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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/ひび割れる世界
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51 心意の指輪とヤマトの異質


 『これは……一体どういう事ですか?』

 「何と言いますか、ヤマト君は本当に話題に困らない方ですね……」


 ヤマトの眠る中、ティアと精霊女王は二つの情報を前にまた悩むことになった。

 

 「〔心意の指輪〕……まぁこっちはあくまで真鴈を調べていただけですし、悪いものではないのでいいのですが」


 ヤマトが手に入れた〔心意の指輪〕。

 この世界で唯一の、杖以外の形をした〔魔法補助媒体〕。

 この世界では魔法補助媒体=杖というのが常識である。 

 だが当然ながら、どの時代においても別の形を求めて研究する者は存在する。

 ある時代のある国では、国が主導で研究を促していた時もあった。

 それでも、完成に至ったのはただ一つ。

 それが〔心意の指輪〕である。


 「……懐かしいですね。最後に見たのは数十年前でしたね」


 この指輪、実は〔先々代の使い魔〕、つまりはヤマトの先輩が所持していた時期もあった。

 それが巡り巡って、賢者シフルを経由して、後輩であるヤマトの元へ辿り着いた。

 そしてヤマトを救う事になった。


 『私は魔法道具には詳しくないのですが、とりあえず問題のある物ではないんですよね?』

 「はい。この指輪そのもの(・・・・)には問題はありません。問題を起こすとしたらこの指輪の周囲ですね」


 杖以外で唯一の魔法補助媒体。

 「唯一(・・)」、ここが問題である。

 指輪の製作者も、偶然が重なった結果完成した物であったために二つ目が作れず、唯一(・・)の指輪を巡って騒動が起きる事を懸念し、結局指輪の存在を公表することもなく、ただの指輪として世に流した。

 ゆえにそもそも指輪型が完成していたという事さえ知られていない。

 そのおかげか、指輪を発端とするような大きな騒動は今まで確認されていない。

 だが今後はどうか分からない。


 「フィルにそこそこ性能の良い杖を手配して貰い、ヤマト君にはそれも持ってもらいましょう」

 『折角の指輪型としては本末転倒な気がしますが、まぁいざという時は杖を放棄すればいいだけの話なんですかね?』


 指輪はそのまま装備しつつ、普通の杖を持つ。

 あくまでも杖で魔法を使っているように偽装する。


 『まぁ指輪はそれでいいと思いますけど……《盾》のほうは一体どうなってるんですか?』

 「正直私が本人に問いただしたい事なのですけど、絶対何も知らないでしょうね。はぁ……」 

 

 次いで二つ目、《盾》の話。

 二人の言う《盾》とは、ヤマトが指輪を用いて行使した防御魔法。

 黒い獄炎を防ぎきった、《女神(ユースティリア)の盾》の事である。


 「女神(わたし)の許可も無く、そもそも《聖属性》の適性も無いのに何で使えちゃってるんですかねぇ……」


 スタドで行った《神名詠唱》による《女神の盾》の行使。

 この時は魔法の持ち主である女神様の許可があったため、行使出来た事に何の問題もない。

 だが今回は違う。

 正規の手順も、聖属性という適性も完全に無視していたにも関わらず、全く問題なく《女神の盾》が使えていた。


 「それに何で《獄炎弾》まで使えているんですかね?女神(わたし)が教えていない魔法ですし、ずっと見てましたが練習した様子も無かったです。あの魔法に関わったのはスタドの一件の時だけ。何でそんな魔法を、しかも杖無しの状態で使えたんですか?仮にも超級相当の魔法です。そんな簡単に扱えるものではないですよ?」

 『そういえば《神降ろし》もとっさのぶっつけ本番で成功させたんでしたね。女神様が一度体感させたことが見本になって、要点やコツを掴んでいたのかなと思いましたが』


 振り返れば思い当たる節は多い。

 精霊魔法のレクチャーも、教えた分は一発で身に着けた。

 出発前の五十日で教えた魔法も一度でものにしていた。

 時間を掛けたのは、あくまでも魔力制御による性能向上と安定行使の面だ。

 唯一苦戦していた《短距離転移》も、実際の発動自体はすぐに出来ていて、転移が成功しなかったのは座標設定の甘さによるものだ。

 《界渡り》に慣れた今なら、完成度はともかく使用自体は問題なく出来るだろう。

 

 「仮にそういう〔どんな魔法も一度体感すれば習得できる〕体質だったとして、結局適性や許可を無視できる理由には繋がらないんですよね」

 『……もういっそ「それがヤマトさん」でまとめちゃっていい気もしますけどね?原因究明するにしても今はどうしようもないですし』


 例え剣と魔法の異世界であっても、何にでも理由や説明が付くわけではない。

 管理者たる女神が説明できないのは確かに問題ではあるかもしれないが。

 しいて言うなれば、ヤマトのこの〔異質〕は〔世界というシステム〕の想定していなかった〔不具合(バグ)〕とも言える。


 ――そしてこの世界には一人、存在そのものが〔世界というシステム〕の〔バグ〕として認定されてしまった者が存在する。

 今後出会う事になるかどうかは分からない。


 「とりあえず人間に身に付けられては困るような魔法は、ヤマト君の前では使わない様に注意しましょう。勿論緊急時には仕方ないですけど」

 『そうですね。私たちが困るのもそうですが、ヤマトさんにも重荷になると思います。要注意ですね』


 結局バグ扱いはされなかったが、単純に要注意指定はされてしまった。


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