力消費を引き継いだだけですけど」

 「……魔力お化けー?」

 「ちゃんと人です」


 魔力馬鹿と言われた事はあったが、今度はお化けにまで昇格してしまった。

 昇格と言っていいのか怪しいが。

 一般的な視点から見れば、実際多人数《干渉防壁》で相当に魔力消費をした直後にやれるような事でもない。

 そもそも普通は多人数《干渉防壁》すら厳しいのだ。

 その上で、いくらゴーレムの動力自体は魔石に込められた魔力とは言え、外殻である人形の精製時にはキッチリ自身の魔力を消費するこの魔法……この魔力消費の連続でまともに身動きが取れている時点で化け物扱いは当然とも言える。


 「余ってるなら私にも魔力分けてー」

 「余ってる訳ではないんですし、肩代わりは出来ても分けるのは無理なんですが……」


 他者へ直接魔力を譲渡する《魔力譲渡》は未修得である。

 《魔力供給》はあくまでも魔石や魔法自体へ回路を繋ぎ注ぐのみ。

 魔石へは《魔力供給》の基礎を、魔法へは《魔力供給》の上級応用で対応出来るが、《魔力譲渡》は別口で、更に難しい工程も加わるため扱える者も多くない。

 だが確かに、膨大な魔力を持つヤマトが《魔力譲渡》を扱えるようになれば、色々と選択肢も増えていく気がする。

 とはいえ将来的に習得すればの話ではあるが。

 

 「とりあえず、魔力ポーションならありますけど要ります?」

 「いるー」


 ヤマトはピピにポーションを手渡す。

 ピピはすぐさま飲み始め、すぐに空にしてしまった。


 「知ってる味……これ〔スピル〕で買ったー?」

 「スピル……あぁ、王都の薬屋ですね。確かにそこで買ったポーションです」

 「もしかして、ウーラ知ってるー?」

 「はい。サイさんの契や……あ、これ言って良いのか?」


 精霊関連の情報は基本的には秘密にしておかなければ要らぬ騒動を呼び込みかねない。

 自身の情報であれば好きにしても良いだろうが、これは知人の個人情報だ。

 同じ精霊術師ならば滅多に言いふらす事もないだろうが、出会って数分の相手に伝える情報でも無い。


 「私は大丈夫ー。二人は友達でお得意様ー」


 よく考えれば、精霊であるウーラの名前を知っていた時点で知り合いである可能性は高かった。

  

 「お得意様……もしかしてペンダントの時の、〔事情を知る馴染みの冒険者〕?」

 「多分それ私―」


 サイとウーラの依頼でペンダントへの魔力供給をお願いしている事情を知る冒険者。

 それが目の前のピピであった。


 「ペンダントを知ってるって事はもしかして依頼でも受けたー?」

 「〔魔法具への魔力供給〕なら受けましたね。馴染みが王都を離れてるから代わりにってお願いされましたけど……先輩だったんですね」

 「うんそうー。いつもは私がしてるけど今回は遠征と被っちゃってー、しかもこっちに来る前に補充するのを忘れてたから心配してたー。代わりにしてくれてありがとうー」


 深々と頭を下げるピピ。

 彼女の失敗のフォローを知らぬ間にヤマトはしていたようだ。

 ……彼らと会ったのは王都襲撃以前の事だが、果たして無事でいるのだろうか。


 「気にしないでください。俺は普通に依頼を受けてこなしただけですから。それよりも……私の名前はヤマトと言います。魔法使いで冒険者で、契約してるので一応精霊術師でもあります」

 「私はピピー。前は冒険者で今は勇者パーティーに所属してる精霊術師ー。二つの意味でキミの先輩ー。よろしくね後輩君ー。精霊仲間が増えたー」

 

 放置されていた自己紹介を二人は済ませた。

 ピピは精霊術師の仲間が増えた事で、若干テンションが上がっているようであった。


 「――次は私だな。私はレインハルト。騎士ではあるが出は平民ゆえその辺り(・・・・)は気にしないで欲しい。よろしく頼む、ヤマト殿」

 「はい、よろしくお願いします」


 これでひとまず初対面組との顔合わせは済んだ。


 「さて……搬送準備は出来たので、早々にシフルさんの所まで運びましょうか」

 「そうだな。よろしく頼む。我々は勇者殿の所に向かう」


 そう言いヤマト達とは反対方向に進もうとするレインハルトとピピの二人。

 それをヤマトは静止する。


 「あれ?お二人には伝信(メール)は届きませんでしたか?」


 賢者シフルからの伝信連絡。

 《妨害領域》のせいで音信不通となっていたが、原因である〔フェンリルその二〕が消えた事でそれも晴れた。

 今は連絡も普通に取ることが出来る。

 そして靄が晴れた直後、フィルの元にシフルからの伝信が届いていた。


 「〈勇者は無事。全部一人で倒しちゃったみたい〉だそうですよ。そして騎士団長を含めて騎士団の方々が迎えに行ってくださっているようなので、私達が今から向かう必要はないですよ?」


 騎士団も勇者パーティーも、複数人で倒した凶悪なフェンリル。

 勇者タケルはその最後の一体を、たった一人で倒してしまったそうだ。

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