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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
平穏な幕間/嵐の前の五日間
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28 二&一日前/そよ風団の強化合宿――そして動き出す存在


 「参加者は全員馬車に乗れー!乗り遅れた者は置いてくぞ!」


 そそくさと駆けこむ人々。

 その全員が、しっかりとした武装を身に纏っていた。

 そしてその中には、三人の姿もあった。


 「出発するぞー!」


 そして馬車は走り出した。

 二台の馬車に乗り込んだのは合計十二人。

 階級の差はあれど、全員が冒険者だ。


 「……緊張してきた」

 「一番やる気だった人が何を言ってるの」

 「まぁ分からなくもないけど……けど出発直後からそんな感じだと先が思いやられるわよ?」


 会話の主はそよ風団の三人。

 コハク・ヒスイ・タリサであった。


 この馬車は冒険者ギルド主催の強化合宿の参加者・教官を乗せた馬車だ。

 これから向かうのは合宿地。

 三泊四日を野営しながら過ごす、魔物も住まう森の中だ。

 結局三人は話し合いの末、前回の報酬を使い合宿への参加を決めた。

 まとまったお金だったため実家への仕送りにとも考えたが、長い目を見て将来への投資に使った。

 先日のような体たらくを続けていれば、冒険者としての命もそう長くはないとの判断があった。

 だからこそ少しでも強くなるために使う事にした。。


 「それにしても……指導役が〔鉄腕〕と〔鉄壁〕なのは当たりだったな」

 「なんだ、俺らの事を知ってたのか?新人」


 コハクから仲間二人への言葉に割り込んできたのは、今回の二人の教官の内の一人。

 鉄腕のアイドムだった。


 「……あ、はい!もちろんです!お二人とも有名人ですから」


 コハクの声が若干上ずる。

 今回の教官二人は、冒険者界隈では有名人だ。

 〔上級冒険者パーティー:鉄の絆〕

 すでに解散したパーティーではあるが、上級パーティーの中でもトップクラスの知名度と実績があると言っても過言ではないだろう。

 数多の功績と共に、メンバー全員が〔鉄〕を含んだ二つ名持ち。

 そして今回の強化合宿の教官の二人も、その元メンバーだ。


 一緒の馬車に乗っている〔"鉄腕"アイドム〕。

 あらゆるものを打ち砕いてきた拳闘士。

 解散後は王都ギルドのサブマスターとなった。


 もう一台の馬車には〔"鉄壁"シトラス〕。

 彼の大盾により、彼らのパーティーは一度も上級治癒が必要になる事はなかったと言われている。

 現在はソロの上級冒険者として活動している。


 そよ風団の三人とは戦闘スタイルは合わないが、経験値で言えば当然圧倒的であり、その上で彼らの元パーティーには剣士・弓矢使い・魔法使いも居たため下級相手であれば指導できることも多い。

 普段の合宿よりも豪華な教官たち。

 正に当たり回といって過言ではないだろう。


 「あの……何でわざわざサブマスが?」


 疑問を投げかけたのは名も知らぬ参加者だった。


 「まぁ簡単に言っちまうと、最近は不甲斐ない奴らが多いから喝を入れにきたって感じか」


 一流の喝。

 とてもとても効きそうだ。

 厳しい内容の合宿になりそうな予感がしつつも、強くなりたいと本気で思う者には願っても無い事だ。


 「俺もシトラスも、死なない程度に厳しく行くから…ちゃんと付いて来いよ?」


 ガタイの良い教官の含みのある笑顔が恐怖を感じさせる。

 確かに願っても無い状況ではあるのだが……参加者の想定は少し甘かったようだ。


 そして馬車は、王都を離れて森へと向かう。






 

 「準備の程は?」


 大仰な椅子に座る男が、部下と思しき者に問いかける。


 「ほぼ(・・)予定通りに。実行水準を満たしております」

 「ほぼ(・・)か。予定外は何が起きている?」


 問われた部下は一瞬身震いをするが、そのまま報告を続けた。


 「生産地点が一ヵ所、更なる生産地点として目を付けていた場所が一ヵ所……綺麗に収められておりました」

 「自然に収まったわけではあるまい?」


 玉座(・・)の男が睨みを利かせる。

 

 「……はい。戦闘の形跡もありましたので、おそらくは現状の目標以外に新たな〔眷属〕が近くに、恐らくは王都付近に居るものと思われます」


 彼らの計画(・・)を邪魔している存在が居る。

 それが意図的なものか偶然かは分からないが、魔力溜まり(・・・・・)を解消出来る存在など限られている。


 「――相変わらず忌々しい事だ。こちらに気付いた様子はあるか?支障は?」

 「術式には気付かれたと思いますが…まだ我らには辿り着いてはいないと思います。ただ推測では最有力の候補に挙がっているものと思われます」

 「……数は揃っているんだな?」

 「戦力の方は既に必要数は確保しているため実行に支障はありません」


 玉座の男の体から力が抜け、椅子に深々と座りなおす。


 「なら予定通り、実行は明日だ」

 「眷属の方はどうしましょうか?」

 「――今回は無視しよう。特定も出来ていない以上…今からそっちに手を割くよりも予定通りにいくとしよう。もしも本当に眷属で在れば、何処かしらで介入してくる可能性がある。その時はしっかりと相手をしよう。警戒も促しておけ」

 「了解しました」


 そして彼らは動き出す―――




次話からさらに新章です。

その前にここまでの登場人物のまとめを投稿予定です。


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