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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/悪魔と天使
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60 いまひとときの



 「ふぅ……チェック終わりましたよ」


 一作業終えたティアが、側で待機していたヤマトに声を掛ける。


 「どうでした?」

 「ヤマト君の指摘通り、確かに変換効率が下がってますね、あくまでも数パーセント程度でしたが。何というか……よく気付きますよね」


 昼休憩で足を止めたタイミングで、ヤマトはティアに走行中に自転車に感じた違和感を相談していた。 

 ヤマトが走行中に感じた違和感。

 自転車に流し込んでいる魔力が上手く力に変わっていないのではという疑問を、今日になって感じていた。

 厳密には、自身の足に掛かる負担がほんのちょっとだけ増えた気がした。

 魔動アシスト機構に流し込んでいる魔力は常に一定。

 その辺りの魔力制御には自信がある。

 体にも異常はない。

 そうなると、その変化・違和感の原因は自転車自体に不具合が発生している可能性があったので、ティアに確認して貰ったところ確かに変化が起きていた。


 「とりあえず、このまま走らせても問題は無い?」

 「無いと思います、もちろんあくまでも普通に扱う分には問題は起きないだろうという事ですが。不測の事態が起きた時にはどういう影響が出るか分からないので、こっちでも注意はしておきます。……本当はさっさと再調整してしまったほうが安心なのでしょうけど、再調整はこの体だと手間も時間も掛かるので、レイダンに着いてからになりますね」


 ひとまず現状はこのまま。

 実際に確認して貰ったティアが大丈夫と言っているので、少なくとも目的地に辿り着くまでは問題はないだろう。

 レイダンには明日到着の予定。

 早々不測の事態も起こりはしないだろう。

 もちろん警戒は怠らないが。


 「それで、これって何が原因なんですかね?」

 「どうでしょうねぇ……流石にこの場では原因追及が出来ないので何とも言えませんが、元々何かを引っ張る前提では作ってませんでしたから、改良した時に調整が甘くなり、ズレが生じた可能性もありますね。他にもヤマト君の魔力量に対応させたりもしてますから、自転車単体で運用していた時よりも完成度は下がってしまいましたかね?」


 状況の変化に合わせて色々と手直ししていたようだ。


 「やはり原点……最初のバランスこそ完成形だったのでしょうか?」 

 「使う側の意見としては、まずその原点を何故自転車にしたのかと問いたいんですけどね」


 どうせ魔力で動かすなら、バイクの方が分かり易かった。

 バイクであれば今のヤマトのように、休憩の都度に足の疲労度合いを気にする必要も無かった。

 そして何よりも見栄えが……。




 「――こっちは終わりました」

 「こちらも後は待つだけです。お手伝いありがとうございました、フィル様」


 その頃、レイシャは昼食の準備を、フィルはその手伝いを行っていた。

 ヤマトとティアは向こうで何やら話をしており、ナデシコとアリアは岩場の方へと向かった。

 この場には二人だけである。


 「……レイシャさんは、本当にこんな所まで付いてきてよかったのですか?」


 せっかくなのでこの機に聞いてみる事にした。

 元々レイシャは王城で働く、国に仕える使用人だ。

 それが城を離れバルドルへ……そして今はレイダンに向けた旅路にまで付き合わせてしまっている。

 ナデシコに付くのは確かにそう言った命があったからではあるのだが、その延長として一行の世話までしている。

 思うところはないのだろうか?


 「これも私のお役目ですから。場所は何処であろうと、与えられた役目が撤回されていない以上はお嬢様について行きます。自身の役目を投げ出してしまったら兄に会せる顔もありませんし。……それに今回の旅路に関しては、その兄の安否確認を直接行える良い機会でもありますから、むしろお礼を言いたいぐぐらいです」


 レイシャの兄。

 元騎士団副団長〔レインハルト〕。

 現在、勇者パーティーの一員として、勇者と共に行動し音信不通となっている男である。

 ヤマト達の目的は勇者タケルとの再会であるため、このままついて行けば勇者と共に行動しているはずのパーティーメンバーであるレインハルトにも会う事が出来る。

 レイシャとしては仕事をこなしながら安否不明の家族の詳細も知ることが出来る。

 いわば一石二鳥であった。


 「……実は前から聞いてみたかったのですが、レイシャさんってレインハルトさんの事が大好きですよね?」

 「当たり前ではないですか。あれだけ立派な兄を嫌う理由などあるわけないじゃないですか!私がお城で働けるようになったのも、実家の今の裕福な暮らしも、こうして皆様と共に居れるのも全て兄のおかげなのです。好いて当然ではないでしょうか?」

 「あ、はい。確かにレインハルトさんの功績を考えれば尊敬するのは当然と言えば当然なのですが、どちらかというと好き過ぎるような気がして……あ、いや、いいです。気にしない様にします」


 以前フィルがレインハルト本人から聞いた話によると、実家に帰るとレイシャは四六時中何処にでもついて来ようとするらしい。

 兄からすると「兄離れが出来ていない甘えん坊な妹」という印象らしいのだが、話を聞く外野からすれば、どちらも成人しているにも関わらず部屋やベットだけでなく風呂場などにもついて来ようとするという話は少々気になった。

 なので妹本人に話を聞いてみようかと思ったのだが、レイシャの言葉と表情から少々おかしな空気を感じ取ったため、フィルは早々に撤退する事にした。

 触らぬ神に祟りなし。

 不発弾処理は当人に任せて、そっとしておくのが一番だなと思った。



 「ただいまー。ごめんなさい、お手伝いできなくて」

 「あ、お帰りなさいナデシコさん」

 「お帰りなさいませお嬢様、アリアさん。……シロさん、何やら大きくなってませんか?」

 「うん、実は……あれ?ヤマトさん達は?」

 「――呼んだ?」

 「あ、ヤマトさん、ティアちゃん。実はシロが……」

 「……少しデカくなってる?」

 「本当ですね。もしかして……」

 「ティア様は気付いたかしら。実はシロが――」

 「皆様、食事の準備が整いましたよ」


 とにもかくにも六人全員揃い昼食となった。

 ――そして一行はこの翌日、〔レイダン〕へと辿り着く。




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