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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/悪魔と天使
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55 そよ風団、再び


 「お待たせしました。こちらが査定金額になります」

 「……分かりました、これで良いです。代金は現金で」

 「少々お待ちください――こちらが代金になります。ありがとうございました」


 ヤマトは受け取ったお金をしまうと、そのまま買い取り窓口を後にした。


 「(……証明部位かぁ。依頼(クエスト)じゃないからって放置して、だいぶ損した気分だなぁ)」


 折角町に寄ったので、回収したオーガの魔石を換金しに冒険者ギルドにやって来たヤマト。

 オーガの魔石は、どうやら用途が少ないために買い取り金額が安い素材だったようだ。

 オーガの〔討伐証明部位〕さえ持ち込んでいれば、討伐依頼の報酬程ではないが多少の報酬がギルドから貰えたのだが、今回ヤマトはそれも回収していなかったため、純粋な素材分のみの収入だった。


 「(まぁ今回はついでみたいなものだから仕方ないか)」


 ちょっと損した気分ではあったが、仕方がないと納得してギルドを後にしようとするヤマトであった。

 そこに声が掛かる。


 「ヤマトさーん!」


 聞き覚えのある声がヤマトを呼ぶ。

 その声の方向へと振り返ると、そこには知った三人の姿があった。


 「あー、コハクとヒスイとタリサか」


 そこに居たのは王都でのゴレム狩りの際に一緒に組んだ、〔そよ風団〕の三人だった。


 「お久しぶりです……でいいのか?日数的には微妙な気がするが」

 「まぁ良いんじゃないの?その節はお世話になりました」

 「まさかここで会うとは思いませんでした」


 王都の騒動以後どうなったのか少し心配ではあったのだが、どうやら元気だったようなのでひとまずは良かった。


 「久しぶり。俺もまさかここで会うとは思わなかった」


 王都からそこそこ距離のあるアロンの町。

 勿論来れない事はないが、王都で会った面々とここで会う事になるとは思っても見なかった。


 「私達は王都からこの町へと向かう護衛依頼を受けて、ついさっき完了した所なんですよ」

 「護衛依頼?という事はもしかして……」


 護衛依頼は中級以上から受けられる依頼だ。

 つまりは――


 「はい!中級に昇格しましたッ!」


 そう言って三人が揃って冒険証をヤマトに見せてくる。

 確認させてもらうと、三人とも確かに〔中級〕に昇格していた。


 「そうか、それはおめでとう。……そう言えば、王都の騒動の時は大丈夫だったのか?」

 「はい。俺達はその時は例の強化合宿に参加していて、王都に居なかったんです」


 結局合宿には参加していたようだ。

 あの騒動に巻き込まれずに済んだのは運が良かったと言うべきか。

 

 「合宿自体は日程通りに終了して、王都へ帰還しようって時に〔王都が襲撃された〕という情報が入って来て、合宿に参加していたメンバーのうち中級以上はそのまま王都へと向かい、下級のメンバーは近くの町へと避難させられたんです」 

 「情報が〔襲撃されて被害が出ている〕ってだけだったんで、足手まといになる可能性の高い俺らは連れて言って貰えなかったんです」


 当時はまだ下級だったそよ風団の面々は、純粋に戦力外として強制的に避難させられたようだ。


 「私達も迷惑を掛けるのは不本意だったんで素直に従ったんですけど、やっぱり何もできないのが悔しくて……何か出来る事は無かったのかなとか考えていたら、避難先の町のギルドに今回の騒動の影響で対処しきれなくなった王都ギルドの通常依頼の一部が振り分けられてきたんです」

 「その依頼を毎日毎日こなしていたら、気が付いたら昇格出来ました」


 タリサはそう軽く言ってはいるが、ヤマトのような特殊な例ではなく、単純に通常の依頼こなして昇格ポイントを稼いできたのであれば相応の苦労は積んでいるはずだ。

 むしろ冒険者としての経験と心構えは、ヤマトよりも三人の方が出来上がっていると思う。


 「そういえば、ヤマトさんはどうしてこの町へ?」

 「あー、俺の方はちょっと行く場所があってね。この町は途中休憩で今日一泊したら明日には出ていくつもりなんだ」

 「そうなんですか。実は俺たちも、また別の護衛依頼を受けて明日には別の町へと向かう事になってるんです。この町で少し滞在しようかって話も出たんですけど、人も多くて宿もギリギリみたいなんで依頼がてら早々に離れようって話になったんです」


 護衛依頼終わりでまた別の護衛依頼。

 間隔的には忙しい気もするが、この町は少々人が多すぎる。

 それに色んな町を旅していくのも、冒険者の醍醐味の一つにも思える。

 経験を積む上でも悪くない選択だと思う。

 ヤマトも「そういう普通の冒険者っぽい生活がしたかったなぁ」と心の中では少し思っていた。


 「――そうだ!ヤマトさんは今日の夕食はどうするつもりですか?良かったら私達と一緒に食事をしませんか?」

 「お、良いなそれ」

 「えっと、ヤマトさんさえ良ければ一緒にどうですか?」


 お食事のお誘い。 

 ヤマトが一人であったのなら、二つ返事で乗っても良かったのだが……。


 「えっと……実は今は一人じゃなくて、俺含めて六人で行動してるんだよ」

 「それならその人たちも一緒に……いや、流石に俺らも含めて九人は厳しいか」

 「この町の人混みだと、食事処も混みそうだもんね」

 「そもそも私たち邪魔になるんじゃない?」


 その時、ヤマトの持つ冒険証に反応があった。

 どうやらフィルから伝信(メール)が来たようだ。


 〈この宿は食事処も混むようなので、夕食は予約した外のお店で取ることになりました。この場所にこの時間には来るようにしてください〉


 どうやらヤマト一行の夕食は外で取ることになるようだ。

 ヤマトは試しに今の状況を伝えてみた。

 フィルからの返事は即座に来た。


 〈ヤマトさんって、私たち以外に知り合いが居たんですね〉

 

 居たよ?

 少ないのは事実だと思うが。


 〈少々余裕のあるお店を選んだので、三人分の席なら用意してくれると思います〉


 とりあえず向こうとしては、同席するのは構わないようだ。

 ヤマトはすぐに〈よろしく〉と返答をした。


 「ちょうどその仲間から連絡があって、夕食の店を確保したらしい。それでその店なら更に三人分ぐらいは席を用意できるみたいなんだけど…良かったら一緒に来る?」

  

 

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