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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
使い魔人生/始まりと出会い
3/269

2 始まりの町と、冒険者ギルド


 「すまないが、今は入場規制が掛かっている。町に入れることは出来ない」


 目的の町に近づいたヤマトは、門番に止められてしまった。


 「何かあったんですか?」

 「理由は話すことは出来ないが、向こうから来たのなら煙は見えていただろう?」


 どうやら先程見えた煙に関連した騒動が起きているようだ。

 事件、事故、自然現象。

 原因は何か分からないが、ヤマトは町の入り口で足止めを食らうことになった。

 



 「――規制は解除された。町への入場希望者は列に並べ」


 入場規制が解除され、町に入れるようになったようだ。

 待ち時間は二時間弱…

 ようやく進める。

 ヤマトもすぐさま列に最後尾に並んだ。


 「身分証は無しか。こちらの誓約書へ記入し、税を払ってもらう」


 ヤマトの順番。

 審査所で兵士に身分証の提示を求められたが、あいにくヤマトはこちらの世界に来たばかりで当然後ろ盾も身分を証明する物も持ってなどいない。

 そのためヤマトは、要約すると〔王国・町の法に従う。犯罪は犯さない。罪を犯した場合は殺されても文句は言わない〕など、とても基本的な事が書かれた紙にサインをし、入場税を納める事となった。


 分かってはいた事であるが、やはり町に入る度にこの記入と出費を求められるのは厳しい。

 身分証の無い者は、入場の度にこの記入と納税が必要となる。

 しかし身分証があればその提示のみで入ることが出来る。

 使い魔の仕事柄、それなりに町への出入りの多そうなヤマトにとって、身分証は早めに手に入れておきたい代物だ。


 「ようこそ〔スタド〕の町へ」


 手続きも終え、ヤマトはようやく町の中に入る事が出来た。


 (ここが異世界の町…俺にとっての始まりの町か。ただこの町並みは……正直イメージ通り過ぎて感動が薄いのが残念だな。雰囲気のある良い光景なんだけど)


 木造造りで、イメージしていたそのままの建物が並んでいる。

 イメージ通り過ぎて現実感が若干薄かった。

 どちらかと言うと映画村などの再現された町を訪れた時の感覚だろうか?


 (まぁ仕方ない。それよりも今はやっとかなければならない事をしなければ)

 

 ヤマトは早速ある場所へと向かった。



 ヤマトがやって来たのは文字通りの〔冒険者ギルド〕

 冒険者と呼ばれる人々が所属する組織。

 冒険者への支援・援助、そして仕事依頼(クエスト)を主な業務としている。

 要するに冒険者のお仕事斡旋所のようなものだ。


 「こんにちは、本日のご用件は何でしょうか?」


 ギルドの建物に足を踏み入れ、真っ直ぐ受付へと向かったヤマト。

 そのヤマトを対応することになった受付嬢の姿に、ここが異世界である事を改めて認識させられた。


 【サーラ (猫人族/ギルド受付嬢)】


 とっさに使った《鑑定眼》により得た情報。

 目の前の女性の体に生えた〔耳〕と〔尻尾〕。

 彼女は〔獣人〕だった。

 半獣半人…というには目の前の女性は人間度合いが強かった。

 獣らしい部分はその猫耳と尻尾のみで、それさえなければ人間そのものだ。


 獣人は、獣の身体的特徴を持った人類種族のことだ。

 彼女のような猫以外にも、様々な動物の特徴を宿した数多くの獣人族が存在する。

 存在自体は知識として知っていたヤマトであったが、早々に出会うとは思わなかったため少しジロジロと見てしまった。

 変に思われない内に、ヤマトは本題に入った。


 「はじめまして。冒険者の登録を行いたいのですが、こちらで良いのでしょうか?」

 「はい、こちらで受け付けております。それではこちらに登録情報の記入をお願いします」


 ヤマトは指示通りに記入を始めた。

 この冒険者ギルドへやって来た目的は、冒険者登録にあった。

 使い魔としての仕事の報酬に直接的な現金は含まれない。

 換金すれば現金化出来る物も望めば用意して貰えるだろうが直接現金を手に入れられる手段は他に用意していた方が良いだろう。

 ただし使い魔としてどんな行動を取ることになるかが分からないため定職には就けない。

 そのため、個人の都合に合わせて仕事を選べる冒険者業はちょうどいい。

 そして何より身分証も手に入るのだ。


 冒険者であることを証明する〔冒険証(カード)〕。

 これは所有者の身分を証明する〔身分証(カード)〕の一種として扱われる。

 身分証の分類の中では最も発行しやすく、それゆえに行政における役割としては最も下位の証明書ではあるが、それでも問題なく先ほどのような入場の際の記入や納税などは免除される。

 さらに身分証には、銀行通帳や通信装置としての機能もある。

 身分証明としてだけで無くとも持っておきたい便利アイテムだ。

 そんな事を考えながら記入を終えた紙を提出する。


 「はい確かに。後はこちらの部分に登録手続きを担当しております私〔サーラ〕の署名を記入させていただきまして……これで書類の準備は完了しましたのでこの情報で登録させていただきます。それでは続いてこちらの〔水晶〕に手を置いてください」


 サーラの指示通りに水晶に手を置くヤマト。

 魔力量を測定されて一騒動起きるのではとも思ったが、この魔法具の目的は別にあるようだ。

 水晶が淡い光を放ち始めた。


 「現在ヤマトさんの〔魔力紋〕を読み取り登録しています。これは発行する冒険者カードを、ヤマトさん専用のアイテムとするための処理ですので、少しそのままじっとしててください」


 〔魔力紋〕は自身の魔力の持つ指紋のようなものだ。

 それを登録することでそのカードを他者が悪用できない様にする。

 しばらくすると、光が収まり台座部分から一枚のカードが排出された。

 

 「はい、完了したので手を放して頂いて大丈夫です」


 ヤマトが水晶から手を放す。

 サーラさんは排出されたカードを取り、先程記入した書類の裏面の〔ギルドの紋章〕部分に重ね合わせる。

 そして一瞬カードが光った後に、こちらはすぐに離した。


 「はい、これで登録は完了しました。こちらのカードをお受け取りください」


 ヤマトに〔冒険者カード〕が手渡される。

 記された冒険者として階級は、当然最も下の下級。

普通で中級、一人前で上級、一流で超級だ。

 ひとまずヤマトはスタート地点たる下級冒険者となった。


 「こちら初回は無料で発行しましたが、紛失や破損により再発行が必要な場合は手数料がかかりますのでご注意ください。そちらの冊子にギルド施設の利用方法、注意事項、罰則事項などが記載されていますので、必ず目を通して置いてください」


 寝る前にでも目を通しておこう。


 「それではこれで終了となります。ヤマト様のこれからのご活躍を期待しております」

 

 異世界人生初日。

 早速ヤマトは冒険者となった。

 


本日投稿三本目


11/06

文章を一部修正。

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