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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/悪魔と天使
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59 ここ掘れワンワン?


 「シロちゃん、どこ行くの?」

 

 ヤマト一行は道中の昼食休憩で足を止めていた。

 いつものようにレイシャが昼食の準備を始め、ナデシコもそれを手伝おうとしていたのだが、子供精霊のシロがナデシコとアリアをこの岩場まで連れて来た。

 

 「シロ、もう少しゆっくり進みなさい。ナデシコが付いて来れなくなるから」


 アリアの注意で小さな光の移動速度が遅くなる。

 シロは常に浮いており、アリアも実体化しているとはいえこの程度の岩場は苦にはならない。

 だが一般人のナデシコは、足場の安全を確認しながら進まなければならないため、自然と歩みが遅くなる。

 シロは最低限のコミュニケーションが取れるだけの知能は持っていたが、誕生してからまださほど経っていない為に、当然ながら知識も経験も足らない。

 とは言え、言えばきちんと学習してくれるため、今の所は素直な子のようだ。


 「アリアさん、シロちゃんは何処へ行こうとしているんでしょうか?」

 「分からないけど……どうやらもう着くみたいよ」


 シロに連れられやってきた場所は、道中の岩場と比較しても明らかに地面が均された場所であった。

 その小さな広場の中央で、シロは地面に留まっていた。

 そしてその場で跳ねるように上下移動を繰り返していた。


 「なに?その下に何かあるの?」


 アリアの言葉に、シロは動きを変え円を描くように浮遊する。

 人相手には正直分かりにくいジェスチャーがあっても、同じ精霊のアリアには大まかに読み取ることが出来るようだ。

 そのためシロ関連ではナデシコとアリアが固定セットで対応する事になっていた。


 「肯定みたいね。となると……ちょっと掘ってみましょうか」


 そう言ってアリアは、シロの示した場所を魔法で掘り返してみる。

 何があるか分からないため、少しずつゆっくりと掘り進める。

 そうして進めていると、その穴の中からある物が掘り起こされた。

 小さな、石のような結晶体だった。


 「あれ、この反応は……成程、これが目当てだったのね」


 シロは出て来た石に近寄っていく。

 アリアは納得したようなのだが、ナデシコには訳が分からない。

 この石は一体なんなのだろうか?


 「これは〔精霊結晶〕って言って、まぁ私たち精霊の力が固まったものって考えでいいのかな」


 精霊は、普通に生活するだけでも微量ではあるが自身の力を周囲へと放出し流してしまう。

 中級以上の精霊ならば自身で完全に制御し抑える事も可能なのだが、下級精霊にはそれが出来ない。

 その垂れ流された微量の精霊の力が、年月を掛けて少しずつ積み重なり形となったものがこの〔精霊結晶〕であった。


 「時間を掛けて少しずつって事は、ここに精霊が居るんですか?」

 「いいえ。あくまでも以前は居たってところ。今は居ないみたい」


 微量の力が積み重なり形となるには、その場に留まり続ける必要がある。

 つまりここには、以前は何かしらの精霊が暮らしていた。

 ここで暮らしていた精霊の力が地中に溜まり、こうして結晶になったのだろう。


 「その精霊は何処に……」

 「どうでしょうね。〔精霊界〕へと向かったか、単純に余所へと移ったか、はたまた……」


 何にせよ、当人が居ないため正確な事は分からなかった。


 「シロちゃんはなんでこれを?」

 「〔精霊結晶〕ってのは説明した通り、精霊の力が結晶化したものなのよ。だから力の弱い下級精霊にとっては取り込む事で自分の力を〔強化〕、成長させる事が出来るのよ」

 

 本人や上位精霊には効果はほとんど無いが、その他の下級精霊にはご馳走のようなものだとアリアは言う。

 どうやらシロのお目当てはコレであったようだ。 

 自身の成長や強化の為に……と思ったのだが……。


 「え、あれ?シロちゃん?」

 「あー、どうやらシロは、これをナデシコにプレゼントしたかったみたい」


 どういう原理で掴んでいるのかは分からないが、その精霊結晶を持ち上げたシロは、結晶をナデシコの前へと運んで行った。

 そしてナデシコの体に押し付けようとする。

 自分が貰って嬉しい物だから、ナデシコも貰って喜ぶだろうという考えなのだろうか?


 「それにしても……どうやらシロは感知能力が私たちよりも鋭く広いみたいね」


 上位精霊相当のアリアですら気付けなかった程小さな結晶。

 その反応を、シロは遠くからでも感じ取っていた。

 どうやらシロの感知能力は、一行の中でもズバ抜けて高いようだ。


 「へー、シロちゃんって凄いんだね」


 ナデシコの褒め言葉を理解したのか、シロは素人目にも嬉しそうに飛び回っていた。


 「それで……この結晶はどうするんですか?」

 「好きにするといいわ。ただ正直、ナデシコが持っていても全く意味は無いものなんだけどね」

 「それなら……ありがとうシロちゃん」


 シロの持つ精霊結晶を、ナデシコは受け取った。

 シロは再び嬉しそうに飛び回る。


 「そして……はいどうぞ、シロちゃん」


 その精霊結晶を、今度はナデシコがシロへとプレゼントしようとする。

 ナデシコにとっても、シロからのプレゼントと言う事でとても嬉しいのだが、飾り物としておくよりもシロの成長に一役買ってもらった方が有意義な使い方だった。


 「プレゼント。これはシロちゃんの好きに使っていいよ」


 その言葉を理解したシロは、ちょっと迷う様子を見せはしたが、すぐに精霊結晶の上に乗っかった。

 そして次の瞬間、手のひらの上に乗せていた結晶は消失手品の如く、姿も形も綺麗に消え去った。

 残ったのはナデシコの手のひらに乗るシロだけであった。


 「え、あれ?」

 「大丈夫よ。結晶をシロが取り込んだだけ。一口で全部食べちゃったみたいなものよ」


 それから数秒程の間、シロはジッと静止していたのだが、動き出したかと思えばその小さな光が震えながらちょっとずつ膨れて来た。


 「えっ…え?」

 「大丈夫。力を取り込んでちょっと成長しているだけ。すぐに収まるわ」


 アリアの言葉通り、それはすぐに収まった。

 精霊結晶を取り込んだシロは、元のゴルフボールぐらいの大きさから、およそ五十パーセント増しの大きさとなっていた。

 そしてシロは、再び元気に飛び始めた。


 「今みたいにシロは、自然成長以外にも結晶を取り込む事でも成長するから、まぁ見つけた時はエサでも与える感覚で食べさせても良いんじゃないかしら。そうそう見つかる物でもないんだけど」

 「分かりました。もし見つけたり手に入れたらですけど、その時はそうします」

 

 こうしてシロにとって初めてのプレゼントと食事を終え、シロはちょっとだけ大きくなった。

 

 

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