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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
龍界決闘/―――
267/276

259 召喚連打


 ――炎虎と雷虎の元々の力に、召喚特権とも言えるブルガーからの上乗せの掛かった強力な一撃。

 真っ当に受ければ頑丈な大剣すらも耐え切れずに砕け、その先に待つ敵にも相当なダメージをお見舞いできるほどの強力さ。

 仮に敵に届かずとも、このタイミングなら厄介な大剣だけは排除できる前提で放ったその攻撃。


 

 「――大剣すら砕けてないって、どういう事だよ」


 だがその一撃は前提であるはずだった頑丈な大剣すらも壊すことは出来なかった。

 

 「…大剣どころかこっちまで危うかったな。どいつもこいつも本当に…このっ!!」

 「グゥウ!!?」「ガゥ!?」

 「くっ…戻れ!炎虎雷虎!」


 すると渾身の一撃をお見舞いした炎虎雷虎は一気に消耗し劣勢に陥る。

 ゆえにブルガーは二体の召喚を解除し送還した。


 「来てくれ!真紅鳥!!」


 そして代わりに召喚したのは三羽の鳥。

 紅く美しい鳥獣たちは【真紅鳥】と呼ばれている。


 「これが噂の真紅鳥…噂通りの、いやそれ以上に綺麗な紅だな」

 「見た目だけと思うなよ?」

 「「「クルー!!!」」」

 「ぐッ…」


 虎たちに変わって召喚された紅い鳥たちはすぐさまシラハへと襲い掛かる。

 この鳥たちは風と炎を操る。

 炎虎に比べれば火力こそ劣りはするものの、その持続性や範囲に高熱化などの調整が思いのままであり風と共に巧みに扱う。

 

 「こいつら…ちょこまかと!?」


 その上で宙を舞う鳥たちは、シラハの攻撃を縦横無尽に躱す。

 そうして手をこまねいている間に、シラハは熱によって消耗していく。

 流石の大剣もその熱までは防いではくれない。


 「…はぁ、鳥は好きだから勿体ないが…落ちろ」

 「「「クルー!!?」」」

 「なッ!?――戻れ!!」


 だがその鳥たちが唐突に叩き墜とされる。

 今までは回避していたはずの攻撃が急激に速度を増し、気付いた時には三羽ともに地面に落とされていた。

 そして…そのまま大剣の餌食になろうかというその瞬間、送還が間に合い三羽全てが姿を消す。 

 実体として召喚した者は、召喚先で致命傷を負えば当然そのまま死ぬ。

 ゆえにこそ致命傷を負う前に送還する引き際も召喚者の責務。

 

 (なんで急に…さっきの攻撃も…何をされた?)


 強力な一撃防いだ何か。

 突然落とされた鳥たちへの一撃。

 だがその分析すら与えぬと、シラハは次の標的に突撃する。


 「な、はや――甲亀!!」


 これもまた想定外の速度でブルガーのもとへと駆けて来るシラハ。

 純粋な迎撃はもはや間に合わず。

 そんな中で慌てて召喚したのは、頑丈過ぎる殻と防御系の魔法を扱う守りに特化した【甲亀】。

 召喚されてすぐさまブルガーごと覆い守る《装甲》が展開される。


 「ギェエッ!?」

 「な…装甲を…!?」


 だがそんな頑丈な装甲を両断するシラハの大剣。

 どころかそのまま、易々とは砕けぬはずの亀甲の甲羅も斬って砕いてしまう。

 召喚魔法の安全装置、致命でなくともそれに近いほどの一定量のダメージを喰らうと強制送還される。

 砕けぬはずの甲羅を砕かれた甲亀はそのままダメージ超過で自然と姿を消してしまった。


 「これで詰みだな。死ね」

 「ぐはぁ…!?」


 そして直後、盾を失い無防備になったブルガーの体が両断された。


 「…チ、偽物か!」


 しかしその体から血は出ない。

 両断されたブルガーの体は霧となって霧散する。

 それは召喚した従魔である【フェイクスピリット】の擬態。

 精霊モドキとも呼ばれる不定形の魔物で、姿を真似る事を得意とする。

 最初からブルガーの振りをして、彼の挙動や言葉を物真似し続けていた影武者。

 本物はもう少し後方で姿を隠していた。


 「シーラス、撃て!!」


 姿を現した本物のブルガーは、これはもはや名も知られぬ魔獣と共に姿を消していた。

 その庇護下においては姿も熱も気配すらも遮断される最高隠密特化の存在。

 味方にも見えなくなり、同時に外の様子も見られぬ大きなデメリットがあるが、影武者であったスピリットとは召喚者と従魔の繋がりゆえに情報確保と挙動の物真似は問題なく行えるデメリットの打ち消しが行われていた。


 そして…役目を終えた隠密との入れ代わりに姿を現したのは水辺に住まう魔獣【シーラス】。

 足がある魚とでも言うべきフォルムのそれは極小極細の水の一閃(・・・・)を放った。


 「な…大剣が!?」


 それは確かに敵に命中して、今度こそ厄介な大剣を壊した。

 真っ二つに両断された叔父の剣の半分の刀身が地面に落ちて刺さる。


 「…で、なんでお前は無事なんだよ」


 そしてその一閃は確かに、大剣を貫通してシラハにも届いたはずだった。

 しかしその体には、薄皮一枚を裂いた程度のとっても浅い傷しか出来なかった。


 (体はやたらと頑丈、叔父の大剣とは言え甲亀の守りを一撃で突破する。防御力と攻撃力が…いや速度も、何もかもが異常過ぎる。さすがに前情報はここまでおかしなモノじゃなかったぞ?)


 頑丈過ぎるシラハの体。

 だがそれだけの力を持つなら、状況はもっとブルガー側に劣勢になっていてもおかしくはない。

 先ほどの急接近の速度も、対峙した経験のあるヤマトから聞いていた目安からは更に早い。

 

 (手を抜いていたのが本気を出した?いや…単純に、上乗せがある?)

 

 ゆえにシンプルな推測はバフ。

 強化の類で元からある魔人としての強力な体を更に強化する。


 (デバフとバフ、デバフは範囲恒常型。でもバフは?常時恩恵があるのならもっと…スライムの強化。対象制限、範囲制限、個数制限、時間制限…なんにせよデバフ程には自由ではなさそうだな。とはいえ今は有効で厄介なのは変わりない。この調子で召喚連打してたらこっちが先に枯渇する。それなら!)


 ブルガーは新たな召喚を行う。

 単純高威力で今の敵を倒すのは難しい。

 ゆえにこそ方針転換、邪道の絡め手を投入する。


 「…ナイトメア。お前の出番は来て欲しくなかったよ」

   


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