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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/悪魔と天使
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61 レイダン到着、そして空へ



 「とうとう着いた訳だけど……タイミング悪かったか?」


 そしてヤマト一行は、目的地〔レイダン〕へと辿り着いた。

 着いたのだが……町の様子が何やら騒がしい。

 というよりも慌ただしい?


 「失礼します!貴方方は巫女様の御一行で――」

 「はい。私が巫女ですが」


 町の入り口前でその様子を伺っていたヤマト達に、門兵の一人が話を掛けて来た。

 予めフィルが連絡を入れていたため、出入り口を監視する門兵にも話は降りてきていたのだろう。


 「身分証を……確認しました。お待ちしておりました巫女様。こちらを騎士団長〔ルナ〕様よりお預かりしております。急ぎお読みいただければと」

 「拝見します」


 町中へと通すでもなく、今この場で手紙を渡され、そしてフィルに読むように促した。

 〔騎士団長ルナ〕。

 確かレイダンに駐留している〔第二騎士団〕の団長だったか。

 伝信(メール)ではなく、しっかりとした書面を用意している辺り重要な内容なのだろう。

 読み進めるうちに、フィルの表情が重くなっていく事からも察する事が出来る。


 「……既に始まっていますね。タケ…勇者様たちは――」

 「グウェェエエエエ!!」


 フィルの言葉を遮るように、何かの雄叫びがその場に響く。

 とっさに警戒、周囲を見渡すヤマトであったが、その声の主は()にいた。


 「……〔レド〕!!」


 フィルがその〔グリフォン〕の名を呼んだ。

 【レド(グリフォン/"シフルの使い魔")】。

 《鑑定眼》でヤマトの得た情報。

 あくまでも知識で知るのみで、実物のグリフォンは始めて見た。

 どうやら賢者シフルの使い魔のようだ。


 「グエ!」


 空から陸へと着地したグリフォンは、その背に〔三人の人間〕を乗せていた。

 母子一組と、もう一人は〔奴隷〕の首輪をしていた。


 「あの、これを……」


 その母親が、何やらまたしても手紙をフィルに渡してくる。

 フィルはそれを読み、そしてその手紙を門兵に手渡し指示を出す。


 「賢者シフル様からの指示です。手紙の通りに保護をお願いします」

 「分かりました。おーい!すぐに――」


 指示を受けた門兵は、仲間を呼んですぐに動き出した。

 三人はそのまま町の中へと連れていかれた。


 「ふぅ……レド!シフルさんの居る場所まで案内出来ますか?」

 「グェッ!」


 今のはどうやら肯定らしい。

 言葉はともかく、普通に意思の疎通が可能な面はやはり知能が高いようだ。


 「――ヤマトさん、アリアさん!一緒に来ていただけないでしょうか?」

 「うん、分かった。すぐ準備するよ」


 フィルのお誘いに、ヤマトは二つ返事で了承した。

 少し拍子抜けしたフィルの表情は、ちょっと可愛かった。

 

 「アリアも大丈夫だよね?」

 「私は、契約者が行くところについて行くだけだから聞く必要はないんじゃない?」

 「いや聞くよ。嫌なら断っていいんだよ?というかそういう言い方をするなら置いていくよ?」

 「なら行く」


 結局アリアも了承らしい。


 「えっと……説明を聞かなくてもいいんですか?」


 むしろ即決過ぎて、フェルが気を遣ってくる。


 「急ぎたいから説明端折ったんでしょうが……話は移動しながら聞くから、ダメだと思ったら自分で勝手に引き返すから。だからまずは動き始めよう」

 「……分かりました、お願いします。レド、この人たちも一緒にのせ――」

 「グェッ!」


 食い気味で肯定するレド。

 ヤマトには「大丈夫だから行くなら早くしろ」という意志表示にも思えた。

 

 「それじゃあ私は消えるわね」


 アリアは実体化を解いた。

 確かに精霊のアリアは、ヤマトの中で休んでいたほうが温存かつ移動の手間も省ける。

 一瞬レドがビックリしたようだが、害意が無い事はすぐに気付いたようなので貫禄ある落ち着きを見せている。


 「ヤマト君、ちょっとしゃがんでください」


 ティアがそう促して来たので、ヤマトはティアの身長に合わせて軽く屈む。

 そしてティアの両手がヤマトの頬に触れ、そのままティアの顔が近づいてくる。


 「えい」


 そしてそのまま、おでこ同士が触れ合う。

 余計な意図が無いのはヤマトも理解しているが、流石に近すぎて少し恥ずかしい。

 

 「じー……」


 ナデシコの視線が刺さってくる気がするが、邪念もやましい意図もないので堂々としていれば問題ない。

 ……だが少し長いなぁと思っていると、ようやくティアが離れてくれた。


 「(あーあー、ヤマト君、聞こえますかー?)」 

 「(おーけーです。聞こえてますよー)」


 言葉に出さず、テレパシーのように思考会話を行うヤマトとティア。

 先程の行いは、この回線を繋ぐために必要だったのだ。

 

 「大丈夫そうですね。何かあったらこれで即座に連絡が取れます。ただ以前に女神(わたし)と話していたような万能なものではないので制限があります。気を付けてくださいね?使い過ぎて肝心な時に解けてしまってたとか無いように」


 合計通話時間の制限もあり、結界などの妨害にも引っ掛かる。

 使い勝手はイマイチだが、あるだけでも大きく状況が変わる。


 「気を付けます。あ、何かあった時はそっちもちゃんと伝えてくださいね。タイミングとかは図らなくていいのですぐに」

 「分かりました」  

 「それでは……あ、門兵さん、こっちの三人もお願いできますか?」

 「承りました巫女様。私が案内しましょう」


 居残り組のティア・ナデシコ・レイシャの事も任せた。

 ティアには既に色々と預けている物もあるので、今改めて渡す物もない。

 

 「他は……特にないな」

 「準備出来ましたか?それではレドに乗ってください」


 先にヤマトに乗るように促す。

 レドが屈んでくれているのでそのまま跨る。


 「よっと……」


 そしてヤマトの後ろにフィルも乗る。


 「フィルが前じゃなくていいの?」

 「慣れない人が後ろに乗ると落ちますよ?それに体格が大きい人が前のほうが捕まり易いでしょう。騎馬と違って手綱を握って指示する必要もないので、経験者が前である必要もないですし」


 とりあえずヤマトも、飛行中に落ちるのは勘弁なので従う事にしよう。

 だが捕まり易いとは……。


 「それじゃあ失礼します」


 フィルはそう言って、ヤマトの背にピッタリと張り付き(・・・・・・・・)、両手をヤマトのお腹辺りに回す。

 ヤマトはフィルに背中から抱き着かれた形になる。

 だから体格が大きい方が捕まり易いのか。


 「じー……」


 図らずも、男女で密着する形になったため、ナデシコさんの視線がまたしても刺さってくる。

 これも邪念は無いので、特に弁明する必要はない。

 

 「(フィルの体形だと、隙間なくピッタリ(・・・・・・・・)とくっつけるから安定しそうね)」


 本人に聞こえていないからと余計な事を言うアリア。

 とっさに「凸か……」とか勘繰った事を、絶対にフィルに知られてはならない。

 今の状況だと、そのまま腕で鯖折りにされかねない。


 「(あら、フィルったら……顔が赤く――)」

 「(アリア、お願いだからちょっと黙っててくれない?)」

 

 とりあえずアリアは余計な情報を伝えないでほしいものだ。

 こっちまで恥ずかしくなってしまう。 


 「準備いいよ」

 「……分かりました。レド、お願いします!」

 「グェエエエエエ!!!」


 そして空へと舞い上がるグリフォン。

 この大空を駆けてゆく。  


 「いってらっしゃーい!」

 

 そして見送る三人。

 ヤマト達の姿が見えなくなると、三人は門兵の案内で町の中へと入って行った。


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