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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
異世界事変/ひび割れる世界
33/276

31 空地挟撃


 「(あぁもう多い!)」


 王城を目指して駆けるヤマトであったが、道中何度もゴレムと遭遇するため、正直うんざりしていた。

 例え一撃で倒せる相手であろうと、数が重なれば嫌気も指してくる。 


 「(騎士団は……まぁ優先度の差か。兵士は…あっちで戦ってるのはそれっぽいな。なら任せてスルーして、冒険者はこういう時率先して戦えよ。この辺りに居ないだけなのか?)」

 『何というか…ゴレムの相手も随分と手慣れてきましたね』

 「(散々相手してるからなぁ……ゲームとかなら討伐数の実績開放されてそうなくらいには)」


 生物系の魔物と違い、ゴレムは核である魔石さえ潰せばすぐに動かなくなる。

 そんな明確な弱点なのに、個体差などなく必ず同じ位置に魔石がある。

 そしてパワー重視で動きも比較的遅め。

 狙ってくれと言っているようなものだ。

 当然岩の体ごと撃ち抜くには相応の威力が必要になるが、魔力の多いヤマトはその辺りも問題ない。

 手数で勝負するよりも一撃必殺の方が結果消費も少ない。

 慣れてしまえばこのぐらいは簡単だ。

 

 「(それで…ナデシコには繋がりました?)」


 勇者同様、ナデシコに関しても女神様は位置を把握できるはずなのだが…。


 『勇者同様、こちらも捕捉出来ません。ですが最後の反応から見ても王城に残っているのは確かだと思います』

 「(ならこのまま直接ですね。こっちも〔転移結晶〕が使えれば良いんだけどなぁ……)」


 ヤマトの受け継いだ転移結晶のデメリット。

 三つの結晶は元々一つのため、同時使用と連続使用が出来ない。

 ヤマトとナデシコ、どちらかが使用してしまうと次は一時間は空ける必要がある。

 今、ヤマトが転移するとナデシコの避難に使えなくなる可能性がある。

 なので使用タイミングは見極めなければならない。


 『――ヤマトさん。もしも巫女がナデシコさんと一緒に居ましたら、避難する時は一緒に保護してください』


 巫女――フィルか。

 女神様が直々に保護の指示を出す。

 本来滅多な事では『誰かを守れ』という指示を出すことがない…出すことが出来ない女神様がその指示を出せる。

 巫女という存在にはそれだけ重要な何かがあるのだろう。

 ――気にはなるが、今はそれを考えている場合ではない。

 

 「(――魔物の気配?どこに…って上か!)」 


 上空を見上げるヤマト。

 その視線の先には……空飛ぶ魔物。

 全身骨だけの飛竜――【スカルワイバーン】。

 しかもこちらに接近してくる。


 ヤマトはすぐに杖を構える。

 出現するのは、風を纏った氷の槍。

 狙いは降下しようとしている骨飛竜。 


 「先手必勝…《風の氷槍》!」


 氷の槍を射出し、風で最大加速し貫く。

 ヤマトの狙いは頭部に正確に命中。

 スカルワイバーンの頭部は砕け散った。

 ……しかし落ちる気配がない。


 「頭潰してんのに動くとか、アンデット系ズルイ!!」


 どうやら頭部は飾りのようだ。

 恐らくは完全にバラバラにするか消し去るか、魔石を奪うか潰さなければ止まらない。

 そして反撃が来る。


 「《障壁》を強化!骨だけの羽ばたきで何でそんな風が起こ――ああああ!!」


 スカルワイバーンの羽ばたきで起きたカマイタチ。

 それ自体はキッチリと防げているのだが…唐突にヤマトの足元が崩れた。

 地面に大穴が開き…そこに落下する中で対面するのは【ランドワーム】。

 地中を這い、姿を現した巨大ミミズ。

 上空に気を取られている間に足元を狙われた。

 落下の先にはミミズの口(?)。

 大口を開けて待機している。

 その気持ち悪い光景に……ヤマトは少しキレた。


 「――《極・氷結》」


 放った魔法で、ランドワームの全身が一瞬で凍り付く。

 魔力効率度外視で放った《氷結》の許容上限最大値。

 落下したヤマトは、凍ったミミズを足場に着地する。

 そしてそのまま跳躍し、穴を出て適当な魔法で粉々に砕いた。


 「《極・炎弾》」


 地上に舞い戻ったヤマトは、次いで空へと炎を放った。

 《炎弾》の最大火力。

 空を飛ぶスカルワイバーンの胴体は、核となる魔石ごと燃え尽き灰と化した。

 上空の骨飛竜、地上の巨大ミミズ。

 負傷(・・)はせれど、無事に討伐した。


 「(……威力上げ過ぎて反動で部分的な凍傷に火傷、防御がなければこっちも酷い事になってただろうな。基礎・基本魔法の単純強化が一定ラインに留まって、それ以上が大して有用にならない理由が分かった気がする)


 単純に魔力消費の問題もあるだろうが、そもそも純粋な上位魔法に付いてる精度の反動キャンセルや安全装置が無い。

 魔力を込めて強化出来るのは威力のみで、補助機能は強化されない。

 ここまで威力増しにする事が想定されてない魔法だからだろうか?

 そこを改良しようとすると、それはもう別魔法になってしまう以上は普通に上位魔法を練習したほうが良さそうである。


 「(まぁ今後は気を付けよう。《治癒(ハイヒール)》)」


 死なないためとは言え、ヤマトは少し冷静さを欠いたようだ。

 落ち着きを取り戻し、万全を期すためにキッチリと体を癒す。

 正直それも含め、想定よりも魔力を使い過ぎた。

 やはり嫌悪感から冷静さを欠いてもロクな事にならない。 


 「こういう時のための…だな」


 《次元収納》から中級の魔力回復薬(ポーション)を取り出し、飲み干す。


  『大丈夫ですか?』


 負った傷のほとんどは癒えた。

 魔力は元々の総量が多いので全体比だとそこまででもないが、そこそこには補充出来た。

 

 「(行きます!)」


 ヤマトは再び王城を目指し、駆けだした。

 


18/12/10

年末期間で少し忙しいため、休み期間に入るまで投稿ペースが少し落ちます。

現状の投稿ペースにプラス1~2日程なので、週に数話分は投稿します。

休み期間に入ったら元のペースに戻ります。

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