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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
使い魔人生/始まりと出会い
4/269

3 異世界の料理と、初日から起こる危険な騒動


 「ここが〔鈴の音亭〕か」


 冒険者登録を終えたヤマトは、冒険者ギルドで紹介して貰った宿へとやって来た。

 ギルドの提携宿らしく、登録直後の新人は割引価格が適用されるらしい。

  

 (――問題はなさそうかな?流石にギルドで紹介する店なら大丈夫だとは思うけど)


 少し緊張しながら扉を開いた。


 「いらっしゃいませ……初めてのお客さんですね。宿泊はこちらでお受けします」


 早速声をかけられた。

 相手はまだ子供に見えるが、どうやら宿の従業員らしい。

 小柄で茶髪ショートの可愛い女の子だ。 


 「はい、宿泊でお願いします」

 「承ります。私はこの宿の看板娘のリリと申します。よろしくお願いします!」


 【リリ (人族/鈴の音亭 看板娘)】

 

 看板娘…自分で言うものなのかと疑問な部分ではあるが、ヤマトの眼に見えてる称号・職業部分は対外的な認識が表示されるのが大半であるため、それ相応の実績があるのだろう。


 「身分証(カード)はお持ちでしょうか?」


 ヤマトは発行されたばかりの冒険証を差し出す。


 「ヤマト様…なるほど新人さんですね。うちの宿は冒険者の新人さんですと割引料金が適用されますのでどんどんご利用ください。うちは全て朝食付き。食堂は朝は宿の利用者のみですが昼前からは外のお客さんも利用します。トイレは共同、お風呂は共同の大浴場を有料利用かお部屋に浴室・湯船が設置されている部屋が数室あり、お湯はこちらで有料の魔法具をレンタルして頂くか、ご自身で用意して頂くことになります。浴室の有無でお部屋の料金が変わることはありません。支払いは日数分まとめてでも日毎でも構いません」


 正直、この先の事は全く決まっていない。

 ここにどれだけ宿泊するか分からない。


 「……とりあえず予定が決まってないので支払いは日毎でお願いします。部屋は浴室付きで、お湯は自前で用意します」


 お金を取り出し、代金を支払う。 

 魔法が使えれば水もお湯もどうとでも出来る。

 相手もそれが分かってるからこそ複数のパターンに対応できるようにしているのだろう。


 「ありがとうございます。こちらがお部屋の鍵になります。外出の際は必ず受付にお預けいただきますようにお願いします。お部屋は鍵の番号と同じお部屋にお願いします。ご質問などありましたらお部屋の案内表や従業員にご確認ください。それではごゆっくりお寛ぎ下さい」


 手続きは終わったようなので、真っ直ぐ部屋へと向かった。

 そして部屋を見渡す。

 自分一人が寝起きする分には全く不足もない、しっかりとした部屋だった。

 ヤマトは身に着けていた堅っ苦しい装備を外し、自分自身に《浄化》の魔法をかけ、汚れを消してから部屋のベッドに寝転がった。


 「精神的に疲れた」


 あらかじめ勉強も準備もしてきたが、やはり新天地は緊張した。

 

 「初日だから仕方ないけど…なるべく早く環境には順応したい。――だけど今は、とりあえずは腹が減ったな」


 部屋の窓から外を見渡すと、いつの間にか夕日が沈み始めていた。

 夕食には少し早い時間ではあるが、お腹は空いている。

 ヤマトは部屋を出て宿の食堂に向かった。


 

 そして宿の食堂にやって来た。

 お客は姿はちらほら。

 時間的にはまだこれから増えるところであろう。

 適当な席に座り、メニューを確認する。


 「すいませーん。えっと、本日のオススメをお願いします」

 「はい!かしこまりました」


 異世界での最初の食事。

 記念に豪勢に…と行きたかったが、先の事を考えるとあまり散財はしたくないので結局は値段的に中くらいのものを頼んだ。


 (まだきちんとした収入が無い以上、手元のお金はきちんと考えてきちんと管理しないと。良い物食いたかったらその分余裕を持てるように稼いでこないとな…お、来たな)

 

 そして届いた料理。

 異世界の、そして新たな人生で初めての食事となった。

 出てきたのは〔黒シチュー〕と〔パン〕のセットだ。

 見た目はヤマトの知るビーフシチューと相違ない。

 元々地球とは技術や貧富なんかの差はあれど、食事自体の方向性はそこまで大きな差はないと聞いていたが、やはり味付け等は濃いか薄いか、甘いか辛いかでも時代・国柄で大きな差が出る。

 そしていざ実食の時。


 (――なるほど、良いな。正直異世界を舐めてたな。勝手に異世界=食文化は劣っているというイメージがあったのかも知れない。少なくともこれはかなり美味い。惜しむべきはこの味をしっかりと表現できるだけの語彙力が俺にはない事か……食レポ職人を呼びたい)


 何はともあれ、異世界転生後の最初の食事はとても美味く有意義だった。




 食事を終えたヤマトは、再び部屋のベットに寝転がる。

 思いのほかこちらの食文化にも期待が出来そうで、少し楽しみが増えていた。


 「お仕事無い時は食道楽もありかも知れないなー。それにはちゃんとお金稼がないとならないけど。食いたい物を好きな時に食えるだけの財力を目指そうか」


 今後の行動方針が、食欲を基準に示されそうになっていた所に、何やら外から騒ぎ声が聞こえてきた。


 「……何かあったのかな?」


 ヤマトは部屋の窓を開けて、外を見渡す。

 その時、すでに日の沈んだ町中に爆発が起きた。


 「うお!?」


 爆音の方向を見渡す。

 すると視界の一画の広場から炎と煙が上がり始めた。


 「煙か、もしかして昼間の続きなのか?――あれは」


 魔法のものらしき光が見えた。

 そしてその騒動の中心地点付近、揺らめく炎の隙間から人の姿が見えた。

 

 「体格的には……男かな?この距離で届くか微妙だけど…試しにと」


 中心人物らしき人物めがけて《鑑定眼》を発動した。

 その結果を見て、ヤマトはこれから厄介事に首を突っ込む事になると理解した。


 【ザコトロ=ウォルス (人族/子爵)〔理性消失〕】


 こちらはまだいい。

 騒動の中心人物が貴族で、理性を失ってるってのは全然大丈夫ではないだろうが…まだ良い。

 問題は一緒に見てしまったもう一つの情報。

 その貴族の男の持つ〔杖〕。

 すぐに寝てしまえば良かったと後悔したその表示は…


 【神杖 セイブン/神域宝具(七番)〔制限稼働〕】


 『ヤマト君!お仕事です!』


 どうやら初日から探し物を見つけてしまったようだ。

 

 


初日投稿四本目


11/06

文章を一部修正。

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