表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/ひび割れる世界
42/286

40 精霊契約


 

 「はいどちらさ――ヤマトさん!……あの、その娘()はどなたですか?」

 「悪いが説明は後で頼む。まずは中に入れてくれ」

 「分かりました」


 《界渡り》による〔精霊界〕を経由した疑似転移で、ヤマトはナデシコ達が避難したバルトルの町の屋敷に辿り着いた。

 そして迎え入れたナデシコの視界に入った面々……見知ったヤマトと、ヤマトが抱える少女その一(ちび女神)と、そしてヤマトの後ろに立つ水色の長髪と瞳に白と蒼いドレスを纏った謎の少女(・・)その二が居た。


 「――誰ですか、その方々は?」


 後から来たフィルからも同じ質問が飛んできた。


 「フィルか。長いんで詳しい説明は後だけど、この娘は一応女神様関係なので中に入れて休ませてやってくれ。寝かせられるように部屋と、服を用意して貰えないか?」

 「……分かりました。ではひとまずはこちらへ」


 案内されたのは、以前来た時にヤマトが寝泊まりした部屋だった。

 玄関から一番近い空き部屋で、ヤマトが来た時にすぐ案内できるように既に整えていたようだ。


 「降ろすぞ……後は任せた。それと服を着せるときに、怪我の有無も確認しといてくれ。怪我があれば治癒も頼む」

 「分かりました」

 「それじゃあ……ごめん〔アリア〕。早速だけど頼んだ――」


 ヤマトはその場の床に座り込んでしまった。

 ヤマトの腕や足には、まだ小さな黒い痣が浮かんでいた。

 

 「ヤマトさん!?」

 「はい、人間は絶対に触らないでね。もし移っちゃうと面倒だから。こっちはいいからあの娘のほうをお願い」

 「……はい」


 駆け寄ろうとしたナデシコを追い払い、自らが様子を見る〔アリア〕と呼ばれた謎の少女。

 そのままヤマトの体に触れ、色々と調べていく。

 

 「これってもしかして……」

 「そうね。だいぶ端折って簡単に言えば〔毒〕みたいなもの?女神様の異変の原因はこれなんだと思う。ヤマト側にまで影響しない様にわざわざギリギリまで閉じた回線を、ヤマトは《神降ろし》の時に無理矢理こじ開けたみたいだし、その時に少し貰ってしまったんだと思う」

 

 ヤマトにも少しではあるが侵食している〔毒〕のような何か。

 それが女神様を襲ったもの。

 アリアの話によると、普通の人間ならこの程度でも十分致命傷になりかねないらしい。

 ヤマトの場合は女神様と精霊女王、両方の加護があったおかげで今はまだ具合が悪い程度で済んでいるとの事。 


 「この程度なら私でも何とか出来るわね。このままジッとしてて」


 そのまま毒の治療が始まったようだ。

 

 「まぁ緊急時だし、後先考える余裕も無かったんだろうけどあんまり無理無茶をし過ぎないでよ。毒もそうだけど、見よう見まねの不完全な状態で大規模魔法を使うなんて自殺行為よ?今回は消耗した後だったおかげで逆に何とか出来たみたいだけど、大惨事になってた可能性もあったのよ?」


 不完全な魔法の危険性。

 魔力の暴走や、失敗による反動で肉体に大きなダメージが残ることもある。

 もしも今のヤマトの全快状態の魔力が暴走すれば、町一つ吹き飛ばせると注意されてしまった。


 「……えっとごめんなさい。今後気を付けます」

 「と言いつつ、無茶が必要な時になればいくらでも無茶しそうですけどね。なのでやるからには絶対失敗しないように」

 「はい」

 「――事情は解りませんが、ヤマトさんが何かやらかしたんだなーってのは理解出来ました。とりあえずあの娘の着替えは終わりましたよ。それとだいぶ消耗してますが、怪我は無いので治癒の必要は無かったです」


 フィルがちび女神の世話を終えて寄って来た。

 ナデシコもこちらを見ているが、位置はベットの側のままで両方の様子を見ているようだ。 


 「はいこっちも終了。とりあえず毒は払ったけど、体力が戻る訳じゃないからしばらく大人しくしてなさい。はいお水」

 「……どうもです」


 ヤマトはコップに注がれた水を飲む。

 冷たくて気持ちが良い。

 

 「――水はともかく、コップまで魔法で作るなんて……言ってくれれば普通にお出ししますので、わざわざ魔力を使わなくてもいいですよ?」

 「別にこのくらいなら私には一度指を鳴らすくらいの労力で済むから問題ないんだけど……まぁ変な目で見られるのも嫌だし、人前では自重しましょうかね」


 水だけならまだしも、コップまで即興で用意するアリアにフィルからツッコミが入る。


 「……それで、とりあえずこの状況について話してくれますよね?」

 「ああ、もちろん」


 ヤマトはナデシコ達と離れてからここに至るまでの出来事を話した。

 この場に居る面々は元々、女神や使い魔の話もある程度は出来る相手だ。

 女神様に確認は取れない状況なのでヤマトの独断になるが、この二人であれば話しても問題はないだろう。


 「え、それじゃあこの娘が女神様なんですか!?」

 「正確には分体・端末……まぁ分身みたいなものかな?見様見真似で無理矢理再現した《神降ろし》だから正直成功したのかどうかも不安ではあるんだけど……」

 「成功はしてるわよ?あの体には確実に〔女神様の一部〕が収まっている。ただかなり強引な降ろし方だったみたいだから、そのせいで目覚めに時間が掛かっているんだろうけど」


 一応成功はしていたようなのでそこは良かった。

 ただ、もし不具合が出ているならと心配は残ったままだ。

 ……もしかしたら余計な事をしたのだろうか?


 「元々《神降ろし》は女神様側の同意がないと絶対に実行できない魔法だから、無理矢理であれこうして形になっているなら女神様の承諾はあったって事。正直最善であったかどうかは分からないけど、少なくともヤマトの独断でただ選択を間違っただけって事はない」


 紛いなりにも成功している時点で、女神様の合意は取れていた。

 ヤマトの肩の荷が少し降りた気がする。

 それでもまだ完全に降ろしきれる状況ではないのだが。


 「ひとまず私たちは、この娘の目覚めを待ちつつ、全力で守らなければならない。ヤマトには話してあるけど、女神様の死はそのまま世界そのものの死に直結している。神域にいる女神様の本体がどうなっているか分からない以上、この娘が最後の命綱の可能性があるから」 


 正直、ヤマトの話だけでもどう反応すればいいのか分からない様子だったナデシコとフィルであったが、その上さらに世界の危機と聞いて、動揺が隠せずにいた。

 ヤマトもつい先ほど聞いたばかりなのだが、管理者たる女神様と管理する世界の命は繋がっているらしい。

 世界が滅びれば女神様も死に、女神様が死ねば世界も滅びる。

 これを恐らくは知らないからこその魔王軍の〔女神殺し〕の策だったのだろうが、結果的に自分たちの住む世界自体を滅ぼす結果に繋がる。

 いっそ直接この事実を魔王軍側に伝えることが出来ればどんなに楽だろうか。


  

 「正直、受け止め方に戸惑う内容のお話でしたけど、ひとまずヤマトさんと女神様のお話は分かりました。――それでさっきから気になっているのですが……結局そちらの方は誰なんですか?」


 結局ヤマトの話では紹介されなかったもう一人の、水色髪の少女。

 次いでこの娘の紹介が必要だった。


 「あ、そうだね。えっとこの娘はアリアって言って、フルネームは〔アクエリア〕。俺がついさっき契約(・・)した精霊……〔精霊女王〕様の分体(・・)です」

 「よろしくね!」

 「あ、はい!ナデシコと言います。よろしくお願いします」


 律儀に挨拶を交わすナデシコと違い、フィルは驚きの目でアリアを見つめていた。

 口調や性格が変わっているような気がするが、アリアは紛れもなく〔精霊女王の分体〕である。

 《界渡り》で一度〔精霊界〕に渡ったヤマトは、この不測の事態に精霊女王に助けを求めた結果、文字通り力の一部を貸してくれる事になった。

 そうして生まれたのが、この精霊女王様の人型容姿をそのままヤマト達と同年齢まで若返られたような姿をした少女〔分体:アリア〕。

 ヤマトはそのアリアと〔精霊契約〕を結び〔精霊術師〕となった。

 なので今のアリアは、ヤマトの〔契約精霊〕だ。


 「……巫女のフィルです。よろしくお願いします――それにしても、"使い魔"で"魔力馬鹿"で"精霊術師"と普通じゃない肩書きがどんどん増えていきますね」

 「一つとても余計なの混じってるけどね。こっちも"殴り巫女"って呼んでいい?」 

 「……平和が一番ですね」

 「うん、そうだよ」

 

 そうしてアリアの紹介も終わった。

 後はちび女神様が起きてくれるのを待つだけなのだが……。

 

今年の更新は以上になります。

次話は新年になります。

来年もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ