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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/ひび割れる世界
35/279

33 出会い頭の先手必勝


 「やったか!?」

 「あ、王子それは……」

 「――威力はまあまあですが、それだけですね。狙いは悪く速度も遅い。この程度で仕留めたと思われるのは心外ですね。人間は〔魔人〕を舐めすぎではないですか?」


 ナデシコの投擲は素人のそれであるため、魔物はともかく相手が人並みの知能と相応の実力があれば簡単に読まれてしまう。


 「まして私は"二罪様の右腕"。貴方達程度では傷一つ付けられませんよ」


 魔王軍幹部〔七罪〕。

 七人の幹部の内の一人の側近のようだ。

 恐らく今回の襲撃の指揮者の一人だろう。


 「その割には避けてましたけど……」


 本当に傷付けられないなら避ける必要がない。

 避けると言う事は、程度の差はあれど攻撃自体は有効だったと言う事なのだろう。


 「えっと…ナデシコ。そう言うのは思っても言わない方がいいわよ?」

 「あ、はい。気を付けます」

 

 王女直々に注意されたナデシコ。

 確かに聞いてる限りは挑発にも取れる。

 危機的状況で相手を逆なでするような言動は控えたほうが良いだろう。

 しかしすでに遅し。


 「……やはり人間は我々を舐めてますよね?目標さえ仕留めれば他はどうでも良かったのですが、我ら上位種たる魔人をコケにするような輩はやはり殲滅せねばなりませんね」


 バッチリ怒ってしまったようだ。

 現状、騎士による剣技などの物理攻撃は効果がない。

 イーバンによる魔法攻撃は、効きそうなのではあるが当たらない。

 非常にマズイ状況だ。

 ――しかしそこに()はやって来た。


 「《氷の槍》!」

 

 心臓狙いの殺意高めの先制攻撃と共に。

 魔人は壁に叩き付けられた。


 「よっと。――ナデシコにフィル…よし、どっちも居るな」

 「ヤマトさん!?」


 イーバンによって開けられた壁の穴、つまりは外から入って来たのは、女神の使い魔であるヤマトであった。


 「分かりやすい目印のおかげであっさり見つけられた。それで予定通り助けに来たんだけど……今のって敵でいいんだよね?魔人とか"二罪の右腕"とかどう考えても物騒な情報が見えたから先手撃ったんだけど……」

 「あ、はい。大丈夫です敵です」


 味方撃ちでない事がハッキリしたヤマトは一安心した。

 見た目は黒く、人の描く悪魔から羽根だけとったような風貌。

 そして鑑定眼情報も【ラニィ(魔人/"二罪の右腕")】。 

 元々魔王の配下=魔人という知識はあったので、敵としての行動は取ったのだが……万が一にも味方の可能性も無くはない。

 条件反射で攻撃した直後に、そうだったならどうしようかと心配になってしまったのだが、全く問題は無かったようだ。


 「えっと、ナデシコ殿。あれは――」

 「あ、大丈夫です味方です。私の保護者の使いの人…って紹介でいいのかな?」

 「大丈夫ですラントス王子、リトラーシャ王女。彼は勇者様の友人でもあります。信用できる相手です」

 「成程、勇者殿とも…分かった。皆よ、彼は味方だ。傷つけるでないぞ」


 どうやらナデシコとフィルのおかげで信用はして貰えたようだ。

 自分の立場をどう話すか迷っていたが、必要はなくなった。

 とりあえずあちらの騎士達から狙われる心配はない。


 「――《風盾》」


 飛んできた攻撃を防ぐための盾を張る。

 自分には障壁があるため問題はないだろうが、この場の面々を纏めて守る必要があったので壁の如く大きめに展開した。


 「なけなしの道具を使う羽目になってしまうとは…このラニィ、不覚を――」

 「《氷結牢獄(アイスプリズン)》」


 殺意を持った相手、しかも魔人とならば手加減も容赦も必要ない。

 当然ダラダラと能書きを聞くつもりもない。

 使ったのは拘束の為の結界魔法。

 対象のみならず、空間の内側全てを凍らせる結界で一気に仕留めに行く。

 流石に建物の内で《極・氷結》は守る対象まで巻き込みそうなので却下だ。

 そして追い打ちを重ねていく。

 

 「《多重氷結牢獄(アイスヘル)》」


 相手が本当に凄腕ならばこれでも仕留められないかもしれない。

 だが言動と感じる魔力からは、ここから脱出できるほどの相手とは思えなかった。

 実力だけなら上級で、そこにいる騎士とも大差はない。

 恐らく苦戦の理由は、何か特殊な力を持ち、それゆえの相手の余裕。

 ならばそれを使う前に仕留めれば良い。

 ――敵の情報?力の正体?

 それはヤマトだけでなくナデシコやフィル、王子や王女を危険に晒してでも手に入れなきゃならないものなのか?

 

 「トドメで砕く!」


 そして後に残ったのは、宙を舞う氷の粒が外からの陽の光に照らされ煌めく幻想的な光景だった。


 「(うん。単純魔法を極まで強化するよりも、こうして魔法を重ねて性能上げるほうが安定してるし安全面では良いな。めっちゃ手間は掛かるし魔法次第ではあるけど……)」

 『――何と言いますか、全く容赦ないですね』

 「(ゴレムの群れやら骨飛竜やら大ミミズやらで戦闘はうんざりしてたので。ましてや知り合いの危機ですから。それにそこまで魔力に余裕も……)」


 流石に魔力馬鹿のヤマトであっても、短時間でこれだけ連戦を強いられれば厳しくなる。

 途中で回復薬を摂取してるとはいえ、上級相当の魔法を連発すれば消費は当然多くなる。

 最後の魔法など重ね掛けで超級相当の魔法に届くやも知れない。

 すでにそれだけ暴れたヤマトではあるが、今はまだ休めない。


 「さて一段落着いたところで改めまして……私は冒険者のヤマト、騒ぎを聞きつけナデシコとフィルを助けにここまで来ました」

 「私もですか?」

 「そう。理由は分からないけどそういう風に指示をされたからね」


 ヤマトが女神関係者である事をフィルは知っている。

 だからこそ『女神様がそういう指示を出した』という状況に、真剣な表情になる。


 「……そうか、よくぞ駆けつけた。私は第二王子のラントスだ。悪いがあまり余裕がある状況ではない。きちんとした名乗りが出来ずに済まない」

 「私は王女のリトラーシャ。貴方のおかげで助かったわ、礼を言います」


 この場で一番高貴なオーラを放っていた二人は、《鑑定眼》通り第二王子と王女。

 先の事も考えて、絶対に失礼があってはならない。


 「いいえ、むしろこちらこそナデシコを保護してくださりありがとうございました」

 「いや、爆破の魔法具にはこちらも助けられた。ナデシコ殿にも礼を述べねばならぬな」

 「いえそんな私は――」

 

 王子に王女、それに騎士二名、ナデシコの側仕えのレイシャにナデシコ、フィルの七人で行動していたようだ。

 ――なるほど、ナデシコが転移しない理由はこの人数にあったようだ。

 〔転移結晶〕の同時転移人数は最大で三人。

 一人で逃げるは論外、誰かを一緒にするとしても誰かは置いて行かねばならない。

 ナデシコは選ぶことが出来なかったのだろう。


 「それで、皆さんはここからどうするつもりですか?」

 

 

 

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