48 使い魔と義賊の共闘
「《三ノ太刀》――《四の太刀》!」
「《雷の矢》!」
ドドメキ対ロンダート&ヤマトの戦い。
状況は二人に優位に進んでいた。
だがそれでも、決定打には届いていない。
次々と湧き出てくる触手や《闇弾》を盾代わりに阻まれていた。
その分ドドメキも攻めに動けずにいるのだが。
「周囲の有象無象が多すぎるな。これではキリが――」
「《雷光一閃》」
「うぉっと!?いや確かに一掃ありがたいが、せめて一声掛けてくれ!」
「――《多重・雷弾》」
「ああもう好きにしてくれ!」
流石のヤマトもだいぶ余裕がなくなっている。
魔力はまだある。
戦う意志もある。
だが傷だらけの体が本格的に悲鳴を上げ始めている。
意志で押さえつけるのもそろそろ厳しい。
「――今。《斬劇・首狩》」
気が付くとドドメキの頭部と胴体が切り離されていた。
先程までの剣技とは異質な、相手を殺す事に特化した斬り技。
ヤマトの目でも負えなかった剣速剣筋。
通常剣技の抜刀居合切りの速度を上回るそれを大剣で実現していた。
普通の相手ならばこれでこれで締めであっただろうが……
「まぁ予想はしていたが頭を落としても動くか。なら全身を斬り……チッ警戒度が上がっちまったか」
頭部の無い首無し状態でもドドメキは動き続ける。
それだけでなく、今の一撃を警戒したのか更に周囲の触手、蜘蛛の足、滞空闇弾の数が倍に増えている。
これでは正直キリがない。
「……義賊!突破出来るか!?」
「手が無いわけでもないのだが、あの化け物とは相性が悪いな」
「なら魔法は使えるか?」
「悪いが剣士らしく身体強化や補助系のみだ!ただ、攻撃の手は完全に止まるが一応この鎧に内蔵されている防御魔法は使える。範囲防御もあるぞ」
ヤマトも後どれだけ戦っていられるか分からない。
義賊一人で相手するには厳しいようなので、そろそろ決めに行く必要がある。
「数分だけ、一人で保たせてくれ!」
「そちらには手があるんだな?引き受けよう!元より単騎を覚悟の上で来た。必ず守り切って見せる!」
ヤマトは痛む体を押さえつけ、更に後方へと下がった。
義賊も間合いをドドメキとヤマトの中間程まで下げた。
攻めよりも守りを優先する。
二人の動きの変化に気付いたドドメキが、ヤマト狙いの攻めに転じようとする。
「させねぇよ!《十閃》!」
その攻めを、義賊は薙ぎ払う。
「――ギィヤッ!!」
「届かせはしない!」
義賊は攻めを放棄し、完全守りに徹する。
そしてヤマトは守りを任せて準備を進める。
「(部位を飛ばした程度では決め手にならない。なら相手の全てを燃やし尽くす。これだけの魔力量……暴発すれば確実に死ぬだろうが……女神様の直々の指導の成果を発揮する時だな。絶対に完成させてやる――)」
次に放つ魔法。
防御も再生の余地も一切なく、火力で一気に消し飛ばす。
その為の一撃を杖無しで練り上げる。
「(――アイツ、あれだけの魔力を杖無しで……普通ならとっくに自滅してるはずだろ。本当に中級なのか?)」
義賊の中身、チャンピオンのロンダートはヤマトの存在を知っていた。
と言っても知ったのは今日。
バルトルの町では数少ない魔法使いの冒険者であり、腕自慢達が嫌う手間が掛かる面倒な依頼をこなしていた。
更に喧嘩の仲裁の際には人知れず防御魔法で周囲を守る配慮。
この辺りでは少し珍しい容姿も重なり、接点は無くとも印象に残っていた。
「(まぁ冒険者の等級など当てにならない事も多いが、ここまで異常なのは初めて会ったな)」
冒険者等級は基本的には下級から始まる。
相当な実績のある者ですら、飛び級出来ても中級スタートだ。
ゆえにデビューしたての冒険者には上級相当の実力を持つ者も稀にいるのだが。
目の前の青年は、その稀すらも斜め上に飛びぬけていた。
「――キシャアァ!!」
「だからさせねえって!!」
ヤマトを目指す攻撃は全て義賊よってに防がれる。
ドドメキから焦りを感じ取れる。
「(相手も相当に異常だが、戦い方は未熟だな。この調子でドンドン単調になってくれれば彼の守りも楽なのだが)」
義賊のその希望は叶わない。
例え未熟であろうと、手が詰まれば知恵を絞りだす。
「――キィア!」
そしてドドメキは、自らの展開した《結界》を解除した。
1/19 18:07
一文抜けていたので修正しました。




