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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/悪魔と天使
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68 反撃


 「《水刃一閃(ウォータースラッシュ)》」

 「グルゥウウウ」

 「《風斬乱舞(カマイタチ)》《風槍の雨(エアランスレイン)》」

 「グゥルォオオオ」

 「《雷光弾》《雷光一閃(フラッシュライジング)》」


 フェンリルに向けて放つヤマトの魔法の連打。

 反撃も回避の隙も与えない。

 自由に動かれれば翻弄されるのはヤマトのほうだ。

 だからこそ自由にはさせない。





 「――あれは……少々無茶が過ぎるのではないか?」


 明らかに非常識なペースで魔法を振るうヤマトの姿に、騎士団長ルナは少々困惑していた。

 騎士団所属の魔法使いですら、あれでは早々に魔力切れを起こしてしまう。


 「あー、大丈夫です。アレの魔力量は常識と比較するだけ時間の無駄です」


 そう語るのはアリアであった。


 「《水の癒し》」

 「……治癒魔法か。助かる」

 「ポーションが必要な方は居ますか?」

 「そうだな、一本貰えるか?」

 

 ヤマトから預かった〔魔法袋〕からポーションを取り出すアリア。

 そして騎士団長に手渡す。

 グレートウルフ二十体を処理した後、ヤマトを除いた面々は僅かばかりの休息を挟んでいた。

 今現在、ただ一人でフェンリルの相手をしているヤマトの時間稼ぎ(・・・・)で出来ているこの貴重な時間で、反撃するための盤石な体制を取り戻さなければならない。

 

 「ありがとう。治癒の効きも良いな。――もし良ければ第二騎士団(うち)に来ないか?治癒魔法をきちんと扱える人材は何処も足りていない。そうだな、彼もあれだけ魔法を扱えるのなら……二人で一緒にどうだ?」


 まさかの騎士団長自らによるヤマトとアリアの騎士団へのスカウトが始まった。

 この状況でそれが出来る彼女は、思いのほか図太いのかもしれない。


 「ごめんなさい。少なくとも今は何処かに所属するつもりはないですね」

 「そうか、残念だが仕方ないな」


 あっさり諦めるのは、最初から予想が付いていたからであろうか。

 

 「……ちなみに、アレは根本部分がちょっと馬鹿寄りなので、騎士のような役職・その規模の集団行動には向きませんよ?」

 「馬鹿なのか?」

 「若干馬鹿です」

 「それは褒め言葉としてか?」

 「褒めと貶め……半々ですかね?」


 そう言いながら、アリアは苦笑いしていた。


 「――団長。整いました」

 「そうか、では行こう!」

 「あ、最後に一つだけ魔法を――」





 

 「グルァアアアアアアアアアアアアアアア」

 「いちいち吠えるな!《大岩弾》――近いからめっちゃ五月蠅いんだよ!《火炎弾》」


 愚痴りながらも攻撃の手を止めないヤマト。

 そこに彼女たちが合流する。


 「……何というか、容赦ないわね」

 「アリア?」

 「助かったぞ冒険者。ここからは私たちの番だ!!」

 「分かりました、よろしくです」


 そしてヤマトが下がるのと入れ替わりで、騎士団の面々十名がフェンリルに向かって行った。

 ヤマトは一度それなりに安全そうな距離をとり、周囲を確認した後に一息付く。


 「はぁ……疲れる。見た目は狼系統なのに何であんなに堅いんだか」

 「その割には結構なダメージを与えてたように見えるけど?」

 「それぞれ魔力を通常の五割増しにして放ってたから。これで効いてくれなかったら無理矢理にでも大技頼みにするしかなかったかな?」


 アリアは預かっていた〔魔法袋〕をヤマトに返す。

 ヤマトはその中から魔力ポーションを一本取り出し飲み干す。

 魔力量自体にはまだ余裕はあるが、出来るときに補給はしておく。


 「……ところでさ、あの人たちに《強化》でも掛けた?」

 「《強化》とはまたちょっと違うんだけど……まぁ似たようなものを少し、あの人たちがきちんと扱い切れる程度にちょっとね」


 騎士たちの戦いぶりはウルフ戦で見ていた。

 仮にも上級相手……攻め来るウルフを、簡単に捌いていたその技量。

 素人でも凄さを感じる取ることが出来るその剣技・立ち振る舞いは、確かに騎士として誇るに足るものであった。

 その騎士たちの力が、ウルフ相手の戦闘時に比べ更に跳ね上がっていた。

 加減無しの本気を出した事もあるのだろうが、騎士たちから感じ取れる精霊(・・)の力。

 騎士たちは上がった力に振り回される事無く、まるで最初から我が物だったかのように慣れた様子で動き回る。

 

 「増援待たずに決着付きそうな勢いだな。それに越したことはないんだけど」


 目に見えて劣勢なフェンリル。

 恐らくこのまま仕留めきることが出来るだろう。

 だが《眷属召喚》に目覚めた時のように、再び不測の事態が起こる可能性は捨てきれない。

 それに……


 「……なぁ、あれってやっぱり〔人型〕と同じだよな?」


 実際に目視し、そして感じ取ったその圧倒的な存在感に紛れ込む異物(・・)の感覚。

 ティア曰く〔負の感情〕を基にしていると思われる〔毒〕や〔黒い蝶〕。

 目の前のフェンリルからも、少し弱いながらも同じ感覚を感じ取れる。


 「そうね。この個体がこうなっているのなら、他の二体も混ざってるんでしょうね」


 アリアも賛同。

 となるとほぼ確定と言っていいだろう。

 〔黒い人型〕そして〔ドドメキ〕は、戦う過程でどんどん奇怪な変化を遂げた。

 フェンリルが手に入れたという本来は持ち得ない能力も、その一端の可能性がある。


 「となると……よし、休憩終了!一気に押し切ろう」


 更に面倒な変化をする前に倒しきる。

 立ち上がるヤマト、そして再び前へと出る。

 その後ろに、今度はアリアも付いて行く。


 「お、今だな――《火炎弾》」


 まずは遠目から一撃当てる。

 そして出来たのはほんの一瞬の隙ではあったが、騎士たちはその隙を見逃しはしない。

 騎士たちの剣が、より深くフェンリルの体を抉っていく。


 「続けるのなら、タイミングも内容も任せるから適度に攻めてくれ!後はこっちが勝手に合わせる」

 

 ちょうど良いタイミングだったため勝手に始めはしたが、騎士団長直々に支援攻撃の許可が下りた。


 『了解です。《風弾・三連》!!』

 「《水の矢》!」

 「――良し、《月下両断》!!」


 結論から言ってしまえば、ヤマト達の相手している〔フェンリルその一〕はこれ以上何かを起こすことも無く、第二隊が合流する前に倒れる事になる。

 だが、当然ながらまだ終わりではない。

 フェンリルは残り二体。

 そしてその先に待っているのは――。

 

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